踊る小児科医のblog

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『タバコに向かう保健医療専門家 - 行動と対策を』2005年世界禁煙デー(5/31)

2005年05月31日 | 禁煙・防煙
毎年5月31日はWHO世界禁煙デーで、国内だけでなく世界各国で無煙社会に向けた取り組みやキャンペーンが行われます。青森県タバコ問題懇談会の企画は少し遅れて6月18日になることはすでにご紹介しました。厚労省のページに、WHOで毎年出しているスローガンの翻訳などが掲載されているので紹介しておきます。「タバコ規制に関する保健医療専門家機関のための倫理綱領」の部分だけを引用しますので、全文はリンク先をご覧下さい。標題のタバコは原文ではひらがなですが、ここではカタカナに統一しているため変更しています。今回はテーマとスローガンが(同じ内容ですが)2つにわけられています。テーマの方は良いのですが、スローガンの "Action and Answers" が「行動と対策を」というのは翻訳として明らかな間違いではないにせよ、言葉のニュアンスが少し違うのではないだろうか。

2005年世界禁煙デー(厚労省)

テーマ : タバコ規制における保健医療専門家の役割
(The role of health professionals on tobacco control)
スローガン : タバコに向かう保健医療専門家 - 行動と対策を
(Health Professionals Against Tobacco, Action and Answers)

保健医療専門家とタバコ規制:WNTD 2005(2005年世界禁煙デー)

タバコ規制に関する保健医療専門家機関のための倫理綱領

前文:タバコ消費の減少に積極的に貢献し、国家、地域、世界レベルでタバコ規制を公衆衛生の基本方針に含めるため、保健医療専門家機関は以下を行うことに合意する。

1.  禁煙およびタバコのない文化の推進によって自らのメンバーが役割モデルとなることを推奨および支援する。
2.  調査および適切な方策の導入を通じて、自らのメンバーのタバコ消費傾向およびタバコ規制に対する姿勢を評価し、それに対処する。
3.  自らの機関内部およびイベントを禁煙とし、メンバーにも同様の行動を奨励する。
4.  該当するすべての保健関連会議および協議の基本方針にタバコ規制を含める。
5.  メンバーに対しては、科学的根拠に基づくアプローチおよび最善の実践によって患者およびクライアントにタバコ消費およびタバコの煙への暴露について日常的に質問し、禁煙方法について助言を行い、禁煙目標の適切なフォローアップを確保するよう勧告する。
6.  保健施設および教育施設に対しては、継続的な教育および他の研修プログラムを通じてタバコ規制を保健医療専門家のカリキュラムに含めるよう促す。
7.  毎年5月31日の世界禁煙デーに積極的に参加する。
8.  資金援助などタバコ業界からのいかなる支援も受けず、タバコ業界への投資も行わない。メンバーにも同様の行動を奨励する。
9.  利害関係宣言を通じて、タバコ業界における利害、またはそれらとの関係を有するパートナーとの商業的または他種類の関係について、自らの機関に規定の方策を確保する。
10.  自らの内部におけるタバコ製品の販売およびプロモーションを禁止し、メンバーにも同様の行動を奨励する。
11.  WHOタバコ規制枠組条約の署名、批准、実施につながるプロセスにおいて、積極的に政府を支援する。
12.  倫理綱領の実施に資金提供するなど、タバコ規制に金銭的および/または他の資源を提供する。
13.  保健医療専門家ネットワークのタバコ規制活動に参加する。
14.  公共の場での禁煙を目指すキャンペーンを支援する。

2004年1月28~30日にスイスのジュネーブで開催された保健医療専門家とタバコ規制に関するWHO非公式会議で、参加者による採択および署名が行われた。

2005年 卒煙表彰と「タバコやめてネ」コンテスト

2005年05月30日 | 禁煙・防煙
タバコ問題首都圏協議会で2002年から世界禁煙デーを記念して毎年「卒煙表彰」と「タバコやめてネ」コンテストを行っており、今年の結果も発表になりました。詳しくはホームページをご覧いただきたいと思いますが(やめてねの方は未掲載ですが下記に順位だけ引用)、

今年(2005年)の卒煙表彰では、
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 《個人》西城秀樹/松本人志/福山雅治/セイン・カミュ
 《団体》日本相撲協会(升席禁煙を評価)
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の4氏、1団体に表彰状が送られたとのことです。

ちなみに、これまでに、
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ブリリアント・グリーン/松崎菊也/aiko/西田敏行
島田伸助/徳光和夫/スガ・シカオ/小倉智昭
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の各氏に表彰状を贈っているとのこと。

ところが、なぜかここで終わらないのが不思議なところで、
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日本相撲協会から昨日「折角ですが、私どもは頂く立場にありませんのでお返し致します」(原文のまま)という短い手紙と共に、表彰状、禁煙ステッカーなどが、そっくりそのまま、送り返されて参りました。これを受け取ったからといって、何の利害得失、肉体的・精神的負担など全く生じないはずですが、「受取拒否!」には驚きました。もっと“太っ腹”な相撲協会と思っておりましたが、意外に神経質なのでしょうか?
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むむむ。なんだかわからんぞ、相撲協会。
“太っ腹”というよりも、それくらい柔軟な足腰と脳ミソがなくてどうするんだ?

2005「タバコやめてネ」コンテストの結果は以下の通りで、2年連続で和田アキ子がトップを独走しています(その前は3位)。コメント等はHPを参照してください。
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1.和田アキ子 (391)
2.ビートたけし(214)
3.明石家さんま(207)
4.浜崎あゆみ (150)
5.磯野 波平 (117)
6.丸山 茂樹 (104)
7.宮崎  駿 (96)
8.ぺ・ヨンジュン(88)
9.所ジョージ (85)
10.桃井かおり (80)
11位以下
=木村拓哉(73)/小泉今日子(32)/立川志の輔(30)/
 野比のび助(28)/清原和博(27)/星野仙一(19)/
 古舘伊知郎(23)/さくらひろし(22)/倉本聡(21)/
 広末涼子(20)以下略
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昨年の順位
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2004「タバコやめてネ」コンテスト
1 和田アキ子 415
2 木村 拓哉 164
3 明石家さんま 133
4 ビートたけし 130
5 小泉今日子 72
6 宮崎  駿 54
7 桃井かおり 51
8 養老 孟司 45
9 松本 人志 44
10 古舘伊知郎 30
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三種混合と日本脳炎の副作用の報道について

2005年05月29日 | こども・小児科
#先週末に報道された内容ですが、10年前から最近までの情報であり、この間1996年からは半年毎にデータは蓄積され随時発表されてきたはずなのですが、その中に含まれているものの総計なのか(私たちには)わからない点、日本脳炎に関してはADEMという種類の脳炎との関与が以前から疑われていて、その分を含めて副反応報告がなされていて、新たに発生した問題とは考えにくいこと、ワクチンの副反応認定にはいわゆる「紛れ込み事故」と思われるケースであっても時間的に疑いが否定できない場合は認定する「疑わしきは救済」という規定があること、特に日本脳炎の場合は「人から人へは感染せず、衛生状態の改善などにより患者数は激減したが、いまでも国内でウイルスは検出されていて患者発生もあり、中国や東南アジアではかなり蔓延していて、感染してその一部で脳炎を発症した場合に治療手段がないこと」などを念頭において判断しないといけません。それ以上の情報がないので、とりあえず新聞に出たよりもやや詳しい情報を掲載しておきます。

ワクチン接種後4人死亡 3種混合と日本脳炎
 ジフテリア・百日ぜき・破傷風の3種混合ワクチンと日本脳炎ワクチンで、接種の副作用とみられる脳症が1994年以降、それぞれ4件と7件発生し、うち各2人(いずれも乳幼児)が死亡していたことが分かった。
 厚生労働省が26日発表し「医薬品・医療機器等安全性情報」で注意を呼び掛けた。メーカーは同省の指示で既に添付文書を改訂している。
 3種混合ワクチンでの死亡例は96年と98年、日本脳炎ワクチンでは97年と98年。注意喚起や添付文書改訂が遅れたことについて、同省は「当時は報告の間隔が空き、まれな副作用だった」と説明。今年4月の予防接種法の実施要領改正に伴い、メーカーから副作用があらためて報告されデータがまとまった。
 厚労省は、詳細な副作用報告書を3年ごとに廃棄し、94年以降は件数だけを保存してきたが、こうした脳症について「集積件数を検索する機会がなかった」と説明。2003年以降はデータベースで詳しい情報を保存し、集積件数も自動的に出るようにしたという。
 記者会見で山田雅信(やまだ・まさのぶ)同省安全使用推進室長は「同種の副作用情報があるときは蓄積し、早く安全性情報を出したい」と述べた。

受動喫煙でも喫煙者と同じ量の発がん物質を吸い込んでいる

2005年05月28日 | 禁煙・防煙
Q.タバコの煙は直接吸っている人よりも周囲にいてその煙を吸わされている人の方が何倍も害が大きいと言われていますが、どうしてでしょうか。

A.受動喫煙の害については、若干表現や解釈上の違いがあったのかもしれませんが、もちろん喫煙者が毎日直接吸って長年吸い続けた方がトータルとしての害が大きいことは確かで、現在日本国内では喫煙によって毎年11万人以上の人が亡くなっているものと推計されています。一方、別の推計では、毎日家庭や職場で受動喫煙にさらされることにより、毎年2万人前後という莫大な数の方が亡くなっているということも最近わかってきています。

 これまた別の推計では、生涯にわたる曝露によって喫煙者は2人に1人(10万人あたり5万人)がタバコによる病気で亡くなっているのに対して、受動喫煙では20人に1人(10万人あたり5千人)が亡くなっており、これは環境汚染物質許容基準(10万人に1人)の5千倍にも相当する猛毒であることを示しています。

 また、一般的にご指摘のような「受動喫煙の方が害が大きい」ともとれるような表現を用いるのは、タバコの煙には主流煙(直接吸い込む煙)と副流煙(周囲に広がる煙)があり、非喫煙者は副流煙と喫煙者が吐き出した煙の混ざった環境タバコ煙(ETS)を吸っていることになります。主流煙と副流煙を比較すると、ほとんどの有害物質は副流煙の方に数倍から数十倍も高い濃度で含まれているからです。

 例えば、刺激性のあるアンモニアは40~170倍も高いため、受動喫煙によって目や鼻にきて涙が出たり目がチカチカしてきたりします。それだけでなく、タバコに含まれる代表的な発がん物質であるジメチルニトロサミンという物質は20~100倍も高く、一般的に非喫煙者は喫煙者が吸入する量の10分の1の煙を吸い込むとされていますので、喫煙者と周囲の受動喫煙者では吸入量にほとんど差がないということになります。

 ニコチンは副流煙に2.6~3.3倍程度高く含まれていますが、上記のように多くの有害物質はそれ以上の高濃度で含まれているため、尿の中のコチニンというニコチンの代謝産物を測定して受動喫煙の影響を調べる検査では、受動喫煙の害を低く見積もってしまっている可能性があるのです。

 米国における調査によると、日常的な受動喫煙によってがんにかかるリスクが1.6倍になりますが、これは広島型原爆を爆心地から2.5kmの地点で遮蔽物なしで被曝するリスクに相当します。これだけの危険な物質に一般の人が普通の生活で接するということは他の物質ではまずなく、タバコの煙は日常的にみられる中では最も危険な「猛毒」であり、「タバコのにおいがしたら逃げ出すように」と中学生への授業などではお話ししているところです。

 上記の数字などの資料は、いずれも『タバコ病辞典』~吸う人も吸わない人も危ない(加濃正人編、実戦社)から引用したものです。

12球団最下位決戦で楽天が中日を3タテ

2005年05月27日 | SPORTS
萬晩報というメルマガを購読しているのですが、26日に「超弱体球団、こんな楽天に誰がした」という成田氏のコラムが届いた途端に、球団初の3連勝。逆に中日は交流戦で全球団に負け越して4勝14敗の最下位というどん底状態。落合監督が「ウチが一番弱い」というのもその通りで、「あの」楽天に3連敗だからということではなく、どことやっても勝てない。この間、立浪の二塁打新記録ぐらいしか良い話題がなく、少年時代に中日ファンで今は東北人として楽天にも注目している1人としては、若干複雑な心境です。

楽天初の3連勝に田尾監督「最高の結果」<楽天15-3中日>
中日 どん底5連敗 投壊15失点 今季最悪

まあ中日は戦力的には揃っているし、交流戦前までは首位を独走していたくらいですから、それなりに建て直してくるだろうと思いますが、事前の交流戦対策が他球団と比べてどうだったのか、そのあたりの差が出ているのかもしれません。しかし、交流戦は1クール18試合を前期後期に分散させれば面白かったのに、どうして36試合をまとめてやることになったんだろう(と思ったら今朝の東奥日報社説に同じようなことが書いてありました)。

楽天も、このブログで以前ふれた本拠地開幕戦勝利と同じように、とりあえずは今回の敵地での3連勝を糧にして、この後も負けながらもフルシーズンを戦い抜ければ今シーズンは満足すべきでしょう。と同時に、成田氏の言うように戦力均衡を球界は真剣に考えるべきなのですが、結局ドラフト改革も一部球団のエゴによって全然進む気配がないし、プロ野球改革なんて言っても表面的なものかと思ってしまいます。

一場もあんなに安定しないフォームとコントロールであの程度投げられるのだから、普通なら中継ぎや敗戦処理で経験を積むべき投手で、急いで結果を求めても仕方ないですね。そういえば、根市はどうした?

セパ交流戦/プロ野球が面白くなった(東奥日報社説)
成田好三のスポーツコラム オフサイド

八戸地域における禁煙・防煙のための連絡会議のご案内(6/8)

2005年05月26日 | 禁煙・防煙
青森県タバコ問題懇談会では、八戸地域における禁煙・防煙活動の連携を行っていくために、顔合わせという意味を含めて各界・各団体に下記のような案内状を送付しました。先日ご案内した6月18日の世界禁煙デー企画に先立って、6月8日の夕方に開催します。御案内した団体以外でも、子育て支援などの市民団体、保育園・幼稚園、PTAなどの方、あるいは一般市民の方の個人参加も歓迎いたしますので、一緒に活動していきたい、禁煙活動に取り組みたいがどうしたらいいのかわからないという方は、是非ご連絡下さい。

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平成17年(2005年)5月26日
関係各位

小中学校における防煙(喫煙予防)教育を中心とした
地域における禁煙活動を進めていくための連携会議のご案内

       青森県タバコ問題懇談会 代表世話人 久芳康朗(八戸市)
                         山崎照光(青森市)
                         鳴海 晃(弘前市)

謹啓 日頃より未成年の喫煙予防や禁煙支援活動にご尽力いただきありがとうございます。
 さて、2年前の健康増進法施行による小中学校や公共施設の禁煙化に続き、本年2月末のタバコ規制枠組条約発効により、国内でも本格的なタバコ抑制政策への転換点を過ぎようとしています。しかし、青森県民の喫煙率は依然として高く、子どもたちの受動喫煙や中高生・妊婦の喫煙も深刻な問題で、県民の命と健康を守るためにもタバコ対策は急務と言えます。
 青森県タバコ問題懇談会は、タバコの害から県民の健康を守るために、医療、教育、保健、行政関係者など様々な分野の有志が参加して1998年に発足しました。
 三八地区では2002年に「三八地区で喫煙・禁煙問題を考える会~女性と子どもをタバコの害から守るために」を開催し、多数の関係者にご出席いただきましたが、その後継続的な連携活動に結びつけることができていませんでした。その間、2004年8月には懇談会の再結成シンポジウムを青森市で開催し、本年6月には世界禁煙デー企画として「脱タバコ元年 無煙社会を目指して」と題して講演会と県内の取り組みの報告を行うことになっております。(別紙参照)
 しかしながら、禁煙・防煙活動には、県内のそれぞれの地域における教育、医療、保健・行政関係者らによる継続的な連携が最も重要であり、特に小中学校における禁煙・防煙教育を積極的に行っていくために、関係者が一同に会してそれぞれの分野における活動について共通の理解を深め、今後の連携活動について話し合う機会を持ちたいと考えております。
 つきましては、急なご案内になって申し訳ありませんが、下記の日程にて連携会議を開催いたしますので、お忙しい中とは存じますが、万障お繰り合わせの上ご出席下さいますようお願い申し上げます。
 なお、この案内はご回覧いただき、禁煙活動に携わっている担当の方にも一緒にご出席いただければ幸いです。
                               謹白

               記

日時  平成17年(2005年)6月8日(水)18時30分~
会場  八戸プラザホテル本館1階(0178-44-3121) 当日の参加費無料
議題  各団体の禁煙についての取り組み状況の報告
    今後の禁煙活動、特に小中学校における防煙教育の連携について
御案内 八戸保健所、八戸市健康福祉部、八戸市教育委員会
    八戸市学校保健会、八戸市医師会、八戸市歯科医師会
    八戸市薬剤師会、青森県看護協会八戸支部、青森県分煙の会
    デーリー東北、東奥日報、NHK、青森県保険医協会三八支部

連絡先 くば小児科クリニック 久芳 康朗
TEL : 0178-32-1198 FAX : 0178-32-1197 e-mail : yasuro@kuba.gr.jp

参考  青森県タバコ問題懇談会ホームページ http://aaa.umin.jp/
 ○ 無煙社会に向けて 10 の提言(2004年8月28日採択)
 1. 全ての学校、医療機関、官公庁を全面禁煙に
 2. 青森県でも路上喫煙禁止条例の制定を
 3. 飲食店の健康増進法遵守を「常識」に
 4. 全ての小学校で防煙(喫煙予防)教育を
 5. 未成年の継続的な喫煙率調査を
 6. 喫煙率低減と「健康あおもり21」達成のための有効な計画と評価を
 7. 屋外タバコ自販機撤去へ世論の喚起を
 8. タバコ農家との対話と転作への政策転換を
 9. タバコと無煙のスポーツ・文化活動を
 10. 白神・奥入瀬を禁煙のシンボルに

----------------------- <FAX 0178-32-1197 > --------------------------
6月8日の連携会議に
□ 出席します → 出席予定(  )名(当日の追加・変更は連絡不要です)
□ 欠席します
       所属               氏名

修正後の臓器移植法改正案は「二つの死」から抜け出せたか

2005年05月25日 | こども・小児科
臓器移植法の改正案については、4/21の「臓器移植法改正案の修正作業を注視していく」の中で、河野太郎氏の「一律に脳死をもって死とする」私案を「臓器集めのためだけの案」と批判し、同時に現在の法律を「二つの死をつくった禁じ手」であるとも触れてきました。その中で取り組んでいた修正後の改正案については、まず河野氏のメルマガごまめの歯ぎしりから「5月23日 そう単純に「脳死は人の死」ではない」を規定により全文引用し、そこで批判されている各紙報道へのリンク(長期保存されないサイトもある)も掲載しておきます。

河野氏の「各紙の科学部のセンスにはため息が出る」というポイントと各紙の記載との差を見比べて、再読再々読くらいしてみる必要はあります。大事な問題ですから、それくらいの手間はかけないといけません。しかし、各紙の中で毎日の「家族が脳死判定を拒否する権利を、臓器提供につながる判定に限って認めた。提供に関係ない場合は、医師の裁量で判定し、脳死で死亡宣告ができるようになる」という記載は、河野氏の「脳死を人の死と考えない人は法的脳死判定を拒否することによって、「脳死」にならない」という説明と若干異なっているように思えます。このあたりが実際には重要なポイントになるので、法案の全文が出てきたらもう一度チェックしてみたいと思います。

もう一回整理すると、改正のポイントは1)脳死を一律に死とするか、2)小児の年齢規定についての2つで、2)に関しては虐待疑いの場合や本人の意志決定についてなどの検討が必要、と。

で、私自身の結論としては、現状では反対意見を踏まえて修正された改正案(河野・福島案)で進めるしかないのかなという気がしますが、これで良いと自信を持っては言えません。現行法の二つの死を踏襲して年齢だけ下げた斉藤案(公明)では、最大の目的である「臓器集め」の効果は乏しいし「禁じ手」は残るけれども、これでは駄目だと言い切るほどでもない。やはり難しい問題です。(割り切れる人にとっては難しくないのかもしれませんが)

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土曜日の各紙がいっせいに臓器移植法の改正案を取り上げる。
そして、各紙とも検討会がまとめた河野・福島案の解説をするなかで、河野・福島案は脳死を人の死としている、と。
あれだけメディアの質問に答えたのに、このいい加減な報道で、ため息。

検討会のたたき台となったもともとの河野案は「脳死は人の死」という案である。
脳死判定は医者の医療行為であるから、医者が必要だと思えば法的脳死判定を行うことができ、そこで脳死と判定されれば死亡届が提出される、という案である。
検討会ではここを大幅に修正した。

河野・福島案でも確かに「脳死は人の死」である。
しかし、河野・福島案は、脳死は人の死ではないと考えている人の意思も尊重しているために、河野案とは決定的に違う。
人が「脳死」になるためには、「法的脳死判定」が行われなければならない。
河野案では「法的脳死判定」を行うかどうかを決めるのは医者である。本人が脳死は人の死ではないと思っていても、家族が脳死になった本人を見て、とても死んでいるとは思えないと思っても、医者が脳死判定をして、脳死と判定されれば死亡である。
河野・福島案では本人が生前に脳死を人の死と認めていない場合や家族が脳死を死と認めない場合には、「法的脳死判定」を拒否することができるようにした。
脳死状態であっても、「法的脳死判定」が行われない以上、脳死にはならない。だから、脳死を人の死と考えない人は「脳死」にはならないことになる。
河野・福島案では、「法的脳死判定」に同意し、脳死と判定されれば、その人は「死んでいる」。だから、脳死になった者の身体から心臓を摘出しても殺人になることはない。
「法的脳死判定」が行われ、脳死と判定された者は、その者が臓器提供をしようとしまいと「死んでいる」。
現行法では、法的脳死判定が行われても、臓器提供をする者は死んでいて、そうでない者は死んでいないという同じ状態でも生きている場合と死んでいる場合がある。
河野・福島案では法的脳死判定が行われ、脳死と判定された者は臓器提供をするかどうかにかかわらず、死んでいる。
しかし、河野・福島案では、脳死を人の死と考えない人は法的脳死判定を拒否することによって、「脳死」にならない。

という、この検討会の最大の修正を「河野・福島案では脳死は人の死」とだけ書く各紙の科学部のセンスにはため息が出る。
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臓器移植法:与党から改正2案(毎日)
臓器移植法 対立2改正案提出へ(読売)
「脳死は人の死」で対立 臓器移植法、改正案一本化断念(朝日)
臓器移植法改正、国会に2案提出へ・与党有志の検討会(日経)
家族の同意で判定、提供 臓器移植法改正で2案(共同)

有森裕子、復活のラストランへ

2005年05月24日 | SPORTS
有森の夢「自己新で引退」という報道にはちょっと驚かされました。有森裕子の姿を偶然TVで見かけたのは、NHK教育で10時50分からやっている「視点・論点」という番組で、女性の割礼問題を中心とした女性の人権と、スポーツを通した親善活動について率直に語っていました。ゲストランナーとしては各地のレースに参加しているようですが、上記記事にもあるように、トップランナーとしては引退宣言はしてなくても自然にリタイヤしたものだと思っていたのです。

村上春樹の「シドニー!」には、シドニー・オリンピックに出場できなかった有森裕子が冒頭と最後に登場します。本文のハイライトの一つである女子マラソン高橋尚子の快挙と共に、有森のバルセロナ・アトランタの走り、そしてその後の苦しみなどが描かれている傑作だと思います(読んだ方はご存じだと思いますが、決してスポーツ熱血ものなどではありません)。有森と高橋というある意味で対照的な二人のメダリストは、共にピークを極めた後に小出監督から独立するという道を選んだわけですが、あと3年で復活して北京を狙うという高橋と、ラストランへ向けて自己記録の更新を狙うという有森の姿をレースでみることができる日はいつになるのでしょうか。(記事によると10月の岡山でハーフ出場とのことですが、たとえ国体のハーフであってもTV中継してほしいですね)

>30日にボルダーで開催される10キロレースに出場
>7月3日のゴールドコーストマラソン
>10月の岡山国体でハーフマラソン
>段階を踏んだ上で来年のマラソン復帰を目指す
>目標は2時間26分39秒の自己ベストを更新しての引退

先日話題になった高橋の独立(Go! アスリート 高橋尚子)については、小出監督の様子が増田明美のエッセイに掲載されていました(Webは後日のようです)。同じように小出監督から独立した千葉真子のレース転戦の様子も、あまり伝えられていませんが楽しみですね。(展望/女子マラソンのページが情報源です)

「ひとりの人間としてやれることをやりたい、それがモチベーション」有森裕子(cafeglobe.com)
「有森裕子と読む人口問題ガイドブック」(UNFPA 国連人口基金 東京事務所)
ハート・オブ・ゴールド
有森裕子らを講演に派遣するライツ

院内版感染症情報と診療・休診・各種教室の予定

2005年05月23日 | こども・小児科
○ 院内版感染症情報 ~2005年第20週(5/16~5/22)

 3月に比較的大きな流行になったインフルエンザは、4月に入って下火になってからも小さな流行が保育園などで残っていましたが、GWでほぼ終息したようです。4月中に同じように下火になっていたウイルス性胃腸炎が5月に入ってから再び増加傾向にあるのが気になる程度で、その他には水ぼうそうや溶連菌感染症が少しずつみられる程度で目立った感染症はなく、咳が多く出るタイプの風邪が主体となっています。
 5月から6月にかけては、例年ならヘルパンギーナや手足口病、夏かぜタイプのウイルス性胃腸炎、アデノウイルス感染症(咽頭結膜熱=プール熱)などがみられてくる時期です。
 今年も春に流行しやすい麻疹(はしか)は発生していませんが、1歳になったらすぐ麻疹の予防接種を忘れないように済ませておきましょう。

○ 5~6月の診療日、急病診療所、各種教室、相談外来の予定

 5月は全て暦どおりの診療で臨時休診はありません。6月18日(土) は青森県タバコ問題懇談会のため午後休診にいたしますのでご注意下さい。急病診療所当番は5月29日(日) 昼、6月7日(火) 夜、19日(土) 夜、21日(火) 夜の予定です。
 次回の赤ちゃん教室は7月16日(土)、ぜんそく教室は6月~9月に3回開催する予定です。「育児相談・子どもの心相談」「禁煙・卒煙外来」は、診療時間以外に水曜・土曜午後、平日夕方などにも相談可能です(初回のみ無料-禁煙外来で薬を処方する場合は実費)。
 メール予約システムをご利用下さい(別紙案内参照)    (院内報4・5月合併号より抜粋)

マスコミが伝えようとしないタバコ規制枠組条約(FCTC)の「本当の目的」 (2)

2005年05月22日 | 禁煙・防煙
前日の記事よりつづく)

>たばこが原因で死ぬ人は、一年間に世界で約五百万人、日本では約十一万四千人といわれます。
>そこで、たばこの害から健康を守ることを目的とした「たばこ規制枠組み条約」が、二月末から
>効力を持ち始めました。日本など条約を結んだ国は、たばこの害に取り組む約束を守らなければなリません。

 どうか考えてみてください。
 コンビニやスーパーに並んでいる商品の中で、その商品を「定められた正しい使い方で」使うことによって購入した人の2人に1人が亡くなっていて、毎年世界中で500万人もの犠牲者を出している上に、購入するのに許可もいらず、アジアの東の果ての島国では60万台もの違法野放し状態の自動販売機で未成年が自由に買うことができる、そんな商品が他にあるでしょうか。
 しかもこの死者数は毎年増え続けていて、2030年には毎年1000万人が亡くなると推計されているのです。
 日本は先進国ではトップクラスの喫煙大国で、成人男性の約半分、男女合わせて約3000万人もの喫煙者がいるのです。その中で青森県は更に喫煙率が高く、平均寿命はダントツで最下位です。県が行った調査によると、20代女性の喫煙率は全国の16%に対して、青森県では55%という信じがたい数字になっています。(この種の調査は方法などで変動要因が大きいのですが、それを差し引いても高すぎます。)
 これらの原因は「人々がタバコを好き勝手に入手しているから」ではありません(タバコ会社は裁判でそのように主張していますが)。タバコ産業が先進国から途上国へ、貧しい国や飢えた人々へ、成人男性から未成年や女性へと販路を拡大し続けているからです。もちろん日本も例外ではなく、自動販売機を撤去できない最大の理由は未成年への販売が全体の6分の1という大きなマーケットになっているからです。

 大人は「タバコのある社会」「タバコを自由に吸うことができた社会」に慣れっこになっていて疑問に思わない人が多いようですが、この話を中学生にすると必ず「それならどうしてタバコなんて売っているのか?」と質問されます。
 それが正しい疑問で、その疑問をもつことが「普通」なんです。

 この記事の表現では、タバコがこれからもこの世の中に普通に存在して売られ続けることを前提にして、『たばこの害から健康を守る』ことが条約の目的のように書かれていますが、決してそうではありません。タバコがこんなに入手しやすく大量に作られ売られている現状に対して、この条約は世界中の国が結束してタバコ産業の活動を抑えようとすることが真の目的です。言葉を返せば、国際条約を作らなくてはいけないくらいタバコ産業の力が強かったということであり、メディアが及び腰の記事しか書けないのも、広告費というタバコマネーの力が強大なものだからです(東奥日報の例はこちら)。子ども向け記事だからではなく、子ども向けだからこそ「狙われているのは子どもだ」という真実を書かないといけないのです。
 しかし、FCTC に批准したことで大きな転換点を過ぎ、その力関係も逆転へと向かいつつあります。

 もう一つ、日本と諸外国との決定的な違いがあります。
 諸外国では、国や州の政府がタバコ規制のための法律を制定したり、医療費の増大や情報隠しなどでタバコ会社を訴えたりしているのですが、日本では政府が日本たばこ(JT)の筆頭株主で半数以上の株を所有している事実上の国営会社であり、「たばこ事業法」という法律でタバコ産業を育成・奨励するように定めているのです。
 そして、タバコ病訴訟では、国はJTを訴えるのではなく、逆に一緒に訴えられている上に、JTが「受動喫煙の害は確立していない」とか「喫煙者が肺がんになったのは個別の因果関係は問えず自己責任だ」と主張してることを事実上認めているのです。(もちろんこのような主張は世界中のどこに行っても笑いものになるだけです)
 さらに、日米独の3国政府は FCTC 制定のための会議で、国民の健康を守るために厳しい規制を制定するよう働きかけるのではなく、国民の健康を犠牲にしてタバコ産業の利益を守るために規制を緩やかなものにするよう圧力をかけ続け、世界各国から“悪の枢軸”と非難されたという事実を、国民のほとんどは知りません。
 この構図は、水俣病や薬害エイズと全く同じで、諸外国が30年も前にきちんと規制を始めているのを知りながら放置し、健康被害を拡大し死者の山を築き続けてきた(現在も続けている)という悪質なものです。

 私も昔は、ただ「タバコは健康に悪いもので肺がんになりやすい」とか「未成年が吸わないようにさせたい」といったお題目程度のことしか理解していませんでした。しかし、ここに書いたような「日本の常識は世界の非常識」という現状を理解するにつれ、これは企業と国家による犯罪行為であり、医師としてこの状態に対して何も行動を起こさないのは共犯と言っても過言ではないと確信するようになったのです。(ちなみに『バカの壁』の養老氏の考えは全くその逆で「禁煙運動はナンセンスで必要ない」と発言し続けています。バカの壁を書いた本人がバカの壁を築いているとしか考えられないのですが、、もちろんご本人は喫煙者です。)

 皆さんの大切なご家族やお子さんが、タバコにとらわれた一生を過ごして毎日お金をタバコ会社に貢ぎ続け、そのあげくに平均して10年も老化を早めて寿命を縮める(※)などという馬鹿げた罠に陥らないように、そして、受動喫煙や妊娠中の喫煙によって、乳幼児の突然死や流早産をはじめとして、喘息や気管支炎、中耳炎、知能低下や低身長、問題行動や少年犯罪などの深刻な被害を受け続けている子どもが一人でも減るように、今後も地道に活動していきたいと考えています。

具体的にすぐにでも実現しなくてはいけないのは、
1.屋外タバコ自動販売機の撤去(IC識別カード自販機はまやかしの対策です)
2.タバコ税大幅増税を行い、諸外国並みの800円~1000円にする
3.健康増進法の改正(罰則規定追加)と、たばこ事業法の撤廃
4.タバコ税収の一部を用いてタバコ農家の転作支援を強力に推し進める
5.全ての小中学校における防煙(喫煙予防)教育
などで、その他にも個人のレベルから国や世界のレベルまで、やらなくてはいけないことは山積していますが、一人ではとてもできることではないので、懇談会というネットワークをつくって活動しているのです。

 5月31日の WHO 世界禁煙デーを記念して、6月18日に青森市のアスパムで「脱タバコ元年 無煙社会を目指して」と題して講演会と県内の取り組みの報告会を開催します。当日は午後休診となりますのでご了承下さい。

※ 20歳で吸い始めて元々80歳の寿命だった人が10年縮まるとすると、残りの人生(60年)が6分の5になるわけで、表現を変えると、1日が20時間に、1年が10か月になったのと同じことです。毎日4時間をタバコに捧げても惜しくはないですか?

マスコミが伝えようとしないタバコ規制枠組条約(FCTC)の「本当の目的」 (1)

2005年05月21日 | 禁煙・防煙
 2月末の条約発効を記念して書きたいと思っていたものが遅くなってしまいましたが、5月31日の世界禁煙デー記念もあわせて、みなさんに是非知っておいてもらいたい「本当のこと」をお伝えします(と言っても別に秘密でも何でもなく、私たちにとっては常識なのですが)。
 院内報用に書いたもので、少し長くなるので2回にわけます。

 デーリー東北や東奥日報に『ニュースなぜなに』という子ども向けのコーナーがあり、先日『たばこ規制枠組み条約 吸わない人の健康も守る 喫煙場所や広告など制限』という記事が掲載されました。
 私たちは、県内の医療、教育、保健、行政関係者が協力して禁煙活動を行うためのネットワーク「青森県タバコ問題懇談会」の活動の中で、マスコミ関係者にも参加してもらって、メディアに誤った内容や誤解・無理解を助長するような記事が載らないよう、そしてタバコ問題の真実を広く伝えてもらえるよう努力しているところです。しかし、モグラ叩きのように「問題のある記事」は出てくる。この記事も、全体として間違いは書いていないにせよ、肝腎のポイントをわざと避けて書いているとしか思えません。
 まずは、必要につき全文を引用してからそのポイントをお伝えします。

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たばこ規制枠組み条約 喫煙場所や広告など制限 吸わない人の健康も守る
 あなたのまわりにたばこを吸う人はいますか? 店の中や街角で「けむい」と思ったことはありませんか? あなたも知らないうちに、たばこの煙を吸っているかもしれません。
 たばこの煙にはがんを起こしたり、がんになりやすくするのを手助けする物質が、四十種類以上含まれています。たばこを吸う人は、がんや心臓の病気になりやすく、妊娠した女性の場合は赤ちゃんが死ぬ危険が高くなります。たばこが原因で死ぬ人は、一年間に世界で約五百万人、日本では約十一万四千人といわれます。
 そこで、たばこの害から健康を守ることを目的とした「たばこ規制枠組み条約」が、二月末から効力を持ち始めました。日本など条約を結んだ国は、たばこの害に取り組む約束を守らなければなりません。
 条約では、たばこを吸わない人の健康も守るため(1)職場や公共交通機関など、人が集まる場所での規制(2)たばこの箱の30%以上の大きさでその害を印刷する(3)たばこの広告を五年以内に禁止あるいは制限する(4)二十歳にならない人は自動販売機で買えないようにする。などが定められています。
 日本は前もって法律を作り、対策を進めてきました。去年から、電車やバス、県庁や市町村の役場、ホールなど、大勢の人が使う場所では広告できないようになりました。道路で吸うことを禁止し、違反者から“罰金”をとる市町村もあり、話題になりました。箱に、心臓の血管がつまって死ぬこともある心筋こうそくになる危険性を「一・七倍高めます」と表示したたばこも売られています。
 しかし、もっと禁煙を進めようという人たちは、「これでは不十分」と批判しています。たばこの税金を上げれば吸う人が減るのに、増税が話し合われていないからです。
 日本は、世界的にもたばこを吸う人の割合が高い国です。吸うことで病気になる人が増え、たばこを吸わない人の健康もそこなうたばこ。どうしたら減らせるのか考えてみましょう。
【写真】中国・上海の通りに登場した巨大な禁煙看板。効果のほどは?(AP=共同)
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 まずは見出しの『吸わない人の健康も守る』という表現は、「健康も」の「も」という一文字が入っているため明らかな間違いではありませんが、FCTC の本当の目的は受動喫煙の防止ではありません(規定にはありますが)。各国の政府がその国におけるタバコ産業の広告・販売促進活動を厳しく規制することにより、未成年者が新たに吸い始めることを防止するだけでなく、現在喫煙している人にも積極的に禁煙させて、結果としてタバコの消費を大きく抑制して喫煙率を大幅に低下させ、タバコ産業の「命を金にかえる商売」から各国の国民の健康を守ることにあります。受動喫煙の防止だけなら、すでに2003年に健康増進法が制定されています。健康増進法も、飲食店で禁煙・分煙が進んでいない現状を踏まえて「罰則規定」のある法律に改正しなくてはいけないのですが、ここではそれ以上は触れないでおきます。受動喫煙の防止は、すでに実現していなくてはいけない当然の義務であり、これを見出しにもってくるのは一種のまやかしと言えます。

>たばこが原因で死ぬ人は、一年間に世界で約五百万人、日本では約十一万四千人といわれます。
>そこで、たばこの害から健康を守ることを目的とした「たばこ規制枠組み条約」が、二月末から
>効力を持ち始めました。日本など条約を結んだ国は、たばこの害に取り組む約束を守らなければなリません。

(この部分に対するコメントとその続きは明日の記事に)

国内でもエイズ大ブレイクの危機~新たな予防指針策定へ

2005年05月20日 | こども・小児科
2月に「エイズ患者・感染者が年間1000人を超す」という話題を紹介し、その中で国がエイズを「性感染症」として位置づけていないこと(下記の熊本氏の論文参照)や、先進国の中で唯一増加し続けている国であり、お隣中国におけるブレイクと一緒にエイズ蔓延の危機にあることなどを書きました。

性感染症としてのエイズ(性の健康医学財団)
エイズ/性感染症をめぐる問題点(熊本悦明)

hunger free world の「特集 HIV / エイズの現在」によると、現在HIVに感染している人の推計数は4200万人(2000年末)、2002年に新たにHIVに感染した人の推計数は500万人(毎日1万3000人以上)、2002年にエイズで死亡した人の推計数は310万人(毎日8000人)で、そのうち240万人がサハラ以南のアフリカに集中しています。
(ちなみに、タバコ病による死者も毎年500万人と推計されています。)

世界で最も感染者が多い(約500万人)南アフリカ共和国からのリポートによると、
数字で見る南アフリカのエイズ危機(WASHINGTON 通信)
・国民全体の約12%が感染している。
・妊婦の4人に一人が感染している。
・性的にアクティブな年代の約22%が感染している。
・10万人の赤ん坊が感染している。
・毎日約700人ずつ新たな感染者が増えている。
・国民の平均寿命は現在約50歳だが、15年後には約40歳に落ちる。

とのことですが、これだけ深刻な数字でも日本人は「地球の裏側で起きていること」としか感じないのが普通だろうと思います。日本国内で起きていることに危機感を持ってもらうために、数字を身近なレベルに落としてみます。

「昨年1年間に新たに報告されたHIV感染者・エイズ患者数は計1165人、累積報告数は4月時点で1万人を突破」したとのことで、累積報告者の中には既に死亡した方もいると思いますが、それとは別に無症状で診断されていない潜伏期の感染者が多数いるものと考えて、
大雑把に感染者の総数を1万2000人~6万人(人口1万人~2千人に1人=0.01~0.05%)と推計してみます。(根拠はありません)
青森県は日本の「百分の一」、八戸市は24万で「五百分の一」として単純に人口比率だけで計算すると、
「青森県で120~600人、八戸市で24~120人の感染者」
という数字になります。実際には東京都や大都市圏に集中していて青森県の累積報告数は29人(0.3%)に留まっていますが、いずれは大都市と地方での感染率の差は縮まっていくものと考えられます。

厚労省でもその危機感から、
エイズ予防指針、都道府県中心に対策・厚労省検討会報告書案(日経)
>国のエイズ対策の基本となる「予防指針」の見直しを進めている厚生労働省は、
>エイズを誰もが感染リスクにさらされる「慢性感染症」と位置づけ、
>予防対策などの中心的役割は都道府県自治体が担うとする報告書案をまとめた。

という新たな予防指針を策定して対策を進めようとしているようです。「慢性感染症」というのがかえってわかりにくい曖昧な表現のように思えますが、同性愛者や「遊んでいる人」だけの特殊な病気ではなく「誰もが感染リスクにさらされる」という点を重視した転換なのだと思います。厚労省のHPには報告書案までは掲載されていないのでそれ以上のことには触れられませんが、新聞連載でも、

HIVとともに(大手小町・読売)
 心強い親の励まし(2005.5.20) 「遊んだツケ」の偏見(2005.5.19)
 発症前治療で普通に生活(2005.5.18) まさか夫が…自分も感染(2005.5.17)

というように、普通の人が普通に感染する時代になってきていることが強調されるようになってきました。別の記事では、

エイズ感染者・患者数、昨年初の1000人台(日経)
>エイズは感染から発症まで10年程度の潜伏期間があり、
>「エイズを発症した後、初めて感染に気づく」という事例が全体の約3分の一に上り、
>検査での早期発見が感染拡大の鍵とされる。

とありますが、潜伏期にある「自分はエイズとは無縁」と思っている人を検査して発見するのは至難の業であり、中高生あるいは小学生に対する性教育・予防教育が最も重要であることは間違いありません。しかし、ここで問題になってくるのは、山谷えり子みたいなわかったようなことを言う(それでいて事態の深刻さを全く理解していない)保守派の揺り戻しによって、性教育が大きく後退する危機的状況にあるということです。(やることが全く逆だ!)

タバコ問題でも同じですが、この国の指導者たちは、子どもたち、若者たち、そして多くの国民の健康や命を守るために真っ先に何をしなくてはいけないのかを、明確に示して行動に移すという簡単なことが何故できないのだろうか。別に考えなくてもいいんです。対策は示されているし、これだけ教育レベルの高い(高かった)国で、若者たちの無防備なセックスによりエイズが増え続けているということが、どれほど馬鹿げた(かつ悲劇的な)ことかさえ理解してくれればいいのですから。

新たな予防指針に沿った強力な対策を期待したいと思います。

五所川原少女監禁容疑者にみる「子どもを犯罪者に育てる方法」

2005年05月19日 | こども・小児科
世間の耳目を集める事件の際に出てくる情報の多くは取り調べ段階での警察のリーク情報なので、そのまま鵜呑みにするわけにはいかないのですが、今回の場合その前の公判記録が残されているので、かなりの部分は信憑性が高いものと思われます。ついでながら、ネット上では養子縁組前の旧姓(父親の姓)と同姓の元知事・代議士親子との縁戚関係が取りざたされましたが、こちらは全くのデマだったようです。(^^;

18歳監禁…小林容疑者の実態 「ハーレムつくる」…支配欲
ベンツで登下校…過保護/「唯一の理解者」…母溺愛(産経)

「王子」の異常な金銭感覚…アダルトゲームに1千万 小学生で小遣い10万円
元警察署長の首輪男祖父が逆なで発言(nikkansports)
少女監禁事件/おぞましい自閉の風景(東奥日報社説)

「子どもを駄目な人間に育てたい(スポイルしたい)なら、お小遣いやおもちゃを欲しいだけ与えればいい」といった意味の諺をきいたことがありますが(出典不明)、ここでは正にその言葉通りのことが行われたようです。家族関係や本人自身の病的な傾向(性格あるいは人格障害)などまで詮索するつもりはありませんが、もう一つ容易に想像できるのは、親もまた同じような育てられ方をしたのではないかということです(断定はできませんが)。執行猶予で保護観察中の息子を自由に上京させて、数十万円の仕送りを続けていたなど、普通の感覚ではとても考えられないことです。それにしても、この元警察署長だという祖父の「本人のせいじゃなくて、最近は女性の肌の露出が多い。着物の国で裸の女がいたら、誘っていると思われても仕方ない」という発言は常軌を逸しているとしか言いようがありません。しかし、本人は気づいていないのでしょう。伝えられている情報では、父方の祖父は保育園経営者のようですから、母方祖父なのでしょうか。

子育てには遺伝的要因と環境要因の二者がどの程度関わってくるのかが論議され、環境要因には幼少時の家庭環境だけでなく、年長児では学校や友人関係、そして今回も問題になっている各種メディアの影響なども関与してきます。一次的あるいは二次的な病的傾向や人格障害、精神病、各種疾病による精神的な症状なども考え合わせなければいけませんので、推測で断定的なことは言えません。ただし、冒頭に書いたようにお金やモノを欲しいだけ与えて育てれば、たとえ犯罪者にならなかったとしても子どもをスポイルすることだけは確かで、叱らない、我慢させない、過保護、溺愛、過干渉というのも一種の虐待、ネグレクトと考えた方がいいと思います。

ヘリコプターの悪夢ふたたび ~ ER X

2005年05月18日 | ART / CULTURE
"ER"が日本でも放映されるようになり話題を集めてからもう何年たったでしょうか。最近は、他のことをしながらの「ながら見」することが多かった"ER X"ですが、16日放映の第8話をみてビックリ。以前ヘリコプターに腕を切断されて義手となった外科部長のロマノが、なんと今度は屋上から墜落してきたヘリの下敷きになって死んでしまうのです。

このドラマをみていると、よ~くこんな話「つくる」なぁとか、医学的な知識や描写に感心させられることが多々あるのですが、今回はイマドキの特撮の進歩に対して失礼ですが「どうやってこんなの撮ったんだろう」という初心者的な驚き、そしてヘリが墜ちた後もいつも通り勤務が終わったら帰るスタッフに感心しきり。しかし、尼崎脱線事故や警察のヘリ墜落事故の後だからというわけではありませんが、下敷きになる直前の描写は夢見が悪い。ちょっと趣味がよろしくないというか(腕切断の時もそう思ったけど)、日本ではここまではとてもできないでしょう。ロマノも「イヤな奴」として人気キャラクターだったのですが、ここのスタッフは死亡退職(番組降板)が多いですね。

私も勤務医時代に数回、患者搬送のためにヘリに乗ったことがありましたが、普通に飛んでいるときは上昇下降も滑らかだし全然怖くないんですね。慣れれば観覧車より気持ちいい。でもまあ、もうそんな機会もないし、このまま一生乗らなくてもいいでしょう。ドラマの主人公じゃないので下敷きになる心配はまずないとは思いますが。