万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「十七か条協定」は消滅?-中国のチベット支配の根拠も消滅

2011年07月18日 14時56分16秒 | 国際政治
ダライ・ラマとの会談、中国が米に強く抗議(読売新聞) - goo ニュース
 昨日、アメリカのオバマ大統領が、ダライ・ラマ14世と会談し、チベットの人権擁護を支持したとするニュースが報じられています。この会談に対して、中国政府は、強い調子で抗議声明を発表しているようですが、チベットを武力占領している中国の行為こそ、批難されるべき蛮行です。

 最近、ウィキペディアの日本語版を読んで驚いたのですが、チベットと中国との間で締結された「十七か条協定」は、消滅したと記されているのです(英語版にはこの表現は見当たらない・・・)。確かに、ダライ・ラマ14世は、1959年にインドに亡命するに際して、武力による威圧と脅迫の下で結ばれた条約は無効とし、国際法に従って「十七か条協定」の破棄を宣言しています。この破棄宣言は、チベットの主権回復を主張したものであり、中国のチベット領有を認めるものではありません。ところが、中国側もまた、曲りなりにも法的な根拠であったこの協定を、「西蔵地方政府の廃止」を発表することで、消滅させたというのです。もし、この協定が消滅したとするならば、中国政府は、法的な根拠を完全に失うことになりますので、明らかにチベットを不法占拠していることになります。

 協定の消滅が、中国政府の正当な見解であるならば、中国政府は、チベットを不法に侵略したことを認めたに等しくなります。国際社会は、中国の行為と照らして「十七か条協定」の効力を議論すべきですし、チベット問題は、人権問題のみならず、中国によるチベットの侵略問題として扱わないかぎり、根本的には解決しないと思うのす。

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