万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

混迷を深める新型コロナウイルスワクチン問題

2020年06月15日 12時49分52秒 | 国際政治

 報道によりますと、安倍首相は、インターネットの動画番組にあって新型コロナウイルスのワクチンについて、年末には接種を開始できる見通しを語ったそうです。新型コロナウイルス禍に見舞われている最中にあって、ワクチンの出現は本来であれば朗報なのでしょうが、手放しでは喜べない側面もある気がいたします。

 第一に、新型コロナウイルスの出現から僅か1年足らずでの開発ともなりますので、そもそもワクチンの安全性には大いに疑問があります。季節性インフルエンザでさえ感染予防率は然程に高いわけではなく(50%程度…)、しかも、その効力は数か月しか持たないとされています。副作用(副反応)も懸念されますし、ましてや未だに新たな症状や後遺症の報告が続く謎の新種コロナウイルスともなりますと、開発成功の報にも疑心暗鬼とならざるを得ません。報道内容からしますと、開発されたのは、風邪の原因ともなるコロナウイルス一般に対して抗体を産生するユニバーサル・ワクチンのようでもあり、変異に対する対応力は高いようなのですが、後々、大規模な薬害被害が発生する可能性も否定できません。

 第二に挙げられますのが、政府と結びついた製薬会社による新型コロナウイルスワクチンの‘独占’問題です。安倍首相が念頭に置いているのは、イギリスのアストラゼネカ社、並びに、アメリカのモデナ社からのワクチンの提供のようです。日本国政府も、既に両者との交渉に入っているそうですが、ヨーロッパでは、6月13日にドイツ、フランス、イタリア、オランダの四か国が‘ワクチン同盟’を結成し、同社と4億回分のワクチン提供の契約を締結したそうです。また、モデナ社はアメリカ生物医学先端開発局から10憶ドルの支援を受けているため、‘出資者’であるアメリカも3億回分のワクチンを確保したとも伝わります。同社の供給目標数は20億回分とされていますので、残りの13億回分の枠を押させるべく、日本国政府も、同社との契約を急ぎたいのでしょう。

しかしながら、先に開発・製品化に成功した一社が各国の政府と契約を結び、必要量を満たしてしまうとしますと、政府調達における独占行為ともなりかねないように思えます。他のライバル企業は全て排除されてしまうことになるのですから(‘勝者総取り?’)。今後は、EU欧州委員会との連携を深めるとも報じられておりますが、EUの競争総局は異議を唱えないのでしょうか。

 この問題は、同時に、日本国政府による自国のワクチン開発潰しを意味するかもしれません。仮に、日本国政府が両社と契約を結び、国内で必要となるワクチン接種数の全数を発注するとすれば、日本国内におけるワクチン開発への熱意や意欲は一気に削がれることとなりましょう。国内でも、阪大を初めワクチン開発に取り組む研究機関や製薬事業者が少なくなく、医療物資の国産化、並びに、産業政策の面からも、ワクチン事業からの撤退は将来に禍根を残すかもしれません。第三の問題点は、日本国の脆弱化という側面です。ワクチンの安全性の確認には時間を要し、かつ、日本国では感染者数も死亡者数も比較的低いレベルで抑えられている現状からすれば、日本国政府は、時間をかけてでも安全性の高い国産ワクチンの開発を後押しすべきではないでしょうか(それとも、国民の命や健康よりも、来夏に延期した東京オリンピックに間に合わせることが大事?)。

 そして、第4の問題点を挙げるとすれば、アストラゼネカ社もモデナ社も、ビル&メリンダ財団からの資金援助を受けている点です。ビル・ゲイツ氏は、奇妙なことに日本国から叙勲されましたが、ワクチンをめぐる同氏の動きは慈善活動や人類愛とは程遠いように思えます。同氏がその桁外れの財力を以って全世界に張り巡らした策謀によって、人類は、国民救済の美名のもとでワクチン接種に追い込まれているようにも見えるのです。仮に、開発ワクチンに重大な欠陥や謀略が潜んでいるのであれば、人類の存続も危ぶまれる事態が想定されましょう。

 日本国では、現在、他の諸国とは異なり、公費負担ではあれワクチン接種は法律で強制されてはいないそうです。しかしながら、確か、緊急事態宣言の発令が可能となる方向で法改正がなされる際に、その原案として、ワクチン接種の強制化が報じられていたように記憶しております。謎の感染症の拡大からワクチンの強制接種までの流れが青写真として既に描かれているとしますと、空恐ろしい気もいたします。両社の生産能力を考慮すれば、日本国政府は、年末頃には全国民へのワクチン強制接種を試みようとするかもしれないのですから。


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