万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

インパール作戦と元寇

2019年09月29日 13時18分51秒 | 日本政治
 第二次世界大戦において日本軍にして最悪であり、かつ、最も愚かな作戦とされたインパール作戦。イギリス軍の蒋介石軍への補給路を強引に遮断しようとした同作戦が、時代を700年程も遡る元寇と関係があると申しますと、首を傾げる方も多いのではないかと思います。ところが、この作戦について少しばかり調べて見ますと、そこには、元寇の蔭が歴史を越えて重なってくるのです。

 ネット上で集めた情報ですし、現地調査を実施したわけでもなく、また、確認作業を済ませているわけでもないのですが、インパール作戦を指揮した牟田口廉也中将に注目しますと、両者を繋ぐうっすらとした線が見えてきます。インパール作戦が‘ジンギスカン作戦’と呼ばれ、同氏は自らを‘昭和のジンギスカン’と称していたというのですから。真偽のほどは分かりませんが、戦後、同氏が経営していた中華料理店の名称も、‘ジンギスカンハウス’であったとされます。

 牟田口中将は、戦争の発端となった盧溝橋事件やマレー作戦にも関わっており、先の戦争におけるキーパーソンの一人と言っても過言ではありません。それでは、何故、牟田口中将は、かくも‘ジンギスカン’に拘ったのでしょうか。その謎を解く鍵は、同氏の出身地である佐賀県に求めることができそうです。今日、佐賀県には‘モンゴル村’と云う名のテーマパークもありますが、佐賀の地に観光施設が設けられた理由は、同地が元寇の激戦地であったからです(ただし、‘モンゴル村’の開設は、日本国とモンゴルとの友好促進が目的とされている…)。元寇と申しますと、兎角に福岡県の方に関心が集まりますが、佐賀県もまた元軍の襲来を受けていたのです。牟田口中将の出生地については佐賀県とのみ記されており、詳細については不明なのですが、佐賀県において最も牟田口姓が多いのが佐賀市であり次いで神崎市なそうです。

 そこで、佐賀と元寇について調べて見ますと、神崎には、元寇において捕虜となった元軍の兵士達が拘留されたと言います。今日、一旦途絶えた尾崎焼が復活していますが、尾崎焼とは、捕虜となった元軍の兵士から伝わったとされています。元軍の捕虜たちが本国に送還されたのか、否かは分かりませんが、少なくとも、焼き物の技術を伝えるに十分な期間、日本国に居住していたことは確かなことです。モンゴル族には焼き物の技術はありませんので、この捕虜たちは、元の支配下に入った宋、並びに、高麗の人々ではなかったかと推測されています。あるいは、元軍の兵士達は、鍋釜持参で日本遠征に出発したとも伝わりますので、日本国を征服した後には定住を考えていたかもしれません(窯業の技術者が存在したことは民間人が徴兵された証でもあり、それは、植民計画であったかもしれない…)。

 牟田口中将は、元寇ゆかりの地で育ったが故に、自らの作戦に‘ジンギスカン’と命名したのでしょう。しかしながら、よく考えても見ますと、‘ジンギスカン’とは、日本国の敵国となった元の建国の父であり英雄です。破竹の勢いで世界帝国を築いた‘偉業’に因んだのかもしれませんが、日本国にとりましては必ずしも好感をもたれてきた人物ではありません。佐賀県でも、語り継がれているのは強大な元軍に立ち向かって壮絶な死を遂げた勇敢な武士たちのお話なはずです。それにも拘らず、何故か、同中将は自らを元軍の方に喩えているのです。

インパール作戦の結果だけを見れば、あたかも、日本国が内側から攻撃されたかのように、敵よりも味方に多大な犠牲者が生じています(NHKのドキュメンタリー番組によりますと、牟田口中将は、「5000人殺せばインパールを攻略できる」と発言していたそうですが、部下の日記によりますと、その5000人は敵兵ではなく、日本兵のことであったそうです)。マルコ・ポーロの『東方見聞録』には、日本国に関する記述として元軍による偽旗作戦の記述もあり、インパール作戦とは何であったのか、おもわず頭を抱え込んでしまいます。幕末にも、明治維新において暗躍した宣教師フルベッキは佐賀藩お抱えの英語教師でしたし、もしかしますと、薩長と一括りにされる長州藩や薩摩藩の両藩よりも、佐賀藩に注目した方が明治維新の真相に迫ることができるのかもしれません。日本国は、時代を越えてもつれにもつれた糸を解きほぐし、その関連性を明らかにしてこそ、はじめて内外両面から迫る危機、あるいは、秘かに仕掛けられる罠から脱する道を見出すことができるのではないかと思うのです。

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コメント (12)
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