踊る小児科医のblog

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「甲状腺がんは増えていない」は本当か(2022年9月)

2022年09月01日 | 東日本大震災・原発事故
 福島県の甲状腺がん検診の開始以来、当欄でも何度か取り上げてきたが、多くの方にとって過去の話となっているに違いない。

 甲状腺がんの人数を確認してみると、1巡目(以下、丸数字の①)から19年度の④までで254名、その他に⑤が6名、25歳検診で13名となっている。

 ④までの人数を、地域毎に一次検診者数と受診間隔で割って推定発症率を比較してみた(図)。①については、これまで「多発批判」に対する「スクリーニング効果」との反論を考慮して「10分の1(同効果は10倍)」と仮定してきたが、会津地域をベースラインと考えて「4分の1」に変更してみた。



 その結果、いくつかのことが見えてきた。①では地域差が観察されなかったのに対し、②では13市町村、中通り、浜通り、会津の順ではっきりと差が出た。一方、③と④では浜通りが増加しているように見える。

 また、会津の10万人あたり年9人という推定発症率は、想定された「100万人に1人」の90倍に相当する。低被曝地域におけるこの数字を根拠に「多発ではなく過剰診断」と判断することは理解できる。

 一方で、手術が過剰治療に当たるとの主張は、手術基準が変更されていないことから否定できる。『報道特集』で取り上げられた訴訟原告の中にも再発や転移例が多く、予後良好だから手術は不要とは言えない。

 また、②における地域差については検討委員会でも指摘されたが、様々な因子による調整作業にも関わらず地域差が残ったため、別の解析方法に変更された経緯がある。

 この問題が未解決のまま迷路に入り込んでいる現状を示した。訴訟で問題となる因果関係論については次の機会に再考してみたい。

 本紙『虫瞰図』と同様に国際機関の報告書を鵜呑みにしたステレオタイプなメディア批判や3人の元首相への批判と、HPVや新型コロナワクチン問題、福島原発事故後のデマ、温暖化陰謀論などとの関連を考えることが本稿の目的だったが字数が尽きた。

(青森県保険医新聞2022年9月1日号掲載)

なぜ原発・核燃は無くなるしかないのか(2022年3月)

2022年03月01日 | 東日本大震災・原発事故
 震災11周年を前に再考してみたい。標題の前提とは異なり、原発は必要不可欠だ、必要悪だが無くすことは不可能など様々な見解があるのも事実だ。しかし、それらを考慮しても、辿り着く結論は一つしかない。

 ここで、『小出裕章・最後の講演』に収載された川野眞治「伊方原発訴訟の頃」から、原告の主張を抜粋してみる。①潜在的危険性が大きく、重大事故は健康と環境に取り返しのつかない被害をもたらす。②被曝労働という命を削る労働:差別的な構造を内包。③平常時でも放射能を環境中に放出し、環境汚染と健康被害の可能性。④放射性廃棄物の処分の見通しが立っていない。⑤核燃料サイクルの要、プルトニウムは毒性が強く、利用は核拡散をもたらす。⑥原子力推進のために情報統制が進み、表現の自由が失われる:原子力帝国(ユンク)。

 この73年の時点で問題は全て指摘されており、解決の見込みはない。しかも、①で危惧された福島原発事故を経験してもなお、温暖化対策という「まやかし」により、原発延命と新増設を図ろうとしている。

 標題の「なぜ」について説明しきれないが、例えば最終処分場は全量再処理を前提としている。しかし、それは第二再処理工場がなければ不可能で、使用済みMOX燃料の再処理技術も存在せず、工場建設の可能性も皆無だ。結論として直接処分との併用以外になく、議論は振り出しより前に戻る。そこまで何十年かかるかも見通せない。

 急加速する人口減少と社会機能の崩壊により、原発・廃炉の技術や人材も維持不能となるはずだ。核のゴミや財政負担などの負の遺産は将来世代に押し付けられるが、彼らには何の義務も責任もない。

 歴史的に積み重ねらた嘘、まやかし、問題先送り、金と権力による強権的手法が、数多くの解決不能問題を生み出してきた。

 問題先送りは更なる解決不能問題を生じ、政策転換が不可能なまま後戻りのできない道を歩み続けている。医療団体としての活動には限界があり、政治に直接関与するかの如き動きは会員の理解も得られず無益だ。

「反対しなければ賛成と同じ」という構造は何も変わっていないが、現実は必然的に変化し続けている。甲状腺がんの問題については、次の機会に再度取り上げてみたい。

(青森県保険医新聞2022年3月1日号掲載)

八戸市「津波26m」:八戸ジャンクションが災害救援道としてのネックに(第2ジャンクションと簡易代替案は提示されている)

2020年04月23日 | 東日本大震災・原発事故
今朝(4/22)の新聞のトップ記事は、久しぶりに新型コロナ関連ではなく、昨日発表された「津波26m」。
(別の面に新型コロナとの複合災害について書かれているので、関連がないわけではありませんが)

八戸市の中心街(城下町)は、川と池(堤)と低湿地に三方囲まれて外堀の役割を果たしている台地で、更に馬淵川と新井田川が北と南を分断しているので、戦国時代に攻めるとしたら、攻め手は「上り街道」(南郷・軽米・二戸から盛岡に至る)しかない。(実際には、江戸時代になってから城と街が作られたので、戦場になったことはありませんが。)


ただし、その守りに強い造りが災いして、市内の低地全域が浸水するような大規模な津波被害が起きたら、橋や低地の道路が通行できず、高速道路が救援や避難、物資輸送などの大動脈となる可能性が高い。そこで問題になるのは、

1)八戸ジャンクションをハーフジャンクションにしたのは、災害対応を考えると失敗だった。市内に入るルートは盛岡→八戸インター→白山台大橋がメインになるが、青森方面(北インター)や久慈方面(南・是川インター)から中心街に入るルートが途絶するかもしれない。
(是川中の橋まで遡上すれば大丈夫かもしれないが)

→南郷インターまで戻って乗り換えるしかないかと思っていたら、ちゃんと考えている人がいらっしゃいました。第2ジャンクションの計画(←有名無実化)だけでなく、Uターンする連結路をつくるという簡易版も提案しています。おそらくプロの方だと思いますが、素晴らしいアイデアです。

◎八戸ジャンクション(青森)のフル・ジャンクション化について(みちのく案内標識よもやま話)
2020.01.12
http://annnai.blog100.fc2.com/blog-category-62.html

2)八戸駅の東北新幹線ホームはどうして2階ではなく1階に作ってしまったのか。
(今回のマップでは黄色か緑色、ギリギリか)
北陸新幹線が洪水で水に浸かったのを見てから、疑問に思っていたのですが。
(トンネルから近いからというのも理由にならないし、他の駅はみんな高架なのに、意味がわかりません。)

3)市民病院や消防署、ヘリポート、出来たばかりの保健センターなどが集まる田向地区も、以前の津波マップではギリギリ大丈夫だったのが、今回は2-5m(ピンク)の浸水域に入る。集中立地は危険だと、計画段階で一応意見は出したのですが。。(ただのアリバイ作りでしかありません)


「詭弁・誤魔化し・先送り」は日本人の文化(某業界紙掲載予定原稿)

2019年04月26日 | 東日本大震災・原発事故
 環境部(※)では原発・核燃問題とタバコ問題を扱ってきたが、いずれも労多くして功少なく、関わるのは馬鹿だと思われている。

 反論はもちろん可能だ。喫煙により年間十数万人が死亡し、受動喫煙でも七十数名がSIDSで死亡している現在、禁煙活動により数多くの命を救ってきたことは確かだ。

 福島原発事故が現実のものとなっただけでなく、原発輸出頓挫、もんじゅ廃炉、高速炉計画も見通しが立たず、原発・核燃サイクルが破綻したいま、反核燃活動に終結宣言を出しても良いはずだ。

 しかし、現実はそうはなっていない。

 2012年に民主党政権の原発ゼロ政策に対して六ケ所村と青森県が反旗を翻して以来、現実に目を瞑って詭弁・誤魔化し・先送りを繰り返し、「原発・核燃サイクル推進」というお題目を取り下げることは不可能となった。

 立地4市町村への国の援助が予算化されたが、誤った治療による瀕死の患者に、同じ治療を続けながら対症薬を投与するのに等しい。

 実際に、大間原発が稼働する可能性はゼロに近く、電源開発もリスクの高い大間から撤退する機会を探っているはずだ。生き残り策はダークツーリズムくらいしか思いつかない。

 むつ市の中間貯蔵施設に核燃料税目的で使用済み燃料を搬入する可能性を考えても、第二再処理工場を前提とした非現実的な契約を破棄して、再処理もされず最終処分の見込みもない半永久的な貯蔵を認めるとは思えない。

 世耕大臣はMOX用の再処理工場は断念していないと言い逃れた。福島のデブリをどこに搬出するのか、誰も議論しようとはしない。

 繰り返される詭弁を笑い飛ばす気力も失せた。戦艦大和のように誰も責任をとらず破綻まで突き進むのに従う義務はない。

 従来型の活動から脱却して『核燃サイクル後の青森』で求められる活動を吟味し、政府を置き去りにして言論や行動で現実を動かしていくべきだ。



※青森県保険医協会環境部のこと

(青森県保険医新聞5月1日号掲載予定)

リスク軽減を主題として協会の(脱原発・反核燃)活動を考える(2018年12月掲載原稿)

2019年01月30日 | 東日本大震災・原発事故
これは2018年12月に青森県保険医協会の新聞に掲載された記事です。紹介が遅れましたが(草稿の段階でFBに掲載しましたが一部修正されています)、一読してお分りいただける通り、現状に対する強い危機感と閉塞感から書かれたもので、最後段の提起については具現化を考えていますが道筋が立っていません。
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「リスク軽減を主題として協会の活動を考える」
 残された時間は長くない。福島原発事故の三十年後まで見届けることを誓ったが、2042年には高齢者数がピークに達する(河合雅司『未来の年表』)。私たちも例外なく老いて、今の子どもたちである現役世代は年々減少し、社会機能の維持が難しくなってくる。

 福島の廃炉作業は行き詰まって方針転換を余儀なくされているはずだ。核ゴミの最終処分場は解決の見込みがなく、次世代に持ち越せば更に困難となる。半ば永久的に青森県内に存在し続けることを前提に考えるべきだ。

 六ヶ所再処理工場が廃止されても被曝を伴う解体作業は長期間で莫大な費用を要する。各地の原発廃炉も含めて、被曝労働と費用を次世代に負担させるという倫理的問題が残る。

 原発・核燃問題に関しては、政府・推進派が誤りを認めて謝罪し、政策転換しない限り、中立的な立場や「二項対立を超えた議論」は存立し得ない。反対しなければ賛成とみなすという姿勢は変わっていないからだ。脱原発は公正な社会を遺すための最低条件と言える。

 一方で、日常的に県民の健康に関わっている医師・歯科医師の団体である協会は、どのようなスタンスで何を目標に活動すべきなのか。他団体やネットワーク、選挙や政治との関わりについて、中間的な8割の会員や県民の感覚と乖離していないか危惧している。

 プルトニウム削減が義務付けられ、核燃サイクルは事実上頓挫したが、政策転換は先送りされる。これらの現状を踏まえて、将来世代のリスク軽減という観点から、①高レベル廃液、②使用済み燃料/乾式貯蔵、③ガラス固化体/直接処分/最終処分場、④保有プルトニウム、⑤中レベル廃棄物、⑥再処理廃水と福島の汚染水、⑦廃炉作業、⑧立地地域対策等について、専門家を交えた本音の討論の中で現実的な合意形成を目指せないだろうか。

 再エネ地域電力の斡旋事業も着実な一歩だ。

201809福島県の小児甲状腺がん3巡目15人(+3)累計201人 3巡目の減少はほぼ確定

2018年09月07日 | 東日本大震災・原発事故
前回(6月)から、3巡目で3人増加しました(確定+2、疑い+1)。大筋では特に変化はありません。当日の議論も議事録が出ていないのでまだ把握していません。

第32回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成30年9月5日)資料

前回記事「福島県の小児甲状腺がん:115+71+12=198人 地域差と3回目の減少が確定的 2018年06月28日」に上書きして記載します。

甲状腺がん患者の発見状況
先行検査①:2011-13
本格調査②:2014-15
本格調査③:2016-17
(以下、数字のみで表記)


表1 患者数の推移

① 2017.06、2018.06で変わりなし
 確定101+疑い14=115 (他に手術・良性1)
② 2018.06と変わりなし
2017.10 確定50+疑い21=71
2018.03 確定52+疑い19=71
2018.06 確定52+疑い19=71

2017.10 確定3+疑い4=7
2018.03 確定7+疑い3=10
2018.06 確定9+疑い3=12
2018.09 確定11+疑い4=15
合計
 確定164+疑い37=201

累積患者数に意味がないことは何度も書いた通りです。

発見率
① 38.3/10万人
② 26.2
③ 6.9(前回 5.5)

推定発症率
① 3.8/10万人
② 11.9(前回は13.1)※
③ 3.4(前回 2.8)

①は1/10(スクリーニング効果を10倍と仮定)
③以降は1/2(検査間隔2年)
②2巡目の計算方法を再び変えています
 13市町村→1/2.5
 その他の地域→1/2
 県全体→1/2.2(※前回は1/2としていた)

地域別の発見率(表・グラフ)




地域別の推定発症率(グラフ)


結論および推論
1)①の患者数がスクリーニング効果だけなのか、放射線被曝の影響が加わっているかどうかは、③の結果が確定して④の傾向が出始めれば評価できるだろうが、被曝の影響はあったとしても評価が難しい程度ではないかと推定される。

2)②の増加が県全体で顕著で、③が減少に転じていることも確定的。③の結果確定待ちだが、③は一次の受診率が64.6%で判定率は100%、二次の受診率は61.6%で確定率は90.5%なので、③の患者数は②の1/3程度にとどまる見通し。

3)②で地域差が明らか。13市町村>中通り>浜通り>会津。③では13市町村>中通り・会津>浜通りとなっている。絶対数が少ないので評価が難しいが、13市町村が多地域や県全体の倍程度の数字となっており、被曝の影響を否定できない。

4)②③の傾向が④以降どうなっていくのか、引き続き検査を継続して変動を見守っていく必要がある。個々の患者さん・県民の権利を守り、被曝影響との関連を知るためには、検査態勢は維持して継続することが重要。

註:全体の流れとして被曝の影響があったかどうかが評価できたとしても、個々の患者さん・県民についてその有無や程度を個別に確定できるわけではないというのが、どのような場合であっても前提となる原則です。

その中で、どの程度の影響があったのか、あるいは影響が判定できない程度だったのかを客観的に知ることは、すでに診断されている患者さん一人一人にとっても重要なことだと考えます。

甲状腺がん集計外11人→必要な情報を明らかにすべき:第10回甲状腺検査評価部会(2018年7月8日)

2018年07月31日 | 東日本大震災・原発事故
7月8日の甲状腺評価部会で発表された集計外の11人(医大で手術)の資料を整理してみました。
(と書いたのが7/20ですが、アップし忘れてました)

この11人のうち、8人は甲状腺検査を契機として診断されており、そのうち7人は保険診療・経過観察を経て手術されています。
少なくともこの8人については、本来、元の検査(一巡目、二巡目?)の集計に加えられるべきですが、今回の発表ではその詳細が明らかになっていません。
また、福島医大以外での集計外症例も明らかになっていません。

なお、同日資料において、高野らによる「倫理的問題と改善案(早期診断の有用性を否定)」が提起されたが、吉田明教授による「若年者の臨床経過」「超音波検査の有用性」によって、ほぼ全面的に否定された。
(議事録は未読:未公開)

第10回甲状腺検査評価部会(2018年7月8日)資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/kenkocyosa-kentoiinkai-b10.html
資料3「甲状腺検査集計外症例の調査結果の速報 福島県立医科大学甲状腺・内分泌センター長 横谷 進」より

福島県立医科大学付属病院で診療した、甲状腺検査集計外の甲状腺がんの症例

2011.10.9 - 2017.6.30
医大病院で手術を受けた患者
160人(良性2人)
 集計内 148人(良性1人)
 集計外 12人(良性1人)
  ↓
集計外の悪性11人
 甲状腺検査と無関係に受診 3人
 甲状腺検査を契機に受診  8人
  一次検査でB判定、二次検査を経由せずに受診 1人
  二次検査から保険診療・経過観察を経て手術 7人
   二次検査で穿刺吸引細胞診実施せず 5人
   穿刺吸引細胞診実施し「悪性/悪性疑い」以外 2人

性別 男性4 女性7
事故時年齢 13.8 ± 4.0歳
(0-4歳:1、5-9歳:1、10-14歳:4、15-19歳:5)

避難区域13市町村:4人、中通り:4人、浜通り:3人、会津:0人
(註:人口比で考えると13市町村の患者数が多い)

同時点で甲状腺検査により「悪性ないし悪性の疑い」と診断 193人
(良性1人を除く)

医大病院で手術を受け甲状腺がんと診断 158人
(集計内147、集計外11)

193−147=46人 医大以外で手術

医大以外での集計外患者数は不明
推定 3〜4人
 11/147=x/46
 x=(11×46)/147=3.4人

結論
この11人については、情報が明らかにならない限り「集計外」として扱わざるを得ない。少なくとも8名については1巡目か2巡目かといった情報だけでも明らかにすべき。

折爪岳は「北上高地最北端の独立峰」ではなく折爪断層による連峰の一部<直下型地震注意>

2018年07月17日 | 東日本大震災・原発事故
Facebookに書いた「折爪岳は独立峰か?」の続きですが、各種観光案内ページなどにも決まり文句として「独立峰」と書かれているようです。(>_<)

北上高地の最北端に位置する独立峰「折爪岳」(二戸市観光協会)
http://ninohe-kanko.com/archive/oritsume.pdf

NHKさわやか自然百景「岩手 折爪岳」
https://www.nhk.or.jp/sawayaka/contents/program/2009/8/20090809_orizume.html
岩手県を南北250㎞に渡ってつらなる北上山地。折爪岳は、その北端に位置する独立峰です。

まず、赤色立体地図のスクリーンショットを掲載しておきます。



中央右寄りの山塊が折爪岳、その北に名久井岳、馬淵川を挟んで辰ノ口撓曲(※)。

折爪岳の南側にも、地形図によると、小倉岳652m、傾城峠736m、就志森770m、名前のない726mと連なっていて、葛巻町で断層は終わっているようです。

折爪岳の左(西)が二戸、馬仙峡の渓谷の南が一戸。
「+」印のずっと南にある巨大なカルデラが七時雨山。
画面左下(南西)の高原が八幡平。

この地図を見ても一目瞭然で、折爪岳は折爪断層によって形成された連峰の一部で、独立峰ではありません。
また、北上高地の最北端も、名久井岳とみるべきでしょう。

ちなみに、Wikipediaの「北上山地」によると、
「東に太平洋、西に北上川・馬淵川が作る低地帯に接する。…北は青森県南東部の階上岳付近を末端として、南は宮城県の牡鹿半島を末端としている。」
となっているので、最北端は階上岳のようです。

※地震調査研究推進本部の解説によると、折爪断層の北端は名久井岳ではなく、馬淵川を越えて旧倉石村に至る「辰ノ口撓曲」だとのこと。
(下記ページに掲載されている地図参照)

折爪断層全体が動くと、M7.6程度で、震度6強〜7、八戸でも震度6弱〜5強が予測されているので、直下型でこれが来れば相当な被害が出るはず。
ただし「最新活動後の経過率及び長期確率は不明」。
こういうのは心配しても仕方がないけど、起きた時に「想定外」だったという言い訳はできません。。

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折爪断層(地震調査研究推進本部)
 折爪断層は、青森県三戸郡倉石村(現・五戸町)から岩手県岩手郡葛巻町北部に至る断層で、北部は辰ノ口撓曲からなります。長さは最大47km程度である可能性があります。
 折爪断層の将来の活動については不明です。仮に全体が一つの区間として活動した場合について試算すると、経験則から、発生する地震規模はマグニチュードが最大で7.6程度で、そのときの上下変位量は最大で4m程度となります。本断層の最新活動後の経過率及び将来このような地震が発生する長期確率は不明です。
https://www.jishin.go.jp/main/yosokuchizu/katsudanso/f011_oritsume.htm

折爪断層の長期評価について
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/04apr_oritsume/index.htm
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福島県の小児甲状腺がん:115+71+12=198人 地域差と3回目の減少が確定的

2018年06月28日 | 東日本大震災・原発事故
前回から間があいてしまったが、傾向に大きな変化はないようです。

第31回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成30年6月18日)資料

甲状腺がん患者の発見状況
先行検査①:2011-13
本格調査②:2014-15
本格調査③:2016-17
(以下、丸数字のみで表記)


① 2017.06、2018.06で変わりなし
 確定101+疑い14=115人 (他に手術・良性1)

2017.10 確定50+疑い21=71人
2018.03 確定52+疑い19=71
2018.06 確定52+疑い19=71

2017.10 確定3+疑い4=7人
2018.03 確定7+疑い3=10(+3)
2018.06 確定9+疑い3=12(+2)
合計
 確定162+疑い36=198人

累積患者数に意味がないことは何度も書いた通りです。

発見率
① 38.3/10万人
② 26.2
③ 5.5

推定発症率
① 3.8/10万人
② 13.1
③ 2.8
(①は1/10、②③は1/2)

地域別の発見率(表・グラフ)




地域別の推定発症率(グラフ)

(①は1/10、②の13市町村は1/2.2、②の他の地域・県平均と③は1/2)

結論および推論
1)①の患者数がスクリーニング効果だけなのか、放射線被曝の影響が加わっているかどうかは、③の結果が確定して④の傾向が出始めれば評価できるだろうが、被曝の影響はあっても限定的だろう。
2)②の増加が県全体で顕著で、③が減少に転じていることも確定的。(③の結果確定待ちだが)
3)②で地域差が明らか。13市町村>中通り>浜通り>会津。③で同様の傾向が出てくるようだと、被曝の影響とほぼ確定できる。
4)②③の傾向が④以降どうなっていくのか、引き続き検査を継続して変動を見守っていく必要がある。

「朝鮮半島の非核化と核燃料サイクル」(青森県保険医新聞掲載):核の無意味化と核燃サイクルの終焉

2018年06月22日 | 東日本大震災・原発事故
#ここで重要なのは「北朝鮮の核廃棄」ではなく、世界的な核廃絶のプロセスの中での「朝鮮半島の非核化」であり、米国による「核の傘(脅し)」も排除することが必要だという点です。核禁条約への加盟という一見あり得ない案は、ノーベル平和賞ICANの川崎氏の主張を取り入れたものです。

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「朝鮮半島の非核化と核燃料サイクル」

 4月に開催された南北首脳会談の前に「米国がノーと言えないロードマップ」と題した予測をSNSに書き記した。①南北2国間で朝鮮戦争終結・平和条約締結(の声明)、②南北統一は当面先送り、③「朝鮮半島の非核化」宣言(南北同時)、④韓国が米国の核の傘から離脱、⑤南北同時に核兵器禁止条約加盟(核兵器は未廃棄)、⑥米朝国交正常化・平和条約締結(制裁は未解除)、⑦段階的な核兵器廃棄と制裁解除、⑧在韓米軍撤退。

 ここで詳しくは触れないが、①②③については概ねその方向で動いていると言えるだろう。④以降について、この通りに進む可能性は低いかもしれないが、文大統領は相当な覚悟で動いていると考えられ、専門家の予測とは違ったサプライズも十分にあり得る。

 重要なのは、70年近く継続してきた戦争状態をまず終わらせることであり、それが全ての始まりになる。「完全かつ不可逆的で検証可能な非核化」と繰り返し唱えるばかりでは、蚊帳の外に置かれるのも当然であろう。

 ④⑤は決して理想論ではなく、何も動かさずに情勢を百八十度転換でき、米国の核使用や先制攻撃の可能性も事実上なくなる。同時に、北朝鮮が核を保有する意味も消滅するため、即時の廃棄も可能となる。国交正常化と核廃棄の順序が逆では、実現は難しくなる。

 核兵器廃棄の段階について考えると、北朝鮮としては核兵器は廃棄しても、ポテンシャルは残しておきたい。ここで、ウラン濃縮と再処理の2つを非核保有国で保持している唯一の国が日本であることが絡んでくる。韓国は従来から日米原子力協定で認められている再処理と同等の権利を米国に求めており、南北統一を視野に入れて、北の核施設を民生用に残すと要求することで利害が一致する。

 米国は当然そのような条件は認めたくない。3月の猿田佐世氏の講演によると、米国内では原子力推進派であっても日本の再処理に賛成する人はほとんどいない。日米原子力協定は7月に自動延長となるが、それ以降は6か月前の通告で終了できる。米国にとって何のメリットもない日本の再処理を、取引材料に使うことはあり得る話だと考えている。

 米朝首脳会談後の展開がどうあれ、六ヶ所と北朝鮮の核は密接不可分である。北東アジア非核兵器地帯については長崎大学核兵器廃絶研究センターのHPを参照いただきたい。

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(原稿は以上で、字数の関係から触れられていないが、Facebookにはその他の重要ポイントについてもメモしているので、ここに再掲しておく)

・核兵器の完全廃棄の確認は不可能
・韓国が核の傘から離脱した時点で最前線は日本列島に(これまでも北朝鮮が韓国を核攻撃する可能性はゼロだったのだが)
・北の体制保証と金王朝永続の保証とは違う(次の課題)
・拉致問題は、米朝→日朝国交正常化の後に…
・南北朝鮮統一のためには、統一国家を永世中立国とすることが必要。混乱・難民化回避と新国家建設のために国連PKOを第三国で構成して駐留。ただし、金正恩体制のままでは統一は不可能。

更に追記
金王朝の永続ではなく、南北朝鮮の中立国家としての統一という、これまたあり得なさそうに思えるプロセスを考える上で、最も重要なことは経済開放、民間交流の拡大であり、その中で起こってくる情報の共有が、必然的に南北両国家間の一定の方向性を決めてくると考えている。。中国の習近平は自国同様の資本主義+強権国家の維持を目論んでいるだろうが、朝鮮半島の流れは動き出したら止まらなくなるはず。(流動化は危険性も伴うが)

『風評』なるものは国・福島県・農家・メディアの合作「499ベクレルまで安全」「食べて応援」

2018年03月15日 | 東日本大震災・原発事故
タイトルが全てです。7年目の「3.11」は過ぎましたが、毎年この時期に「風評払拭」「デマ・偏見今もなお」などと書かれた特集記事を見るとげんなりとしてしまう。国民があの時のことを何も覚えていないとでも思っているのだろうか。

唯一の例外がETV特集「忘却にあらがう〜福島原発裁判・原告たちの記録」。
(再放送も終了してしまいましたが、再々放送のリクエストボタンを押しておきました。待てない方は、一時的にどこかに掲載されているかもしれないので、お勧めはしませんが自己責任で探してみてください。)

あの時に、検出限界以下(ND)のみ出荷し、そうでなければ補償と明確な方針を打ち出せば、その後の信用・信頼は全く変わっていたはず。
その反省も謝罪も何もなく、当時予想した通り、福島県内(だけでなく国内・メディア)では「ものを言えない空気」が醸成されてしまった。

私は当時いろいろと調べた結果「子どもは年齢と同じ数字まで」と主張し、ブログや院内報でもお知らせしました。
10歳なら10ベクレルまで、5歳なら5ベクレルまで。

当時書いた文章を探し出して引用しておきます。
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主食の米に500Bq/kgを適用してはいけません。
核実験時のセシウム濃度を見ても、ピークの1963年で平均4Bq/kgであり、最大で10Bq/kgは超えていません。
大潟村あきたこまち生産者協会は基準値を5Bq/kgにすると発表しています。
ウクライナはパン20Bq/kg、ドイツは全ての食品で大人8Bq/kg、子ども4Bq/kgが基準です。
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番組制作者のブログ
toriiyoshiki's Blog
ETV特集「忘却に抗(あらが)う」…今夜23時放送
日付: 3月 10, 2018
http://toriiyoshiki.blogspot.jp/2018/03/23.html

『核燃サイクル後の未来』 「反核燃」から「ポスト核燃」の現実的議論へ <試論>

2018年03月01日 | 東日本大震災・原発事故
・もう「推進か反対か」という時代は終わった
・こちらから「勝利宣言」を出しても良いのでは

某所で行った議論への投稿が当面使い道のないものになったので、再構成して公開します。
あくまで頭の中をかき回してみた試論で、オリジナルの要素はほとんどないかと思いますが、議論のたたき台として活用してください。

「核燃サイクル後の未来」
「反核燃」から「ポスト核燃」へ

この2つは今回新たに考え出したキャッチフレーズです。
ご自由にお使いいください。

『核燃サイクル後の未来』 <要旨>

1.「反核燃」から「ポスト核燃」へ
 核燃サイクルは頓挫し、事実上勝利している(名目上は政策転換の見込みはないが)。過去の固定的な(人によってはマイナスの)イメージが染み付いた「反核燃」から脱却し、より前に進んで、「ポスト核燃」(あるいは「核燃サイクル後の未来」)といった新たなキャッチフレーズを提示し、現実的な政策について開かれた議論のテーブルに載せることを目標とすべき。

2.立地自治体への謝罪(国からの)、補償(賠償)や新たな補助金創設、産業転換への支援を
 「雇用と税収」が当面確保されることを保証し、新エネルギーと農業(ソーラーシェアリング)・酪農・漁業を中心に、廃炉・保管産業なども組み合わせて具体的な案を探る。

3.現在保管している核ゴミは中長期的に青森県内で乾式貯蔵を
 脱原発と新たな核ゴミは受け入れないことを条件に、最終処分場における直接処分まで、県内の中間貯蔵施設で保管し、それを立地自治体の収入源とする。(乾式貯蔵への移設が原発の延命手段とならないことを確実に保証する)

<目的>

日本の原子力政策は、青森県や立地自治体(特に六ヶ所村)が変わらないと転換できない。しかし、県や立地自治体は自ら政策転換することが不可能な状況にあり、事業者も含めてどこからも変えられない「三竦み構造」に陥っている。

現在では、地元の首長選(知事選や市町村長選)で、いわゆる「反対派」候補が当選する可能性はゼロに近い。

しかし、選挙を通した議論で、従来の枠組みから数歩進んだ新たなプレゼンテーションを行うことにより、誰が当選するにせよ、結果的に将来の政策に取り入れられていくという計略が考えられないか。

<論考>(順不動で雑駁な思考錯誤)

前回の青森県知事選の際に、大竹進氏は青森県保険医協会会長に在職のまま(←報道の後に辞職)、正式発表前に「反核燃統一候補」というレッテルを貼られて報道された。あの時点で結果は自明であり、初動戦略の失敗だった。

ただし、同氏は「なくそう原発・核燃、あおもりネットワーク」共同代表(※)であり、共闘形態から判断しても「レッテル」は何ら間違っていなかったのだが。。
(医療・福祉・介護の専門家という、県民に最もアピールすべき部分が吹き飛んでしまった)

※このネットワークは、従来の反核燃団体だけでなく、一般の県民なども含めたネットワークを目指して、その結節点となりうる団体として、医師・歯科医師の団体である青森県保険医協会が参画し、共同代表の一翼を担ったはずなのだが、結果的に「ネットワーク」だけでなく、保険医協会まで反核燃団体であるかのように扱われてしまった。

最初の情報の出し方、プレゼンテーションに問題があり、慎重かつ効果的な戦略が必要だった。
私は同氏の立候補情報を知らなかったのだが、残念という気持ちを通り越して、その時点で数歩引いてしまった。結果的には、それでも健闘したと言えるのかもしれないが。

言葉やイメージは大事で、良くも悪くもメディアを利用しないと舞台に登ることすらできない。小池百合子の成功と失敗に学ぶべき。
「反核燃」イコール「雇用や税収を奪う」「非現実的」と認識されているのだから。

少なくとも、立地自治体の外から来る「反対派」は、地元の方たちから嫌われているという現状認識からスタートしないと、議論のテーブルに着くことすらできない。

新しいキャッチフレーズを考えてみた。
「反核燃」から「ポスト核燃」へ
…今さら反対しなくても動かないのは明らかなのだから。

もう一つ、同じ意味ですが、
「核燃サイクル後の未来」

「反核燃」ではなく「ポスト核燃」に変えたと言えば、反対をやめたのか(負けを認めたのか)と言われるかもしれないが、その正反対で、向こうが負けを認めなくても、実質的にもう動く見込みがないのだから、今更20年前と同じ構図で争う意味はなく、現実を認めて前に進むべきという意味。

こちらから「勝利宣言」を出しても良いかもしれない。
(核燃サイクルが頓挫していることの論証は省略)

「核燃反対」ではなく「推進か反対かの時代は終わった」と言えば、メディアや一般の県民も「何だろう?」と耳を傾けるし、「核燃サイクル後にお金も雇用も確保される、むしろそちらの方が得だ」という現実的な「未来」を提示すれば、内心では核燃サイクルは動かないのではないかと危惧している地元の方たちの理解も得られるはず。

要は「お金と雇用」の問題。地元の首長や議員が推進の堅持を主張しているのも、それしか生きて行く道がないと思っているから。しかし、このままだと「核燃サイクルは中止しないが再処理工場は動かず、核ゴミは貯まったままプールで冷やし続ける」というディストピア的な近未来像が現実的。

具体的には、
・中間貯蔵施設の建設と核ゴミの移設(場合によってはむつ市などと折半)
・核ゴミ保管による核燃料税の確保
・国からの中止に伴う補償措置と新産業転換(地元資本による再エネ産業)
・日本原燃の存続(あるいは改組)と雇用を保証すること

場合によっては、中レベル廃棄物(廃炉廃棄物)を実証施設として<一部>受け入れることも「生き残り策として」考慮すべきかと。

いま、原発・核燃推進派が2割、反対派が2割、残りの6割は中間派だと言われています(選挙における自民支持、野党支持、無党派層の割合も同様)。
推進・反対の論争に距離を置いている中間派(その多くは穏健で現実的な保守派)の理解を得られなければ何も変わらない。
(立地自治体では明らかな反対派はおそらく1割もいない)

なので、「6割」の普通の住民の一人でも二人でも、(こちらの話を聞いてもらうのではなく)対話してお話を伺っていくことが必要になってくる。

例えば、自然エネ100%以上という政策を掲げたとしても、六ヶ所村などでは既に実現しているはずだが、地元資本ではないのが問題。
地元住民と企業が出資した市民エネルギー会社(飯舘村などを参照)も考えらえるが、地元企業の動向・意向などが把握できていなければ、机上で考えても実のあるものにはならない。

極端な話、再処理工場がずっと稼働しなくても、安全対策の工事や維持管理などで地元の企業が成り立っていき、自治体の政策に不満がないのであれば、外から考えたり口を出したりしても意味がない。
(それは永遠には続かないのだから、その間に転換が必要なのだが)

この提言で重要な部分は、再処理せず直接処分を前提とした乾式中間貯蔵施設の建設と移設、つまり、最終処分場が出来るまで(多分私たちが生きてる間には出来ない)、県内に核のゴミを置き続けるという点です。

場合によっては再処理中止の明言がなくても、新たな核ゴミ搬入は中止するという条件で、「安全のため」という名目で中間貯蔵施設への移設を進めることも想定している。

「最終処分場を県外にする」という線は当面譲らないで、核ゴミの中間貯蔵施設にするということで考えていかないと、原発ゼロは実現しません。

日本原燃の存続または改組の意味は、核ゴミ管理および廃炉産業としての道です。

上記の2点(反核燃の言葉を取り下げる/核ゴミ当面存置)について、従来の「反核燃派」の方々に受け入れられるとは思っていませんが、2014年末の講演会で、先月急逝した吉岡先生に質問したところ、そのレベルの議論は既に済んでいるという印象でした。立憲民主党や原子力市民委員会との連携には、現実路線が必須です。

立憲民主党、小泉氏の原自連、原子力市民委員会が1月から協議しているので、その三者と連携して、整合性のある政策を立てる。その上で候補の出馬表明をするなら、注目を集めるかと思います。

『原発ゼロ社会への道』(原子力市民委員会)と、
鈴木達治郎先生の『核兵器と原発 日本のジレンマ』も必読です。

(参考=当ブログ内)
電力切替えで原発推進の東北電力から脱却を(青森県保険医新聞掲載) 2018年02月02日
https://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/1b6f2fd231985dc6d677fbe469837f58
(鈴木氏講演要旨、著作、市民委員会、原自連、立民党などへのリンクも掲載)

いわゆる「再処理永続法(2016年)」の附帯決議も読み直してみる。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/keizaiA434A071B3E18FCE49257F9C00271C6D.htm
法的拘束力はないが、この文面をみてみると、原子力委員会の判断が再処理稼働を制限(あるいは凍結)するかどうか、決め手になってくるように思える。

日米原子力協定自動延長が報じられているが、米国中間選挙後に、民主・共和両党の勢力図の変化や、各党の議員の動向によって、再処理に厳しい制限が課される可能性がないかどうか、探っていきたい。

立憲民主党のタウンミーティングは、東北では2月11日(日)郡山市だけでした。可能なら出席して意見交換できれば良かったのですが。
(県内には立憲民主党の組織も人材もゼロですから)
立憲民主党 | 「原発ゼロ基本法タウンミーティング」のお知らせ
https://cdp-japan.jp/news/929


立憲民主党の原発ゼロ法案(上記ページに掲載)に対する原子力市民委員会の意見は、こちらに掲載されています。
「立憲民主党エネルギー調査会・原子力市民委員会 対話集会」(2018/1/23)
・原子力市民委員会の基本認識
・立憲民主党「通称:原発ゼロ基本法案(骨子案)」についての意見
http://www.ccnejapan.com/?p=8424

もし県内立地自治体での首長選を考えるなら、
1)「政策」
2)「戦略・戦術」
3)「実務」
のそれぞれについて、最初から最後まで徹底的に動けるブレインが必要ではないか。

具体的には、
・地元自治体出身者、できれば在住者(様々な立場)
・自治体の予算・決算や政策を読んで解析できる人
・自治体の実務経験者、地元自治体の職員・元職員(匿名協力者)
・イベント、広告関係者など
・大学やNPOなどで地方自治や地域起こしの活動に携わっている人
・地方議員・元議員
・選挙実務経験者※
などの方たちの協力・参画を考えていかないと。

地元自治体の財政・予算・政策課題などを把握した上で、例えば二十項目くらいの実現可能な政策を提案できるなら別ですが、それなしに小泉元首相一人を呼んだとしても、大勢には影響しないでしょう。

無論、ここに書いたような戦略や人材を集積することができて、安部自民党が泡吹いて(息子である)小泉進次郎を送りつけてくるような状況をつくらないと意味がありません。

※例えば立憲民主党の東北3議員(うち2名は比例議員)およびその秘書などはどうか
山崎 誠(横浜市在住)
http://www.yamazakimakoto.jp/profile
岡本あき子(宮城1区)
http://okamotoakiko.net/
https://www.facebook.com/okamotoakikoofficial/
阿久津 幸彦
https://ameblo.jp/akutsu0626

従来の、反核燃団体、共産・社民・労組といった「反核燃」の枠組みを否定するわけではないが、それだけだと「1割以下」を「2割」に近づけるだけ。(実際、大竹先生は25%程度で「健闘」したと言える)

「6割」の一般住民の方に自分自身のリアルな将来を考える選択肢に残るためには、上記のような内外の幅広い勢力と協力者の参画が絶対的に必要。

青森県内の民進党に対して、何らかの期待をいだくことはできない。民進党の原子力政策が一貫したものでないのは、そういう党だし、だからこそ分裂して迷走している。

田名部匡代氏(参院民進党)は、内心まで核燃推進か現状維持なのかはわかりませんが、独自に反対またはポスト核燃といった意見を表明して活動していただける人ではないと思う。

父の匡省氏は核燃サイクル招致の際に地元に強力に働きかけた張本人ですから、匡代氏が「核燃サイクル後の未来」への政策転換について主体的に取り組んでもらえる可能性は非常に低い。

一昨年の参院選と昨秋の衆院選の経緯は以下の通り。
参院選で田名部氏が野党4党統一候補になったのは、他の野党や市民団体が安倍政権打倒のため「脱原発・反核燃」を封印して応援するという苦渋の選択だったはず。

その結果として当選したのに、多くの有権者の投票行動(主権の行使)を裏切って、衆院選で「希望」に寝返った。(だから衆院選で共産に対立候補を立てられて全敗した)
その際に、メールで一度やりとりしましたが、公的には他の野党なり県民に謝罪や仁義はなかったはず。

田名部氏については、本人がこれらの根本的な問題について解決しようという気がないことは明らかであり、政治家としては今回の選択ミスが命取りではないか。

万が一、田名部氏がこの問題に主体的に取り組んでもらったとしても、結果として「田名部vs大島・三村」の旧来の構図にされてしまったら、かえって有害無益となる。

民進党ではなく民主党政権の時に馬淵氏が主宰した原子力バックエンド問題勉強会(2011年秋〜2012年春)の提言が消滅しているので、Dropboxに掲載しておきました。核燃サイクル凍結というごく常識的な結論でした。
https://www.dropbox.com/sh/683pdcmsmcgd5is/AADjf5zY0BeIyUM7SIEZSZYHa?dl=0

この勉強会の調査会長だった馬淵氏は道をあやまって希望で立候補し、比例復活もなく落選、浪人中だが、立憲民主党でこの問題に再度取り組んでもらえないだろうか。

この勉強会に参加していた中野渡という青森2区の元議員(何してた人だか今何してるのか全然知らない)は、最後の結論がヤバくなりそうになって逃げ出したという笑い話もありました。

新たな提言(↓) 安倍首相および経産省支配の官邸への宣戦布告か?

外務省:気候変動に関する有識者会合
エネルギーに関する提言
平成30年2月19日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page22_002958.html

こちらも必読書
 ↓
当代一線の論者が原発問題群の「今」を一望(書評)
飯田 哲也 /2017年10月10日
「決定版 原発の教科書」津田大介・小嶋裕一編/新曜社
http://www.energy-democracy.jp/2109
「かつて原子力委員長代理も務めた鈴木達治郎氏が本書で提言する「対立を越えた根本的改革」は傾聴に値するが、それでも原子力ムラや安倍政権には通じないだろう。もはや「推進か脱原発か」ではなく「妄想か現実的か」の対立となっているのではないか。」

「推進か脱原発か」ではなく「妄想か現実的か」

これが、ここで長々と書いてきた意味そのもの。

<各市町村における具体論>

六ヶ所村
 再処理中止あるいは凍結の判断のあるなしに関わらず、乾式貯蔵施設の建設、核ゴミの移設・保管を続ける。農業・酪農・漁業+新エネルギーに加えて、廃炉・保管産業、核燃料税で成り立つようにする。廃炉は時間と費用がかかるはずで、将来世代への先送りになる(産業にはなるが)。

東通村
 東北電力1号機の再稼働はあり得ない。残りの広大な土地(東電・東北電)に、同様に新エネ+農業などを進め、地下への中レベル廃棄物貯蔵も検討。乾式貯蔵施設も検討。<高レベル廃棄物最終処分場の可能性>

むつ市
 中間貯蔵施設を「全量再処理前提」ではなく直接処分用に契約見直して活用する案と、このまま核ゴミ搬入を阻止して空の箱のまま別の手段で生き残る案とが考えられる。その議論についてはここでは省略する。

大間町
 工事中止の決め手は函館の裁判(活断層判断)になると予想。放射性廃棄物は発生しないので、廃炉産業としては成り立たない(急いで廃炉する必要がない)。活用しようがない。ダークツーリズムとして工事中止となった廃墟施設を数十年を目安に観光施設化し(原発カフェ、現代アート美術館など)、老朽化したら解体する。

最終処分場を県内に建設する可能性については、全否定せずに議論をオープンにしておくが、いずれにせよ政府による根本的な政策転換が起きない限り、いまの延長線上では最終処分場の問題が解決する見込みはない。

渡辺教授の科学的に誤謬のない説によると、各地域には活断層が存在する可能性が高く、<高レベル廃棄物最終処分場の可能性>については、慎重に検討する必要がある。県内には適地はないと思うが、「どこにも決まらずに青森県内に存置し続けるか、青森県に決まるか」のどちらかしかないように思う。

電力切替えで原発推進の東北電力から脱却を(青森県保険医新聞掲載)

2018年02月02日 | 東日本大震災・原発事故
 昨年12月のNHK「脱炭素革命の衝撃」をご覧になった方も多いと思う。安倍政権が推進している原発・石炭火力の輸出は世界の潮流に逆行しており、ビジネスチャンスも失っている。国内で先進的な取り組みを進めてきた企業の担当者が、厳しい指摘を受けて涙を浮かべていたシーンが印象的だ。

 すでに全世界で風力+太陽光は原発の約2倍に達しており、中国も原発から自然エネルギーへの転換を積極的に進めている。(映画『日本と再生』予告編を参照)



 個人でできる脱原発運動として、私の診療所(住宅兼用)では2012年秋に太陽光発電を開始した。不足分は依然として東北電力から買わざるを得なかったのだが、昨年末に青森県民エナジー(株)に切替えた。手続きは紙の上だけで、スマートメーターへの交換も東北電力が無償で行い、作業停電もなし。料金は全体で2%オフの見積り。売電していると他社に切替えできないのかと案じていたが、何の障壁もないことが山脇直司氏の講演会の際に同社社長から説明されて氷解した。このような簡単なことも、メディアやネット上の情報では伝わっていなかったのだ。

 同社の電力も自然エネルギーが4割程度ではあるが、残りも自由化市場から調達しているものであり(流れている電気は従来と同じ)、東北電力の支配から相当程度フリーになり、発言権を確保することができた。

 原発再稼働のために莫大な費用を投じている東北電力に多くの消費者がノーをつきつけることで、流れを変えることが可能なはずだ。

 本稿執筆中に吉岡斉氏(原子力市民委員会座長)の訃報が飛び込んできた。14年には当協会主催で講演会「なぜ脱原発社会なのか」が開催された。昨年末に発行された『原発ゼロ社会への道2017』が遺稿となってしまった。小泉元首相らの原自連が「原発ゼロ基本法案」を公表し、立憲民主党などとの協議が始まったばかりだったが、市民の側に立った専門家としての役割が今後も期待されていただけに、痛恨の極みである。ご冥福をお祈りします。

 鈴木達治郎氏が昨年末に上梓した『核兵器と原発 日本が抱える「核」のジレンマ』を、県民の必読書として推薦したい。昨年の鈴木氏の講演会要旨と資料は私のブログに掲載されている。併せてご一読いただきたい。

関連リンク

青森県民エナジー株式会社
https://aomori-energy.co.jp/

鈴木達治郎氏講演(7/15八戸)報告 医師会報掲載原稿
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/1c871f13d322025ee299e6043015e306

鈴木達治郎氏講演資料(7/15)と追加質問への回答を掲載
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/76d90ddd496b2b5dc6086f76b3685543

『核兵器と原発 日本が抱える「核」のジレンマ』講談社現代新書 著:鈴木達治郎
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884587

『原発ゼロ社会への道 2017 脱原子力政策の実現のために』原子力市民委員会
http://www.ccnejapan.com/?page_id=8000

「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟 2018年1月10日
http://genjiren.com/basiclaw.html

「原発ゼロ基本法案骨子案」(立憲民主党)
https://cdp-japan.jp/news/929

映画『日本と再生』予告編
http://www.nihontogenpatsu.com/

自然エネルギー白書(isep 環境エネルギー政策研究所)
http://www.isep.or.jp/archives/library/category/japan-renewables-status-report
(図の引用は自然エネルギー白書2016より)

「水素発電商用化=2030年に原発1基分(だけ)」 トップが阿呆だと国が滅ぶ<戦艦大和>

2018年01月01日 | 東日本大震災・原発事故
 未だに水素発電が「夢のエネルギー(※1)」などと思っているナイーブなお歴々も、この小さな記事で現実を直視せざるを得なくなるでしょう。。
(※1 2000年頃には私もそう思っていました)


 今から12年も経った2030年に、目標として「燃料電池車80万台、バス1200台、フォークリフト1万台」しか普及することができず、「発電と合わせた水素使用量の年間30万トン=原発1基分の100万キロワット相当」でしかないエネルギー源に、大きなビジネスチャンスだと飛びつく企業が1社でもいるとは到底思えません。

 私は自動車を全てEV化すべきとは思わないし、水素は海をまたいだ遠隔地からの運搬可能なエネルギー源という位置付けであればある程度の意味をなすかとは考えていますが、少なくとも燃料電池車(FCV)用の水素ステーションが地球の陸地上くまなく配置されるなどということが起こり得ないのは、最低限の知識と想像力があればどなたでもわかっていただけるはず。

ついでに言えば、夢のエネルギー源である「核燃料サイクル」と「水素社会」は両立するとは思えないのに、国や県、財界などはどちらも無批判に推進しようとしている。。

NHKの番組で涙を浮かべていた日本の企業戦士が哀れでならない。

水素発電商用化へ戦略決定 利用拡大で安価に
2017.12.26
 政府は26日、水素基本戦略を関係閣僚会議で決定した。平成42年までに水素発電を商用化するほか、自動車やバスなどモビリティー分野での水素利用を拡大する目標を掲げる。水素を大量に消費する社会基盤を整備し、調達価格を安く抑える方針だ。
 安倍晋三首相は会議で「水素はエネルギー安全保障と温暖化問題を解決する切り札になる」と述べ、日本が世界に先駆けて水素社会を実現することの重要性を強調した。42年段階では水素で走る燃料電池車を80万台、バスを1200台、フォークリフトを1万台普及させるとし、発電と合わせた水素使用量は年間30万トンを想定している。仮に30万トンすべてを発電で使うと原発1基分の100万キロワットに相当する量という。
http://www.sankei.com/politics/news/171226/plt1712260026-n1.html

福島県の甲状腺がん推定発症率と地域差のグラフ(2017.10)

2017年10月27日 | 東日本大震災・原発事故
10万人あたり
先行検査① 38.3 → 3.8
本格検査② 26.2 → 12.7
本格検査③ 5.1 → 2.5

①はスクリーニング効果10倍として 1/10
②は受診間隔2.1年として 1/2.1
③以降は受診間隔2年として 1/2

前回(2017.06)と同様にグラフ化してみました。


③の推定発症率は2.5で、進捗状況を考えると①の3.8は上回るものと思われますが、②の12.7には遠くおよばないでしょう。
この増減の傾向が明らかなものどうかは、4巡目(2018-19)の結果を見てみないとわかりません。(2020年頃)
当初の予想どおり、判断には10年を要する見込みで、その間、継続的な受診と精査・治療は必要です。


何度も繰り返してきたように、累積患者数が前回の190人から3人増えて193人になった、「やっぱり増え続けているんだ」と考えることに意味はありません。
累積患者数ではなく、発症率の増減が判断の基準になります。

4地域の発見率の地域差をグラフ化してみました。


13市町村では、2巡目の2年間で、スクリーニング効果とされている1巡目を大きく上回っており、13市町村>中通り>浜通り>会津という傾向も明らかです。
もし3巡目でこれと同じ傾向のまま減少するようであれば、2巡目での地域差が意味のあるものとほぼ確定できます。残りの地域の数字に注目していきたいと思います。

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    13市町村 中通り 浜通り 会津 県平均
2011-13 33.5   38.4  43.0 35.6 38.3
2014-15 49.2   25.5  19.6 15.5 26.2
2016-17 13.0   3.8    0   0 5.1
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