Gil Evans, Steve Lacy / Paris Blues ( 仏 OWL 049 )
当時フランスに住んでいたスティーヴ・レイシーがギル・エヴァンスを招いて録音が実現した素晴らしい作品で、ギルの最後のスタジオ録音となった。
ジャズという音楽は時代や年代に翻弄されて目まぐるしく変容していったけれど、ここにいる2人の巨匠はそういう時の移ろいに自己を流されること
はなかった。彼らは寒い季節のある2日間をフランスのスタジオで過ごし、ミンガスやエリントンの古い曲を静かに静かに演奏した。
ミンガスの曲が多いのはギルの意向を受けてのものだったが、冒頭の " Reincarnation of a Lovebird " から漂う寂寥感が初冬の冷たい空気の中で
人々の口から洩れる白い息のように儚い。 深い群青色に沈むエリントンの "Paris Blues" は、レイシーがパリの街で過ごす日々の中で自分の中に
降り積もっていく澱のようなものを表現するために選ばれた曲だ。 単なるブルースには終わらない、心地好い浮遊感の中に揺れている。
そうやって、彼らは自分たちの内に感じる様々な想いを取り出すために曲を吟味し、どう演奏に取り組むかを語り合い、ギルがアレンジを譜面に
起こす。彼のピアノ演奏がこんなにも生々しくたくさん愉しめる作品はおそらくこれだけではではないだろうか。 レイシーのソプラノも静かに
抑制されて、音もキラキラと輝いている。
静かに物悲しく、穏やかに透き通った至高の音楽になっている。 誰にも邪魔されない時間に、1人静かに聴き入りたい。
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ようやく邂逅できた。 1年くらい探しただろうか。 これはCDの音が悪くて、何とかしてレコードで聴きたかった。 80年代後半の成熟した
アナログ技術が堪能できる素晴らしい録音で、これはどうしてもレコードで聴かなければならない。 安いレコードなのに、この時期のアナログ
原盤は難しい。でも、これは待った甲斐があった。 東京にももうすぐやって来るであろう冬が待ち遠しい、そんな気分になる。
盤は安くて、送料込みで、新品の2枚分くらいでした。仰せの通りで、初期のCDはダメですね。OWL盤のレコードは好きです。ギルもレイシーも、技巧ではない世界を作っていますね。
http://kanazawajazzdays.hatenablog.com/entry/2015/11/05/081248
レコードはまるで別モンの音でした。 これでようやくこの演奏の真価がわかった気がします。
気を付けて帰ってきてください。
最近は買い物に執着が無くなってきていて、まあ、いつか手に入ればいいや、という日々です。