昨年に続いて2度目の塔影能鑑賞。昨日の夜に奈良に入り、今日の昼間は元興寺、興福寺、東大寺戒壇院などをお参りしてきた。
元興寺は飛鳥にあった日本最初の本格的寺院である法興寺(飛鳥寺)を移築したものだそうだ。飛鳥寺は昨年訪れた。今はこじんまりとしたお寺で、大仏だけが往時のままの姿だ。この法興寺を建立するために百済の国王が仏舎利を献じ、僧、寺工、鑪盤博士、瓦博士、画工を派遣したという。その瓦博士が造った日本初の瓦が、法興寺を飛鳥から平城京へ移す際に運び出され現在の本堂と禅室の屋根の一部に残っている。色形が不揃いだが、それがかえって美しく見える。この寺を詠んだ歌が万葉集にも収められている。
巻六の九九二にある大伴坂上郎女の歌がそれだそうだ。
古郷之 飛鳥者雖有 青丹吉
平城之明日香乎 見楽思好裳
ふるさとの 飛鳥はあれど あをによし
奈良の明日香を 見らく良しも
故郷の 飛鳥(寺)はそれはそれとしてよいのだけれど (あおによし)
奈良の飛鳥(寺)を見るのもまた良い
奈良の元興寺も移転した当時の姿を伝えるのは現在の本堂(極楽堂)と禅室(移転当時の東室南階大房の一部)、東大塔跡、西小塔跡、わずかな石畳くらいだが、上記の屋根瓦をはじめとして興味深いものがたくさんあるお寺だ。雰囲気も好きだ。おそらく次に奈良を訪れる機会があれば、ここには立ち寄ることになると思う。興福寺も東大寺戒壇院も自分にとっては奈良の定番の場所になるだろう。
塔影能は、奈良を訪れるきっかけとして、これからも鑑賞することになるのかもしれない。