Stan Getz / Cool Sounds ( Verve MGV-8200 )
飲みの予定のない金曜日は仕事なんて早めに切り上げて、特に目的もなくDUへ立ち寄ってレコードをパタパタと眺める。
浮いた予算(と言っても、それはわずかな額だけど)の範囲で買えそうなものは何かあるかな、と考えながらのんびりと見ていく。
なんとも穏やかな夕刻のひと時に、時間を気にすることもなく、たくさんの見慣れたレコードジャケットを順番にめくっていくのだ。
そういう時は、普段は目に留まらないようなレコードのところで手が止まったりする。 別に探していたわけではないけれど、何となく聴くこともなく
これまでは通り過ぎていたレコードたち。 そういう気分の時じゃなきゃ買わないタイプのレコードというのが、確かに存在するものだ。
クレフレーベルにたくさん録音してアルバム制作時に選から漏れてしまった残骸を寄せ集めしたこのレコードも、そういう気分の時くらいしか買えない。
でも、家に帰って聴いてみたらこれがなかなかいい演奏だということがわかり、なんだかずいぶん得をした気分になった。
ミュージシャンのオリジナル曲が多くて知らない曲のオンパレードだけれど、どれも平易な聴きやすい曲ばかりだし、ゲッツやルー・レヴィーの力みのない
余裕のプレイが心地いい。 それに、多くの曲でトニー・フラッセラのトランペットが聴けるのが何といっても珍しい。 これは当たりだったよな、と思う。
音楽を聴く時、毎回最高の演奏ばかりを聴きたいわけじゃないし、最先鋭の演奏を聴きたいわけでもない。 特にどうということもない、半分聴いて後の
半分は聴き流すような音楽をかけたい気分の時だってある。 そういう時にはこれはもってこいの1枚じゃないだろうか。