万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

トランプ氏が迫る二者択一-困惑する同盟国

2016年04月28日 15時23分37秒 | アメリカ
「米が防衛、経費払え」トランプ氏が同盟国に負担増要求
 共和党候補としてアメリカ大統領を目指すトランプ氏。その勢いは止まるところを知らないようですが、曖昧模糊としてきた氏の対外政策の全容も、漸く明らかになりつつあるようです。

 4月27日の演説において、トランプ候補は、大統領に就任した場合の外交の基本方針を示しております。要約しますと、米国第一主義を大前提として、”軍拡を続ける中ロを警戒しつつ、両国とは共通の利益を探ることで関係を改善する一方で、同盟国に対しては、一層の財政、政治、人的負担を求める”と訴えているのです。日米同盟の当事国である日本国としても注目すべき発言なのですが、氏は、”アメリカに対して同盟国が経費を払わなければ、自主防衛の準備をさせるべき”とも述べてす。つまり、対米経費負担の増額に応じなければ、同盟破棄もあり得るとしているのです。トランプ氏が提示した二者択一は、同盟国にとりましては、極めて困難な選択を迫られたことになります。何故ならば、どちらを選択しても、自国の安全が確保されるとは限らないからです。前者の米軍への経費負担の増額は、仮に、中国からの軍事的脅威に対してアメリカが100%日本国を護ることを確約する場合には、日本国は、この要求に応じることでしょう。ところが、トランプ氏は、中ロとの関係改善をも目指していますし、何と申しましても米国第一主義ですので、同盟国のためにアメリカが多大な犠牲を払う、即ち、戦争に巻き込まれることに二の足を踏む恐れがあります。その一方で、後者の選択でも、日米同盟が終了するわけですから、日本国は、自国一国で防衛を担わざるを得なくなります。もちろん、同時に核の傘も消えるわけですから、中国や北朝鮮の核の脅威は格段に跳ね上がり、核武装や自前のミサイル防衛の開発をも視野に入れる対応を迫らせます。

 仮に、前者を選択して、いざ有事という時に梯子を外されるよりは、初めから後者を選択した方がよいのかもしれませんが、同盟国にとりましては、これほど悩ましい問題はありません。将来、アメリカにトランプ政権が誕生した時、日本国政府は、国の命運をかけた対米交渉に臨まざるを得なくなるのではないでしょうか。

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コメント (2)
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