Brew Moore / Brew Moore ( 米 Fantasy 3264 )
サン・フランシスコに移住後、地元のローカル・ミュージシャン達を集めて録音された演奏で、トップが2テナー。 ブリュー・ムーアはレスター派、もう1人は
少しアーシーなタイプなので、聴き分けは容易にできる。 典型的な地方都市のローカル・ジャズ・セッションで、舗装されていない田舎道を年代物の中古車で
ガタガタと揺れながらのんびりと走っていくような、平易で邪気のない音楽が聴ける。 どこの街でも日々普通に演奏されていたであろう、人々の生活の中に
溶け込んだ飾り気のないジャズ。 こういうのは安レコで拾ってこそ、という気がする。 悪い意味ではなく、そうじゃなきゃダメだよなと思う。
50年代のファンタジーの典型的なモノラル録音で、ナロー・レンジでデッドな音でオーディオ的快楽度はゼロ。 傷一つないコンディションなのに、これだもの。
演奏の微妙なニュアンスや表情も、あまり聴き取れない。
ニューヨークから西海岸に移ったのが1954年、その後60年代に入ると欧州へと移住する。 主流派としての仕事のありそうな所へと自然と流れて行くような
移動の軌跡だ。 そういう流れに身を任せるような生活の中で、地道に演奏活動をしていたことが偲ばれるようにポツリポツリとレコードが残っている。
この人のテナーを味わうなら欧州で作られたものを聴くほうがきっといいのだろうけど、これはこれで悪くない。 ブリュー・ムーアという人の音楽への
スタンスがよくわかるレコードだと思う。