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福島県:甲状腺がん:市町村別マップ:本格調査で地域差を示唆(201602)

2016年02月19日 | 東日本大震災・原発事故
昨日掲載した、
福島県の甲状腺がん:市部比較:先行[本宮>二本松>白河]、本格[伊達>本宮>南相馬] 2016年02月19日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/7070502417fa10c1e1c78963b03b8468

の続きですが、本格調査ではかなり心配な地図が出来つつあります。

本格調査(2016年2月発表時点まで)


先行調査(2015年8月発表確定版)


地図上の色分けは、それぞれ県平均(先行調査37.3人、本格調査21.6人/10万人あたり)を基準として「何倍の範囲か」で区分してあります。
 3 ≦   濃いオレンジ色
 2 ≦ < 3 薄いオレンジ色
 1 ≦ < 2 山吹色
 0 < < 1 クリーム色
 0    白色

本格調査は、一次受診率が62%、一次判定率が93.0%、二次受診率が64.4%(特に2015年度は32.6%)の段階ですから、まだ中通り・会津のデータが今後加わってくることになりますが、おおよその傾向はこの段階で見えてきたと言えるのではないか。。

先行調査では、小さな町村(川内村、川俣村、大玉村、平田村、湯川村など)で一人二人検出されると大きく頻度が上昇するので、かなりバラつきがありますが、これらの濃い色の町村を差し引いて眺めてみると、やはり浜通りと中通りの市町村に分布している傾向が見えてくるのかもしれません。この段階で地域差をはっきりと言うことは難しいと思いますが、その後のデータと比較するための基礎資料として残しておきます。

なお、同じような地図をネット上で掲載しているサイトがあるかと思いますが、先行調査と本格調査の患者数を「足して」マップに色分けしているために、上記のような変化が見えないものになっています。

一昨日(2/17)にも同じことを書きましたが、両調査の結果は「足す」のではなく「割る」(増減を比較する)ことが肝要です。

福島県の甲状腺がん:市部比較:先行[本宮>二本松>白河]、本格[伊達>本宮>南相馬]

2016年02月19日 | 東日本大震災・原発事故
これまで、地域差や市町村別の有病率・発症率の差を論ずるのは時期尚早と考えてきたが、県民調査の委員会では「地域差なし」、津田論文では「地域差あり」と断定的に書かれているので、この段階で検討してみることにした。

ポイントは、両論にあるような大きな括りで分けずに、統計的な正確さよりも、定性的な傾向を眺めながら考えられるようにすること。

相当数の母集団があって比較可能と考えられる市部(13市)と、浜通りの町村+川俣村(合計受診者数では須賀川より多く3市に次ぐ)、その他の町村の3つに分けて検討してみることにした。
恣意的ではないかと批判されるかもしれないが、「恣意的」ではなく「意識的」に振り分ける作業がこの段階では必要ではないかと考えて、あえてこうしてみた。(これも一つの仮説)

本論の前に、このような小さな頻度の比較の際に、県民調査の資料にあるようなパーセント%(百分の一)という大きな単位で表記することは、事態を過小評価するためのまやかしと言わざるを得ない。
有病率や罹患率(ここでは発症率と表記)などで標準的に使われる千人あたり、あるいは十万人あたりを採用すべきで、ここでは十万人あたり(パーセントの千分の1)で統一する。

0.10%=100人/10万人あたり この2つは同じ数字
「99.90%はがんではない」と言われれば、ほとんど心配ないようなイメージに受け取られかねないが、「子ども10万人あたり100人ががんになった」と表現すると、全く違った印象を受けるはず。

全体の比較は以下の通り。

■ 先行調査(2011-2013)
浜通り町村+川俣村 45.9人/10万人あたり(以下同じ)
市部平均      38.5
=県平均      37.3=
その他の町村    27.7

■ 本格調査(2014-2015)
浜通り町村+川俣村 24.9
市部平均      24.2
=県平均      21.6=
その他の町村    5.8

先行調査の「平均37.3人」と本格調査の「平均21.6人」の意味合いについては一つ前のentryに記載したように、先行調査ではスクリーニング効果10倍として1/10(=3.7人)、本格調査では受診間隔2.5年として1/2.5(=8.6人)を推定年間発症率と考えている。この数字は本格調査では14.4人まで増える見込みである。
「本格調査では先行調査より減った」のではなく、2~3倍程度の増加と推測されている。

以下、先行・本格調査について列記します(詳細は表を参照)。

先行調査・本格調査とも、浜通り町村>市部>全県>その他の町村となっている。特に、本格調査ではその他の町村と浜通り・市部との差が大きくなっている。
(2015年度の検診進捗状況により縮まるものと思われるが)

先行調査で県平均より高い市は、本宮・二本松・白河・いわき・田村・郡山・会津若松の7市。浜通り町村は7位の会津若松と同じ。

本格調査で県平均より高い市は、伊達・本宮・南相馬・田村・郡山・相馬の6市。浜通り町村は6位の郡山と7位の相馬の間。
伊達・本宮は県平均より約3倍高く、南相馬・田村は約2倍高く出ている。

特に本宮市が先行・本格とも1位・2位にランクインしてることと、本格調査で伊達市が他を引き離して断トツで多くなっていることには注意が必要であると思われる。

これだけだと眺めて考えるには視覚的材料が不足してるので、地図に落として考えてみたい。(明日以降)

(追記)市町村別マップは次のページに掲載しましたので、併せてご覧ください。
 ↓
福島県:甲状腺がん:市町村別マップ:本格調査で地域差を示唆(201602) 2016年02月19日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/ad7054c9962a2adf425dd3dc7ee11bab


----------------------------------------------------------
■ 先行調査(2011-2013) 201508確定

◎ 市部
本宮市   57.3
二本松市  56.5
白河市   55.5
いわき市  48.6
田村市   47.4
郡山市   46.2
会津若松市 45.9
=県平均  37.3=
須賀川市  33.1
福島市   25.4
伊達市   18.9
南相馬市  18.5
相馬市   0.0
喜多方市  0.0
----------------------
市部平均  38.5

◎ 浜通り(町村)+川俣村
川内村  357.1
川俣町  90.0
浪江町  61.6
大熊町  50.7
富岡町  43.4
=県平均 37.3=
飯舘村  0.0
新地町  0.0
広野町  0.0
楢葉町  0.0
双葉町  0.0
葛尾村  0.0
----------------------
浜通平均 45.9

◎ その他の町村 27.7
◎ 全県平均   37.3

----------------------------------------------------------
■ 本格調査(2014-2015) 201602発表

◎ 市部
伊達市   77.4
本宮市   62.9
南相馬市  46.1
田村市    40.6
郡山市    32.6
相馬市    22.3
=県平均  21.6=
福島市   18.9
会津若松市 18.7
二本松市  12.8
白河市   10.4
須賀川市  9.1
いわき市  6.1
喜多方市  0.0
----------------------
市部平均  24.2

◎ 浜通り(町村)+川俣村
浪江町  82.6
大熊町  60.5
=県平均 21.6=
川俣町  0.0
飯舘村   0.0
新地町  0.0
広野町  0.0
楢葉町  0.0
富岡町  0.0
川内村  0.0
双葉町  0.0
葛尾村   0.0
----------------------
浜通平均 24.9

◎ その他の町村 5.8
◎ 全県平均   21.6

一次受診者数と患者数の実数を含む表は、以下に画像として掲載。







福島県の甲状腺がん(2016年2月)39→51人、推定発症率7.8→8.6/10万に

2016年02月17日 | 東日本大震災・原発事故
2016年2月15日発表のデータをチェックしてみましたが、これまでの延長線上で増えている形で、新たな知見はありません。
先行調査のデータは追加修正なし。(2011-2013)

本格調査(2014-2015)は、前回(2015.11)と比較して、
2016.02発表 51人(A1 25人、A2 22人、B 4人)
2015.11発表 39人(A1 19人、A2 18人、B 2人)
     差 12人(A1 6人、A2 4人、B 2人)
(カッコ内は先行調査の結果で、A1からの発見がやや多めになってきている)

単純計算した発見率(患者数/一次受診者数)は、
先行 2015.08発表 37.3人
本格 2015.11発表 19.5人
本格 2016.02発表 21.6人/10万人あたり

これを、当サイトで従来より実施している
先行調査 スクリーニング効果10倍として 1/10
本格調査 受診間隔2.5年として 1/2.5
を掛けると、

推定の年間発症率は、
先行 2015.08発表 3.7人
本格 2015.11発表 7.8人
本格 2016.02発表 8.6人/10万人あたり



一次の判定率と二次対象者の受診率を加味すると、
 14.4人/10万人あたり
まで増加するものと推計されます。
(前回の推計値は12.4)

この数字は、現時点でベラルーシの思春期の1999-2000年の数字「6.6~9.5」に相当し、補正後の推計値は同じく2001年のピーク「11.3」を上回ることになります。(グラフは下に再度引用)

同日発表になった「中間とりまとめ最終案」でも、先行調査について「数十倍のオーダー」で発見されているが、放射線の影響は「完全には否定できない」としつつ、「考えにくいと評価する」と結論づけている。

一方、本来の目的である本格調査のデータの評価方法については、「どういうデータ(分析)によって、影響を確認していくのか、その点の「考え方」を現時点で予め示しておくべき」という前回の案とほぼ同じ内容であり、驚くべきことに、現在続々と発見されている本格調査の患者数が「増えているのか減っているのか」を評価する方法を全く用意していない事実が明らかになっている。

おそらく、これは現実を隠すための方便であろうと推測する。
先行調査で「数十倍のオーダー」だという一般的にはインパクトの強い結果の議論に焦点を向けることによって、先行調査の2~3倍(当サイトの評価方法)だということが明らかになりつつある本格調査の結果に、しばらくの間(=数年程度)目をそらさせることを考えているのだろう。

あるいは、気がついていないだけかもしれないが。

前回(201511)の結果についての記事;
福島県の甲状腺がん(11/30):本格調査で39人、推定発症率7.8人(補正後12.4)/10万 倍増は確実 2015年12月12日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/b244bf096d0d4f0d1a853a7101d9e47e

ベラルーシのグラフ



(追記)どうして「いわゆる脱原発派(※)」の人たちは、先行調査と本格調査の患者数を「足して」こんなに増え続けていると言いたがるのだろう。足すんじゃなくて「比較して」増えてるかどうかが問題なのに。。

※丸川環境大臣が創作した新用語である「反放射能派」と同義なのかは不明。また、ここで「いわゆる」を付けたのは、脱原発を考えて活動している人たちが皆んなそうなのではないという意味。

デヴィッド・ボウイの “レッツ・ダンス” は反核・文明批判の曲だった

2016年02月11日 | ART / CULTURE
ベスト・ヒットUSAのデヴィッド・ボウイ追悼特集。
例によって “レッツ・ダンス” のビデオも。
当時何度も見たはず、だが、、

David Bowie - Let's Dance
https://www.youtube.com/watch?v=N4d7Wp9kKjA

ボウイは乾燥地帯の一軒家のパブで歌う
アボリジニと思われる原住民の若者たち
「赤い靴」を履いて踊り出す女の子
(映画「赤い靴」を思い起こさせる>観てないが)
彼方に原爆のキノコ雲。まばゆい光を見つめる若者たち
(オーストラリアではイギリスが核実験を行い被曝させている)

若者たちは都市で道路清掃などの下働きに
高級品のショップやレストラン(バブル前の80年代)
「赤い靴」を皆で踏みつけ、岩山に登ると
軍事ヘリが上空を飛ぶ巨大都市

最後のシーンでオペラハウス、シドニー、オーストラリアだとわかる


この “レッツ・ダンス” は、今となっては、これはこれで名曲だと素直に受け入れられるが、当時は何でボウイがこんな下らない曲を書いて歌ったのか残念に思い、気持ちが離れた。
(その後は、93年の Black Tie White Noise を聴いただけで、今年2016年の遺作までまた空白が続いた)

このプロモ・ビデオ、原爆のシーンも靴を踏み潰すシーンも、確かに覚えてはいるが、当時それが何を意味するのか考えたこともなかった。

歌詞をベスト盤CDで確かめてみたが、
一応すべてラブソングの内容で通ることは通る。
しかし、run とか hide を多用していたり、
For fear tonight is all
Under the moonlight, this serious moonlight
などというあたりは、何かを暗喩しているのかもしれない。
歌詞だけだと、確かなことは言えそうにないが。。

☆80年代ビッグ・アーティストの最高に下らない売れ筋サウンドの名曲ベスト5(原題は省略)
デヴィッド・ボウイ「レッツ・ダンス」
オリビア・ニュートン=ジョン「フィジカル」
イエス「ロンリー・ハート」
スターシップ「シスコはロック・シティ」
シカゴ「素直になれなくて」

ただし、ここにあげた「レッツ・ダンス」だけでなく、「フィジカル」にはsexualな意味が暗示されているということも後年知った(普通に歌詞を聞き取れれば明らかだったのだが、ビデオに騙されて何も考えてなかった)。

核戦争による破滅を描いた『風が吹くとき』の主題歌をボウイが歌っていたことも、全く記憶していなかった。
しかも音楽はロジャー・ウォーターズ。
一度見たしビデオ(VHS)は保存してあるはずなのだが。。

ロック黄金時代を創造した団塊世代アーティストの訃報が絶えることのない時代に入った…

2016年02月06日 | ART / CULTURE
1月のデビッド・ボウイ(69歳)の訃報の際にそう書きかけて、あまりにも不吉なので封印しました。。
それから1週間後にはグレン・フライが67歳で逝去。
45歳でエイズ死したフレディとボウイは同学年。
グレン・フライは32歳で死んだジョン・ボーナムと同じ年の生まれ。
そして、EW&Fのモーリス・ホワイトの訃報が。。

ビートルズ以降の主なアーティストを生年ごとに書き出してみましたが、思いつくまま調べてみると、1945-50年生まれの「団塊の世代 baby boomer」が多くてここには書ききれず、51年のスティングから58年のマイケル、プリンス、マドンナというMTV世代の間の空白を埋めるのには苦労しました。

繰り返しますが、このリストは「次に死ぬであろうスーパースター」の予想リストという意味では決してありません。ただし、ボウイの訃報の際に書いたように、この世代は喫煙率が高かっただけでなく、多少なりともドラッグに溺れた率も高く、標題の予想は必然としか言いようがないのです。
(1950年生まれ以降の世代にはドラッグの影響はあまり感じられません)

無論、これは野次馬的な好奇心で書いたものではなく、(皆さんの)自分自身や家族の「命の問題」として考えて欲しいからあえて書き出してみたものです。

タバコについては、禁煙するのが若ければ若いほど良いのは当たり前ですが、何歳だから遅すぎるということはありません。
これから先の健康に多少なりとも不安を感じている中高年世代が、平均10年も寿命を縮める依存性薬物(=麻薬)であるタバコを吸い続ける理由など一つも存在しません。(ストレス解消は真っ赤な嘘)

生年 年齢
1940(75) ジョン・レノン(40+)、リンゴ・スター
1941(74) モーリス・ホワイト(74+)、ボブ・ディラン、ポール・サイモン、アート・ガーファンクル
1942(73) ポール・マッカートニー、ブライアン・ウィルソン、ブライアン・ジョーンズ(27+)
1943(72) ジョージ・ハリスン(58+)、ミック・ジャガー、キース・リチャーズ
1944(71) ジミー・ペイジ、ジェフ・ベック、デニス・ウィルソン(39+)
1945(70) エリック・クラプトン、ニール・ヤング、ロッド・スチュワート、リッチー・ブラックモア、ジェフ・リン
1946(69) フレディ・マーキュリー(45+)、リチャード・カーペンター、ダリル・ホール
1947(68) デビッド・ボウイ(69+)、ブライアン・メイ、エルトン・ジョン、トム・ショルツ、マーク・ボラン(29+)
1948(67) グレン・フライ(67+)、ドン・ヘンリー、ロバート・プラント、スティーヴ・ウィンウッド、オリビア・ニュートン=ジョン、スティーヴン・タイラー、ジョン・ボーナム(32+)
1949(66) ブルース・スプリングスティーン、ビリー・ジョエル、ジーン・シモンズ、スティーヴ・ペリー
1950(65) カレン・カーペンター(32+)、ピーター・ガブリエル
1951(64) スティング、フィル・コリンズ、クリッシー・ハインド
1952(63) ポール・スタンレー
1953(62) シンディ・ローパー
1954(61) デイヴ・リー・ロス
1955(60) レスリー・マッコーエン、エディ・ヴァン・ヘイレン、ランディ・ヴァンウォーマー
1956(59) ポール・ヤング、ジョン・ライドン
1957(58) スティーヴ・ルカサー
1958(57) マイケル・ジャクソン(50+)、プリンス、マドンナ、ポール・ウェラー
1959(56) シーナ・イーストン
1960(55) ボノ
※生年の後のカッコ内は、2015年末の時点の年齢
※死没者の年齢は死亡時の満年齢

福士の名古屋強行出場で「実質一発選考」の流れが加速 2000年シドニー五輪選考との比較

2016年02月05日 | SPORTS
女子マラソンの代表選考で騒動が起きるのは「お家芸」みたいなものですが、マラソンファンとしては、野次馬的な興味ばかりで語ってはいられません。

ただし、今回は選手の側が「俎板の上の鯉」状態ではなく、リスク覚悟の決定的なアクションを起こしたという点で、大きな転換点となったはず。
(以下、敬称略)

2000年シドニー五輪選考での弘山落選(※)、昨年(2015年)の世界陸上での「田中落選・重友代表(★)」のこともあるから、現行のルールのもとでは、福士選手と監督の「名古屋強行出場」の選択は十分理解できます。

それにしても、シドニー五輪選考のレベルの高さには、今更ながら驚かされます。(※ 経緯と記録は下記)

福士の「リオ決定だべ」の叫びに、まだその言葉は早いよと内心つぶやいたのですが、福士陣営もその可能性は十分認識していたはず。
(それを承知で叫んだとしても、当然お墨付き発言は出てこない)

名古屋で2位まで大阪の福士の記録を上回るタイムでゴールする可能性は非常に低いので、福士は(事前のトレーニングも含めて)無理せず2位狙い。
一方、前田・木崎・田中は「2位以上+タイム」が求められる。
(野口もラストランを懸けて波乱を起こせるか注目)
序盤から大阪とほぼ同じペースの高速レースになるはず。

観る側からすると面白くなりそうですが、これなら実質的には一発選考と同じ。

元々、4つの選考レースで3人を選ぶということ自体無理があるのですが、これはもう民放TV局のドル箱番組確保とスポンサー料に頼る陸連という構図でどうにもこうにも変えようがない。

これまでは、有力選手が同じレースで競って2位3位になるより、分散して優勝(または日本人1位)の方が良いだろうという意識が選手にも見る側にもあったのだが、今回の福士の捨て身の「叛逆」によって、自ら決めるためには二度走らなければいけなくなるという「福士リスク」があることが誰の目にも明らかになった。

今後は選手サイドで、さいたま・大阪は避けて「名古屋一発勝負」という流れが出来てくる可能性が大きい。
今回の福士サイドの決断で、一番焦っているのは「さいたま」と「大阪」を中継しているTV局だろう。

もし来月の名古屋がハイレベルの争いになったら、世界陸上内定というシステムへの疑問も当然生まれてくるでしょう。
その内定者(今回は伊藤 ◎)への理不尽な批判も出てくる懸念もあります。
シドニーでの市橋と同じ構図。市橋は苦しんだはず。
(市橋の時にはメダル内定だったのが伊藤は入賞で内定)

しかも、今回は「夏のマラソンへの適性」という言い訳が通用しない。(夏季五輪だけどリオは冬)

前田が世界陸上で決められずに名古屋再挑戦というのも、2000年の高橋とほぼ同じ。
陸連としては、実績と将来性を考えて、福士・木崎・前田(ベテラン・中堅・若手)という青写真を描いていたと想像できる。

4年後の東京もにらんで、前田を何としても出したい。
(前田が微妙なタイムで2位だった時のリスクを福士サイドは懸念した)
しかし、マラソンだからシナリオ通りには運ばない。

前田・木崎が怪我からどれだけ復調しているかが鍵となるが、当然のことながら、トップシークレットで情報は出てこないでしょう。→☆

繰り返しますが、野次馬的にはこの3人が(あるいは田中や野口も含めて)、最後までデッドヒートを繰り広げるレースも見てみたいが、大阪で必要十分な結果を出した福士が、タイムを意識しながら2位争いを制する「大人のレース」で調整能力も実証することを期待したい。

☆ ここまで書いたところで前田欠場という大変残念なニュースが(…この先が懸念されます)。
これで元々低かった名古屋1・2位代表という可能性は、半減、あるいは更に半減した。おそらく福士出場の報道をみて先にメッセージを出したのだろう。
福士の決断が及ぼした効果は甚大で、これによってその意味が減ずるわけではないので、撤回して出場回避しても良いのではないかと思うが。。

◎ 世界陸上2015(北京)
7位 伊藤 舞 2時間29分48秒
13位 前田彩里 2時間31分46秒
14位 重友梨佐 2時間32分37秒

■ 2000年シドニー五輪・女子マラソン選考レース
<1999年>
◎ 世界陸上(セビリア) 2位・市橋有里(2時間27分02秒)
(高橋尚子は直前欠場)
◎ 東京国際女子 優勝・山口衛里(2時間22分12秒)
<2000年>
◎ 大阪国際女子 2位・弘山晴美(2時間22分56秒)
◎ 名古屋国際女子 優勝・高橋尚子(2時間22分19秒・大会記録)

■ シドニー五輪
1 高橋尚子 2°23'14"
7 山口衛里 2°27'03"
15 市橋有里 2°30'34"

★ 増田明美「納得できません!」世界陸上・女子マラソン代表選考で陸連と火花 2015/3/12
http://www.j-cast.com/tv/2015/03/12230133.html