廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

感想をきちんと述べるということ

2014年04月14日 | Jazz CD
私がこのブログで音盤の内容に関する駄文を書いているのには、実は理由があります。

1つは、レコード買いを再開した際に、買うかどうか迷った時に参考にするべきディスクレビューがほとんど見当たらなくてとても困ったから、
というのがあります。 

15年のブランクの間にマニアによって眠っていた様々な音盤が次々に再発見されたのは素晴らしいことですが、そこに刻まれた音楽が一体
どういうものなのかについては、ほぼ誰も教えてくれないという現実がありました。 値段が恐ろしく高いのですから、買ったはいいが
内容が気に入らない、ではまずい訳です。 ネットの発達のおかげで、それなりに個人のHPやブログの中に登場するのですが、残念ながら
内容に関する情報は皆無に近い状態。 私もマニアなので、レコードに関する四方山話は大好きでどれも楽しく拝読させて頂くのですが、
こと自分が買うにあたってはそういう話は直接の判断材料にはならない訳で、これには本当に困りました。

最近はCDもよく物色するのでCDに関する情報も欲しくていろいろ探したりしますが、レコードに比べるとこちらは内容への言及が比較的多い
ように思います。 まあ、CDはオリジナルの音がどうとかマトリクスがとかそういう話は関係ないので、内容に関する話になりやすいからという
だけのことですが、数年前に更新が途絶えてしまったブログが多く、現在進行中のブログは随分少なくなっています。

ディスクレビューは所詮は主観なので役に立たない、と悪く言う人もいますが、それは間違っています。 人間はどうあがいてみても、
主観でしか世界を語れないのです。 大事なのは、その主観をたくさん積み重ねることで、対象の実像が少しずつ見えてくるということでしょう。
でも、現状はとにかく数が少なすぎて、さっぱりわからないのです。


もう1つは、単に私が持っている音盤の枚数が少なすぎる、ということです。 同一レコードのモノとステレオとか、U.Sプレスと欧州プレスとか、
初版と再版とか、のような買い方ができていないし、単純に枚数も少ない。 レコードは70枚もないし、CDは300枚あるかどうか・・・ 
これでは、物へのこだわりを書きようがありません。 ま、これはどうでもいいことですけどね。


前振りが長くなりましたが、なんでこんなことを書いたというと、このCDを買うのに随分迷って困った、ということがあったからです。





Alastair Laurence という英国のピアニストによるピアノ・トリオの録音です。 CDはほぼ私家録音に近くて、極端に流通枚数が少なかったので
すぐに廃盤となったようですが、最近になって再プレスされてDUに並びました。

普通ならこの手のCDは買わないのですが、左側のCDには Time Remembered や Skating In Central Park という大好きな曲が入っていて、
買うかどうかを大変迷ったわけです。 

で、ネットで調べてみたのですが、出てくるのは「オークションで5ケタで取り引きされた」というようなどうでもいい話ばかりで、
内容に関する情報が何一つ出てこないのです。 DUのブログですら、代理店が用意した販促文を流用するだけで、しかもそこで書かれた
録音年は間違っている有様です(これはのちに判明)。 値段が3,600円と高いし、困ったなあと迷っているうちに最初の販売ロット分は
売り切れて、数か月後に再入荷された最近になってようやく手を出しました。 レコードを買わなくなっておこずかいが余っていたし、
いつまで経っても内容に関する情報がアップされないからです。

まず驚いたのは、これがライヴ録音だったということ。 そんな基本的なことさえ、どこにも書かれていませんでした。

そして、録音は1999年9月12日で比較的新しいのに、録音状態があまりよくないこと。 会場の最前列にいた観客の1人がテープレコーダーか
ICレコーダーで録ったのか?と思うようなバランスの悪さ。 演奏の音よりも観客の拍手や笑い声のほうが遥かに大きな音で録音されている。
全体的に残響感もゼロで、ろくな機器ではなかったのでしょう。

1曲目のピアノの音がまるでお琴のような、チェンバロのような音で、古くて調律のされていないピアノを使ったのか?という感じです。
聴き終えた後にライナーノート(ほんの形だけのものですが)を見ると、1曲目は1795年製のフォルテピアノを弾いていたことが判りました。
これでは、名曲も台無しです。 もう1つの愛聴曲も、アレンジがよくないです。 

何より、このピアニストはあまり演奏の腕がよくありません。 英国のベテランピアニスト、と紹介されていたのですが、私にはプロの腕には
聴こえません。 趣味が高じて長年仲間うちで演奏を続けているので、素人の割には上手いでしょ?というところなんじゃないでしょうか。
写真を見る限り、まあ確かに年を喰っている感じですが。

と、散々悪口を書き連ねましたが、実は私、このCDが気に入りました。 このトリオの演奏には、何かがあります。
ピアニストは腕はイマイチですが、この人の弾くピアノには往年のビッグネームたちに共通する何かがあります。 最期まで飽きずに
聴き通せるのです。 ドラムスのブラッシュワークも、ポール・モチアンのように気持ちがいい。 何なんでしょう、この感じは。


そういう訳で、同時に再プレスされた右側の Age Before Beaty も在庫が無くなる間際に滑り込みで買い求めたのでした。

こちらは2006年11月、ノルウェーのスタジオ録音です。 こちらも綺麗な録音とは言いがたい、低予算感がプンプン匂う感じです。
All Blues、Gentle Rain、Nardis などの選曲は相変わらずいいのですが、アレンジはやっぱり冴えません。 演奏も特に上手くなった
という訳でもありません。

でも、やっぱり、こちらも私は気に入りました。 やっぱり、この演奏には何かがあります。 巷に溢れる激レア盤には感じられない、
どこか惹かれるものがあります。 ただ、まだ上手く説明できません。 言葉にするには、もう少し時間がかかりそうです。



こんな風に、凡人のディスクレビューというのは曖昧でいい加減なものです。 でも、何もないよりはいいと思うのです。



コメント (4)
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