Stan Getz / Joao Gilberto featuring Antonio Carlos Jobim ( 米 Verve V-8545 )
今日からやっと夏休み、今年の夏はホントに酷いことになってるのでゆっくり休めるのはとにかく嬉しい。 昨日なんて日中外を歩いているとあまりの
熱さに着ている服が自然発火して燃え上がるんじゃないか、と思ったくらいだった。 本当に命の危険を感じる。 しばらく外には出たくない。
泣く子も黙るこの名盤、盛夏になるとやはり聴きたくなる。 昔はジョアンの声が大嫌いで聴くと虫唾が走ったものだが、最近はこちらも歳をとって
慣れたせいか、ようやく普通に聴けるようなった。 それでもやはりジョアンの声や歌は好きになれない。 端的に言って下手な歌だ。
それに較べてゲッツのテナーの素晴らしさは際立っている。 聴いているとなんだか恐ろしくなるくらい孤高の音で鳴っている。 フレーズも素晴らしい
旋律ばかりで、一番豊かに歌っているのは結局はゲッツなのだ。 こんなことを言うと多方面から叱られそうだけど、ジョアンやアストラットの歌なんて
所詮は単なるゲッツの歌伴に過ぎないと思うくらいだ。
このアルバムには世紀の名盤になった要素がもう1つある。 それは全体を覆っている深く落ち着いたペースで、これはキャノンボールの "Somethn' Else"と
そっくりだ。 これこそがこのアルバムに独特の風格を与えている。 録音時のギクシャクした人間関係のエピソードが物語るように、張り詰めた緊張感が
弛緩しがちな南米の音楽をキリッと引き締めている。 仲が悪くて良かった、と感謝しなくてはいけない。
極めつけは、録音の良さ。 モノラルなのに深く残響が効いていて、奥行きのある立体的な音場感が素晴らしい。 録音エンジニアは若き日の
フィル・ラモーンで、天才の腕前を既に存分に奮っている。 このアルバムの功労者は何と言ってもスタン・ゲッツとフィル・ラモーンの2人なのだ。
いずれにしても、夏休みに聴くには相応しいアルバムとしてこれはなかなか重宝している。