踊る小児科医のblog

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福島の甲状腺がん患者、先行調査と本格調査の比較(2015.8) 男女差が少なくなったことが懸念材料か

2015年09月12日 | 東日本大震災・原発事故
メモですがここにアップしておきます。福島の甲状腺がん検診、先行調査(2011-13)と本格調査(2014-15)との比較。
本格調査の方が男女差が少なく、震災時の年齢が平均1.6歳若い。
年齢については先行調査でサイズの大きい年長児を多く検出していたことの反映と思われるが、男女差については3巡目を見ないとわからない。
腫瘍径は当然のことながら本格調査の方が小さい。

先行調査 113人(良性の1人を含む)
男性:女性 38:75
年齢 17.3±2.7(8-22)
震災時 14.8±2.6(6-18)
腫瘍径 14.2±7.8(5.1-45.0)





本格調査 25人
男性:女性 11:14
年齢 17.0±3.2(10-22)
震災時 13.2±3.6(6-18)
腫瘍径 9.4±3.4(5.3-17.4)



(図表は右クリックまたはcontrol+クリックで別ウインドウに拡大できます)

第20回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成27年8月31日)資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-20.html

八戸市小児科医会、救急医療功労者厚生労働大臣表彰受賞(9月9日)

2015年09月10日 | こども・小児科
小児科医は自己PRが下手なので報道もされないし誰にも知られていませんが、八戸市小児科医会は9月9日に救急医療功労者厚生労働大臣表彰を受賞しました。

八戸市で2000年9月から県内に先駆けて小児科医が1日も欠かさず(※)休日夜間急病診療所(根城)に出動する態勢を維持し続けていることが主な受賞理由です。
(私自身は特段の貢献をしたわけではありませんが=この態勢を決めたシンポの司会をしただけで=十数名の受賞者の一人と言うことはできると思います)

※→東日本大震災の時には急病診療所自体が3日間休診を余儀無くされたので、それを除いて。

八戸市および周辺地域の方には「急病診療所に行けば小児科専門医に診てもらえる」のが当たり前と思っているかもしれませんが、2000年以前には実現不可能だっただけでなく、この先10年20年先までこの態勢を維持し続けることができるという保証はありません。
(個人的意見としては10年が限度だと思っています)

なお、これも全く知られていないことですが、今回の表彰に先立ち、平成22年度 救急医療功労者青森県知事表彰も受賞しています。

平成27年度 救急医療功労者 厚生労働大臣表彰
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000096161.html
平成27年度救急医療功労者厚生労働大臣表彰 受賞者名簿(PDF:228KB)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000096383.pdf

平成22年度 救急医療功労者 青森県知事表彰
https://www.pref.aomori.lg.jp/release/2010/30559.html

福島県の小児甲状腺がん2巡目で15→25人 発症率5.9~10.4人/10万(2.5年で)に上昇 「増加」は確実

2015年09月01日 | 東日本大震災・原発事故
8月31日の資料から、これまでと同じ表とグラフにして比較。
結論は前回(5月発表)の「増加ほぼ確実」と同じですが、
数字が上方にシフトして、
「発症率4.1~8.7人/10万人」から、
「発症率5.9~10.4人/10万」となっています。
(数字は小さい方が単純に一次受診者数で割ったもの、
 後者が一次の判定率と二次の受診率で割った予測数)
検討過程は前回のブログ(一番下のリンク)を参照して下さい。

第20回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成27年8月31日)の資料
http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-20.html


(右クリック等で別ウインドウ/タブに開けば拡大されます)

表の一番上の切れているところは先行調査(5月発表)。
今回の「先行調査(8月発表)」で、
「確定98+疑い13=111人」から、
「確定98+疑い14=112人」に1人増えています。
先行調査の数字は今回で確定。
(経過観察後の数字が変わる可能性はあると思いますが)

有病率の37.1人(10万人あたり)を「スクリーニング効果10年分」で割った数字が3.7人/10万。(先行調査における推定発症率)

本格調査は、
「確定5+疑い10=15人」から、
「確定6+疑い19=25人」に増加。

これは検査が進んだことに伴うものですが、
有病率(※)は10.1人から14.8人に上昇し、
(※一次受診者数で割った数字/10万人あたり)
受診間隔の2.5年で割った推定発症率(10万人あたり)も、
4.1人から5.9人に増加しています。

グラフはこの数字をプロットしたものです。


ただし、<一次判定者数/一次受診者数>が90.7%、<二次受診者数/B+C判定者数>が62.7%の段階のため、それぞれ100%になったと仮定した予測数が大きい方の数字。
同様に受診間隔2.5年で割った推定発症率(10万人あたり)も、
8.7人から10.4人/10万人に上昇。
(この数字はグラフには入れてません)

「増加がほぼ確実」という根拠は、本格調査のグラフが(前回の段階で)先行調査をまたいで更に高くなるのが確実だと判断できたからです。(実際に今回のデータで予想以上に増加している)

この4とか6とか8とか10という数字が何を意味するかというと、ベラルーシのグラフと比較して、


4人は小児(0-14歳)の95年頃のピーク
6人は思春期(15-18歳)の98-99年頃の急上昇期
10人は思春期の2000-01年頃のピーク
に相当する、ということです。

(以下は過去の記事のリンク)

甲状腺がん8→15例(5/18) 発症率4.1~8.7人/10万人(2.5年で) 「増加」はほぼ確実に 2015年06月03日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/9484f13f2d01ec85504b104e500d079d

福島県甲状腺がん 本格調査>先行調査の経緯を発表時の数値で検証してみた 2015年06月05日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/75c50cf497db6f29a441efd93159cbd1

福島県の小児甲状腺がん推定発症率をグラフ化/ベラルーシとの対比 DAYS JAPAN記事へのコメントも 2015年07月09日
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/0acad3271c15441a0ad84aec88d1dc8d