踊る小児科医のblog

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超少子化と最短命県の中で進む原発復権と核燃サイクル(2023年2月)

2023年02月01日 | こども・小児科
 少子化の加速が止まらない。22年の出生数は77万人と推測されており、19年に90万人を切ってから3年で10万人も減少した。母親世代は今後も減り続け、未婚率は上昇し、合計特殊出生率も再び減少に転じているのだから、岸田政権の「異次元の少子化対策・予算倍増」も遅きに失したと言わざるを得ない。

 少子化対策の安定財源の議論が先送りにされた中で、ウクライナ戦争とエネルギー危機に乗じて防衛費倍増と増税、原発復権への大転換が国民的議論を経ずに決められた。

 更には、現今の食品価格の高騰のみならず、食料自給率の低い日本では、各国で食料ナショナリズムによる囲い込みが進めば、子どもが飢餓に直面する可能性も高くなってくる。

 『未来の年表』シリーズ著者の河合雅司氏によると、少子化が進めば送配電網を維持する技術者の不足が深刻になり、大規模停電から復旧できなくなる事態も想定されている。橋や水道などの社会インフラの維持も難しくなり、国民負担も増していくはずだ。

 原子力業界では次世代原子炉の開発決定に沸き立っているのだろうが、新たな原発の開発費だけでなく建設費用は膨大なものとなる。民間で採算がとれるはずもなく、電気代も下がらない。将来世代の負担は増すばかりだ。何よりも、核のゴミの問題は解決しないどころか、原発が延命すればするほど増大する。

 もし北海道で最終処分場を引き受けたとしても、全量再処理は第二再処理工場が出来なければ不可能であり、絵に描いた餅に過ぎない。いま直接処分への転換を議論し始めなければ、何十年も無駄に費やすことになる。

 福島の廃炉作業も早晩「どこまでやるか、どこで諦めるか」という議論になるはずだが、その時には責任世代は誰も残っていない。通常の原発の廃炉であれ被曝を伴う作業で、再処理施設の廃止は技術的に困難を伴う。それらは全て、超少子化の中で生まれてくる赤ちゃんが解決することになっている。そんな国で子どもを産んで育てたいと誰が思うだろう。

(青森県保険医新聞2023年2月1日号掲載)

インフルエンザ予防接種:いったん受付終了(予約分は2回目まで確保)、12月以降の追加入荷はあるはずですが見通せません

2020年11月21日 | こども・小児科
表題が全てですが、これまで予約していただいた方の分は2回目まで確保してあります。それ以降は、おそらく追加が若干あるはずだと思いますが、どの程度かはわかりません。お約束できない形での入荷待ち予約は「かかりつけの患者さんに限り」受け付けますが、接種できるかどうかは保証できません。。

インフルエンザの予防接種は9月末から開始しており、例年通りの予約・入荷・接種の予定です

2020年10月01日 | こども・小児科
小児のインフルエンザ予防接種は任意接種ですので、今年度も例年通り入荷次第、予約された患者さんから順に接種を開始しております。
前年度と同じ本数を注文して既に初回分が入荷しており、今後も順次入荷する予定です。
昨年度と同じようにご予約ください。
ネット上では接種料金は公表しておりません。

(追記:予約は原則として当院にかかりつけの患者さんに限ります)

なお、「10月26日以降でないと65歳未満の人は接種できない」との誤解を招きかねない報道がなされていますが、記事にあるように「示した日程は目安なので、その前後であっても接種を妨げるものではない」と厚労省が認めています。


小児の接種については、開始時期を遅らせる意味は全くなく、日本小児科医会でも以下のような声明を公表しております。

●今期インフルエンザワクチン優先接種に関する日本小児科医会の解釈(2020/09/17)
1) 日本感染症学会は医療関係者、ハイリスク者、乳幼児から小学低学年までのインフルエンザワクチンの接種を強く推奨していることから、小児への接種時期を一律に遅らせることは避けるべきと考える。
2) 今季はインフルエンザワクチン供給状況が例年より早期に完了する予定であることから高齢者だけを早期に完了する接種計画を立てるのではなく、他の年齢層で接種が必要な方への接種も考慮すべきである。
3)乳幼児はインフルエンザ脳症のリスクがあることからハイリスク群であり、優先順位は高い。
4)すでに10 月からの接種予約が完了している医療機関もあり、予約の変更などにより混乱が起こる可能性がある。
5)乳幼児・学童への接種を遅らせることによる影響の有無についての検討が十分でなく、小児への不利益が生ずるなどの不安が残る。

平成30年度日医母子保健講習会 自見氏講演 シンポ「成育医療の現代的課題と対策」

2019年05月10日 | こども・小児科
平成30年度母子保健講習会
2019年2月17日(日) 東京都・日本医師会大講堂

講演
「子ども政策の今日的課題
     成育基本法の成立と今後について」
          参議院議員 自見はなこ
 全ての妊婦・子どもに妊娠初期から成人期までの切れ目のない医療・教育・福祉を提供する事を目的とした成育基本法は、対決法案のあおりで廃案となるところを、超党派議連の合意と自見氏の決意により特例で12月8日に成立した。
 同法の施行により、国は成育医療等協議会を開催して基本方針を6年ごとに策定し、政府・都道府県は評価を年1回公表することが義務づけられる。議会で毎年質問していただきたい。
 虐待の温床となる懲戒権が民法改正後も残ってしまった。千葉の事件などを踏まえて児童虐待防止法に体罰の禁止を盛り込む方向で議論中である。今後、予防接種法、感染症法が改正となるが、日本版ACIPを目標に近代化をはかりたい。取り組んできた液体ミルクが承認となったが、母乳哺育の重要性を損なうものではない。

シンポジウム「成育医療の現代的課題と対策」

1) 産科領域における諸課題
     日本産婦人科医会副会長 石渡 勇
 全ての医療機関で、全ての妊産婦を対象にメンタルヘルスのスクリーニングを行い、必要な支援に繋げるための多職種連携を目的に、メンタルヘルスケアマニュアルを策定し、教育・研修システムを構築して、2017年以来実施してきた。思春期の性の問題や性暴力への支援ネットワーク、行政によるワンストップ支援センターの設置なども紹介された。HPVワクチン問題では世界が日本の動向を注目しており、コクランレビューでも高度前がん病変減少効果は疑いの余地がないとされた。支援してきたHPVワクチン訴訟は、講演後、敗訴が言い渡され、控訴の運びとなった。メディアはノーベル賞を受賞した本庶佑氏の「科学的根拠のない主張ばかりを報じてきた」という発言を報道しなかった。

2) 小児科領域における諸課題
       日本小児科医会会長 神川 晃
 虐待防止対策強化プランでは子ども家庭総合支援拠点を1700の市町村に増設し、児童福祉司も増員した。子どもの事故死は10万人あたり1.9人(2016年)まで減少した。医療的ケア児は約1.8万人で、10年で2倍近くに増加している。ひとり親世帯の相対的貧困率は5割を超え、OECD加盟国中最も高い。貧困の世代間連鎖を切るために、家庭力の向上、就学前の学習支援、給付型奨学金などの支援が必要である。フィンランドのネウボラでは全ての親子を切れ目なく支えるシステムとなっており、新生児虐待死はゼロである。日本でも子育て支援包括支援センターを2020年度末までに全国展開を目指すことになっているが、出生前に比べて出生後のポピュレーション・アプローチが少なく、1996年の厚生省局長通知[1歳前に9回、1〜3歳は年2回の健診など]は現実とは程遠い。3歳未満児の約7割は家庭で子育てしており、地域子育て支援拠点(マイ保育園)は、ネウボラと同程度なら大田区の規模で100ヶ所必要になる。

3) 成育過程におけるメンタルヘルス
         〜精神科の役割について〜
  東京医科歯科大学医学部精神科 竹内 崇
 周産期における精神疾患として、精神疾患合併妊娠と産褥期の精神障害があるが、両科のある総合病院では患者の急増に対応できない。産婦人科医会のマニュアルを基に、精神科医によるハイリスク・アプローチから、助産師・保健師および全てのスタッフが行うポピュレーション・アプローチまで段階的な対応が求められる。妊娠中はWhooleyの2項目質問票によるスクリーンングが有用である。演者の大学において、精神科・産科・新生児科・MSWによる院内連携から、地域における自殺予防、適応支援、虐待予防の支援へ移行させる取り組みが紹介された。

4)母子保健行政の最近の動向
 厚生労働省子ども家庭局母子保健課 平子哲夫
 上記の講演で紹介された諸政策に加えて、健康寿命延伸に向けたデータヘルス事業、未就学児の睡眠指針、乳幼児健診マニュアル、虐待防止ネットワーク拠点病院への虐待専門コーディネータの配置などが紹介された。

ACIP : Advisory Committee on Immunization Practices(ワクチン接種に関する諮問委員会)

子どもの熱中症は予防できる(7/15デーリー東北記事より)

2017年07月15日 | こども・小児科
本日(7/15)のデーリー東北に、子どもの熱中症に関する記事が掲載されました。その中で、私のコメントも一部採用されていますが、実際には、取材に来た記者に以下のようなメモ(少し手を加えてあります)をあらかじめ送った上で追加の説明し、それを基に記事にしていただきました(画像を後で追加します)。

ポイントは、乳幼児が殊更に熱中症になりやすいわけではなく、育児やケアの過誤が主であり、普通に気をつけて貰えばほとんどは予防可能なこと。年長児では学校行事、部活やクラブスポーツでの教師・指導者の問題。子どもが熱中症になるとすれば、その原因の大半は親や教師、指導者にあると言えると思います。
その他、一般的に言われている点と少し違った角度から見た説明も含まれています。

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まず、熱中症について一般向けに公開されているのHPや資料を参照してください。
その上で、実際にはどうなのかという考え(私見も含めて)をお伝えできればと思います。

熱中症について学ぼう
https://www.netsuzero.jp/learning
熱中症、こんな人は特に注意!「子ども」
https://www.netsuzero.jp/learning/le04
熱中症環境保健マニュアル
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php

①子どもの方が熱中症にかかりやすい? その原因は?

一般論としては
・体重あたりの水分量が多く、必要な摂取水分量の割合が多い(脱水になりやすい)
・体温調節中枢が未熟
・体表面積(体重あたり)が大きく、環境温の影響を受けやすい
・汗をかき出す温度が高く、反応がゆっくり
・身長が低いので地面の温度の影響を受けやすい
その他に、
・自らの意志で水分をとったり環境を調節しにくい
などがありますが、
「子どもの方が熱中症にかかりやすい」という「定型文(決まり文句)」のようなものについて、
・確かに統計的には「十代の子ども」と高齢者が多いという傾向はあり、上記の資料にもそのような表現がありますが、必ずしも「子どもの方が熱中症にかかりやすい」とは言えません。
・むしろ、子どもの熱中症のほとんどは予防可能であり(最重要)、適切なケアや運動の選択などをしていれば、そんなに熱中症になるわけではない、と考えていただきたい。(後述)

②熱中症の症状で子ども特有のものは?

・熱中症に特有の症状というのはありません。子どもも同じです。
・具合が悪い。ぐったりするなどは既に進んだ症状。
・症状で何かを見分けるようとするのではなく、環境や状況などが重要。
・頭痛、嘔吐、発熱、倦怠感などは、風邪(この時期だとウイルス性の夏風邪)と「文面だけでは」区別することはできません。(診察すれば大体わかりますが)
・だから、「風邪ではなく熱中症ではないかと疑うべき」という流れになりがちですが、むしろ最近では、明らかに風邪の経過や所見なのに熱中症ではないかと聞いてくる親も多く、過度の心配を助長するような記載は避けるべきかと考えます。
・熱中症は、「その時にその場で」症状が出て悪くなるものです。運動をして帰ってから夜に熱が出てきたというのは、熱中症の経過ではありません。
・上記のような症状は、要するに「具合が悪い」ということです。子どもの具合、年長児であれば自分の具合を、ちゃんとみて把握することが大事。ごく普通のことで、熱中症に限った特別なことではありません。
・繰り返しますが、症状で見分けたりする以前に、適切な環境、水分摂取、運動の選択などを行うことが肝要。

③どんな状況で熱中症は起こりやすいのか?

・乳幼児の場合は不適切な養育・虐待(ネグレクト;車内に放置などは論外ですが)、車内でクーラーをつけていても、片側だけ直射日光があたるなど
・不必要なレジャー(夏休みに上の子と一緒に乳幼児をテーマパークや海水浴に連れまわすなど)
・ベビーカー(アスファルトの照り返し)
・年長児の場合は、運動(部活・クラブスポーツなど)
・熱を発散しにくい服装・ユニフォーム(野球、剣道など)
・いずれの種目でも、トレーニングとしてのランニング中
・校内マラソン大会など

④親が子どものためにできる対策などがあれば。

・まず「熱中症の予防に水分摂取は必要(=必要条件)」であっても、「水分を取っていれば熱中症にはならない(=十分条件)」ではない、ということをメディアが逆の間違ったメッセージとして伝えていないか。。今年になって「水分・水分」の大合唱ではなく、クーラーや高熱環境を防ぐなどの一番大事なことが優先的に言われるようになってきていると感じられますが。
・情報の把握 暑さ指数(WBGT) 環境省サイト スマホのアラート
・上記のような不必要な外出や活動をしない
・服装(風通しや速乾性素材)や帽子、日傘、日陰、水分など一般的なこと
・具合が悪そうであれば(上述)、涼しい室内や木陰などに移動し、水分摂取や冷却などを行う
・水分の選択 「イオン飲料(ポカリ)神話」 乳幼児は麦茶 運動時はイオン飲料(スポーツドリンクという名称が普及してしまっている)ではなく、市販の経口補水液を適度に希釈する。1時間以上の継続的運動なら経口補水液(塩分が多い)そのままでも構わないが、むしろそのような運動は避けるべき。
・親もそうですが、特にスポーツ指導者に求められること
 ・時間帯(朝や夕方)の選択や継続時間、休憩時間
 ・トレーニングの選択 長距離走ではなく短いトレーニングの組み合わせなど
 ・一律のトレーニングの強制ではなく、個人個人でのメニュー
 (トレーニング状況、体力、判断力などにより新人と高学年は変えるなど)
 ・馴化(1日涼しいクーラーの室内にいないで、少しずつ暑い環境に出す)
 ・効率重視、スポーツ医学、体育会系体質(気力・根性)からの脱却
 ・休む(運動しない) これが最も重要
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青森県内で3回連続トンデモ報告書「青森市・浪岡中2自殺」 いじめ自殺は本人の要因か

2017年04月14日 | こども・小児科
生前に診察していない医師が特定の病名(思春期うつ)と断定して報告書に記載するなどあり得ない事態。
医師法の無診察診療違反に相当するのではないか。
前の2回とは、八戸北高[摂食障害=今回と同じF会A医師]、東北町上北中[軽度発達障害:報道では明記されていないが=H大K医師]。
その二つのケースで、いずれも遺族からクレームがつき再調査となっている教訓から何も学んでいないと言わざるを得ない。
(個別の情報も報告書の詳細も把握していないので、各社の報道を元に判断していることをお断りしておきます)

<青森中2自殺>遺族、追加調査要望へ(河北新報)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201704/20170412_23021.html

まず第一に、これは以前にも書きましたが、いじめと自殺との因果関係について、「自殺の因果関係は特定できない」(別の報道では「解明できない」)と説明した(とされている)こと。

因果関係は「あり」と「なし」しかない。
この場合、「なし」はあり得ないので、結論は「あり」だけ。
その程度を、1%〜100%の間のどこにあるかなどという定量的評価はできない(わからない)のだから、その程度を問うこと自体、最初から無意味。
(イタコに訊くしかない)

次に、最大の問題、「思春期うつ」
こんな馬鹿げた表現(診断)が出てくるとは想像もしてなかった。
いじめなり何なりの外因があって自殺したとしたら、その過程において「うつ」または抑うつ症状があったのは当然のことで、それを自殺の要因として考えるのは本末転倒も甚だしい。
この点については、遺族側の弁護士も説明している通り。

百歩譲って、いじめが起こる前に「思春期うつ」(別のケースでは摂食障害や軽度発達障害)があったと仮定しても、それをいじめと並列的に考えるのは構図上の誤り。(単純に考えて、その段階では本人はちゃんと生きていたのだから)

人の心というのは誰にもわからないのに、亡くなった子どもの心の中における割合を並列的に(横軸棒グラフのように)推測して、これとこれの割合はどうかなどと考えることは、最初から論理の立て方がおかしいと言わざるを得ない。

本人の側の要因と外的要因をあえて一緒に考えるとすれば、重層的な構図を想定すべきと思う。

これをダムの決壊<自殺>にたとえてみると、元々溜まっていた水量、最後に降った雨量、ダムの高さや脆弱性などの複数の要因があり、最後に降った雨<いじめ>が大した量ではなかったから、ダムの側<本人>の要因とどちらが大きかったかわからないと考えるのはナンセンスで、全ての要因は一人一人の子どもによって全く違う。

そもそも、いじめと本人の側の要因を別々に考えるのは無意味で、いじめというのは本人の側にも何らかの要因<別に病的ではなくても、周囲と付和雷同しないような性格など>があると起きやすくなるものなので、それがあるから、いじめた側に酌量の余地があるとは言えない。

だから、標準的な尺度(八戸北高報告書における青森県トンデモ独自基準)で、個別のケースを判断することなど最初からできない。

審議会がなすべきことは、
・いじめに相当する事実があったことの解明
・それに対する学校側の対応の問題
を事実として列記することだけ。

「いじめ」があって「自殺」があったなら、それは「いじめ自殺」。
その段階であれこれ考える意味がわからない。
子どもが一人死んだという重さをどう考えているのか。
何度も同じような事態が繰り返されるのは、行政や教委・学校側の免責を図ろうとしていると捉えられても、言い逃れできないのではないか。

委員の精神科医だけの問題ではもちろんない。
「専門家」である精神科医の見解を、「専門外」である会長や他の委員が覆したとしたら、それはそれで問題になるかもしれないが、全体の議論を取りまとめた会長に責が無いとは言えないだろう。。
(青森市の委員構成は同一医療機関から医師と臨床心理士が入っている<5人中2人>ことに問題がありそうだが)

年齢別死亡率で男性は45年前、女性は40年前より10歳若返っている→高齢者の定義変更は不要かつ有害

2017年01月14日 | こども・小児科
高齢者の定義を65歳以上から75歳以上に引き上げるという老年医学会など2学会の提案がありましたが、医学的には全く必要のない定義変更であり、社会的・政治的な意味合いしかありません。

確かに昔の65歳は「おじいさん・おばあさん」だったけど、今は身体的にも精神的にもかつての50代に相当すると言えるかもしれません。それ自体は医学の進歩や生活習慣等の改善により引き起こされたもので、喜ぶべきことです。(財務官僚を除けば)

記事中に「10〜20年間に5〜10歳程度若返っている」という記載がありましたが、一部の疾患や運動能力のデータなどではなく、最も基礎的かつ重要な「年齢階級別死亡率」についての言及がありません。検索してダウンロードし、グラフ化してみました。(1955年〜2013年)


男性:2013年における75-79歳の死亡率[3688.1]と70-74歳の死亡率[2129.6]の赤線を左に辿っていくと、5歳下の階級とは1985年頃、10歳下の階級とは1970年頃に交差します。(死亡率は10万人あたりの人数)

同様に、


女性:2013年における75-79歳の死亡率[1695.7]と70-74歳の死亡率[908.1]の赤線を左に辿っていくと、5歳下の階級とは1989年頃、10歳下の階級とは1975年頃に交差します。

男性は1970年頃(約45年前)
女性は1975年頃(約40年前)
から、10歳若返っているということが死亡率から見て取れます。女性の方が若返りのスピードも速かった。

しかも、75-79歳、70-74歳のいずれにおいても、男性は女性の倍以上死亡率が高い(女性の死亡率が男性の半分以下)ということもわかります。
(グラフは縦軸のスケールを男女で変えてあるので、似たような曲線に見えるかもしれませんが)

もう一つ、女性では65-69歳と60-64歳の差が小さくなってきていることがわかります。それでも10万人あたり500人程度は亡くなっているわけですが、死亡率が急上昇してくるのは70歳代に入ってから。
男性は60-64歳で既に女性の70-74歳より高く、65-69歳で急上昇する年代に入る。

この男女差についてはいろいろな要因が言われていますが、喫煙率の差が一番大きな要因だと考えています。(詳しくは未調査)

以上、男性は約45年、女性は約40年で10歳若返っていることが死亡率から読み取れましたが、記事にあるような「10〜20年間に5〜10歳程度若返っている」というのは、一部のデータだけでみたある種の誇張(詭弁)といっても過言ではないでしょう。

最初に書いたように、医学的には定義変更の必要性はなく、国際的にも65歳以上が標準であり、過去のデータとの比較という意味でも、定義というのは変更してはならないものです。

65-74歳を前期高齢者(young-old)、75歳以上を後期高齢者(old-old)と分けているのは、後期高齢者医療制度を作るために厚労省が独自に作った用語ではありません。

元気な前期高齢者が、再就職やボランティア活動などで社会参加していくことは必要なことだし、それを可能とする社会的な仕組みも求められていますが、それは社会的・政治的なレベルの話で、医学の世界で「准高齢者」などと呼び替えることには何の意味もありません。

年金支給開始年齢を遅らせようとする政治的な要請(圧力)に応じた政治的な判断と考えるのが普通であり、両学会の良識が疑われます。

(「今回の提言を年金の支給年齢引き上げなど、社会保障制度の変更に直接結びつけることには、慎重な対応を求めている」などと但し書きを付けていること自体が、それに直結することを物語っています。)

青森山田高校のカンピロバクター食中毒記事「鶏肉の湯通しなどの加熱処理が不十分」湯通し??

2016年11月30日 | こども・小児科
細菌性食中毒でカンピロバクターが検出された(13人中2人だけにせよ)なら「鶏肉」、しかも2日連続で使っているという教科書的な事例ですが、、
鶏肉の加熱で「湯通し」はあり得ないでしょう。不十分というレベルの話ではない。
「湯通し」という単語を記者が何の手がかりもなく書いたとは思えない。まして保健所がそんなこと言う可能性はない。
記事では「同校は調理過程で湯通しなどの加熱処理が不十分だったとみている」とあるので、青森山田高校の側から出た発言。
ということは、鶏肉を湯通しだけで食べたのか?(マサカ)
保健所は何を調査したのか?(もう少し手がかりがわかるはず)

山田高調理科13人が食中毒 2016年11月26日(土)
 青森市の青森山田高校の調理科3年生13人が今月17、18日に行った調理実習の後、腹痛などを訴えていたことが25日、分かった。青森市保健所は実習の料理による集団食中毒と断定した。現在、女子生徒1人が入院しているが、快方に向かっているという。
 同保健所や同校によると、実習を行った3年生31人のうち、男子5人、女子8人が腹痛や下痢、発熱などを発症。保健所が調べたところ、2人の便から食中毒を引き起こす「カンピロバクター・ジェジュニ菌」が検出された。
 2日間の実習では鶏肉を使っており、同校は調理過程で湯通しなどの加熱処理が不十分だったとみている。同科で食中毒が発生したのは初めてで、当面は実習を自粛する。
 25日夜、記者会見を開いた同校の花田惇校長は「このような重大な事態が起きたことをおわびしたい。保健所の指導を受け、より衛生管理を徹底していく」と話した。

「優性思想」は国家の政策ではなく社会の「空気」で形成されるもの 新出生前診断の商業化はその帰結

2016年11月12日 | こども・小児科
(哲学カフェで言い残したことの、考えのまとまらないメモです。別にまとめるつもりですが…どうなるかわかりません)「優性思想とは国家が政策として行ったとき…」ここに引っかかりを感じて帰りました。

 確かに、ナチスや日本(戦後を含む)など、歴史的にはそうだったのかもしれません。もちろん、個々人が内心どんな差別主義の思想を抱いていても、一人一人追及して罪を暴き立てることはできないし、それこそ思想警察に繋がります。

 ただし、今の時代に国家が優性政策を実行するという事態は(内戦でのジェノサイドは別として)まずありえません。

 むしろ、個々人の思想が集まった社会の「空気」として、今回少し紹介した「新しい出生前診断」で異常が発見されれば中絶するのが当然という無言の圧力(※)が形成されれば、国の政策というあからさまな形を伴わない「優性思想(優性政策)」と考えることができるのではないでしょうか。

 ※→該当疾患の子が生まれたら、親が出生前診断と中絶の機会を逃して、社会への迷惑をかえりみず「自分勝手に」産んだのだから、その費用は親が負担すべきという「空気」。

 実は、その「新しい出生前診断」について、学会で限定した基準を逸脱した商業ベースの検査をネット上で提供する会社(医師)がいま問題になっています。(メディアはどこも取り上げていないので知られていませんが)

 学会の基準というのは何ら強制力を伴わないものですので、このような事態は最初から予見されたものでした。(だから、私はこの検査が「一線を越えた」ものだと当初から考えていました)

「優性思想は全否定されるべきものなのか」という観点で考えてみます。重い遺伝病について、絨毛検査や受精卵診断なども限定的に行われており、「新しい出生前診断」で検出できる3つの染色体異常(21トリソミー=ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミー)との間で一線を引くことは困難です。

 私のかつての感覚では「18」と「13」はやむを得ないが、「21」は抵抗感があるというものでしたが、「18」や「13」でも数年という長期生存例があることを見聞きすると、このような検査の実用化が親と子にとって福音と言えるのか、過去、現在、未来のいずれが幸せなのかわからなくなります。

 学会では臨床研究として基準を満たした施設と対象者に限って実施しているという名目になっていますが、実際には発見された94%(3年間で400人弱)が中絶しているという結果が明らかになっています。

 一人一人の親の選択の結果が総体として94%という数字になっただけだと言うこともできます。その判断の積み重ねが「結果的に」ダウン症候群や他の2つの染色体異常を減らすことにつながるのであれば、否定することは何もないと。

 親が幸福追求権を行使すれば、結果として社会への「迷惑」も減るし、誰にとってもハッピーである。別の事例で、私は「当事者の論理」という言葉を使ったことがありますが、これもその言葉が当てはまるのかもしれません。

 ここで「誰にとってもハッピー」とか「当事者の論理」などという乱暴な言葉で書きましたが、お気付きの通り、「胎児」という「当事者」の論理が抜け落ちています。憲法は胎児の幸福追求権まで保証してくれません。中絶されてしまえば、幸福を追求しようがないのですから。

 親の幸福追求権とは、「異常を持った赤ちゃんが生まれない方が(親にとっても子にとっても)幸せである」という判断だと言い換えることも可能かもしれません。その、一人一人の親の判断の総体が94%という数字である。決して、中絶した親を非難しているのではありません。

「優性思想は全否定されるべきものなのか」という問い対する決まった解答は得られそうにありません。商業ベースの検査会社が問題視されるのは、一つには偽陽性の存在を知らずに羊水検査をせず中絶する可能性、もう一つはここに書いたような逡巡を何ら経ずに判断される可能性が高いこと。

(「優性思想を全否定する」ことから始めると現実を無視することになると思いますが、やはりまとまりませんでした)

子どもの事故防止の原則は2つ→予測が難しいときに命を守るには(神宮外苑焼死事件をうけて)

2016年11月08日 | こども・小児科
今回の「神宮外苑 幼児焼死事件」は、悲惨すぎて言葉になりません。これまで伝えられた情報によると、出展者側で火災防止についての知識も想像力も、考慮された形跡もなく、二重三重のチェック体制もなく、観客の警告も無視するなど(※)、ほとんど論外と言える状況のようです。

「責任はすべて大学にある」神宮外苑の火災受け学長
2016年11月7日14時21分
http://www.asahi.com/articles/ASJC7339PJC7UTIL009.html

※ 特にこの証言の内容は過失ではなく「未必の故意」であることを証明しています

出展者(学生)や大学の責任は免れませんが、どんな罪に問われようとも子どもの命は還ってきません。
今回のケースに限定するのではなく、一般化してどうすれば守れるのか考えてみます。

子どもの事故というのは、1)繰り返されてきた状況で同じ事故が起きている、2)新しいモノや状況が生まれると新しい事故が発生する、という二つのことがわかっています。

2)については難しいので後回しにします。今回の例は特殊ですがここに入るかと思います。

1)については原則が二つあります。
①事故の原因を除去して可能性をゼロにする
②なくせない場合は、頻度を減らしたり重症化を防ぐ

「○○に気をつけましょう」では事故はなくなりません。

①の例としては、
・タバコ誤飲 →「タバコや灰皿を子どもの届かない高さに置く」は間違った指導例。家庭や訪問先(祖父母宅など)にタバコが全くない状況であれば、タバコ誤飲はゼロになる。
・歩行器やクーファンからの落下事故 →必要のない育児用品であり、買わない、使わない、人にあげないこと。
・大型自動回転ドアに挟まれた事故 →センサーの不備を改善するのではなく、もしセンサーが正常に作動しなければ(改善しても可能性はゼロではない)子どもが死ぬような装置は使用しない。

②の例として、
・自動車事故はゼロにはできないが、チャイルドシート(かつては法制化されていなかった!!)/衝突防止装置などの技術革新/歩道・交差点等の改善/取締りの強化/キャンペーン・啓発活動などにより、まだ許容できない範囲ではあるが、死者は確実に減少している。

①②を混同した例として、①コンニャクゼリーと②餅の窒息死を同一視した議論がある。(これがわからない人が多いというのも事実)
タバコとアルコールも同様。

風呂での溺水防止のために、②鍵をかけるというのは不可(事故はたまたまやらなかった時に起きる)で、①最後の人が必ずお湯を抜くというのが正しい対策。

原発事故についてもあてはまるが、最後に書きます。

2)の、リスクが不明(程度が様々)だったり予測困難な場合はどうすれば守れるか。

一言では言えないが、一般的な知識、経験(子どもの頃からの直接的、間接的、具体的々な体験から得た常識的判断力)、想像力、危険察知能力などを常に働かせるようにする。

東日本大震災を経験した私たちは、「いま大地震が来たらどうするか」というアンテナは辛うじて張れるようにはなったはずですが、未体験の状況(実際にはそういう事態が大半のはず)で、後悔しないように動けるか、自信を持って断言することはできません。

ただし、車の運転で一番大事なのは「他人の運転を信用しないこと」。これは自動車学校でも免許更新の講習でも一度も言われたことがないが、長年運転してきて誰もが実感しているはず。子どもの事故防止にも、同じことが言えると思う。

もう一つのキーワードは「東京」にあると考えますが、まとまっていないし、ここでは詳しく書けません。。

原発事故については、多重防御という考え自体が②(事故はゼロではない)を前提とした話だったはずが、いつのまにか①と同じ「絶対安全」にすり替わっていた。②なのに「絶対安全」ということは「絶対にない」ということはわかりきっていたのですが、①と受け止めて「絶対安全」だと思っていた人が相当数いたということ自体が、大きな驚きでした。

無論、①の可能性をゼロにする方法は、原発の稼働をゼロにする以外にはありません。②の対策で、いくらヨウ素剤を配布されたり、避難の船や避難先の体育館を確保されたからといって、これで安心、いつでも再稼働して下さいと主張する首長や議員らは、一旦事故が起きたときには福島のように故郷を捨てなければいけないという事態を許容したと言っているに等しいのです。

新出生前診断3万人 有病率1.6%、陽性的中率91% 羊水検査異常の94.5%が中絶 →考察

2016年07月23日 | こども・小児科
この「新しい出生前診断(NIPT)」については2013年に当ブログ(下記リンク)でも紹介しましたが、3年間のデータが発表されたので考察を加えてみます。
数字は以下の通りです。(記事画像参照)

新出生前診断 NIPT 3年間 30615人

陰性 30068人 98.21%
陽性  547人 1.79%
 ↓
羊水検査 458人
 異常なし 41人  8.95% …偽陽性
 異常   417人 91.05% …陽性的中率
  中絶   394人 94.5%
  出産   23人  5.5%

羊水検査せず 89人 転帰不明<出産 or 中絶>
  異常(推測) 89×0.91=81人 (出産・中絶の如何に関わらず)
 (羊水検査実施者における異常の割合と同じと仮定)

有病率(推測) 417+81=498人 498/30615=1.63%

ここで、3年前に書いたブログ記事と比較してみます。

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新しい出生前診断の陽性的中率は予想外に低い 2013年02月12日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/00f1abffc084e7934deb1acefb306c41
「陽性的中率は35歳で62%、40歳でも83%であり、偽陽性がそれぞれ38%、17%も出てしまう」
この数字は、有病率を
 35歳 0.33%
 40歳 1.0%
という既知の値で計算したものです。
検査の感度 98.6%、特異度 99.8%も発表されていた数字。
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今回の結果は、陽性的中率91%、偽陽性9%ですから、上記のブログに書いた計算値よりも陽性的中率がかなり高くなっています。

有病率が1.6%であり、結果的に40歳の一般集団における仮定の1.0%を上回っており、年齢が比較的高く、リスクの高い妊婦が多かったことが陽性的中率を押し上げた要因と推測されます。(詳細は不明)
その他に、検査自体の感度や特異度が上がっていることも、陽性的中率が上がった原因の一つとして推測することもできますが、その部分は同じと仮定して考えていきます。

実施者が3年で3万人で、500人余りで陽性という数字は、どちらもかなり「多い」と感じますが、陽性的中率の高さからすると、単に35歳以上というだけでなく、更に高年齢だったり、中には不妊治療で妊娠したケースもあったかもしれません。

この検査では、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つの染色体異常が検出できることになっていますが、元々の割合から考えて、大多数はダウン症候群であったはずです。

要するに、この検査を受ける人は、ダウン症候群を主な目的として、陽性だったら中絶することを前提にして検査したということ。
これはあらかじめ予想されたことで、それが現実になった。

個々のケースでそれぞれの事情などもあり、一般化して述べることはできないけれども、この結果について快く思っている小児科医はほとんどいないだろう。
まして、ダウン症候群の子を育てているご家族ならなおのこと。

羊水検査を受けていない89人についての転帰は不明ですが、そのまま出産した人よりも、確定診断を受けずに別の医療機関で中絶した人の方が多かったであろうと推測されます。中には偽陽性の子も含まれているはずですが。。

今後「臨床研究から一般診療に移行」するにつれて、「十分に理解しないまま安易に広がると命の選別につながるという指摘」のような危惧が更に現実化していくことが予想されます。。


インフルエンザ予防:ワクチン・手洗いが発症リスク低下、マスク・うがいはリスク増加を示唆(新潟大)

2016年03月26日 | こども・小児科
新潟大調査。日本小児科学会雑誌(2016.3)に掲載された論文から
佐渡島の幼稚園・保育園の全園児と小学校の全学童
2009/10と2011/12シーズン

オッズ比[95%信頼区間]2009/10  2011/12
ワクチン接種  0.27[0.23-0.31] 0.77[0.67-0.89]
こまめな手洗い 0.67[0.56-0.81] 0.71[0.59-0.86]
マスク着用   1.41[1.14-1.75] 1.35[1.01-1.80]
うがい     1.24[1.03-1.50] 1.21[1.00-1.45]

こまめな手洗いの実践率は23%、19%
学級閉鎖中に約3割がショッピングセンターや塾や人の集まる場所に外出していた

関奈緒ら:園児,学童におけるインフルエンザ予防行動実践状況とその効果.日本小児科学会誌 2016;120:612-622.

#こういった集団での行動調査で明らかな差が出るものだろうかと思ってパラパラと眺めてみたが、かなり興味深い結果が出ている。
ワクチンと手洗いに有意な発症リスクの低下が観察されたのはいいとして、うがいとマスクでむしろ発症が増える可能性が示唆されている。
うがいやマスクなんて「大した意味はないだろうが、やっても害はないだろうし、個人や場合よって効果があるかもしれない」という程度の考えでしたが、この結果では「うがいやマスクがむしろ逆効果である」可能性も否定できない。。

この点について、考察では、
マスク…発症者の伝播防止対策としての位置づけ。予防的な着用を推奨する根拠は乏しい。
うがい…本結果をもってうがいが発症リスクであるとの結論を導くことは難しい。うがい自体がリスクである可能性のほか、調査方法による因果の逆転、家族内の先行感染が行楽した可能性など…さらなるエビデンスの蓄積が求められる。

こういった研究は一つの調査だけで結論が出るというものではないので、このような書き方は常識的なものだが、うがいとマスクがリスクを増やすとまでは言えなくても、少なくとも予防効果は明らかではないということのエビデンスにはなっている。

#だから、カバのマークがどうなるかという問題じゃないんだって。。

八戸市小児科医会、救急医療功労者厚生労働大臣表彰受賞(9月9日)

2015年09月10日 | こども・小児科
小児科医は自己PRが下手なので報道もされないし誰にも知られていませんが、八戸市小児科医会は9月9日に救急医療功労者厚生労働大臣表彰を受賞しました。

八戸市で2000年9月から県内に先駆けて小児科医が1日も欠かさず(※)休日夜間急病診療所(根城)に出動する態勢を維持し続けていることが主な受賞理由です。
(私自身は特段の貢献をしたわけではありませんが=この態勢を決めたシンポの司会をしただけで=十数名の受賞者の一人と言うことはできると思います)

※→東日本大震災の時には急病診療所自体が3日間休診を余儀無くされたので、それを除いて。

八戸市および周辺地域の方には「急病診療所に行けば小児科専門医に診てもらえる」のが当たり前と思っているかもしれませんが、2000年以前には実現不可能だっただけでなく、この先10年20年先までこの態勢を維持し続けることができるという保証はありません。
(個人的意見としては10年が限度だと思っています)

なお、これも全く知られていないことですが、今回の表彰に先立ち、平成22年度 救急医療功労者青森県知事表彰も受賞しています。

平成27年度 救急医療功労者 厚生労働大臣表彰
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000096161.html
平成27年度救急医療功労者厚生労働大臣表彰 受賞者名簿(PDF:228KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000096383.pdf

平成22年度 救急医療功労者 青森県知事表彰
https://www.pref.aomori.lg.jp/release/2010/30559.html

親が運転する車が子どもをひいた死亡事故のケースを集めてみた 八戸では祖父が孫を…

2015年05月01日 | こども・小児科
つい先日も八戸で祖父が孫をひいた死亡事故がありました。
この種の事故は昔からありましたが、どうも最近になって目にする機会が増えているように感じられます。(実態はわかりません)
自分の子どもや孫を引いて死なせてしまったわけですから、第三者が加害者である場合よりも悲惨で、本人や家族の心中は容易には想像できません。

検索して同種の事故例をいくつか集めてみました。
状況はそれぞれ違いますが、発車・停車時に、子どもが一人だった(降ろした、降ろそうとした、家から出てきた)という点ではほぼ共通しています。
最後の幼稚園バスでは母親と一緒だったけど、手を離したか目を離したかしたのだろう。詳細は記載されてませんが。
保育士の母親はチャイルドシートを使用していない。
先に降ろそうとした祖父の過失もあるが、元々チャイルドシートをしていれば駐停車後に外して降ろすという動作の順番になるはず。

八戸のケースと幼稚園バスは左後輪でひいているが、どうしてそうなったのか。ただ転んだだけで車の下には簡単に入り込めないはずだし、発車と同時に左にハンドルを切って巻き込んだのか。
これも記事が事故防止の観点から書かれていないので不明。

ハインリッヒの法則「1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在する」

重大事故につながっていなくても、例えば降りた車の前を横断しようとする子ども(大人)がいるが、子どもの頃から繰り返して習慣づけさせないとダメ。
人の運転している車を信用しない。停車していて運転手が乗っている車はすぐに出てくるかもしれない。
必ず運転手の目を見る。自分に気づいているかどうか。
店から道に出てくる車は右しか見てない。左からくる自転車やランナーのスピードを知らない。

以前、立体駐車場の事故が問題になったが、どのような対策がとられたのか調べ直していない。できれば後日。。

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保育園に迎え、転んだ4歳孫を車でひく 青森・八戸
 4月23日午後5時35分ごろ、青森県八戸市市川町の市道
 祖父(60)運転の乗用車が孫(4)をひいた
 肝臓が破裂し、約2時間半後に死亡が確認された
 保育園に迎えに行き、帰る途中
 孫と同乗者が公園に寄るため、市道脇に停車
 左の後部ドアから降りた際、孫が転倒
 祖父そのまま発進し、車の左後輪でひいた

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母親運転の車にはねられ、1歳の長女が死亡 宝塚
2015.4.14
 14日午後4時50分ごろ、兵庫県宝塚市安倉中の市道交差点
 保育士の女性(36)の乗用車が女性の長女(1)をはね、
 長女は頭を強く打つなどして死亡
 車を駐車するため一時停止した際、後部座席に乗っていた女性の父(72)が長女を先に降ろそうとドアを開けたところ、長女が転落
 その際、車がバックし、はねられた
 車にチャイルドシートは設置されていなかった

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父の車にひかれ1歳女児死亡 北海道旭川市
2015年4月5日
 5日午後1時40分ごろ、北海道旭川市豊岡
 父親(40)が、自宅前で次女(1)を車でひいた
 頭などを強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された
 父親が先に車に乗り、自宅の駐車スペースから車を玄関前に移動させた際、姉(3)と2人で自宅から出てきた次女を車の左前輪でひいた
 母親は事故があったときには、まだ自宅の中にいた

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キックスケーターの小1男児 母の車にひかれ死亡
2014.10.29
 28日午後5時半ごろ、三重県津市久居小野辺町の市道
 母親(35)の軽乗用車がキックスケーターに乗っていた小学1年の長男(6)をひいた
 現場は片側1車線の直線
 事故直前、近くの公園で友人と遊んでいた
 母親は買い物からの帰りで「気付かなかった」と話している

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母親の車にはねられ1歳長男死亡 大津のガレージ
2014.8.2
 1日午後4時ごろ、大津市際川の住宅ガレージで
 母親(33)運転の乗用車に女性の長男(1)がはねられ
 頭を強く打つなどして搬送先の病院で死亡した
 現場は女性の両親宅
 車には運転していた女性だけが乗っており、「車の前部が息子にぶつかってしまった」と話している
 近くには女性の母親(55)もいたが、事故の瞬間は目撃していなかった

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1歳男児、幼稚園バスにひかれ死亡 兄を見送り中に 愛知
2015.4.30
 30日午前9時25分ごろ、愛知県あま市甚目寺須原の路上
 幼稚園の送迎バスが、兄(4)の見送りに来ていた男児(1)をひいた
 男児は母親(33)と一緒に、バスに乗る兄を見送っていた
 運転手が園児をバスに乗せ発車したところ、外で「ゴン」という音がし、確認すると、母親が左後輪付近で男児を抱きかかえていた

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