廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

今週の成果~女性が活躍するジャズ

2014年12月06日 | Jazz CD
DUの新宿ジャズ館でこの秋のボーナス買取は去年の3倍以上だったとブログにアップされていたので、こりゃあ楽しみだと3Fへ行ってみましたが、
棚出しが全然されておらず、新着は相変わらずの回転の悪さで、何なんだ?一体、とがっかりでした。 そういうのは棚出ししてから書いて欲しい。
Jazz Tokyoも見てみましたが、こちらも目ぼしいものは1枚だけで、あとは新譜を1枚買いました。





■ Cecilia Wennerstrom / Minor Stomp  ( Wela Records WELACD 002 )

なんと女性のバリトン奏者によるワンホーンで、97年ストックホルムのスタジオ録音です。

聴いて驚くのは、音がマリガンのような芯の抜けた音ではなく、ペッパー・アダムス系の重くゴリゴリした音なのに、フレーズが柔らかくて
ものすごく歌っていることです。 バリトンサックスでここまで歌心を感じる演奏は初めてです。 この大きく重たく取り扱いにくい楽器で
よくもここまで歌うように吹けるな、と面喰います。

しかし、楽器と言うのはなぜここまで人によって出てくる音が違ってくるのでしょう。 これこそが聴き比べの面白さです。
この人のバリトンなら、ブラインドテストでも当てられるような気がします。
演奏も落ち着いていて纏まりもよく、とてもオーセンティックです。 録音も各楽器の配置感も自然で、よく出来ています。

こういうのに当たると、CDの世界もいいものだ、と思います。 レコードとはまた違う、深い魅力を感じることができます。


■ Sliding Hammers / A Place To Be  ( Gazell / Spice Of Life Inc. SOL GZ-0001 )

姉妹による、2トロンボーン・クインテットというこれまた珍しい構成のアルバム。

こちらも驚かされるのはトロンボーンの音の大きさと美しさ。 そして伸びやかで滑らかなロングトーン。 早いパッセージではもたつきますが、
スライド・トロンボーンの特質を最大限活かした奏法に徹しています。 この楽器固有の演奏の難しさを克服して、難なく吹いています。
演奏もアンサンブルの仕方も完全に J & K をお手本にしていて、ご本家よりもデリケートでなめらかなハーモニーを実現しています。
これは見事です。 今どきの女性は、何をやらせても凄いです。

ただ、音楽的には表面的なところに気を使い過ぎていて深みがなく、一歩間違うと休日のカフェのBGMに堕してしまいそうな感じです。 
バックのピアノトリオも上手い演奏ですが、上手過ぎて手先だけで弾いているようにも聴こえる。 女性らしい清潔でシルクのような質感の
仕上がりですが、私には音楽的にまったく物足りない。

このCD、帯には寺島某の推薦文が載っていて、これがベタ褒めの内容です。 また、プロのトロンボーン奏者推薦文も載っています。
2人とも如何にこのトロンボーンの演奏が素晴らしいか、ということを示し合わせたかのように書き合っています。
そりゃあ、まあ、そうでしょう、販促文ですからね。 トロンボーンのCDなんてピアノやサックスとは違って人気がないのですから、
元々売るのが難しい商品です。 でも、レコード会社はこれを売らなきゃいけないから、そのためには手段を選ばないわけです。

”久し振りにVery Goodなトロンボーン盤が出た、いっぺんで惚れてしまった、音が気持ちよくバーンと出ている、そしてメロディアス、
 とにかくすばらしい”と寺島某は書いています。 まあ、そうかもしれません。 少なくとも、嘘は書いていない。

ただね、このCD、それだけではないでしょう?と言いたくなります。 この執筆の2人は揃ってこの姉妹の演奏技量をべた褒めしているのですが、
そんなのプロなんだから当たり前なんじゃないのか?と素人的には思ってしまいます。 裏を返せば、それだけ技術力のない演奏家の音盤が
溢れているということなんだけど、そこしか褒めるところがなかったんだな、というのが聴いた後で初めてわかるわけです。

別にレコード会社の意向に従って寺島某は仕事をしているだけで彼は何も間違ったことはしていないのですが、身銭を切ったこちらサイドの
気持ち的には、この野郎~、カネ返せ、と思うわけです。


でも、色々あるとはいえ、女性は頑張っています。 男性ミュージシャンの多くも、これに見習う必要があるんじゃないでしょうか。






■ Hammerhead / Mozaic  ( AIM HH007 )

トランぺッターのジェイソン・ブリュアーを中心にしたオーストラリアの演奏家らによる6重奏団で、ブルーノートのハードバップを現代に
蘇らせたらどうなるか、というようなコンセプトの演奏です。 "Mozaic" や "Speak No Evil" も収録されており、明らかに当時のショーター周辺の
音楽をお手本にしています。

今年になってこういうタイプのCDはたくさん聴きましたが、それらの中ではこれが頭一つ飛び出しているような気がします。
演奏は上手いし、音も抜群にいいし、音楽的にも満足度が高い内容で、これは素晴らしい出来だと思います。 何回でもリピートして聴けます。

まあ、今更こういう内容をやって一体何の意味があるんだ?と思わない訳ではないですが、1枚くらいならこういう内容でもアリかな、と思います。 
やはり、3管ハードバップは好きですから。 ただ、この路線で何作もやられると、さすがに褒める気にはならないだろうとは思います。


■ Peter Brotzmann / Nipples  ( Calig CAL 30 604 )

収録曲は2曲で、タイトル曲はデレク・ベイリー、エヴァン・パーカーが加わったセクステット。

このアルバムはかなり激しい演奏が繰りひろげられていて、やはりエヴァン・パーカーの影響があるんだろうと思います。
ブロッツマンは低音部、パーカーは高音部、と一応最初は層を分担して始まりますが、途中からは近づいたり離れたりを繰り返しながら
曲は進んでいきます。 特にタイトル曲にはどこか祝祭的なムードがあります。

この手の音楽は、人数が増えれば増えるほど混迷の度合いも増えていくし、音楽が持つパワーも増えていく。 あまりに多くなると音が混ざって
しまって何だかよくわからなくなってしまいますが、これくらいなら各人の個性がはっきりとわかるし、演奏する側もやりやすいんじゃないでしょうか。

ブロッツマンの初期の作品はこれでかなりカバーできたかもしれません。 ただ、この人の場合、カタログがよくわからないので、
他にどんな作品があるのかがわからず、いつも出たとこ勝負的に買っていくしかないのが難点。 実際に聴いてみると、作品ごとに
特徴があることがよくわかります。 当たり前だけど、ちゃんと考えながら作品をつくっているんですね。




コメント
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