「日本は条約違反」…中国、台湾の主張を後押し
日本国は、国連海洋法条約に基づき、沖ノ鳥島を起点として200カイリのEEZを設定しております。ところが、中国と韓国に加えて、今般、台湾も沖ノ鳥島を岩礁であると主張し、常設仲裁裁判所への提訴も検討していると報じられております。
それでは、何故、これらの諸国が”岩”であると主張しているのかと申しますと、同条約の第121条3項に、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することができない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」とあるからです。即ち、これらの諸国は、”岩”であると主張すれば、沖ノ鳥島に設定されたEEZを外すことができると考えているのです。しかしながら、「人間の居住…」以下の規定は、あくまでもEEZを設定できない岩に対する条件であって、それをそのまま島に当て嵌めることはできません。また、同条の1項では、「第121条 第1項:島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。」と定めていることに加えて、同条約の第6条には、「環礁の上に所在する島又は裾礁を有する島については、領海の幅を測定するための基線は、沿岸国が公認する海図上の適当な記号で示される礁の海側の低潮線とする」とあり、沖ノ鳥島タイプの島の存在を認めています。沖ノ鳥島は、基線の測定時ともなる引き潮の時には5.78km2の面積があり、海面に突き出た岩ではないのです。このため、日本国が沖ノ鳥島を起点とした大陸棚の延長を申請した際には、国連大陸棚委員会は、2012年4月に北部海域についてこの申請を承認し、沖ノ鳥島に国際法上の島の地位を認めました。
もっとも、この決定は、国連大陸棚委員会の決定ですので、三権分立の原則に従いますと、行政機関である同委員会の判断を不服として、司法の場に訴えることは可能です。あるいは、台湾であれば、EEZ内での自国漁船の拿捕を不法行為として、日本国のEEZの設定を違法として訴えることもできるかもしれません。
一見、台湾による日本国を相手取った提訴は、日本国にとりましては、EEZ喪失のリスクが伴うようにも見えます。しかしながら、上述したように、条文解釈上、日本国の主張に分があることに加えて、台湾の提訴には、人類の行方さえをも決する転換点ともなり得る可能性を秘めています。日本国にとりましては、司法判断で沖ノ鳥島の国際法上の地位を確定すれば、以後、この問題に煩わされずに済みます。また、尖閣諸島や竹島の問題についても、司法解決の良き前例となることでしょう(北方領土の司法解決も視野に入る…)。そして、中国が絡む問題に関して司法解決が実現することは、国際社会にとりましても朗報となります。中国は、フィリピンが提訴している仲裁裁判の判断に従わざるを得ない状況に追い詰められることでしょうし、それは、南シナ海問題の平和的解決への道筋を示すと共に、中国が、国際法秩序に従うことをも意味するのです。
馬台湾総統は、中国の利益のため、あるいは、日本国に対する嫌がらせのために常設仲裁裁判所への提訴を思いついたのかもしれませんが、馬氏の思惑を離れ、この提訴は、アジア、並びに、国際社会における、国際法秩序の確立に向けた重大な一歩となるかもしれません。日本国もまた、長期的な視点から事の重大さを深く認識し、リスクを負う覚悟を決めるべきです。南シナ海問題とのダブル・スタンダードとなってはならず、日本国は、正々堂々と、台湾からの提訴に受けて立つべきと思うのです。
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日本国は、国連海洋法条約に基づき、沖ノ鳥島を起点として200カイリのEEZを設定しております。ところが、中国と韓国に加えて、今般、台湾も沖ノ鳥島を岩礁であると主張し、常設仲裁裁判所への提訴も検討していると報じられております。
それでは、何故、これらの諸国が”岩”であると主張しているのかと申しますと、同条約の第121条3項に、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することができない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」とあるからです。即ち、これらの諸国は、”岩”であると主張すれば、沖ノ鳥島に設定されたEEZを外すことができると考えているのです。しかしながら、「人間の居住…」以下の規定は、あくまでもEEZを設定できない岩に対する条件であって、それをそのまま島に当て嵌めることはできません。また、同条の1項では、「第121条 第1項:島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。」と定めていることに加えて、同条約の第6条には、「環礁の上に所在する島又は裾礁を有する島については、領海の幅を測定するための基線は、沿岸国が公認する海図上の適当な記号で示される礁の海側の低潮線とする」とあり、沖ノ鳥島タイプの島の存在を認めています。沖ノ鳥島は、基線の測定時ともなる引き潮の時には5.78km2の面積があり、海面に突き出た岩ではないのです。このため、日本国が沖ノ鳥島を起点とした大陸棚の延長を申請した際には、国連大陸棚委員会は、2012年4月に北部海域についてこの申請を承認し、沖ノ鳥島に国際法上の島の地位を認めました。
もっとも、この決定は、国連大陸棚委員会の決定ですので、三権分立の原則に従いますと、行政機関である同委員会の判断を不服として、司法の場に訴えることは可能です。あるいは、台湾であれば、EEZ内での自国漁船の拿捕を不法行為として、日本国のEEZの設定を違法として訴えることもできるかもしれません。
一見、台湾による日本国を相手取った提訴は、日本国にとりましては、EEZ喪失のリスクが伴うようにも見えます。しかしながら、上述したように、条文解釈上、日本国の主張に分があることに加えて、台湾の提訴には、人類の行方さえをも決する転換点ともなり得る可能性を秘めています。日本国にとりましては、司法判断で沖ノ鳥島の国際法上の地位を確定すれば、以後、この問題に煩わされずに済みます。また、尖閣諸島や竹島の問題についても、司法解決の良き前例となることでしょう(北方領土の司法解決も視野に入る…)。そして、中国が絡む問題に関して司法解決が実現することは、国際社会にとりましても朗報となります。中国は、フィリピンが提訴している仲裁裁判の判断に従わざるを得ない状況に追い詰められることでしょうし、それは、南シナ海問題の平和的解決への道筋を示すと共に、中国が、国際法秩序に従うことをも意味するのです。
馬台湾総統は、中国の利益のため、あるいは、日本国に対する嫌がらせのために常設仲裁裁判所への提訴を思いついたのかもしれませんが、馬氏の思惑を離れ、この提訴は、アジア、並びに、国際社会における、国際法秩序の確立に向けた重大な一歩となるかもしれません。日本国もまた、長期的な視点から事の重大さを深く認識し、リスクを負う覚悟を決めるべきです。南シナ海問題とのダブル・スタンダードとなってはならず、日本国は、正々堂々と、台湾からの提訴に受けて立つべきと思うのです。
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