Shelly Manne & His Friends / Modern Jazz Performances Of Songs From MY FAIR LADY ( 米 Stereo Records S 7002 )
ジャズも40年間聴いていると日々聴くのは地味なレコードばかりになっていて、定番のアルバムを聴くことはもうほとんどない。
そういうのは耳タコになっていて初めの頃に感じた感動はもはや微塵も感じないからだけど、偶には溝の掃除もしなきゃ、と
本来の目的とは全然違う動機で針を落とす程度だ。
このアルバムも1年生の頃に夢中になって聴いたレコードで、シェリー・マンのドラムの凄さに腰が抜けたものだけど、今聴いても
これは凄いよなと感心する。冒頭の "時間通りに教会へ!" の慌ただしい曲想を上手く表現した風圧を感じるドラミングからして圧巻だが、
その後も全編を通して凄まじい。その風圧で音楽が飛ばされてしまわないようにしっかりと地べたへ繋ぎ止めるアンカーとしての
ヴィネガーの重量級のベースも、そしてクラシカルな素養を敢えて前面に押し出したプレヴィンの傑出したピアノも素晴らしく、
コンテンポラリーの中ではダントツで傑出した作品となっている。
それらの素晴らしい演奏を100%堪能するにはこの Stereo Records盤が最適だ。すっかり音がいいという評価が定着した Stereo Records盤だが、
私はこの音場感があまり好きではなくて、アート・ペッパーもロリンズも聴いてがっかりして早々に処分したクチなんだけど、このアルバムは
このステレオ盤のほうがいい。
基本的にコンテンポラリーはモノラルのほうが好きなのでモノラル盤も手元にある。このモノラルは左側のジャケットがファーストだと
されているが、私はそれは違うと思っている。なぜなら、左右どちらのジャケットも1956年に刷られているからだ。
おそらく試験的に2種類のデザインで刷られたが、左側のものは "My Fair Lady" の字体が小さく、見た目でこのアルバムがマイ・フェア・レディ
からのセレクトだということがわかりにくい。そこで左側はボツとなり、右側が正規版として残ったのだろうと思っている。
現にこのアルバムを見て、最初に目に飛び込んでくるのは中央にレタリングされた "MY FAIR LADY" という太い文字だ。
発売当時、ラジオを聴いて気に入った人びとにレコード屋の店頭でこのレコードを買ってもらうためには右側のほうがよかったのだろう。
そんな今となっては確かめようのないあれやこれやを考えながら聴くのも、古いレコードの愉しさである。