踊る小児科医のblog

青森県八戸市 くば小児科クリニック 感染症 予防接種 禁煙 核燃・原発

八戸市「岩手県の震災がれき20ベクレル問題」市長へのメール 情報開示と住民説明会の要望

2011年09月16日 | 東日本大震災・原発事故
八戸市      小林 眞 市長
八戸市環境政策課 田中 貢 課長

「岩手県の震災がれき20ベクレル問題」で市長と市の基本姿勢を支持しますが
 なし崩しの受け入れを危惧します  焼却炉は小学校の目と鼻の先です
 情報の開示と住民説明会の開催を要望します

12日夜のNHK報道以来、岩手県の震災がれき受け入れ問題について重大な関心を持って新聞記事をチェックしていました。また、小林市長の13日のブログも拝読しました。

この問題について、八戸市民の健康と住民の理解を最優先にすると共に、岩手県の復興を支援するために、地域の中心都市である八戸市が役割を果たすべきと感じており、受け入れのための厳しい基準を提示した市長および市の姿勢を基本的には支持したいと思います。

しかしながら、今後、受け入れを前提として交渉していくという話からすると、岩手県側の要求を受けてなし崩し的に基準が引き上げられてしまうことを危惧しています。

小林市長はNHKの報道に対してご立腹の様子でしたが、私も最初に聞いた時にこれでは八戸市が悪者にされているような印象を受け、報道に対して疑問に感じました。しかし、よく考えてみると、私たち市民にとって何も知らされていない寝耳に水の情報であり、もし報道がなければ自治体同士のやり取りだけで決められてしまったのではないかと感じ、まだ交渉段階の話とは言え、住民の理解を得ることを第一に考えてもらっていたのか疑問に感じました。

報道されている内容だけでは以下に述べるような様々な疑問点があり、このままで賛成とも反対とも言えない状況にあります。交渉中の段階でも報道や記者会見などを通じて市民に逐次情報を公開していただくと共に、決定してしまう前に必ず住民説明会を開催していただくよう要望いたします。

特に、八戸セメントの目と鼻の先の高台には青潮小学校があり、周囲は住宅密集地です。風向きによって煙が青潮小の上空に真横に流れることは珍しくありません。
http://from8.org/photo/sunsetgret/
http://from8.org/photo/sunsetgret/data/sunsetgret011.jpg
(この写真をご覧下さい)

私は小児科医で青潮小学校の校医を務めており、隣接する湊高台に居住しておりますので、この問題に関しては強い危惧の念を抱いております。現時点で、小学校やPTA、町内会などにも何も伝えられていないものと思われます。まず住民の理解を得ること、そして何よりも子どもに対する健康の影響がないことを最優先に考えていただきたいと思います。

報道によると、岩手県側は放射性物質20Bq/kgを「微量」「厳しすぎる」と表現していますが、総量では1トンだと2万Bq、1万トンだと2億Bqにも達します。そもそも、市内の処理場は放射性物質を処理するための施設ではないはずで、焼却した際に大気中にどの程度放出されるのかも疑問があります。

また、焼却後に再利用する予定だとのことですが、どのような形でどこに流通させるのかもわかりません。たとえ国の基準を下回っていても、放射性物質の拡散につながることは間違いありません。

福島原発事故以来、三陸沿岸にも放射能汚染は及んでおりますが、八戸市は風向きや距離の関係か、線量率でもほとんど影響がわからない程度に汚染を免れております。野田村であれば、八戸市とそれほど差がない程度と予想されますが、岩手県側の態度を見ると20Bq/kg以上の値が検出される可能性が高いのではないかと報道から判断しています。


本来なら、放射能汚染は集めて閉じ込めて、可能であれば元に戻すことが原則です。汚染地域から非汚染地域へ移すことはあってはならないことですが、国は全国に拡散させる政策をとっており、各地で大きな問題となっております。
 
一方で、野田村や岩手県北地域は八戸市と地理的にも歴史的にもつながりが深く、震災復興の手助けとなることに対して、一方的に頑な反対の態度を取るべきではなく、可能な限り受け入れたいという市の方針は市民としても当然のことと思います。

また、八戸市も被災地であり、復興関連事業を受注することが八戸地域の復興につながることも理解できます。

基本的に、現状では住民に対する情報の開示が不足しており、それが不安や疑問を感じる結果につながっております。繰り返しますが、逐次情報を開示していただくと共に、住民説明会の開催を強く要請いたします。

以下、その他の疑問点や知りたい情報を列記します。

・瓦礫の受け入れは野田村だけなのか、他の市町村(特に岩手県南部)も含まれるのか。
・瓦礫の総量はどの程度を予定しているのか。
・現時点で、瓦礫の放射性物質の濃度は測定しているのか。
・高濃度のものもあるのか。その場合、分別して受け入れることは可能なのか。
・現時点での、空間線量率だけでなく、野田村および八戸市の土壌の放射性物質(セシウム)濃度を測定しているのか。
・瓦礫受け入れの影響を知るためには、市内各地、特に学校における線量率や土壌の基礎データが必要と考えられるが、八戸市は何もしてこなかったため、学校薬剤師会がボランティアで実施していると伺っています。これらの調査を行う予定はあるのか。
・処理施設での行程やフィルタの性能などの情報。
・民間の処理場で放射性廃棄物を処理することについての法律的な問題。

2011年9月16日

八戸市の「岩手震災ごみ受け入れ20ベクレル以下」問題 情報まとめ(9/12-9/15)

2011年09月16日 | 東日本大震災・原発事故
#この問題については地元の子どもの健康に関わる問題でもあり、市長に情報開示と住民説明会開催を要請するメールを出す予定です(いま書いているところ)。とりあえず報道された情報のリンク。問題になった最初のNHKニュースは既に消去されてますので、全文を最後にのせておきます。

-------------------------------------------------------------------------------------
#twetterにつぶやいたコメント
9/12
今晩はこの情報だけ→放射性物質あればごみ受入れず http://www.nhk.or.jp/aomori/lnews/6085549861.html この方針は支持するがこれでは八戸市が悪者のよう。三戸町は南三陸町のがれきを受け入れた。野田村は歴史・地理的にも関係が深く汚染度も低いので応援したいが、無用な対立は避けたい。「わずか」とは?
9/14
2日前にNHKが「ごくわずかでも」と報道したのは、今朝の記事で20Bq/kg以下と判明。少し調べて考えてからコメントしたいが取りあえず記事はこちら。→震災ごみ20ベクレル以下で/八戸/東奥日報 #toonippo http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2011/20110914084909.asp
9/14
八戸市の小林市長がこの件について昨日のブログにコメントしていました。 お門違い(まことの一日)http://blogs.yahoo.co.jp/makoto_mayor_2009/29441083.html
-------------------------------------------------------------------------------------

放射性物質あればごみ受入れず(09月12日 NHK青森)
http://www.nhk.or.jp/aomori/lnews/6085549861.html

お門違い(2011/9/13 まことの一日) 八戸市・小林市長
http://blogs.yahoo.co.jp/makoto_mayor_2009/29441083.html

八戸市、微量でも処理不可 本県がれき放射性物質(2011/09/14 岩手日報)
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110914_2

震災ごみ20ベクレル以下で/八戸(2011年9月14日 東奥日報)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2011/20110914084909.asp

八戸市の震災ごみ受け入れ条件に担当者ら当惑(2011年9月14日 東奥日報)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2011/20110914103447.asp

岩手震災ごみ八戸の工場協力姿勢(2011年9月15日 東奥日報)
http://www.toonippo.co.jp/news_too/nto2011/20110915110439.asp

不安拭える搬入基準を/災害ごみの広域処理(2011年9月15日 東奥日報社説)
http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/sha2011/sha20110915.html

南三陸のがれき一部 青森・三戸で処理 来週にも搬出開始(2011年8月6日 河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1062/20110806_16.htm
1日最大で150トンを見込む がれき総量は推計64万トン

-------------------------------------------------------------------------------------
NHK青森 9/12
 八戸市は、岩手県から要請のあった被災地のがれきなど災害ごみの受け入れについて、ごくわずかでも放射性物質が検出された場合は、処分について定めた国の指針を満たしていても受け入れを断る方針であることがわかりました。
 津波による被災地のがれきなど災害ごみの処理をめぐって環境省は、原発事故で放射性物質が付着したものも、焼却した後の灰に含まれる放射性セシウムが、1キログラムあたり8000ベクレル以下なら埋め立て処分できるという指針を示しています。
 岩手県は仮置き場の災害ゴミを測定した結果、基準を超えたケースがないため八戸市に対し、市内の民間の処分業者に委託して県境に近い野田村の災害ごみを焼却できないか、打診していました。
 これについて八戸市は、「放射性物質が付着した災害ゴミの受け入れは市民の理解が得られない」として、国の指針を満たしていても焼却前の測定でわずかでも放射性物質が検出された場合は受け入れを断る方針であることがわかりました。
岩手県では推定でおよそ435万トンに上る災害ごみの処理は、県内だけで対応できないとして来月以降に県外の施設を利用した処理を進める計画でしたが、八戸市の方針について、「県外での処理には受け入れ側の自治体や住民の理解が不可欠で、八戸市と引き続き協議したい」としています。
09月12日 18時11分
-------------------------------------------------------------------------------------

なぜ青森県の農産物に放射能安全宣言が出せないのか 関連tweetまとめ(7/28-9/15)

2011年09月16日 | 東日本大震災・原発事故
2011年09月15日(木)

RT @AomoriPref: [9/15 14:50]青森市、弘前市、平川市、黒石市、藤崎町、田舎館村、五所川原市、板柳町、鶴田町、つがる市、鰺ヶ沢町、深浦町、十和田市、田子町 以上の市町村の米の放射性物質の検査が終了。いずれも検出なしでした。 http://t.co/3nFcJlix #aomorist
posted at 16:41:44

岩手県 マツタケ 八幡平市 33、岩泉町 8 Bq/kg。シイタケ(施設栽培)各地不検出。 マツタケは滅多に食べないし、他の種類はこれからか。 http://t.co/LjtN75b4 via @pref_iwate
posted at 11:00:56

2011年09月14日(水)

タマゴダケ 下北 15、東青 9.5Bq/kg。その他は検出されず。これは例の20Bq/kg定量下限とは違う。サモダシ、かっくい(難)。菌根性?菌の根性ではなく、菌根・性(意味不明)。青森県南や岩手県北は。。 RT @AomoriPref http://t.co/8mWKEde
posted at 23:25:07

大潟村あきたこまち生産者協会は独自基準5Bq/kgを検出限界値1Bq/kgまで下げて「検出せず」堂々と安全宣言。http://t.co/5i1ewZw 安全なはずの青森県は500Bq/kgのまま(定量下限45Bq/kg)。県知事への提言も新聞投書も無視。どうしようもない阿呆だ。
posted at 01:15:52

2011年09月13日(火)

勝川俊雄先生によると「チェルノブイリの後、日本近海でもスズキやマダラのような捕食魚の汚染のピークは半年から1年ほど遅れた」とのこと。いま福島や茨城のヒラメは高濃度に。→茨城県のヒラメのセシウム濃度に関する考察 http://t.co/9n0Ll2b via @katukawa
posted at 10:50:14

その他は8月末からND(Cs 20+25=45Bq/kgが定量下限)。ドイツの基準は大人8、子ども4。→青森県・水産物の放射性物質 http://t.co/OEQY3Uw 八戸市・水産物 http://t.co/uVhkXtn 農産物 http://t.co/T6jIccw
posted at 10:37:51

青森市・原乳 0.15Bq/L、六ケ所村・ヒラメ 25Bq/kg、東通村・アイナメ 3.1Bq/kg。ヒラメの25Bq/kgは「ごく微量」ではない。 →原乳やヒラメから放射性セシウム検出/県内8月、ごく微量/東奥日報 #toonippo http://t.co/gVgoCP8
posted at 10:26:06

2011年09月10日(土)

国も県もマスコミも農家も国民の声を無視し続けた。98BqをNDと一緒くたにして安全宣言。一線を越えた。福島の農家には同情できない。青森の農産物なら影響は最小限かと思うが(定量下限値45)。 福島産早場米すべて出荷可能 一般米予備調査も基準以下http://t.co/DOYQWUP
posted at 11:07:41

2011年09月02日(金)

青森のリンゴは今後も大丈夫なはずだが、これも定量下限はCs134が25Bq/kg、Cs137が20Bq/kgなのだとしたら安全宣言出せないじゃないか。何とかならないのか。 →県産リンゴ放射性物質検査始まる/東奥日報 #toonippo http://t.co/3njuqQU
posted at 09:10:28

2011年08月26日(金)

ありゃ「登別沖のマダラ43ベクレル、スケソウダラ1・26ベクレル」 。八戸、宮古、気仙沼、石巻、水揚げのニュースは良いが全然検査してない。品目も頻度も少なすぎる。 http://t.co/hTj8OdK
posted at 14:47:00

2011年08月22日(月)

全頭検査済み「いわて和牛」の個体識別情報を検索をしてみたが… やはりセシウム濃度まではわからない #goo_kuba_clinic http://t.co/8OUbSVd
posted at 16:43:02

2011年08月21日(日)

白米の基準値(放射性セシウム)は子どもで5Bq/kgに引き下げを 500未満の米を混ぜればコメ危機に! #goo_kuba_clinic http://t.co/XuZmHFS
posted at 01:17:05

2011年08月19日(金)

鉾田市 玄米 52Ba/kg(セシウム134+137) 白米に60%として30Bq/kg(20%と書いてるブログもあるが?) 子どもにはダメ(このレベルは市場に出てくるんだな…) 玄米で一桁の範囲を要チェック →茨城 玄米から微量放射性物質 http://t.co/Yp2YvLA
posted at 14:20:26

2011年08月18日(木)

八戸市議会議員への要請 給食の放射能汚染対策:米・魚・牛乳・きのこ 脱核燃マネー依存の青森を #goo_kuba_clinic http://t.co/RelHtEa
posted at 17:39:04

2011年08月14日(日)

小出先生は放射能に汚染された食物を飢餓国への援助に回すべきでないと強調されている。汚染に責任のある大人が食べるべきと。 CNN.co.jp:FAOの栄養不良統計、最悪は国民69%該当の旧ザイール http://t.co/3QdXPAi via @cnn_co_jp
posted at 23:16:43

産直のお店。乾燥椎茸もいっぱい。おそらく全て測定してない。春には山菜も。。このあたり(岩手県北~青森県南)なら大丈夫かもしれないが、岩手県南も、宮城県も同じなのだろうか。。これからはキノコの季節。自分で採って食べたり販売したりする。ここを厳格にチェックするのは不可能だろう。
posted at 01:53:08

2011年08月12日(金)

八戸漁港 セシウム 8/2ゴマサバ 17Bq/kg 8/8マサバ ND 8/8ゴマサバ 14(三沢沖) 8/8スルメイカ(肝臓・筋肉)ND 7月からサバで継続して検出されている(増加はしてないが) RT @HachinoheCity http://koho8.com/qJ1Xx0
posted at 11:06:00

2011年08月09日(火)

「全頭検査はかえって風評被害になる」と考えた青森県。信じ難いが、ほとんど想像がつく。判断ミスで決定的に出遅れ、機器も調達できず、「県によって風評被害が拡大」 →県畜連会長が一喝 県が県産牛全頭検査へ/東奥日報 #toonippo http://t.co/V8ffs8G
posted at 10:03:56

2011年08月07日(日)

現実問題として政府には期待できないので、各地の自主検査基準で出荷されたコメを買う。多分青森米は大丈夫とは思いますが、全然予測できない。給食は市議に申し入れてみたい。。 RT @arkwave: 子供の米だけ分けるのは難しいです・・・ドイツの基準に準じたいなぁ
posted at 02:07:36

2011年08月06日(土)

実証済みの数値というのは無いでしょう。ウクライナはパン20、ドイツは大人8、子ども4(飲食物)。福島中通の麦は20-70 http://bit.ly/oesAUu コメが500以下でOKだといくらでもブレンドされてしまう。 RT @arkwave:4Bq/kgが実証済みの数値なら
posted at 14:50:11

白米のセシウムは核実験時の19​63年で4Bq/kg。10は超えて​ない。http://t.co/53KiEDV 大潟村生産者協会は基準値5​と発表。http://t.co/wpmLumO 子どもに基準値50​0以下で検出値不明の米なんて絶対ダメ。基準値5​Bqへの引き下げを。
posted at 13:26:19

2011年08月04日(木)

七戸町が頑張っている。生き残りに必死なのだろうが。町内の小学校・保育園の表土の放射性物質検査も。七戸町GJ → 七戸町が稲わらの放射性物質検査 #toonippo http://t.co/BLJBDRy 金子ファームが農水大臣賞受賞 http://t.co/fugwXJn
posted at 14:22:35

2011年08月03日(水)

青森県産牛は「今月中旬から抽出検査/11月めどに全頭」http://t.co/MdiYGxi 県畜連は東京出荷分(月20-30頭:県産牛の1割)のみ「自主検査」 #toonippo http://t.co/KcqvvMJ  →わかりにくいが、まだ3ヶ月近く不透明な状況が続く
posted at 11:49:05

2011年08月01日(月) 13 tweets

岩手県は生活圏内だしスーパーでも岩手牛はメインで売られていたが(滅多に買わないけど)。気分は晴れない。青森の肉牛は今のところ大丈夫とのことだが、やっと全頭検査を表明(遅いって)。 NHKニュース 岩手県産肉牛も出荷停止発表 http://t.co/pUjBufM
posted at 18:00:57

2011年07月29日(金)

(一つ抜けてたので再送)7/2マサバ23、マイワシ18(金華沖)、7/19マイワシ7(八戸沖)、7/24ゴマサバ20、スルメイカ不検出(セシウム134+137:Bq/kg) RT @HachinoheCity: 八戸漁港水産物の放射性物質検査結果(7月28日)
posted at 16:18:56

2011年07月28日(木)

7/2マサバ23、マイワシ18(金華沖)、7/19マイワシ7(八戸沖)いずれもセシウム134+137(Bq/kg)これから増えるか減るか? RT @HachinoheCity: 八戸漁港で水揚げされた水産物の放射性物質検査結果(7月28日)http://t.co/ttumPoV
posted at 15:23:50

セシウム沈着量と線量率マップをチェルノブイリと比較 除染・避難・移住の区分けを明確にすべき

2011年09月02日 | 東日本大震災・原発事故
前のentry「放射性セシウムの土壌濃度マップ・航空機モニタリング・農地土壌の放射性物質濃度など<情報整理>」の続きです。ダラダラと書きましたが、実は4月の今中先生の飯舘村調査発表や早川先生のブログ(チェルノブイリとの比較)などでおおよそわかっていたことが確かめられたに過ぎません。今さら私が強調する意味もなさそうですが。

チェルノブイリの地図は今中先生のページのもので、ここでは15Ciを超える第1・第2ゾーンは同じ紫色になっています。



チェルノブイリの避難基準(セシウム137)
40 Ci/km2(1480 kBq/m2)以上 避難(特別規制)対象地域(第1ゾーン)
15-40 Ci/km2(555-1480 kBq/m2) 移住義務対象地域(第2ゾーン)
5-15 Ci/km2(185-555 kBq/m2) 移住権利対象地域(第3ゾーン)
1-5 Ci/km2(37-185 kBq/m2) 放射能管理強化地域(第4ゾーン)

航空機モニタリングの測定結果から、空間線量率とセシウム134+137沈着量のマップを縮小して画像ファイルにしました。詳しくは元のPDFファイルをご覧下さい。(一つ前のentryにリンク掲載)





セシウム沈着量マップの方でチェルノブイリの基準と比較してみます。区切りが違うのでまたがっていて、若干わかりにくい。

赤  3000<   第1ゾーン(1480-)
黄色 1000-3000 第2(555-1480)か第1(1480-)
緑  600-1000 第2(555-1480)
水色 300-600  第3(185-555)か第2(555-1480)
青  100-300  第4(37-185)か第3(185-555)
紺色 60-100  第4(37-185)
鶯色 30-60   管理地域外(-37)か第4(37-185)
茶色 10-30   管理地域外(-37)
土色 ≦10    管理地域外(-37)
(単位:kBq/m2)

目安としては、

☆ セシウムのマップで鶯色以上の広い範囲が放射能管理強化地域(第4ゾーン)。(線量率のマップでは水色の 0.2-0.5μSv/h に相当)

☆ セシウムのマップで水色の一部が移住義務対象地域(第2ゾーン)。(線量率のマップでは緑色の 1.0-1.9μSv/h に相当)

☆ その間の、水色と青の一部は移住権利対象地域(第3ゾーン)に相当するが、今も多数の住民が暮らしている。(線量率のマップでは緑か薄緑 0.5-1.0μSv/h に相当)

「0.3以上は除染、0.6以上は自主避難、1.0以上は避難(移住権利)」と前に書きましたが、それより一段厳しく「0.6以上は移住権利、1.0以上は移住義務地域」と考えた方が良いのかもしれません。チェルノブイリでもフクシマでのこの地域に多数の人が住んでいるわけです。

(0.3、0.6はそれぞれ0.25、0.5としても良いのですが、厳しくなるので少し緩めの数字にしてみました。ちなみに、国の法律で未成年者が働いてはいけない「放射線管理区域」が大体0.6に相当します。そこで小さな子どもが暮らしているのが現実。)

ちなみに、特定避難勧奨地点の基準は7月の時点で3.2μSv/hという高さで、野田新首相が基準を引き下げて対象を大幅に拡大することは期待できません。



首都圏の土壌調査結果はチェルノブイリの基準で色分けされていますが、自宅内外、通学路などの線量率の調査・把握だけでなく、土壌調査も更に細かく実施する必要があるのでしょう。

セシウムのマップで赤・黄・緑の地域は、人が住める程度まで除染することは非常に困難(おそらく不可能)で、莫大な費用がかかるものと予想されます。厳しい現実ですが、住民の方への移住先や就職などの本格的な検討を進めるべきでしょう。

それもどうやって実現するのか全く見当もつきません。例えば青森県内にも限界集落・放棄された農地がかなりあるはずですから、そういう所への集団移住を斡旋するとか。。条件の厳しい土地だと思われるし、新聞投書には原子力施設の林立する青森県への避難はお勧めできないと書きましたが。。

放射性セシウムの土壌濃度マップ・航空機モニタリング・農地土壌の放射性物質濃度など <情報整理>

2011年09月02日 | 東日本大震災・原発事故
首相が交代した8月30日になってバタバタと重要な測定結果が公開されています。文部科学省のページは何度探してもわかりにくく、できるだけ見つからないような場所に置いてあるので、情報を整理してみました。マップの見方は次のentryで。

◎ 文部科学省及び茨城県による航空機モニタリングの測定結果の修正について(8月31日)
 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/monitoring_around_FukushimaNPP_MEXT_DOE_airborne_monitoring/
 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1940/2011/08/1940_0831.pdf

◎ 文部科学省による放射線量等分布マップ(放射性セシウムの土壌濃度マップ)の作成について(8月30日)
 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/
 http://radioactivity.mext.go.jp/ja/distribution_map_around_FukushimaNPP/0002/11555_0830.pdf

◎ 農地土壌の放射性物質濃度分布図の作成について(8月30日農林水産省)
 http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/110830.htm
 農地土壌の放射性物質濃度分布図(対象区域全体)
 http://www.s.affrc.go.jp/docs/press/pdf/110830-06.pdf
 水田の場合は地表面から約15cm、畑の場合は最大約30cm

◎ 首都圏土壌調査の結果(8月8日放射能防御プロジェクト)
 http://www.radiationdefense.jp/investigation/metropolitan

◎ 学校施設などにおける放射線量調査の結果(盛岡市)
 ※除染後の測定値を追記(9月1日)
 http://www.city.morioka.iwate.jp/05kankyo/kankyo/topics/housyanou5.html

◎ 早川マップ http://kipuka.blog70.fc2.com/ の元となった、
◎ 福島放射線量Google maps(@nnistar)
 http://www.nnistar.com/gmap/fukushima.html

◎ 青森県放射線量測定地図
 http://bit.ly/otLC9u

◎ フクシマとチェルノブイリの比較 2011/04/15(早川由紀夫の火山ブログ)
 http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-375.html

◎ チェルノブイリ原発事故 今中哲二
 http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/Henc.html

◎ 換算

 1 Ci = 3.7×10^10 Bq = 37 GBq = 370億 Bq
 1-5 Ci/km2
  = 3.7-18.5×10^10 Bq/km2
  = 3.7-18.5×10^4 Bq/m2
 37-185 kBq/m2

◎ チェルノブイリの避難基準(セシウム137)
 40 Ci/km2(1480 kBq/m2)以上 避難(特別規制)対象地域(第1ゾーン)
 15-40 Ci/km2(555-1480 kBq/m2) 移住義務対象地域(第2ゾーン)
 5-15 Ci/km2(185-555 kBq/m2) 移住権利対象地域(第3ゾーン)
 1-5 Ci/km2(37-185 kBq/m2) 放射能管理強化地域(第4ゾーン)

◎ ベクレルの変換 Bq/kg→Bq/m2 の解説(ジオドクターKKの日記)
 http://blog.livedoor.jp/geodoctorkk/archives/5728747.html
 深さ15cm 掘って採取した場合
  Bq/kg→Bq/m2換算 150倍掛ける
 深さ5cmなら 50倍
 深さ10cmなら 100倍

「内部被曝によるミトコンドリア機能障害」この仮説が不定の症状を説明できるか 『内部被曝に迫る』より

2011年09月02日 | 東日本大震災・原発事故
一つ前のentry「急性白血病や鼻血・下痢と福島原発事故」で低線量内部被曝による未知の症状が起きている可能性について言及しましたが、先月放送されたNHKの特集番組でウクライナの医師による「ミトコンドリア機能障害」という説が紹介されていました。下記のブログに動画と全文が掲載されています。(放送当時見ていたのですがコメントしそびれてました。)

詳しく調べていないので推測で書きますが、この説はおそらく現時点で評価は定まっていないものと思われます。
ほとんど直感に近いのですが、様々な症状を説明できる可能性が高いのではと感じました。(←鵜呑みにしないように。保証はできません。)
放射線障害というと、核のDNAの損傷をまず思い浮かべるのですが、細胞の中に多数存在するミトコンドリアが損傷を受ければ、原爆ぶらぶら病や湾岸戦争症候群、チェルノブイリ後に周辺地域で起こっている不定の症状が起きてもおかしくない。
この医師も言っているように、全てを説明できるわけではないかと思うが。
日本でも何らかの研究結果が出ているのだろうか。難しくて理解できない可能性が高いけど、ちょっと調べてみたい。

ただし、ウクライナのこの地域では、番組に描かれているように食物の内部被曝に無頓着で、自分で採ったキノコなどを子どもに食べさせている。ベラルーシで一々学校に食材を持ち込んで測定したいたのとはちょっと違う。
「福島の子どもたちは国の基準に従ってチェックした“安全な”食べ物を食べているからチェルノブイリとは違う」という言説は、ここまで極端だと、一理あると言えなくもない。

この問題の解明は、(大変残念な事態ではありますが)今の日本でしかできないことであり、本来ならできるだけ早期にその端緒についていなければならないはず。弘前大学と浪江町が協定を締結して長期にわたる健康管理と研究に取り組むという報道もありました。福島県立医大もそうですが、研究と言うとどうしてもモルモットにされているような嫌な感じがします。しかし、子どもや妊婦さんにはできるだけ避難してもらうにしても、どのレベルにせよ「境界領域」で暮らす人が出てきてしまうのは避けようがありません。

いまの大学で国の政策に批判的な研究結果が出てくることは期待しにくいのかもしれませんが。

----------------------------------------------------------------------
内部被曝に迫る~チェルノブイリからの報告(内容全部書き出し)
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-665.html

ウクライナでも内部捕縛の健康被害に対して
最近新たな仮説を発表した研究者がいます
(放射線医学研究センター ウクライナ)
ナロジチなどでの子どもの診察を20年以上続けてきた
放射線医学研究センターの教授エブゲーニヤ・ステパーノバさん(放射線医学研究センター教授)です
ナロジチに住む子ども達の血液を調べ
非汚染地域に住む子ども達に比べ、細胞内のミトコンドリアに
より多くの異変が起きていることを明らかにしました
論文「長期低線量被ばくによる児童のミトコンドリア機能障害」

エブゲーニヤ・ステパーノバ:見て下さい
これは破壊されたミトコンドリアです

ミトコンドリアは体内で細胞の働きを助けるエネルギーを供給する器官です
ミトコンドリアに異常が起きると細胞死につながったりエネルギー代謝に支障がでたりすることがこれまでの研究で分かっています
ステパーノバさんはナロジチの子どものミトコンドリア変異は
内部被ばくの放射線の影響であり、慢性疲労、無力症など
さまざまな疾病を引き起こしているのではないかと推定しています

エブゲーニヤ・ステパーノバ:子ども達の体に起きている異変が、
全部このメカニズムによるものだとは言い切れません
これは、いくつものメカニズムの一つにすぎないのですから
日本の子ども達には、我が国のようなことが起こらないよう願っています
心からそう思っています

----------------------------------------------------------------------
木村真三先生の研究発表PDFファイルが公開されています。

チェルノブイリ放射能汚染 ー取り残された街ー
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/kimura2011-3-18.pdf

----------------------------------------------------------------------
第63回「内部被曝① 放射線のミトコンドリア攻撃が原因か 慢性疲労症候群」
http://www.vec.or.jp/2011/08/26/column_063/

----------------------------------------------------------------------
内部被曝患者6000人を診た医師が警告する。No2
http://blogs.yahoo.co.jp/jun777self/4426759.html
 一方、これまで解明されなかった原爆ぶらぶら病については、肥田氏は「最近の研究では、放射線が細胞内のミトコンドリアに影響を与えている、と考えられています」と言う。
 「ミトコンドリアは細胞の活動に必要なエネルギーを生み出しています。筋肉を支えるたんぱく質もそこにある。そこへ放射線が影響を及ぼすことで、正しく作用しない筋肉が部分的にできる。その筋肉がすぐ疲労してしまい、強いだるさを感じるようになる、と言う説が出てきました」

----------------------------------------------------------------------
弘前大が浪江町で放射線調査へ
http://www.nhk.or.jp/aomori/lnews/6085240661.html

弘前大学は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で町の一部が警戒区域に入っている福島県浪江町で、土壌や植物などの環境調査と近隣に避難している町民の健康調査を長期間にわたって行うことになりました。
浪江町は町の大部分が福島第一原発から30キロメートルの圏内にあり、一部は20キロ圏内の警戒区域に入っています。
弘前大学は、ことし4月から、放射線測定や医療に関する専門チームを浪江町に派遣して定期的に土壌や植物の放射線調査や近隣の自治体に避難している町民の健康調査を行ってきました。
弘前大学と浪江町では、町内の放射線の調査と近隣の自治体に避難している町民の健康調査を長期間にわたり続ける必要があるとして協定を締結して調査を行うことになりました。
弘前大学では医学部や「被ばく医療総合研究所」など学内の関係部局と連携して、年度内には、町内での調査の範囲を広げて土壌や植物などの放射線調査を詳しく行うことにしています。
(09月01日 19時14分)

急性白血病や鼻血・下痢と福島原発事故 脱原発を望む人は考えて発言するようにしないと 一小児科医の私見

2011年09月01日 | 東日本大震災・原発事故
原発作業員が急性白血病で死亡したニュースで、twitterで何の根拠もなく東電や医師を批判している人たちは、もっと冷静に考えて議論するようにしないと、疑似科学批判派(←私もEM菌やレメディなどについて批判してきましたが<この人たち>とは一緒にしないでほしい)につけ入られるだけです。

「あの人たちは科学的に考えて判断することができない人たちだから」と十把一絡げにされ、脱原発=科学リテラシーのない人たちによる“感情的な集団ヒステリー”的な扱いを受けて、全体の脚を引っ張ることになりかねません。
(それにしても香山リカ説はひどすぎるが…)

白血病と鼻血の話は同じストーリーではないので、後の方で個別に書きます。
(以下、前置きが長くなりますので飛ばしても構いません)

まず誤解のないように立場を明らかにしておきますが、
私は医師の中でも初期の段階から福島原発事故による健康被害の危険性を訴えてきた、かなりの少数派に属すると考えています。
もう10年近く原発・核燃サイクル反対運動に(形だけですが)関わってきたし、最初に「原発ジプシー」を読んでからだと30年近く経つのかも。

今度こそ原発を終わりにしなくてはいけないと意を決していますが、最近の流れには危機感を抱いています。チェルノブイリ後に運動がジリ貧になった二の舞になりかねない(当時の事情は関わっていないので知りませんが)。

これも初期にこのブログに書いたはずですが、
もし放射線被曝との関連が疑われる病気になったり死亡したりしても、被曝が原因かどうかは全く区別できず、個別のケースについて因果関係が認定されることは期待できません。

(そもそも病気の発生が一つの原因によると因果関係が断定できることはなく、グレイの中でシロに近いかクロに近いか、限りなくクロに近いか、そういった議論しかできないのが前提で、個別のケースで一つの原因に特定することは不可能。)

それは、過去の原爆病、水俣病、タバコ病等の裁判で繰り返されてきて、ある程度特有の症状や疫学的な蓋然性が高い場合でも、裁判に訴えても相当数の人たちが救済されなかったという何十年にも渡る歴史が証明しています。
(原発問題でも司法が全く機能しなかったこともやっと明らかにされましたが)
まして、今回のような状況では最初から救済されることはないと考えて行動すべき。

たとえ因果関係が認められたとしても、その頃には今の責任者はみんな死んでるし、病気になれば元には戻せません。(甲状腺がんは予後が悪くないから罹っても大丈夫と言っている○○もいるようですが医師免許を取り上げるべき。)

ですから、国による避難の指示や補助などは期待せずに(当然なされるべきなのですが残念ながら今後も実現の可能性は非常に小さい)、可能な限り避難して自分と家族の身を守るしかない。
特に小さい子や妊婦、放射線量の比較的高い地域ほど。 ※
と訴えてきたつもりです。

※私見ですが目安として0.3μSv/hで広範囲に除染、0.6では除染よりも前に子どもは自主避難、1.0以上では子どもはすぐ避難、避難権利区域に指定して費用補償。個別には線引きできないので各自判断して下さい。

避難によるストレスを強調する人がいますが、放射能の害そのものと、放射能の心配や親としての悔恨というストレスから解放されることを十分に考えるべきです。
そもそも、避難のストレスは事故で生じたのだから政府や東電が責任を持つべき問題なのに、行政の側のアドバイザーが、避難は難しいから放射能と一緒に暮らせなどと言うことは言語道断です。

私自身も(別のentryに書きましたが)放射線量の少し高い地域に子どもや家族が暮らしていて一時避難させた経緯もあり、子どもへの被曝の影響を心配される親御さんの気持ちはある程度わかるつもりです。

福島県内の小児科医のブログが各所で引用されています。書かれている気持ちは理解できなくもないのですが、子どもを守るべき立場にあるはずの小児科医として、その医師が最終的にとっている態度にはとても賛同できません。
(小児科医のコミュニティではその医師の意見が認められて議論は終了し、福島の危険性を外から言ってはいけない雰囲気になっているようですが。)

本題に戻ります。

<鼻血・下痢等の症状について>

これは、今まで習ってきた医学の常識や、日常的に子どもを診察している経験から普通に判断すれば、因果関係は否定的ということになってしまいます。
(多くの専門家はここで議論を打ち切っている)

もし「低線量被曝による鼻血」という仮説を立証しようとすると膨大な症例が必要になりますが、そもそも正常コントロールを調べようがないし、今後も立証不可能だろうと思います。
メカニズムは想像できないけど、疫学的に「否定する」こともできそうにない。
つまり、わからない。

遠隔地に避難したら鼻血が出なくなったというケースについても、
単に時間的関係で後になったら自然に良くなった可能性や、
よく言われるような「ストレスによるもの」だった可能性、
頻度的に特に問題視しなくてもいい範囲内だった可能性なども否定できません。
もちろん、放射能の影響も可能性の一つには残しておく。
その中で、どれが正しかったかも判断できないでしょう。

まずは親身になって受け止めてくれる小児科のかかりつけ医に相談することは良いことだと思います。
(時間的に対応できない可能性もありますが)
少なくとも、全身状態や所見などを診察してチェックしてもらえます。
ほとんどの場合は一般的な検査では何もわからないだろうと想像します。
カルテの記録が後々何かの役に立つとも思えませんが。

ただし、臨床医学には可能性を100%否定したり肯定したりすることは出来ません。

医学そのものが、よくわからない症状、所見、経過などを観察することから発展してきたものであり、未知の事態に対して過去の知見だけで否定することは科学的態度とは言えないはずです。

特に、これまで広島・長崎、核実験場、チェルノブイリ、イラクやボスニアなどで観察されてきた説明のつかない症状、原爆ぶらぶら病や湾岸戦争症候群、チェルノブイリでの「甲状腺がん以外の」様々な病気や症状、子どもの奇形の多発などが相当明らかな形で報告されてきたにも関わらず、各国政府だけでなく医学界もその存在すら認めてこなかったという事実は重大視しないといけません。

「チェルノブイリのかけはし」のように、多数の子どもが避難後に症状が軽快しているのであれば、その事実に向き合う必要はあると思うし、それがフクシマにどの程度あてはまるのかはわかりませんが、多数のお母さん方の心配を笑い飛ばして大丈夫という気にはとてもなれません。

この文章での暫定的な結論は、従来の医学の常識では考えにくいが、未知の症状が生じている可能性は否定できない。その判断は長期的にもできそうにない。現在の原発からの放出状況も安心できない。よって、症状の有無に関わらず避難を検討した方が良い。 

30年後に心配が杞憂であったとわかればいいが、その結果には誰も責任を持てない。
だから予防原則で考えるしかない。

何も手助けできませんが、誰かの目に留まって判断の一助にでもなれば。

<急性白血病について>

発表になった死亡した作業員については限られた情報しかありませんので、以下の記述には推測が多分に含まれています。

----------------------------------------------------
男性 年齢不明
8月上旬に約1週間、休憩所でドアの開閉や放射線管理に携わった
体調を崩して医師の診察を受け急性白血病と診断され入院先で死亡
医者は発電所の作業と因果関係はないと診断
東電は16日に元請け企業から報告を受けた
発表は8月30日
事前の健康診断で白血球数は異常なし
過去に原発の作業歴はない
被曝放射線量は累計で0.5ミリシーベルト、内部被曝はゼロ
----------------------------------------------------

一般論としては、
白血病と言ってもタイプによって経過や予後が大きく異なる。
原因は放射線被曝だけではない。
何らかの原因があったとしても、そこから発病して、さらに症状が出るまでにはある程度の年月がかかるのが普通で、数週間で発症して死亡するような病気ではない。
多くの急性白血病は治療の進歩によって寛解・治癒が見込める。悪性新生物(固形癌と血液の悪性腫瘍)の中では治る可能性の高いものである。
もちろん診断時に進行して合併症を起こしていたりして、治療に反応せず死亡するような場合もないわけではないが、この場合どうだったか判断の材料がない。

などを考え合わせると、担当医の判断はごく常識的な範囲内と想像します。
通常は「因果関係がない」という表現ではなく「因果関係は否定的」というのが普通ですが、この経過だと「因果関係がない」と断定して間違いなさそうです。

作業前の血液検査で異常がなかったことが、その時点で白血病が発症していなかったことを証明するものでもありません。
(1週間という時間からすると発症していたと考えるのが普通)
白血球数だけの検査で顕微鏡で見る血液像まで検査していない可能性の方が高い。

以上を合わせて判断すると、この作業員のケースについて、これ以上議論する意味はないし、追及しても何も出てきません。
もし、過去に原発の作業歴の有無や今回の被曝管理などに問題があるのであれば、労災認定や裁判などはあり得ると思いますが、それはご遺族の側の話。

作業員が亡くなったという事実は重大だとしても、針小棒大に騒ぎ立てても誰にとってもメリットはない。

こう書いたのは、これまでに多くの作業員が原発作業で受けた被曝によって、今後深刻な健康生涯が生ずる可能性を否定する意味ではありません。
それは多かれ少なかれ現実のものとなることは間違いないでしょう。

そのような感覚を持って戦場に臨まないと、相手を利するばかりです。