万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の南シナ海”日本孤立化作戦”は効果なし

2016年04月19日 16時57分52秒 | 国際政治
中国、日本の外交青書を批判「無責任な言論」
 先日、広島市で開催されたG7外相会合では、中国に対し、南シナ海問題において国際法に従った行動を求める共同声明が発表されました。中国は逸早く同声明に反応し、G7メンバー国の在中国大使館の幹部に不快感を伝えましたが、トップの大使が呼び出しを受けたのは日本国だけのようです。

 現在、中国は、南シナ海問題については、日本国のみにターゲットを絞り、他の諸国とは一線を画する作戦を遂行中です。大使呼び出しもその一環であり、昨日も、中国外務省の陸慷報道局長が、日本国の2016年版の外交青書を批判して、”海洋問題を煽り立てたり、無責任な言論を発表した”と息巻いております。いわば、南シナ海問題をめぐる対中共同戦線からの”日本孤立化”の試みなのですが、果たして、この作戦は、成功するのでしょうか。

 仮に、中国が、日本国さえ南シナ海問題で屈服させれば、国際法違反の行為が容認され、南シナ海全域を九段線の主張通りに”中国の海”にすることができる、と考えているとしますと、日本国を、国際法秩序の唯一、かつ、絶対的な守護国と見なしていることにもなります。驚くべき高い評価であり、日本国としては気恥ずかしい限りなのですが、実際には、国際法、特に、海洋法は、大航海時代の幕開けと共に、長い年月をかけて主に慣習国際法として発展してきた法秩序であり、いわば、国際社会共通の財産です。航行の自由があってこそ、諸国は海で繋がり、航路によって相互に通商を行うこともできるのですから。日本国を孤立化させたとしても、国際社会は、中国の違法行為を容認するはずもなく、現に、南シナ海で航行の自由作戦を展開しているのはアメリカであり、また、この問題を日中間の対立として報じる海外メディアも殆どありません。

 中国は、南シナ海における国際法違反の行為が、国際社会において”虎の尾”を踏むに等しいことに気がつていないのかもしれません。南シナ海での対立の基本的な構図は、中国対国際社会なのですから。この点を考慮しますと、中国は、効果の期待できない”日本孤立化作戦”を、早々に諦めるべきではないかと思うのです。

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コメント (1)
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