

Dinah Shore / Dinah Sings, Previn Plays ( 米 Capitol T-1422 )
私が唯一聴かないジャンルが、白人の美人女性ヴォーカル。 私はゲイではないし、クラシックの女性声楽は好んで聴くし、TVの歌番組も女性アイドルが
歌う箇所しか観ないから、白人美人女性自体が嫌いということではなく、単純に音楽としての魅力を感じないからなんだろうと思う。 なぜ魅力を感じない
のかは自分でもよくわからない。
但し、単発でこれはいいと思うアルバムはもちろんあって、このダイナ・ショアのアルバムはその1枚。 彼女のいいところは、色香の押し売りをしない
清楚さ。 一歩引いたところに立って、素直な発声で普通に歌う。 その自然さが音楽を際立たせるから、こちらもいつの間にか聴き入ってしまう。
「私を見て!」という感じで迫ってこないから、こちらがもっとよく見ようと近づいていく感じになるのかもしれない。
副題にもあるように、真夜中に静かにそっと歌われるような雰囲気のアルバムで、とても素晴らしい。 何より、アンドレ・プレヴィンとそのトリオの
抑制が効いた演奏が圧巻。 必要最小限の音数と音量でダイナ・ショアに寄り添う。 どちらも雰囲気だけでやり過ごすのではなく、圧倒的な力で音楽を
知的にコントロールしているからこそ、の仕上がりが心を打つ。 そういう意味では、単なるヴォーカル作品というよりは、緻密に演奏されたインスト
アルバムの質感に通じるところがある。 そういうところに惹かれるのかもしれない。