Elvin Jones / Elvin ! ( Riverside RLP 409 )
こんなレコード、一体誰が買うんだよ、と昔は思っていた。 ドラマーのリーダー作には元々懐疑的だったし、ジャケットデザインにうんざりさせられた。
でも、あれから随分と時間が経ち、ジャズの何たるかも少しはわかるようになってくると、こういうレコードに魅力を感じるようになってくる。
コルトレーンのバンドに参加して少し経った頃の録音で、ジョーンズ3兄弟が勢揃いしている。 サド・ジョーンズが実質的な音楽監督をしており、彼の一連の
デトロイトものに非常によく似た雰囲気を持った内容で、これは嬉しい誤算だった。 ハンク・ジョーンズのピアノの抑制がよく効いていて、全体を知的な
印象にまとめ上げている。 それは、まるで "Somethin' Else" のような感じだ。 最後に配されたバラードの "You Are Too Beautiful" ではオープン
トランペットの音色が郷愁を誘い、何とも言えない深い余韻を残す。 エルヴィンのドラムがよく目立つような建付けにもちろんなっているが、耳障りな
ところもなく、全体的に予想外の出来だと感心してしまった。
偉大なドラマーであることには異論などないし、この人以外には考えられないと思えるくらい素晴らしい演奏をしているアルバムもあるけれど、基本的に
あまり好きなタイプではないのでさほど熱心には聴いてこなかった。 ただ、当たり前のことだが、共演者がうまくハマればいい作品が出来上がるんだなあ、
と改めて思った。 内容がいいと、昔は嫌いだったこのジャケットも淡い紫色が中々上品じゃないか、などと手の平を返したような感想へと転じてしまう。
おまけに、この盤は音がとてもいい。 ムラのあるリヴァーサイド録音の中で、これは当たりの1枚だ。 全てがいい方向へと予想を裏切られた。
誰も褒めてくれないレコードのようなので、じゃあ、私が、ということで。