万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

英EU離脱問題-現代の大陸封鎖令か

2016年04月23日 14時56分58秒 | ヨーロッパ
米英関係、英EU加盟で強化 離脱なら貿易交渉に影響も=米大統領
 イギリスでは、6月23日に、EUからの離脱の是非を国民に問う国民投票が実施される予定です。世論調査によりますと、現時点では残留派が若干リードしているものの、結果は”浮動票”の行方次第ともされています。

 残留派の主たる説得材料は、離脱に伴ってイギリスが被ると予測される経済的マイナスなのですが、こうした中、国外からも残留を求める動きが活発化しております。イギリスの離脱を阻止したいEUからの圧力に加えて、本日も、キャメロン英首相との会談の席で、アメリカのオバマ大統領も、離脱した際の対米貿易交渉への影響に言及し、残留派を後押ししたと報じられています。イギリスを取り囲むかのように、通商関係を盾にした”離脱反対”の大合唱が起きているかのようなのです。この現象、どこか、凡そ200年前に発令されたナポレオン1世の大陸封鎖令を髣髴とさせます。ナポレオン1世は、軍事力を以ってヨーロッパ大陸にナポレオン体制を敷いたものの、唯一イギリスだけは上陸作戦にも失敗し、支配下に置くことができませんでした。そこで経済的手段によってイギリスを屈服させるべく、ナポレオン1世は、プロイセンの首都ベルリンにおいて勅令を発令します。つまり、フランス帝国の従属化にあった全てのヨーロッパ諸国に対して、イギリスとの通商が堅く禁じられたのです。当時と今日では、ヨーロッパの政治状況は著しく違っていますが、通商関係が外交的な圧力とされている点において、両者には共通性が見られます。

 200年前の大陸封鎖令では、産業競争力に優るイギリスが逆封鎖を実施したため、思惑とは反対にヨーロッパ経済に深刻な打撃を与えました。ロシア遠征の発端は、封鎖に耐えかねたロシアが同勅令を破ったことにありましたが、果たして、今日、仮に”大陸封鎖令”が発動されるとしますと、どのような展開が待ち受けているのでしょうか。通商政策の効果の正確な予測が極めて難しいのは、当時も今日も変わらないのではないかと思うのです。

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