万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「主権回復の日」への沖縄の反発-アメリカの世界戦略の考慮を

2013年03月08日 15時32分13秒 | 国際政治
首相肝いり「主権回復の日」に沖縄反発 「屈辱の日だ」(朝日新聞) - goo ニュース
 安倍政権は、先日、サンフランシスコ講和条約が発効した4月28日を「主権回復の日」として、記念式典を開催する方針を公表しました。この方針に対して、沖縄では反発する県民の声もあるそうです。”沖縄は、本土が主権回復のために米国に差し出した「質草」だった”と…。

 朝日新聞の記事ですので、沖縄県民を代表する意見であるのかどうかは疑わしいところですが、沖縄には、中国の工作活動の影響もあって、根強い”被害者意識”があるそうです。先の戦争についても、沖縄は、日本国に「捨て石」にされたする”捨て石論”もあります(現実には、敗戦色が濃くなる中を、戦艦大和をはじめ、日本軍は沖縄防衛に持てる最後の兵力を投入している…)。”質草論”もまた、当時の沖縄を取り巻く状況を考えますと、いささか被害意識に偏った見方のように思えるのです。1950年代は、朝鮮半島では朝鮮戦争が勃発しており、東西冷戦は、熱戦と化しておりました。アメリカが、沖縄を信託統治に置いたのも、東側陣営と鋭く対峙する状況にあって、沖縄の地政学上の位置が世界戦略上の軍事拠点として重要であったからです。この点に鑑みますと、日本国が沖縄を「質草」として差し出した、というよりも、東側に対する重要な前線基地である沖縄を手放せない軍事上の理由が、アメリカ側にあったと言うことができます。今日でも、沖縄は中国からの脅威を正面から受けており、前線基地としての重要性は変わっていません。米軍基地や”質草状態”は、日本国政府が沖縄を放置した結果ではなく、沖縄を取り巻く外部環境の結果なのです。もし、米軍基地が全面的に撤退されたり、日本国政府が沖縄防衛に消極的となれば、沖縄は、再び戦場となるかもしれません。中国からの侵攻を受けて…。

 日本国が主権を回復した後も、アメリカの信託統治とされた沖縄県民の方々の不本意な気持ちは、よく理解できます。しかしながら、やはり、最南端に位置する日本国の大事な一員として、まずは、日本国という国の主権が回復された日を、共に祝っていただきたいと思うのです。

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コメント (2)
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