昨年7月、宇土市教育委員会は同市立網津小学校の木製廊下が波打つように膨らんでいることに気づき、同改築工事を請け負った小竹組に手直しを指示した。
ところが同手直しについて、問題が発覚してから1年半も過ぎて、未だ『原因については未判明』(同教育委員会学校施設課)というから驚く。
同課の未判明が何にあるかはともかく、材料か技術なのかという原因については、それが材料だというのは明らかになっているわけで、実質的な問題点は『不良品のフローリングを誰が導入したか?』である。
「小竹組は叩いて(超安価な落札額)受注し、4億円前後は損したはずで、その赤字分を補填するために中国産の安物を使った」
これが同業界の一致した見解。まして、手直し工事分を同社が負担し、また改修後には県建築士業界を現場に招待し、その披露を行ったとなると、そうした見解に立つのは当然か。
ところが、仮に同社が欠陥工事を図ったというのであれば、後述する点から県も関与した同工事で、何らかの処分があっても当然な話。しかし何ら制裁を科せられることもなかった。
そして後一点、建築材料メーカーからの発信として当時、意外な情報が寄せられていたのである。
「一方では熊本産、国内産と声高にいいながら、宇土市ではなぜか中国産の材質からなる材料を取り入れようとしている。設計事務所がそれを織り込んでいる」
該当の材料は、設計意向であったという説である。
設計では「○○と同等以上」とし、材料を特定しないのが、競争入札の上から公共工事での原則。
だが現実はガラス、サッシはもちろん、太陽光発電機器、エレベーターまで既得権が存在したら、その指定など施工業者にとって決して珍しい話ではない。
そこで改めて取材すると、
「納入の封を切った時、すでに、そうした兆候(変形)があった。だから宇土小学校の建築(校舎改築)の際は抵抗し、設計変更をさせた」
関係した施工業者の話である。
これなら先の材料メーカーの話と一致する。
宇土市では網津小学校に続いて、宇土小学校の校舎改築も実施。同小学校でも設計から特別指定があったというのだ。結果からして網津小学校では、手直しがあって思惑通りにはいかず、また宇土小学校の場合は施工前に拒否された。だが両方で『中国産の材質によるフローリング』が、工事の設計に織り込まれた。
そこで設計業者の意向だったという疑いが色濃くなるが、二校の改築工事の設計業者は異なる。特定の設計事務所による意向なら同思惑は、同設計事務所で図られたとなる。しかし二社の異なる設計事務所が、異なる二つの現場で同一の意向を出したとなると、それは設計事務所への前で指示があったと推定される。その推察が最も妥当なのだ。
ここで明らかにするが、二つの小学校校舎改築工事は、実は県の「くまもとアートポリス事業」の一環として組み込まれた工事。
すなわち設計業者は、公募の上で提出された作品から選定されるプロポーザル方式。
それを選定するのは、熊本県(土木部建築課アートポリス班)が任命した審議委員から三名と、該当の工事の場合は当時の宇土市長と同教育委員長の五名。
同種の審議委員の中には以前、業界との癒着が名高く噂として上がった大学教授もいたのは確か。だが名前とポストだけと称される審議委員が、果たして介入するだけの労力を所持しているだろうか。
そうなると疑惑の目は、現地の幹部に注がれることになるが、そうとも限らない。地方行政というのは、地方の政治的な既得権と持ちつ持たれつの関係にあって、そんな懐の深い幹部が出世を確実にしたというのが、遠い時代からの田舎伝説。
それだけに官製談合には、誰も見て見ぬふりをしたくなる…