万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

安全保障面からの脱原発リスクの議論を

2011年07月21日 18時10分35秒 | 日本政治
核燃料サイクル、官僚に慎重論 もんじゅ事故前の証言録(朝日新聞) - goo ニュース
 現在、核の保有は、NPTによって規制されており、日本国もまた非核兵器国としてこの条約を順守しております。その一方で、近年、イランや北朝鮮など、NPTを無視して密かに核開発を行ってとされる国々も出現しており、NPT体制にほころびが見られるようになりました。

 共産党などが、従来より脱原発を主張し、原発や放射性物質の危険性を強調してきた理由は、商業用の原子炉であっても、ウラン238⇒ウラン239⇒ネプツニウム⇒239⇒プルトニウム239が生成されることにあります。こうした軽水炉から取り出されたプルトニウム239は、純度が低いので、そのままでは核兵器の原料とはなりませんが、高速増殖炉を用いれば、純度の高いプルトニウム239が取り出せるそうです。この事実から、考えねばならないことは、脱原発やそれに伴う核燃料リサイクルの放棄には、安全保障上の問題も深くかかわっているということです。

 もちろん、プルトニウム239は、プルサーマルにおけるMOX燃料として使用されており、経済的にもエネルギー資源としての価値もあります。しかしながら、その一方で、脱原発の問題は、経済に留まらず、NPT体制が揺らぎ、中国や北朝鮮からの核攻撃の可能性がある中で、将来にわたって自国の安全をどのように守るのか、という問題をも突き付けているのです。日米同盟による”核の傘”がありつつも、潜在的な核武装能力が核の抑止力として働くとしますと、日本国の脱原発は、安全保障上のリスクを高める危険性をも孕んでいるということになるのではないでしょうか。

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コメント (4)
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