廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

Charlie Mingus が残してくれたもの

2014年10月19日 | Jazz LP (Europe)

Lars Lystedt Sextet / Jazz Under The Midnight Sun  ( Swe Disc SWELP 10 )


60~70年代のジャズを聴いているとチャーリー・ミンガスの影を感じることが結構あって、特に辺境の地に行くほどそれは多いような気がします。

日本人は元々音楽に対して教条主義的に接する悪いクセがあるので、チャーリー・ミンガスのような思索的な音楽を前にすると畏怖の念を持って
しまいがちで、理解もできないし好きでもないのに褒めたりしますが、西洋の人々はもっと直感的に、肉感的に彼の音楽を聴いているような気がします。

私が20年振りにレコード買いを再開する前の下調べでネット検索をしていた時、クラブジャズが流行った頃にさかんに書かれたブログの残骸の中に
このラース・リーステットのレコードがよく載っていて、The Runner という曲がカッコいい、とやたらと褒められていました。 へえ、そうなのか、
と思い、程なく手に入れて聴いてみましたが、私が感じた印象は少し違うものでした。

このアルバムは、ブルースの形の崩し方、管楽器の音の発色やハーモニーの重ね方、馬の嘶きのようなサックスのフレーズ、祝祭的な調子はずれの
旋律など、あきらかにミンガスの音楽の影響が濃厚です。 もちろんそれだけではなくて、独特の北欧的な暗さが全体を覆っていることや平均律からの
逃走を試みるピアノのフレーズの多用などがブレンドされているので、一聴すると他では見られないオリジナリティーで武装していると感じますが、
それでも彼らがミンガスの音楽に心酔していてこれを創ったんだろうな、ということが容易に聴き取れます。 でも、そういう複雑な構成要素が
混乱することなく整理されているところにセンスの良さがあって、それが多くの人を魅了するのだと思います。 まあ、いいレコードです。

そう言えば、その昔、ヴィンテージマインでこのレコードが何年もの間、売れ残ってポツンと置かれていたのを思い出します。 セカンドプレスだった
せいかもしれないし、その割に高額だったせいかもしれませんが、大きな部屋の窓際の隅っこに設けられた欧州盤コーナーに長い間残っていました。
もっとも、当時この盤のことを知っていた人はほとんどいなかったはずで、あれがセカンドだなんて誰にもわからなかったか・・・



コメント
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