廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

本当に名盤!

2016年11月03日 | Jazz LP (Blue Note)

Ornette Coleman / At The "Golden Circle", Stockholm Vol.1  ( 米 Blue Note BLP-4224 )


ロリンズのヴァンガードでのライヴを聴くたびに思い出すのがこのゴールデン・サークルで、年代には少し隔たりはあるけれど、二卵性双生児と言っても
いいような内容だ。 ロリンズは1957年にスタンダードという素材を使ってハードバップからの飛翔を試み、オーネットは1965年に欧州ツアーでの
心象風景を抒情的に歌うことで、奇しくも接近することになる。 ロリンスは右から左へ寄り、オーネットは左から右へ寄ることで互いに近似している。

ロリンズはヴァンガードでニュー・ジャズの到来を予言したかった訳だけど、如何せん、自身でそれを演奏するには準備不足だった。 彼は自身のバンドを
持つことを好まず、天才プレーヤーの宿命として自分一人で全てをやらないと気が済まない人だったから、練習不足を解消するために結局2度目の雲隠れに
入らざるを得なかった。

ロリンズの予言はあまりに時期が早過ぎて、その当時それに気付いた人は誰もいなかったけれど、唯一マイルスだけは黙って準備を進め、59年春に
モードの傑作を「チームで」やり遂げる。 そして同じ時期にオーネットが「来たるべきもの」を録音する。 だから、ロリンズのヴァンガード(1957.11)
➡ マイルスのモード(1959.3)、来たるべきもの(1959.5) ➡ ロリンズの雲隠れ(1959.8)は一本の糸で繋がっている。

一方、この一連の動きの原動力だったオーネットは、バンドメンバーのドラッグ問題に悩んでいた。 バンドでドラッグをやらなかったのはオーネットただ
一人だけで、モントレー・ジャズ・フェスティバルに出演した時は、フラフラになったドン・チェリーをオーネットが殴り、唇が切れて演奏ができなくなった
チェリー抜きのトリオで演奏した。 チャーリー・ヘイデンは医者からしばらく演奏活動を止めるよう指示されて、バンドを辞めることになった。
更に有名になったのと引き換えに安いギャラで過酷なスケジュールでの活動を強いられるようになり、オーネットは1961~62年に演奏活動を止めてしまう。

そして、3年間の引退生活を経て新しいメンバーと活動を再開してほどなく欧州へ演奏ツアーを行い、スウェーデンで2週間ゴールデン・サークルに出演
した際の録音がこのアルバムだ。 録音は現地のエンジニアであるルネ・アンドレアソンが行い、RVGがマスタリングを行い、ブルーノートが発売した。
ロリンズの盤とは対照的に、こちらは音がとてもいい。

汲めども汲み尽くせないほど、フレーズは溢れ出てくる。 込み入ったことは何もやっておらず、おおらかに歌っている。 驚くほどシンプルな音楽だ。
そのあまりの素朴さに心を打たれる。 迷いの無さが強い説得力を生み、聴くものを黙らせる。 形式上の話など無意味だとすぐにわかるだろう。
音楽の世界は信念のある人しか生き残れないのだということを教えてくれる。




Ornette Coleman / At The "Golden Circle", Stockholm Vol.2  ( 米 Blue Note BLP-4225 )

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 本当に名盤? | トップ | 同時代としてのジャズヴォーカル »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
確かに (ken)
2016-11-14 18:42:53
連投すみません。
昨年、1枚1000円で後年のUA盤(オンプ)で、1集2集を入手。この時期(1980年頃)でもRVGの刻印があったので、如何に売れていなかったか(笑)。
これは聴き直しましたが、音がいいですね。シンバルの躍動感が気持ち良かったです。
返信する
Unknown (ルネ)
2016-11-15 09:32:49
ブルーノート4000番台はオンプのRVG盤はけっこうありますよね、処女航海とか。 たぶん、初版のNYレーベルと音はさほど変わらないと思いますよ。
そうそう、シンバルの音が上手く録れてると思います。 ただ、ベースは少し前に発売されたCDのほうがラインの1つ1つがくっきりとしていていいです。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Jazz LP (Blue Note)」カテゴリの最新記事