・もう「推進か反対か」という時代は終わった
・こちらから「勝利宣言」を出しても良いのでは
某所で行った議論への投稿が当面使い道のないものになったので、再構成して公開します。
あくまで頭の中をかき回してみた試論で、オリジナルの要素はほとんどないかと思いますが、議論のたたき台として活用してください。
「核燃サイクル後の未来」
「反核燃」から「ポスト核燃」へ
この2つは今回新たに考え出したキャッチフレーズです。
ご自由にお使いいください。
『核燃サイクル後の未来』 <要旨>
1.「反核燃」から「ポスト核燃」へ
核燃サイクルは頓挫し、事実上勝利している(名目上は政策転換の見込みはないが)。過去の固定的な(人によってはマイナスの)イメージが染み付いた「反核燃」から脱却し、より前に進んで、「ポスト核燃」(あるいは「核燃サイクル後の未来」)といった新たなキャッチフレーズを提示し、現実的な政策について開かれた議論のテーブルに載せることを目標とすべき。
2.立地自治体への謝罪(国からの)、補償(賠償)や新たな補助金創設、産業転換への支援を
「雇用と税収」が当面確保されることを保証し、新エネルギーと農業(ソーラーシェアリング)・酪農・漁業を中心に、廃炉・保管産業なども組み合わせて具体的な案を探る。
3.現在保管している核ゴミは中長期的に青森県内で乾式貯蔵を
脱原発と新たな核ゴミは受け入れないことを条件に、最終処分場における直接処分まで、県内の中間貯蔵施設で保管し、それを立地自治体の収入源とする。(乾式貯蔵への移設が原発の延命手段とならないことを確実に保証する)
<目的>
日本の原子力政策は、青森県や立地自治体(特に六ヶ所村)が変わらないと転換できない。しかし、県や立地自治体は自ら政策転換することが不可能な状況にあり、事業者も含めてどこからも変えられない「三竦み構造」に陥っている。
現在では、地元の首長選(知事選や市町村長選)で、いわゆる「反対派」候補が当選する可能性はゼロに近い。
しかし、選挙を通した議論で、従来の枠組みから数歩進んだ新たなプレゼンテーションを行うことにより、誰が当選するにせよ、結果的に将来の政策に取り入れられていくという計略が考えられないか。
<論考>(順不動で雑駁な思考錯誤)
前回の青森県知事選の際に、大竹進氏は青森県保険医協会会長に在職のまま(←報道の後に辞職)、正式発表前に「反核燃統一候補」というレッテルを貼られて報道された。あの時点で結果は自明であり、初動戦略の失敗だった。
ただし、同氏は「なくそう原発・核燃、あおもりネットワーク」共同代表(※)であり、共闘形態から判断しても「レッテル」は何ら間違っていなかったのだが。。
(医療・福祉・介護の専門家という、県民に最もアピールすべき部分が吹き飛んでしまった)
※このネットワークは、従来の反核燃団体だけでなく、一般の県民なども含めたネットワークを目指して、その結節点となりうる団体として、医師・歯科医師の団体である青森県保険医協会が参画し、共同代表の一翼を担ったはずなのだが、結果的に「ネットワーク」だけでなく、保険医協会まで反核燃団体であるかのように扱われてしまった。
最初の情報の出し方、プレゼンテーションに問題があり、慎重かつ効果的な戦略が必要だった。
私は同氏の立候補情報を知らなかったのだが、残念という気持ちを通り越して、その時点で数歩引いてしまった。結果的には、それでも健闘したと言えるのかもしれないが。
言葉やイメージは大事で、良くも悪くもメディアを利用しないと舞台に登ることすらできない。小池百合子の成功と失敗に学ぶべき。
「反核燃」イコール「雇用や税収を奪う」「非現実的」と認識されているのだから。
少なくとも、立地自治体の外から来る「反対派」は、地元の方たちから嫌われているという現状認識からスタートしないと、議論のテーブルに着くことすらできない。
新しいキャッチフレーズを考えてみた。
「反核燃」から「ポスト核燃」へ
…今さら反対しなくても動かないのは明らかなのだから。
もう一つ、同じ意味ですが、
「核燃サイクル後の未来」
「反核燃」ではなく「ポスト核燃」に変えたと言えば、反対をやめたのか(負けを認めたのか)と言われるかもしれないが、その正反対で、向こうが負けを認めなくても、実質的にもう動く見込みがないのだから、今更20年前と同じ構図で争う意味はなく、現実を認めて前に進むべきという意味。
こちらから「勝利宣言」を出しても良いかもしれない。
(核燃サイクルが頓挫していることの論証は省略)
「核燃反対」ではなく「推進か反対かの時代は終わった」と言えば、メディアや一般の県民も「何だろう?」と耳を傾けるし、「核燃サイクル後にお金も雇用も確保される、むしろそちらの方が得だ」という現実的な「未来」を提示すれば、内心では核燃サイクルは動かないのではないかと危惧している地元の方たちの理解も得られるはず。
要は「お金と雇用」の問題。地元の首長や議員が推進の堅持を主張しているのも、それしか生きて行く道がないと思っているから。しかし、このままだと「核燃サイクルは中止しないが再処理工場は動かず、核ゴミは貯まったままプールで冷やし続ける」というディストピア的な近未来像が現実的。
具体的には、
・中間貯蔵施設の建設と核ゴミの移設(場合によってはむつ市などと折半)
・核ゴミ保管による核燃料税の確保
・国からの中止に伴う補償措置と新産業転換(地元資本による再エネ産業)
・日本原燃の存続(あるいは改組)と雇用を保証すること
場合によっては、中レベル廃棄物(廃炉廃棄物)を実証施設として<一部>受け入れることも「生き残り策として」考慮すべきかと。
いま、原発・核燃推進派が2割、反対派が2割、残りの6割は中間派だと言われています(選挙における自民支持、野党支持、無党派層の割合も同様)。
推進・反対の論争に距離を置いている中間派(その多くは穏健で現実的な保守派)の理解を得られなければ何も変わらない。
(立地自治体では明らかな反対派はおそらく1割もいない)
なので、「6割」の普通の住民の一人でも二人でも、(こちらの話を聞いてもらうのではなく)対話してお話を伺っていくことが必要になってくる。
例えば、自然エネ100%以上という政策を掲げたとしても、六ヶ所村などでは既に実現しているはずだが、地元資本ではないのが問題。
地元住民と企業が出資した市民エネルギー会社(飯舘村などを参照)も考えらえるが、地元企業の動向・意向などが把握できていなければ、机上で考えても実のあるものにはならない。
極端な話、再処理工場がずっと稼働しなくても、安全対策の工事や維持管理などで地元の企業が成り立っていき、自治体の政策に不満がないのであれば、外から考えたり口を出したりしても意味がない。
(それは永遠には続かないのだから、その間に転換が必要なのだが)
この提言で重要な部分は、再処理せず直接処分を前提とした乾式中間貯蔵施設の建設と移設、つまり、最終処分場が出来るまで(多分私たちが生きてる間には出来ない)、県内に核のゴミを置き続けるという点です。
場合によっては再処理中止の明言がなくても、新たな核ゴミ搬入は中止するという条件で、「安全のため」という名目で中間貯蔵施設への移設を進めることも想定している。
「最終処分場を県外にする」という線は当面譲らないで、核ゴミの中間貯蔵施設にするということで考えていかないと、原発ゼロは実現しません。
日本原燃の存続または改組の意味は、核ゴミ管理および廃炉産業としての道です。
上記の2点(反核燃の言葉を取り下げる/核ゴミ当面存置)について、従来の「反核燃派」の方々に受け入れられるとは思っていませんが、2014年末の講演会で、先月急逝した吉岡先生に質問したところ、そのレベルの議論は既に済んでいるという印象でした。立憲民主党や原子力市民委員会との連携には、現実路線が必須です。
立憲民主党、小泉氏の原自連、原子力市民委員会が1月から協議しているので、その三者と連携して、整合性のある政策を立てる。その上で候補の出馬表明をするなら、注目を集めるかと思います。
『原発ゼロ社会への道』(原子力市民委員会)と、
鈴木達治郎先生の『核兵器と原発 日本のジレンマ』も必読です。
(参考=当ブログ内)
電力切替えで原発推進の東北電力から脱却を(青森県保険医新聞掲載) 2018年02月02日
https://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/1b6f2fd231985dc6d677fbe469837f58
(鈴木氏講演要旨、著作、市民委員会、原自連、立民党などへのリンクも掲載)
いわゆる「再処理永続法(2016年)」の附帯決議も読み直してみる。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/keizaiA434A071B3E18FCE49257F9C00271C6D.htm
法的拘束力はないが、この文面をみてみると、原子力委員会の判断が再処理稼働を制限(あるいは凍結)するかどうか、決め手になってくるように思える。
日米原子力協定自動延長が報じられているが、米国中間選挙後に、民主・共和両党の勢力図の変化や、各党の議員の動向によって、再処理に厳しい制限が課される可能性がないかどうか、探っていきたい。
立憲民主党のタウンミーティングは、東北では2月11日(日)郡山市だけでした。可能なら出席して意見交換できれば良かったのですが。
(県内には立憲民主党の組織も人材もゼロですから)
立憲民主党 | 「原発ゼロ基本法タウンミーティング」のお知らせ
https://cdp-japan.jp/news/929
立憲民主党の原発ゼロ法案(上記ページに掲載)に対する原子力市民委員会の意見は、こちらに掲載されています。
「立憲民主党エネルギー調査会・原子力市民委員会 対話集会」(2018/1/23)
・原子力市民委員会の基本認識
・立憲民主党「通称:原発ゼロ基本法案(骨子案)」についての意見
http://www.ccnejapan.com/?p=8424
もし県内立地自治体での首長選を考えるなら、
1)「政策」
2)「戦略・戦術」
3)「実務」
のそれぞれについて、最初から最後まで徹底的に動けるブレインが必要ではないか。
具体的には、
・地元自治体出身者、できれば在住者(様々な立場)
・自治体の予算・決算や政策を読んで解析できる人
・自治体の実務経験者、地元自治体の職員・元職員(匿名協力者)
・イベント、広告関係者など
・大学やNPOなどで地方自治や地域起こしの活動に携わっている人
・地方議員・元議員
・選挙実務経験者※
などの方たちの協力・参画を考えていかないと。
地元自治体の財政・予算・政策課題などを把握した上で、例えば二十項目くらいの実現可能な政策を提案できるなら別ですが、それなしに小泉元首相一人を呼んだとしても、大勢には影響しないでしょう。
無論、ここに書いたような戦略や人材を集積することができて、安部自民党が泡吹いて(息子である)小泉進次郎を送りつけてくるような状況をつくらないと意味がありません。
※例えば立憲民主党の東北3議員(うち2名は比例議員)およびその秘書などはどうか
山崎 誠(横浜市在住)
http://www.yamazakimakoto.jp/profile
岡本あき子(宮城1区)
http://okamotoakiko.net/
https://www.facebook.com/okamotoakikoofficial/
阿久津 幸彦
https://ameblo.jp/akutsu0626
従来の、反核燃団体、共産・社民・労組といった「反核燃」の枠組みを否定するわけではないが、それだけだと「1割以下」を「2割」に近づけるだけ。(実際、大竹先生は25%程度で「健闘」したと言える)
「6割」の一般住民の方に自分自身のリアルな将来を考える選択肢に残るためには、上記のような内外の幅広い勢力と協力者の参画が絶対的に必要。
青森県内の民進党に対して、何らかの期待をいだくことはできない。民進党の原子力政策が一貫したものでないのは、そういう党だし、だからこそ分裂して迷走している。
田名部匡代氏(参院民進党)は、内心まで核燃推進か現状維持なのかはわかりませんが、独自に反対またはポスト核燃といった意見を表明して活動していただける人ではないと思う。
父の匡省氏は核燃サイクル招致の際に地元に強力に働きかけた張本人ですから、匡代氏が「核燃サイクル後の未来」への政策転換について主体的に取り組んでもらえる可能性は非常に低い。
一昨年の参院選と昨秋の衆院選の経緯は以下の通り。
参院選で田名部氏が野党4党統一候補になったのは、他の野党や市民団体が安倍政権打倒のため「脱原発・反核燃」を封印して応援するという苦渋の選択だったはず。
その結果として当選したのに、多くの有権者の投票行動(主権の行使)を裏切って、衆院選で「希望」に寝返った。(だから衆院選で共産に対立候補を立てられて全敗した)
その際に、メールで一度やりとりしましたが、公的には他の野党なり県民に謝罪や仁義はなかったはず。
田名部氏については、本人がこれらの根本的な問題について解決しようという気がないことは明らかであり、政治家としては今回の選択ミスが命取りではないか。
万が一、田名部氏がこの問題に主体的に取り組んでもらったとしても、結果として「田名部vs大島・三村」の旧来の構図にされてしまったら、かえって有害無益となる。
民進党ではなく民主党政権の時に馬淵氏が主宰した原子力バックエンド問題勉強会(2011年秋〜2012年春)の提言が消滅しているので、Dropboxに掲載しておきました。核燃サイクル凍結というごく常識的な結論でした。
https://www.dropbox.com/sh/683pdcmsmcgd5is/AADjf5zY0BeIyUM7SIEZSZYHa?dl=0
この勉強会の調査会長だった馬淵氏は道をあやまって希望で立候補し、比例復活もなく落選、浪人中だが、立憲民主党でこの問題に再度取り組んでもらえないだろうか。
この勉強会に参加していた中野渡という青森2区の元議員(何してた人だか今何してるのか全然知らない)は、最後の結論がヤバくなりそうになって逃げ出したという笑い話もありました。
新たな提言(↓) 安倍首相および経産省支配の官邸への宣戦布告か?
外務省:気候変動に関する有識者会合
エネルギーに関する提言
平成30年2月19日
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page22_002958.html
こちらも必読書
↓
当代一線の論者が原発問題群の「今」を一望(書評)
飯田 哲也 /2017年10月10日
「決定版 原発の教科書」津田大介・小嶋裕一編/新曜社
http://www.energy-democracy.jp/2109
「かつて原子力委員長代理も務めた鈴木達治郎氏が本書で提言する「対立を越えた根本的改革」は傾聴に値するが、それでも原子力ムラや安倍政権には通じないだろう。もはや「推進か脱原発か」ではなく「妄想か現実的か」の対立となっているのではないか。」
「推進か脱原発か」ではなく「妄想か現実的か」
これが、ここで長々と書いてきた意味そのもの。
<各市町村における具体論>
六ヶ所村
再処理中止あるいは凍結の判断のあるなしに関わらず、乾式貯蔵施設の建設、核ゴミの移設・保管を続ける。農業・酪農・漁業+新エネルギーに加えて、廃炉・保管産業、核燃料税で成り立つようにする。廃炉は時間と費用がかかるはずで、将来世代への先送りになる(産業にはなるが)。
東通村
東北電力1号機の再稼働はあり得ない。残りの広大な土地(東電・東北電)に、同様に新エネ+農業などを進め、地下への中レベル廃棄物貯蔵も検討。乾式貯蔵施設も検討。<高レベル廃棄物最終処分場の可能性>
むつ市
中間貯蔵施設を「全量再処理前提」ではなく直接処分用に契約見直して活用する案と、このまま核ゴミ搬入を阻止して空の箱のまま別の手段で生き残る案とが考えられる。その議論についてはここでは省略する。
大間町
工事中止の決め手は函館の裁判(活断層判断)になると予想。放射性廃棄物は発生しないので、廃炉産業としては成り立たない(急いで廃炉する必要がない)。活用しようがない。ダークツーリズムとして工事中止となった廃墟施設を数十年を目安に観光施設化し(原発カフェ、現代アート美術館など)、老朽化したら解体する。
最終処分場を県内に建設する可能性については、全否定せずに議論をオープンにしておくが、いずれにせよ政府による根本的な政策転換が起きない限り、いまの延長線上では最終処分場の問題が解決する見込みはない。
渡辺教授の科学的に誤謬のない説によると、各地域には活断層が存在する可能性が高く、<高レベル廃棄物最終処分場の可能性>については、慎重に検討する必要がある。県内には適地はないと思うが、「どこにも決まらずに青森県内に存置し続けるか、青森県に決まるか」のどちらかしかないように思う。