Philly Joe Jones / Drums Around The World ( 米 Riverside RLP 12-302 )
フィリー・ジョー・ジョーンズはリヴァーサイドに3枚のリーダー作を残しているが、このアルバムがダントツで出来がいい。
おそらく、こんなに豪華なメンバーが集まって演奏をしたアルバムは他のどこにもないのではないだろうか。ドラマーとして多くの管楽器奏者を
支えてきたこの人のためなら、ということで集まったメンバーたちは当時のジャズ・シーンを支えていた重要なメンツばかりで驚かされる。
冒頭のリー・モーガンのソロが爆発してキャノンボールに渡すところなんてもう最高にカッコいい。このアルバムでのモーガンとキャノンボールは
最高の演奏を聴かせるが、これはやはりフィリー・ジョーのドラミングが背後から彼らを煽り立ててくるからだろう。管楽器のアンサンブルは切れ味
抜群で凄まじく、聴いていると頭がクラクラする。
ドラマーのリーダー作ということでドラミングにスポットが当たる箇所が多いが、大きくうねるような流れと強弱のバランス、フロア・タムを多用
した豊かな低音部など、飽きることなく聴かせる。こういう風にソロが鑑賞に堪えうるところがアート・ブレイキーやマックス・ローチとは全然違う。
フィリー・ジョーはブレイキーやローチなどの前時代のドラマーたちとトニー・ウィリアムスら次世代とをつなぐ架け橋をしたんだなということが
これを聴いているとよくわかる。
ベニー・ゴルソンがいるのでアンサブルのスコアもカッコよく、音楽的な充実度も素晴らしい。演奏の凄さとしっかり両立している。
"Stablemates" はマイルスの演奏とこれが双頭の出来だ。
おまけに、このアルバムは音が素晴らしい。ジャック・ヒギンズがリーヴス・スタジオで録った録音だが、楽器の音の鮮度が高く生々しいし、
ほの暗く深い残響感がニューヨークの夜を思わせる。全体を覆う管楽器の深い重層感と疾走感がジョニー・グリフィンの "Little Giants" とよく似た
雰囲気だが、こちらのほうがよりスマートで都会的な洗練さを感じる。リヴァーサイドは時たまこういう大化けするアルバムを作った。
私はジャズ喫茶が嫌いで行かないけれど、これだけはああいう大音量で聴ける環境で聴きたいと思う。