廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

Ernestine Anderson の素晴らしさ

2014年12月21日 | Jazz LP (Vocal)

Ernestine Anderson / It's Time For Ernestine  ( Metronome Records MLP 15015 )


私がサラ・ヴォーンの次に好きな女性シンガーが、このアーネスティン・アンダーソンです。

この人を好きになったきっかけはジジ・グライスのシグナル盤に収録された "(You'll Always Be) The One I Love" を聴いたことでした。
変なクセのない真っすぐで伸びやかな歌声が忘れられず、当時はこのレコードをかける時はこの曲は入ったA面ばかりを聴いたものです。
私は、例えば、"We Are The World" の映像を観ても、一番感動するのはダイアナ・ロスの歌のパートだったりするので、こういう黒人女性シンガーの
ストレートな歌い方に根本的に弱いのかもしれません。

ジジ・グライスのセッションへの参加後の1956年、彼女はロルフ・エリクソンのスェーデン・ツアーに誘われて渡欧し、全くの無名だったにも関わらず、
3か月の滞在中にクラブで歌ったりラジオでその歌声が流れるようになると現地では暖かい好意をもって受け入れられ、ストックホルムに来ていた
デューク・ジョーダンのトリオや地元のハリー・アーノルド楽団たちと初めての本格的なレコーディングを行います。 

これらの録音は、まず1956年にメトロノーム社から数曲がEP盤として数枚リリースされ、そのすぐ後に米マーキュリー社から "Hot Cargo"という
タイトルでLPが発売されます。 すると、これがアメリカでスマッシュ・ヒットとなり、彼女の名前は広く知られるようになりました。
そこでメトロノーム社もようやく重い腰を上げてこの録音を1958年にLPとしてリリースすることになり、それが写真のアルバムになるわけです。
スェーデン録音だからこのメトロノーム盤がオリジナルなんだろうと思っていたのですが、このジャケットの裏の解説を読むと上記のような経緯が
書かれており、なんだ、マーキューリー盤のほうが初出だったのか、とがっかりしたのでした。

まあ、それはいいとして、このアルバムで聴かれる彼女の歌声は素晴らしい。 帯域は芯のしっかりとしたアルトですが、原曲のメロディーを
変にいじらずに大事にした歌い方で、歌がしっかりと自分の中に入ってきます。 そしてなにより伸びやかな歌声に聴き惚れてしまいます。
ハリー・アーノルド楽団も立場をよくわきまえた、歌を邪魔しない控えめな伴奏をしており、これも大変好ましいです。 

珍しいコール・ポーターの "Experiment" が収録されていますが、これが感動的な名唱となっていて絶品です。 
私にとってこれは女性ヴォーカルの3指に入る大事なアルバムとなっています。




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