万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

非嫡出子の相続問題-究極の平等は多夫多妻制

2013年03月05日 15時57分37秒 | 社会
 本日の日経の社説欄では、最高裁大法廷において、嫡出子と非嫡出子との間の相続差別を違憲とする判決が下されることへの期待が表明されておりました。しかしながら、法の前の平等を、家族法にも適用することには、無理があると思うのです。

 もし、法の前の平等原則を、家族法においても徹底しようとすれば、膨大な法改正を要します(あるいは、家族法そのものの破棄…)。以前にも、本ブログで、権利ばかりの平等化は不公平であり、もし、嫡出子と非嫡出子との権利を平等化するならば、親や兄弟間の扶養義務も平等化すべきではないかと書いたことがあります。扶養義務ばかりではなく、家族法は、不平等な規定に満ち溢れています。社説の主張は、法的な立場の違いによって、子の間に不平等が生じるのは理不尽であるとの主旨ですが、もし、法的立場による違いが差別に当たるならば、法律上の配偶者と内縁の配偶者との間に相続分の違いを設けることも、法の前の平等に反しています。この点、見方によっては、イスラムの家族法の方が、少なくとも4人までは配偶者を平等に扱い、かつ、それぞれの配偶者の子の間にも差をつけないのですから、平等原則の適用範囲が広いとも言えます。とは言うものの、イスラムの家族法では、男性にのみ重婚を認めていますので、男女平等の原則からは批判されます。家族法において平等化を極限まで推し進めるとすれば、多夫多妻制とし(あるいは、婚姻制度の廃止…)、嫡出と非嫡出の違いをも廃止せざるを得ないのではないでしょうか。マルクス主義者が主張したように…。

 少なくとも、家族法には、それぞれの国の伝統や慣習が反映されており、また、家族関係には、自然の秩序がありますので、憲法が定めた法の前の平等に反することを理由に、司法主導で改正を強要することは、どこか傲慢なように思えます。全ての国民に関わる家族法の分野こそ、当事者である国民の意見を尊重すべきであり、違憲判決を以って民法を改正することは、民主主義の原則にも反しているのではないでしょうか。

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コメント (6)
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