万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

消えた中国のレアアース・カード

2011年07月04日 15時48分58秒 | 国際政治
太平洋にレアアース大鉱床…中国の独占、風穴を(産経新聞) - goo ニュース
 本日、太平洋の海底でレアアースの大鉱床が発見されたとする記事が、新聞の一面を飾ることになりました。この発見、中国の戦略を根本的に覆す可能性があると思うのです。

 改革開放路線に舵を切った小平氏は、1992年に、既に「中東に石油あり、中国にレアアースあり」と述べたと伝わります。この言葉の通り、レアアースの輸出拡大で、中国は膨大な貿易黒字を計上してきましたし、最近、強化されている政府による輸出価格のコントロールは、先進国の企業に対して、レアアースを入手できる自国に製造拠点を誘導する、強力な技術移転促進の政策手段となっています。さらに、レアアース・カードは、経済面のみならず政治面においてもその威力を発揮してきました。昨年、尖閣沖で発生した中国漁船の衝突事件では、レアアースの禁輸で日本国政府に外交圧力をかけたことは、記憶に新しいところです。また、ステルス機といった最先端の兵器にもレアアースは使用されていますので、中国の独占状態は、兵器技術においても、中国がアメリカに対して優位に立つ踏み台とみなされていたのです。国際社会からの批難に耳を貸そうともせず、中国は、レアアース・カードを存分に切ってきたのです。

 中国の独占状態が確立したかに見えた矢先、海底鉱床の発見のニュースは、レアアースの独占を前提として戦略を立ててきた中国にショックを与えたはずです。エースのカードを失った中国は、以前のようには、高飛車な態度で国際社会に挑めなくなるのではないかと思うのです。

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コメント (6)
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