踊る小児科医のblog

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新型コロナ「ドイツ・韓国は検査増で致死率を抑制」の誤り→人口あたりの死者数グラフで一目瞭然

2020年03月31日 | 新型コロナ
新型コロナ対策の目標は死者数およびその増加スピードを最低限に抑えることであり、コントロールの指標は、検査数によって左右される「感染者数」を分母とした「致死率 CFR: case fatality rate」ではなく、人口あたりの死者数で比較しないとわかりません。

当初、自分で表計算シートに入れて比較していたのですが、作業が追いつかなくなっていたところで、青森大学の櫛引教授から札幌医大のサイトを紹介していただきました。
100万人あたりの死者数がグラフ化されています。(縦軸は対数目盛)

人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移(国別)
札幌医科大学ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html


画像は3月30日現在のスクリーンショットですが、イタリア、米国、ドイツなど、ほとんどの国は右上方に向かって同じような角度で増加している一方で、日本(下の方のオレンジ色)は、他の国にどんどん追い抜かれながら、死者数の増加スピードが抑えられていることがわかります。
韓国(中位にあるオレンジ色)も、日本と同じような角度に抑えられているように見えますが、桁が一つ上の範囲での推移ですから実際の差は開いています。

グラフの各点にカーソルを当てると、その日の数字が表示されるので、主要国の実数を表に入れてみました。


この数字を見ればすぐにわかるように、米国、ドイツ、韓国とも、致死率は日本よりも低くなっていますが、実際の指標である「人口あたりの死者数」の増加数(ピンク色)は、日本の6倍(韓国)、20倍(ドイツ)、28倍(米国)もあります。
(イタリアは日本の594倍となりますが、今回は比較対象にはしません)

これは、実際には感染爆発と死者の急増が起きているにも関わらず、検査数の増加により感染者数(分母)が死者数に対して相対的に大きくなっているからだと考えられます。

「検査数を増やしたから致死率を抑えられている」のではなく、三角形の底辺に近い軽症者や無症状者を多数検出することと、頂点にある死者数の増加スピードを抑えることとは関連がないように思えます。
(これだけで「逆効果である」とまでは言えないと思いますが。)

ただし、日本の増加の角度が抑えられてきたのはこれまでの話であり、これから先に他国と同じような角度に移っていくのか、それなりの範囲で推移するのかは、主に首都圏や大都市圏での流行拡大と地方への波及に対する対策(大都市圏における行動制限と地方における移入者対策の強化)によって決まってくるはずです。
この先の2週間が、その後の傾向について判断できるポイントになってくるでしょう。

新型コロナ「緊急事態宣言」で何が変わる? 都道府県単位で区域と期間を指定、外出自粛などを知事が要請(罰則なし)

2020年03月30日 | 新型コロナ
以下、最近の記事などから抜粋してまとめておきます。

「緊急事態宣言を出してほしい」日本医師会が会見、医療崩壊に危機感
「緊急事態宣言を出していただき、それに基づいて対応する時期ではないか」と提案。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5e817d91c5b66149226a148e
「入院状況は厳しくなってはいるが、現状においては新たな感染者への対応が可能。さらに(感染拡大が)急激になると、患者を収容できない状態になる」
「症状が軽症や中等症で、入院が必要ない人にはベッドを空けていただかないと重症者の治療ができない。自宅における健康観察、宿泊施設への移動をお願いしなくてはいけないというのが喫緊の課題だ」

「緊急事態宣言」…首相が地域や期間を指定し、知事が外出の自粛などを要請するという形になるようです。
(以下にNHK記事から抜粋)
28日の首相会見によると、罰則は伴わない。

政府/緊急事態宣言でも罰則なし「協力要請」
https://www.ryutsuu.biz/government/m032843.html
「ロックダウンのような状況。フランスのように強制的に罰則を伴うのではなく、知事からの要請と指示ということになり、その中で協力を得なければならない」

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・国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合と、全国的かつ急速なまん延により、国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合の2つの要件を満たすことが必要
・総理大臣は、緊急的な措置を取る期間や区域を指定し、宣言を出す
・対象地域の都道府県知事は、住民に対し、生活の維持に必要な場合を除いて、外出の自粛をはじめ、感染の防止に必要な協力を要請できるようになる
・学校の休校や、百貨店や映画館など多くの人が集まる施設の使用制限などの要請や指示を行えるほか、特に必要がある場合は、臨時の医療施設を整備するために、土地や建物を所有者の同意を得ずに使用できるようになる
・緊急の場合、運送事業者に対し、医薬品や医療機器の配送の要請や指示ができるほか、必要な場合は、医薬品などの収用を行える
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新型コロナ特措法基づく対策本部設置へ「緊急事態宣言」可能に 2020年3月26日
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200326/k10012351111000.html

新型コロナ:八戸市7名のうち5〜6名は誰にも感染させていない(専門家会議見解と同じ)

2020年03月30日 | 新型コロナ
濃厚接触者でPCR陰性だった人も、症状が出ないかもう少し観察する必要はありますが、2つのケースについてはここで断ち切れる可能性が高くなりました。
簡単にまとめておきます。

<流行の段階(フェーズ)>
八戸市では23日のスペイン旅行帰りの会社経営者と妻の2名、その濃厚接触者4名、28日の東京帰省女性1名、合計7名の感染が確認され、「1週間で感染急拡大、市民に広がる不安」という構図になっているようですが、これは連日報道されている「東京における(感染源不明の)感染者急増」のフェーズとは全く異なり、接触者をたどって封じ込めることが可能な「未流行国における散発例」の段階にあります。

ただし、東京からの帰省女性は元々の感染源は不明で、都内の感染拡大の結果として県内で検出されたので、今後も無症状や軽症の移入例が続いてくるものと考えて、特に首都圏との人の行き来は最低限に制限(自粛)しつつ、警戒が必要になってくるでしょう。
(折悪しく、新入学・転勤などで人の移動が最も多くなる時期なので)

そのような中で、県内での発生例が出てきた時に次のフェーズに移ることになります。
そこまで、いかにして時間を稼げるかが現在の最重要課題。

現段階では、市内のスーパーやバスで誰だかわからない感染者から感染する可能性は、1週間前とほとんど変わらず、1/10万(国内平均)よりも低い1/100万のレベルだと思います。
「3密条件」+県外からの移動者(旅行客・出張帰り)といった状況でなければ。

<接触者のまとめ>
最初の感染者はスペイン旅行1名、帰省女性1名と仮定
スペイン旅行の最初の感染者は誰だか不明だが、
1-a) 会社経営者(A)とすると、妻1名(B)、同行者4名(CDEF)、計5名に感染→その5名からの感染者はゼロ
1-b) 他の1名(C)だとすると、同行者4名(ADEF)、さらにそのうち1名(A)が妻(B)に感染

2) 帰省女性(G)の母も(−)

1-a) の場合、A→5名、他の6名→ゼロ
1-b) の場合、A→1名、C→4名、他の5名→ゼロ
7名のうち、5〜6名は誰にも感染させておらず、これは2月に出された専門家会議の見解「8割は家族を含めて誰にも感染させず、2割が複数名に広げている」と一致します。

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スペイン旅行 5名(+)男2・女3
       5名(−)男2・女2・不明1
(その他に4名関東+1名搭乗員:結果不明)
濃厚接触者 1名(+)会社経営者妻
      3名(−)
医療機関従事者 8名(−)
帰省30代女性 28日(+)
60代母親 29日(−)
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新型コロナ関連記事:東奥日報
https://www.toonippo.co.jp/category/news-original/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A

新型コロナ:6日間での欧州激変(人口あたりの死亡率で比較):先が見えないイタリア・韓国の拡大・日本の静的増加

2020年03月17日 | 新型コロナ
3月12日に(10日のデータを元にして)書いた、
新型コロナ:人口あたりの感染率・死亡率で比較:イタリア・韓国・日本の大きな違い(2020年03月12日)
https://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/5ee1ac330d0a3f11ab675462ca1d7fa1
の後の6日間の変動について。。

韓国は感染者数を分母とする致死率では0.7→0.9%の微増ですが、6日間で死亡者数は54→75で+21、人口1千万人あたりの死亡率も10.6→14.8で+4.2人となっています。
新規患者が回復者より少なくなっていると報じられているので、今出ている数字はその前の段階の重症者の反映なのかもしれません。

日本も死亡者が17→31(+14)と増加しましたが、主に高齢者施設での集団発生であり、ここが止まればまた緩やかになることが期待されます。
人口1千万人あたりの死亡率も1.3→2.4で+0.9人となっており、主な6国(一番下の表)の中では一番緩やかになっており、基本的にはこれまでの延長線上にあって急速に拡大する段階ではないと考えられます。

ドイツは死亡者数は2→11の9人増に留まっていますが、感染者数は5倍近くに増加しています。致死率の低さから、軽症者や無症状者を多く検出しているものと考えられます。

独仏伊と接しているスイスは、小国ながら感染者数は日本を抜いて9位となり、ドイツと同様に致死率は低いものの、人口あたりの死亡率はすでに韓国レベルに達しています。

真打ち米国は感染者数が5倍となり致死率は低下しましたが、人口あたりの死亡率では日本に迫る勢いです。
欧米諸国は封鎖や飲食店の休業など強力な規制に乗り出しており、今後の状況と政策の変化を見ていきたいと思います。

問題のイタリアは致死率が5%→7%超となっており、人口あたりの死亡率も桁違いに高い。
1千万都市東京で半月程度の間に新型コロナで300人が亡くなっている状況は想像できません。

高齢化率の高さや重症者を多く治療しているからなどと要因が報道されていますが、人口あたりの感染率なども圧倒的に高く、毎日増加する重症者・重篤者の治療が追いついていないことが想像されます。

(中国チームが応援に入ったとのことで注目されますが、日本は国内対策がまだまだこれからで、地方の医療リソースも薄氷の状態なので、他国への応援などできない状況です。)

2020年3月16日現在


2020年3月10日現在(前記のページより再掲)


主な国の人口あたり感染率・死亡率(3/10→3/16)

新型コロナ「PCR検査拡大で早期発見治療」が間違いである理由:陽性的中率は0.7%しかない(99%は偽陽性)

2020年03月13日 | 新型コロナ
なんとも頭が痛い。同じことを何度も書きたくないのですが、医師免許を持っている自称識者(?)でも「PCR検査を韓国並みに拡大して、早期発見治療」などと唱えている。
もちろん、まともな医者ならそんなこと言う人は誰もいないのですが。。

現在のPCR検査は感度が70%かそれ以下で、2回3回と検査して陽性になることも多く、陰性であることが感染していないことを意味しない(偽陰性)。
それが一つ。

更に大きな理由が、
陽性的中率は事前確率(ここでは検査対象者の「有病率」として表記)によって大きく変動し、有病率が小さい時には陽性的中率は低くなり、ほとんどが偽陽性になってしまうことです。
(陰性的中率は逆の変動をする)

ここで使ったエクセルのシートを公開します。ダウンロードして、ご自身で有病率の欄に適当な数字(%)を入れて確かめてみてください。
http://www.kuba.gr.jp/data/2020/2by2table.xls

前回は感度を95%に設定しましたが、現実に合わせて70%に下げます。

「感度70.0%、特異度99.9%」を固定して、
有病率を0.001%(10万人に1人)、10%、90%と変動させてみます。

1) 有病率 0.001%

 10万人の中の1人を見つけるために検査しても、陽性的中率は0.7%しかなく、100人も偽陽性が出てしまい、肝腎の1人は30%の割合で偽陰性となって見つけられないかもしれない。
 現在の日本では平均すると1/10万ですが、これは接触者や有症状者などの中で見つかったもので、リスクの低い国民の有病率はおそらくもう一桁低いと思われます。その程度の集団に対して、軽い風邪症状程度で「早期検査」して、1000人に1人陽性者が見つかったとしても、その99.3%は偽陽性であり、有害無益でしかありません。

2) 有病率 10%

 これは現状の「接触者や医師が必要と認めた有症状者」に相当します。
 陽性的中率 98.7%
 陰性的中率 96.8%
この数字は、いずれも臨床的に許容範囲内で、検査は有効に機能していると言えるでしょう。10万人検査して、陽性者7090人のうち、真の感染者が7000人、90人が偽陽性です。(感染者のうち3000人は偽陰性)
 偽陽性を更に少なくするためには、更に事前確率を上げる必要がありますが、そうすると3割もいる偽陰性者や、検査対象外とされた中での陽性者の見落としが増えるので、ある程度幅を広げて「有病率5〜10%程度と想定される対象者」に検査するのが現実的と言えるでしょう。(5%の場合、陽性的中率97.4%、真陽性3500人、偽陽性95人)
 
3) 有病率 90%

 この状況は、インフルエンザの流行期に典型的な症状で受診したけれど、(必要ないと思いつつやむを得ず※)検査したような場合です。
 陽性的中率 99.98%(=100.0%)
 陰性的中率 27.0%
その結果、陽性なら間違いないけれど、陰性でも大半はインフルエンザと診断できるので、インフルエンザの薬を処方することになります。
 要するに、検査結果が診断や治療方針に影響しないので、このような検査は本来は不要なのです。

※これまで日本中の内科や小児科で、求められるのに応じてやむを得ず検査してきたことが、現在の「検査狂想曲」に繋がっていると考えて間違いないでしょう。

4) 有病率 1%
 表には示しませんが、陽性的中率 98.7%、陰性的中率 96.7%となり、まずまずと思われるかもしれませんが、10万人の中の1000人の感染者のうち、300人は見落とし、残りの700人は陽性となったが、それに加えて99人が偽陽性となる計算になります。
 PCR検査で陽性の場合はそれ以上の検査はなく、真の陽性と偽陽性の区別はつかないので、感染者として隔離されたり治療されたりすることになります。
 799人中99人は少し多すぎるように感じられます。

3月13日現在、青森県ではPCR検査を68件に実施して、陽性はゼロのままです。医師が必要と認めた対象者の中でも、この「1%」に満たないレベルなので、一般の県民の中で検出される可能性は、上記の通り1/100万かそれ以下と考えられます。

新型コロナウイルス感染症について(青森県)
https://www.pref.aomori.lg.jp/welfare/health/wuhan-novel-coronavirus2020.html

新型コロナ:人口あたりの感染率・死亡率で比較:イタリア・韓国・日本の大きな違い

2020年03月12日 | 新型コロナ

イタリアは既に人口あたりの感染率、死亡率でも中国の3倍前後に達していて、致死率(CFR: case fatality rate)でもイラン、中国を上回っています。

主にイタリア、イランの状況がWHOのパンデミック(Pandemic)宣言の要因になっているのでしょう。
endemic(地域流行)→epidemic(流行)→pandemic(世界的流行):国中や世界中で、感染症が流行すること

米国はまだ数としては多くないが、致死率CFRがイランや中国並みに高くなっている。米国は大都市の高度医療は発達しているが、医療格差が大きく、無保険者も多く、世界の経済や人の交流の中心なので、ここが主戦場になるでしょう。

日本は「検査不足による感染者数の見かけ上の少なさ」を指摘する人もいるようですが、有症状者や接触者など比較的絞り込まれた検査で発見された中では、致死率は高くはなく、人口あたりの死亡率もまだ抑えられた段階にあると言えます。
(無症状や軽症の感染者が数倍〜10倍程度いるはずだということは医師や関係者は最初から想定していることで、北大教授の推計もその前提に沿ったものです。)

今後、検査件数が多くなるにつれ、軽症・無症状者の割合が増えて致死率が低下することが期待されます。
(CFRではなく、潜在的な患者数を母数に考えれば、その1/10程度まで下がります。例えば、日本人の1割が感染して、0.1%が死亡すると考えると、1万人程度という数字=季節性インフルエンザと同レベル=が出てきます。これをどう考えるかが問題なのです。)

一方、韓国は1つの宗教団体からのアウトブレイクとその接触者つぶしをかなり徹底して行った結果、感染者数、感染率はイタリアと同等ですが、致死率は1/7程度(日本の半分程度)に抑えられており、これが「軽症者を見つけて治療しているから検査を早くした方が良い」という見解を生んでいるようです。

しかし、人口あたりの死亡率は日本の8倍もあり、軽症者の割合が多かったことで見かけ上の致死率は下がっているが、死亡率から推定すると、相応の流行が起きて重症者が多数発生していたと考えて良いので、今後の二次・三次感染の拡大がどの程度抑えられていくのか、注目されます。

日本の流行は、2月中旬に予想したよりもずっと少なく、現在、八戸市内では子どもはもちろん大人の呼吸器感染症も流行していないようです。

青森県の検査件数と陽性者数(まだゼロ)の推移が一つの目安になります。
 ↓
新型コロナウイルス感染症について
https://www.pref.aomori.lg.jp/welfare/health/wuhan-novel-coronavirus2020.html
3月11日現在 検査件数 63件 陽性 0件