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Ella Fitzgerald And Louis Armstrong / Porgy & Bess ( 米 Verve MG V-4011-2 )
たくさんのレコーディングが残っているこの "Porgy & Bess" の中でも、マイルスのコロンビア盤とこのエラのアルバムは双璧だろうと思う。
どちらも全曲版ではないけれど主要な曲は網羅されていて、これを聴けばこのフォーク・オペラの素晴らしさは享受できるようになっている。
特にマイルスの方は当時のアメリカでは彼のアルバムの中では最も売れたアルバムになっていて、そのことからもこれらの楽曲が如何に
アメリカでは愛されていたかが伺える。
人種差別と格差に苦しむ社会の様相を描いたシリアスな内容だが、残された音楽の美しさは不変で、それはこの先も変わることはないだろう。
どの曲にも通底する格調高い高貴さは他を寄せ付けない。ハリウッドの映画や舞台が全盛だった頃にもたくさんの音楽が量産されて
スタンダードになったけれど、ガーシュインのこれらの楽曲はさすがに格が違う。それがこのアルバムを聴くととてもよくわかる。
全盛期のエラの歌唱は圧倒的で、正にディーヴァという言葉に相応しい。 "Summertime" で彼女が歌い始めると、聴いている側は全身に鳥肌が立つ。
相手役のサッチモもエラの存在感の巨大さの前では小さく見えてしまう。豪華な装丁のジャケットのライナーノーツで、ノーマン・グランツは
この "Porgy & Bess" の歌詞と音楽を正しく理解して歌えるのはエラしかいないという確信をもって彼女を選んだと説明していて、その見立てが
正しかったことを流れてくる音楽が見事に証明している。
ラッセル・ガルシアのスコアとオーケストラの演奏も素晴らしく、仮に2人の歌が無くても何も問題なく鑑賞できるレベル。そこに無敵のヴォーカルが
入っているのだから、これ以上の作品は今後出ることはもうないのではないか。かと言って小難しく近寄り難い内容では決してなく、分かりやすくて
みずみずしく、非常に美しい音楽になっているのが良い。 レコードは2枚組だけど曲数はさほど多くはなく、分量としてもちょうどいいくらいだ。
こうやって古いレコードばかり聴いているのは退化した嗜好だと言われるかもしれないけど、それはまったく違う。ガーシュインの傑作を最も美しく
歌ったアルバムがたまたまこれだったから、これを好んで聴いているに過ぎない。 そして最も良い音で再生されるメディアがこのレコードだから、
これで聴いているというだけのことだ。このヴァーヴ盤の音の良さは格別なものがある。