万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

オバマ大統領広島訪問の判断は如何に?

2016年04月12日 16時57分47秒 | 国際政治
原爆被害「非人間的な苦難」=G7外相、中国進出に懸念―サミットで対テロ行動計画
 昨日、広島で開催されていたG7外相会合のセレモニーとして、他の外相等と共にアメリカのケリー国務長官が、原爆の犠牲者を悼み、平和記念公園にて花輪を手向けてくださいました。原爆投下以来、初めての国務長官による歴史的訪問となりましたが、アメリカ大統領による広島訪問は未だに実現はしておりません。

 この件に関しては、来月に開催が予定されている伊勢志摩サミットに合わせて、オバマ大統領が広島を訪問する案も浮上しており、その行方が注目されるところです。長らく米大統領の被爆地訪問を待ち望んできた日本国内では、概ね歓迎一色となることが予想されます。また、先の大戦の恩讐を越えて、戦勝国であるアメリカの大統領が、原爆犠牲者の方々に対して心からの慰霊の気持ちを表わしてくださることは、人道的な見地からも高い評価を受けることでしょう。日米間に刺さっていた刺を抜くという意味でも、日米関係にもプラスに働くことが予測されるのですが、仮に問題があるとすれば、それは、アメリカの国内世論です。二期目も任期が残り僅かとなったオバマ大統領は、自らの再選を気にすることなく、比較的に大胆な行動をとれる時期にあります。”核廃絶”を訴えてきた大統領のことですから、自身は広島訪問を強く望んでいることでしょう。しかしながら、世論の反対を押し切ってまで踏み込みますと逆効果となる現象は、歴史においてはままに見られます。日本国民の多くは、たとえ謝罪の言葉がなくとも、大統領の被爆地訪問に70年間に亘って抱いてきた胸のつかえがとれ、真の友好の基礎が築かれたことを実感することでしょう。しかしながら、アメリカ国民の間に強い反発の感情が生じるとしますと、日米関係は、逆に悪化する可能性もないとは言い切れないのです。日本国民もまた、大統領の広島訪問に対してアメリカ国内で拒絶的な世論の反応が起きれば、いたく失望することでしょう。

 アメリカ国内では、若年層ほど原爆投下には否定的であるとする世論調査もあります。将来、何時かはアメリカ大統領が被爆地を訪問する時が訪れるのでしょうが、その歴史的瞬間は何時が相応しいのか、オバマ大統領も思案しているのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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