踊る小児科医のblog

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1週間早すぎた緊急事態宣言解除…火種はさっそく北九州市に飛び火

2020年05月27日 | 新型コロナ
東京では緊急事態宣言が1週間遅れたために医療崩壊寸前の危機に陥ったのに加えて、あと1週間待てば第一段階としての「収束宣言」を出せる(グラフ*の曲線が地べたまで到達する)ところまで来たのに、わざわざ火種を残したまま首相の独断で収束を宣言してしまいました。
(諮問会議には慎重意見もあったようですが、結論はあらかじめ決まっていた模様)


*【都道府県別】新型コロナウイルス感染者数のトラジェクトリー解析
札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/japan_trajectory.html

いま、日本中で残りは東京23区と札幌だけなのですから、東京と北海道では宣言を継続しながら、知事の裁量で他の市町村は実質的に解除していけば良いだけの話で、最初から各都道府県の知事は自らの裁量で地域にあった柔軟な運用をすることがなかった。
(広い北海道の各地や、東京でも小笠原や奥多摩と都心を同じ規則で運用するなど最初からナンセンス)



この表は5/15に集計してFacebookに掲載したものの続きで、各国の「100万人あたりの累積死者数」の10日間の増加率を、日本人の人口に合わせて理解しやすいように「1億人あたり」に換算したものです。
代表的な国を選んだもので、全ての国の順位ではありません。(この順番は5/15時点での累積死者数)
緑が5/5-5/15、水色が5/15-5/25の10日間の平均です。

上位の欧米各国は、死者数の増加率が減速してはいるものの、1億人換算ではまだまだ想像もつかないほど多い。急増しているブラジルの問題が報道されていますが、英国やスウェーデンはそれよりまだ多い。
(どうしてみんな平気なんだろう)

問題はそこではなく、日本の死者数の増加率。
やっと「10人」を切ってきましたが、3月中旬までは1日2〜3人(実数)だったことを考えると、まだ多い。
韓国、オーストラリアに近い「2人」程度まで、あと半月以上はかかりそうです。

何が言いたいかというと、毎日相当数の死者が出ているということは、それに相応する多数の重症患者が医療機関で治療中だということを意味します。

人工呼吸器装着患者数なども出されるようになってきましたが、死者数の減少が毎日の指標となり、かつ、最終目標であったはずです。
緊急事態宣言の解除には、死者数の減少が必要不可欠であり、まだ早すぎた。

これまで書いたことをまとめると、
・新規患者数:全国で20人、東京で4人以下
・死者数:全国で2〜3人以下
が目標であり、前者はあと1週間程度、後者はまだ半月以上はかかりそうです。

(これもFacebook上に、目標として①全国100人、東京20人、②全国50人、東京10人、③全国20人、東京4人の3段階を挙げてきましたが、まだ②から③へ向かいつつある途中だったのです。)

この早すぎた1週間の火種がそのまま消えていってくれれば良いのですが、わざわざ禍根を残したと言えるでしょう。

早速、北九州市で感染源不明の感染者が連日発生していて、第二波の始まりが懸念されています。

新型コロナ感染続く北九州市 小倉城が再度休館へ
2020年5月27日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200527/k10012446831000.html
「26日まで4日連続で新型コロナウイルスに感染している人が確認され、合わせて14人にのぼっていますが、このうち13人の感染経路がわかっていません。」

また、東京都も24日以降、14人、8人、10人となり、前週の同曜日比で+9人、-2人、+5人と足踏みまたは反発の予兆がみられています。

「知事の失政」に戻ると、青森県の三村知事も同じで、昨日、八戸市の新八温泉、青森市の青森国際ホテルの破綻が伝えられましたが、青森県内では自粛や施設の休業要請などは必要のない、有害無益の政策でした。

4月上旬の時点で県内には市中感染はなく、持ち込み例も十和田の施設・院内感染を除けば封じ込めに成功しており、緊急事態宣言を受けて必要だったのは首都圏との往来をできるだけ絶つことの一点だけで、県民に対しては、県内における経済・社会活動を段階的に解除していく時期にありました。
この政権とこの県政下で、無論、そのような柔軟な運用を望むこと自体が間違いであることも承知の上なのですが。。

新型コロナ:リスク評価とかけ離れた各地の対策と一般の認識…現在の八戸(1千万分の1)は4月の東京(千分の1)の1万分の1

2020年05月26日 | 新型コロナ
感染症の流行レベル(リスク)とその対策というのは、今回の感染者数の推移でわかる通り、指数関数的に上下します。その感覚というのが、政府やメディアだけでなく(というか、政府やメディアのせいで)、一般の方には全く伝わっていないということを痛感しています。

誰もこういった議論をしてくれないので、わかりやすいように次の5段階で考えてみました。

◆ リスクのレベル(試案)
レベル5:千分の1(10*-3) 0.1%
レベル4:1万分の1(10*-4) 0.01%
レベル3:10万分の1(10*-5) 0.001%
レベル2:100万分の1(10*-6) 0.0001%
レベル1:1000万分の1(10*-7) 0.00001%

3月末の東京はレベル5で、現在の東京はレベル3を切ってレベル2に届くかどうか。
八戸は3月末でもレベル2で、現在は東北・新潟の7県だけでなく全国のほとんどの地域でレベル1に相当すると考えます。
(上記のレベル区分や評価は仮説であり、定量的な裏付けまではありませんが、大きくは外れていないはずです。1年後に思い出したら再評価してみます。)

3月末の東京では一時に1万人くらい無症候者も含めた感染者がいたと考えてもおかしくない。
1万/1千万=千分の1なのでレベル5。

現在はおそらく2桁以上は下がって百人〜数十人程度になっているとすると、レベル3からレベル2に向かうところと推測します。

八戸では一貫して市中感染は発生しなかったけれど、3月末には東京からの移入例がいる可能性があったので、レベル2からレベル3に上がらないか注意深くみてきましたが、無事封じ込めに成功して、4月上旬から青森県内では新規感染者ゼロ(十和田の院内感染・家族感染を除く)が続いているので、現在はレベル1に相当するのではないかと考えます。

レベル1の「0.00001%(1千万分の1)のリスク」と言われても、私も含めて普通の人はどれくらい小さいか頭の中で測れないので、考えに入れないと思います。

例えば、予防接種後の重大な副反応として想定するのはレベル2の百万分の1より小さいことが一つの基準になります(これより高いリスクのワクチン=年間百万人生まれる赤ちゃんの1人以上=は許容されないということです)。このくらいの数字になると、たまたま接種後の時期に重なって乳幼児突然死症候群(SIDS)などで亡くなる赤ちゃん(年間百例前後)がいても不思議ではないので、そういったケースも紛れ込み事故として救済制度の対象になります。それを含めたのが、予防接種の副反応の重大事例の数字なのです。

交通事故死はかつて年間1万人発生していたので、1万分の1でレベル4に相当します。
なので、当然対策が必要となり、自動車の改良、交通ルールの徹底や厳罰化、道路・交差点の改良などにより桁が一つ下がってきましたが、まだ年間千人(レベル3)までには達していません。

ただし、運転者、歩行者、自転車などがリスクを意識して行動すること(行動変容)により、リスクのレベルは二桁くらい下げることができます。

ここに書いた新型コロナにおける数字は、そのリスク(確率)で感染者に接触するという意味で、同じように三密回避などの「行動変容」によって感染する可能性は相当に低くすることができます。

更に、もし感染したとしても、伝えられている死亡率(致死率)4%は診断がついた有症状者や接触者を分母とする数字ですから、無症候者を含む実質的な死亡率は0.1%(千分の1)のレベルになるはずです。(当初の予想の範囲内)

上記の1千万分の1に、更に千分の1を掛けると、もう数字上の遊びでしかなくなる。(100億分の1?)

更に更に、この4%という致死率は、0歳から80歳以上まで含めて平均化した数字で、20歳未満の死亡は日本ではゼロです。

では、八戸の子どものリスクは?
もう考えるのがアホらしくなってきたでしょう。

(追記)もし八戸のリスクレベルが上がってくる気配があれば、いち早くアラートを出すアンテナは張っています。

新型コロナ:十和田中央病院、陽性3名(合計4名)、陰性58名:東北新潟7県346名死亡ゼロ

2020年05月01日 | 新型コロナ
①家族を含めた接触者で感染が広がっていない
②感染者は看護師4名に限られた
③元の入院患者は重症化していない高齢者が主
④青森県内では26名中死者も重症者もゼロ
⑤東北6県+新潟の346名の中でも死者ゼロ

検査人数が混乱しましたが、最初の看護師の接触者(夫を含む)と陽性となった3名の家族を含めて、合計61名にPCR検査をして、3名陽性(合計4名)、残りの58名は陰性ということで、とりあえずここで一段落。

現在、県内の陽性者26名のうち15名が退院して、11名が入院中。入院者の詳細は公表されていませんが、新たな看護師4名と、十和田の施設の入居者6名職員3名(合計9名)のうちの7名だろうと推察されます。

ポイントは、クラスター研究班の見解と同じく、この4名は家族にも感染させていないことと、感染者4名いずれもが患者に直接看護している看護師に限られたこと。

これまで、高齢者ほどウイルス排出が多いという報告が出てきており、介護を要する高齢者は、重症化していなくても看護スタッフへの感染リスクが高い。

介護を要する高齢軽症者を中核病院の感染症病棟に長期間入院させておくことそのものについて、議論が必要かと思われます。

また、全国で院内感染は多発しているが、医療スタッフが重症化したり死亡したりするケースはまだ報告されていません。今回の4名もおそらく大丈夫だと思われます。早期の回復を願います。

PCR陽性率をずっとチェックしてきたが、今回の62名を加えても、3.9%のままで上昇しなかった。十和田の施設・院内感染を除けば、依然として青森県では市中感染は起きていないものと推測される。
(GW中の帰省者などに注意が必要だが)


また、県内26名だけでなく、東北6県+新潟の7県346名で死者ゼロが続いている(4/30現在)。これは偶然や幸運だけなのか、医療機能に余力が残っているからなのか、要因はわからない。


他地域の致死率は、北海道 3.78%、埼玉 4.01%、東京 2.89%、全国 3.16%であり、もし7県で1名発生しても0.29%なので、これだけ明らかな致死率の地域差は問題の一つとして考えた方が良いのかもしれない。
(ウイルスの型の違いなども考慮)