万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

キプロス預金課税法案-真の目的は別かもしれない

2013年03月20日 15時47分00秒 | 国際政治
キプロス議会、預金削減法案を否決=債務危機再燃も(時事通信) - goo ニュース
 キプロスに対する金融支援の見返りとして、EU側が、銀行預金に対する課税を要求したところ、国民が銀行に殺到するは、法案は否決されるはで、キプロス情勢は、俄かに混沌としてきました。債務危機の再燃も懸念されていますが、ネット上でも噂されているように、キプロスの預金課税には、別の目的があるのかもしれません。

 冷静になって考えても見ますと、キプロス救済に、敢えて預金課税という劇薬を使う必要性が見あたりません。預金しているだけで、自動的に預金額が目減りしてゆくわけですから、国民が、我先に預金の引き下ろしに動くに決まっています。取り付け騒ぎとなれば、キプロスの銀行救済どころか、危機に拍車をかけるようなものです(この件に関しては、キプロス政府が、即座に、預金を封鎖し、口座を凍結した…)。EUでは、昨年10月に、財政危機に対応するための救済メカニズムとしてEMSが活動を開始していますが、スペインの場合には、金融機関に対する資本増強の手法が取られています(もちろん、国債を買い取ることもできる…)。キプロスに限って、歳入拡大策として銀行預金に対して課税を求めることは、如何にも不自然なことなのです。そこで、推測されることは、EUは、銀行預金をターゲットとすることで、キプロスの金融セクターの透明性を高めたかったのではないか、ということです。最近、アメリカ、世界の富裕層の顧客の集めてきたスイスに対して、秘密口座の開示を求めていますし、バチカン銀行の疑惑も取り沙汰されています。キプロスについては、ロシアのマネーロンダリングが指摘されていますが、金融部門が不透明な国には、犯罪組織やテロ組織の活動資金や不正蓄財で手にした富が集まっている可能性があります。

 もしかしますと、キプロスの財政危機は、経済面よりも、水面下で進行していた政治的な危機や悪事をあぶり出すことになるかもしれないと思うのです。

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コメント (4)
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