この「新しい出生前診断(NIPT)」については2013年に当ブログ(下記リンク)でも紹介しましたが、3年間のデータが発表されたので考察を加えてみます。
数字は以下の通りです。(記事画像参照)
新出生前診断 NIPT 3年間 30615人
陰性 30068人 98.21%
陽性 547人 1.79%
↓
羊水検査 458人
異常なし 41人 8.95% …偽陽性
異常 417人 91.05% …陽性的中率
中絶 394人 94.5%
出産 23人 5.5%
羊水検査せず 89人 転帰不明<出産 or 中絶>
異常(推測) 89×0.91=81人 (出産・中絶の如何に関わらず)
(羊水検査実施者における異常の割合と同じと仮定)
有病率(推測) 417+81=498人 498/30615=1.63%
ここで、3年前に書いたブログ記事と比較してみます。
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新しい出生前診断の陽性的中率は予想外に低い 2013年02月12日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/00f1abffc084e7934deb1acefb306c41
「陽性的中率は35歳で62%、40歳でも83%であり、偽陽性がそれぞれ38%、17%も出てしまう」
この数字は、有病率を
35歳 0.33%
40歳 1.0%
という既知の値で計算したものです。
検査の感度 98.6%、特異度 99.8%も発表されていた数字。
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今回の結果は、陽性的中率91%、偽陽性9%ですから、上記のブログに書いた計算値よりも陽性的中率がかなり高くなっています。
有病率が1.6%であり、結果的に40歳の一般集団における仮定の1.0%を上回っており、年齢が比較的高く、リスクの高い妊婦が多かったことが陽性的中率を押し上げた要因と推測されます。(詳細は不明)
その他に、検査自体の感度や特異度が上がっていることも、陽性的中率が上がった原因の一つとして推測することもできますが、その部分は同じと仮定して考えていきます。
実施者が3年で3万人で、500人余りで陽性という数字は、どちらもかなり「多い」と感じますが、陽性的中率の高さからすると、単に35歳以上というだけでなく、更に高年齢だったり、中には不妊治療で妊娠したケースもあったかもしれません。
この検査では、ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つの染色体異常が検出できることになっていますが、元々の割合から考えて、大多数はダウン症候群であったはずです。
要するに、この検査を受ける人は、ダウン症候群を主な目的として、陽性だったら中絶することを前提にして検査したということ。
これはあらかじめ予想されたことで、それが現実になった。
個々のケースでそれぞれの事情などもあり、一般化して述べることはできないけれども、この結果について快く思っている小児科医はほとんどいないだろう。
まして、ダウン症候群の子を育てているご家族ならなおのこと。
羊水検査を受けていない89人についての転帰は不明ですが、そのまま出産した人よりも、確定診断を受けずに別の医療機関で中絶した人の方が多かったであろうと推測されます。中には偽陽性の子も含まれているはずですが。。
今後「臨床研究から一般診療に移行」するにつれて、「十分に理解しないまま安易に広がると命の選別につながるという指摘」のような危惧が更に現実化していくことが予想されます。。