勝者なき和解か、それとも両首を賭けた徹底抗戦なのか。
アメフト部問題で世論も総参加して大揺れの日大とは異なり、記者クラブに上がらない結果での無報道もそうだが聞か猿、言わ猿を決め込み、真相をベールに包んだままの学校法人熊本学園(目黒純一理事長・熊本市中央区)の問題は、攻める志文会(同熊本学園大学同窓会・約93000人)側にも焦りの色が見え始めた。
ただ、この二つの私学に一致していることは「私学運営を巡る問題」であって、「誰が嘘をついて、何が真実なのかが市民には理解のできる事案」(志文会会員談)で同じことだけは確か。
目黒理事長は同学園が運営する熊本商科大学(現・熊本学園大学)を卒業後に熊本振興㈱(現・熊本ホテルキャッスル)に入社。だが1967年、同社を退社して熊本学園事務局に入職。そして同事務局の総務部長、事務局長、同学園の常務理事を歴任した後、2015年に第9代同学園理事長に就任して、現在は2期目。すなわち1992年(総務部長)からの25年間は、同学園における運営の実務的な中心にあって、その運営上では極めて大きい責任にあった。
説明するまでもなく学校法人熊本学園は、創立家がオーナー理事長として君臨して来たわけではなく、そもそも原資は国民の税金という公費の助成によって運営される公益法人であって、一般の私企業とは大きく異なり社会性が高く、「聞かざる、言わざる」など許されない社会責任の大きい法人。
017年度、私立大学には総額3153億円の公費補助が実行され、震災の私立大学には18億円、また授業料減免等の充実について102億円の助成を実施となった。ちなみに熊本学園には、この前年度である016年度、一般・特別の計10億5522万円の私学補助が交付。
これを念頭に熊本学園と志文会側との対立事案を紹介するが、
「熊本大震災における被災学生330人の学費免除(総額2億6400万円)が決定(熊本学園)し、それを折半(1億3200万円)でと支援負担が志文会側に求められて、それに応じた」(志文会会員談)
ところが、その後で国から総額の3分の2(1億7600万円)が助成されたことを知った志文会側は、「3分の1(8800万円)の折半(4400万円)支援が妥当であって、8800万円(1億3200万円-4400万円)は返還して欲しい」と学園側に迫った。
だが学園側は「寄付であって返す必要はない」と、これを拒否。それに「寄付だから『嫌』ならするな」(目黒理事長)という姿勢が見られたことで、これに志文会側は激怒し、目黒理事長の品格、能力に疑問を抱いた。
それに、もう一点の志文会側が疑念を持ったのが奨学支援の問題。
「この20年間、毎年1500万円の奨学支援を行ってきたが、それが5000万円の余剰を生んでいた」
この余剰金5000万円は志文会側負担の3ヶ年分に相当し、「調整するか返金するのは当然」というのが志文会側の言い分。
先の種々の公費補助からしてもそうだが、目黒理事長の語る「寄付だから返す必要はない。不服なら応じなければよい」という主張が、果たして通る中身であるか否かである。
私学の学校会計では減価償却累計が計上されず、薄価すら分からないとされるが、そこには借入せず寄付や補助金で建物を新設すれば、無尽蔵に資産は増えるというトリックも存在する。
日大問題では学校施設の建設業者、納入業者まで巻き込む疑惑まで発展しているが、熊本学園の施設建設に向けた受注業者にも容疑の掛かる流れがあって、その下請けまで志文会の中で相対関係を生んでいるのも確か。
熊本学園は現在、同学園敷地の西側(同市同区大江2丁目1903-10・約1400坪)に約13億円を投じてスポーツクラブの施設を建設中。
これはルネサンス熊本に継続貸与を予定しての既設の移転改築だが、「学校法人は教育に支障がない限り、その収益を私学運営に充てるため事業を行うことができる」(私学法第26条第1項)とはいっても、文部科学省における教育施設の復旧整備に向けた震災補助が未だ行われている中で、果たして「13億円も投下されるビジネス施設の建設が優先されるか」という点、また新たな施設を提供しての収益事業は委託(私学法違反)には当たらないかという点など疑問の声も挙がる。
017年8月、熊本学園は「不動産賃貸業、駐車場業、貸事務所業」での収益を学校の経営に充てるとし、その収益事業を法人定款にて変更し、同年9月にそれを登記。
私立学校法人が私学法第26条に基づき新たに収益事業を行う場合、私学は寄付行為(定款)を改正して所轄庁(文部科学省)の認可を受けなければならないが、それを所轄庁は私立審議会等の意見を聴いて決定し、それを所轄庁は公告する必要がある。
これから考えると、先の疑問点における審議会メンバーの審議内容も注視されるが、熊本学園の収益事業としてのルネサンス熊本への施設貸与(不動産業・貸事務所業)は、昨年8月以降に文部科学省は認可したということになる。
ところが熊本学園は005年2月、JT(日本たばこ産業)から同地、同施設(既設)を譲受すると、継続して年間8000万円でルネサンス熊本に貸与。
「平成17年に文部省の認可は受けている」(目黒理事長談)
私学法に問題があるとするなら、それは「文部科学省側での問題」というのだ。
深刻な定員割れの私立大学・短大(47%)が発生している中で、大学の学部学科39増設という不可解(矛盾)な施策、またモリカケ問題等における文部科学省の対応を考えると、「嘘をついているのは文部科学省」という見解も決して否定は出来ない。
志文会強硬派の「目黒理事長には運営責任者として品位、能力に欠ける」という意見が妥当なのか、それとも「運営には何ら問題なない」(問題は所轄庁の責任)というのが正しいのか、その文部科学省私学行政課の見解が注目される。
学校法人熊本学園には、長期的に棚上げされた管財の別問題も存在するが、「志文会93000人の中での結論付けのためにも『勝者なき和解』など許されない」というのは確か・・・。