The Metronomes / Something Big ! ( 米 Jazzland JLP 78 )
フィラデルフィア出身の若い4声グループのデビュー盤で、メルバ・リストンが全面アレンジを担当している。 彼女が参加したクインシー・ジョーンズの
ビッグ・バンドがフィラデルフィアのクラブに出演していた際に知り合ったことが縁で、このデビュー作に手を貸すことになったようだ。 ライナー・ノーツには
メルバが語ったアルバム作成時の苦労話が書かれていて、なかなか面白い。
アメリカという大きな国においてはやはり地域性というのは重要なキーになるのは間違いない。 このアルバムにもいわゆるニューヨークで演奏されていた
ジャズとは明らかに違うムードがあって、それは敢えて言えば "フィリー・ジャズ" ということかもしれない。 リヴァーサイドのハウス・ミュージシャンが
バックの演奏を務めているにも関わらず、のちにフィリー・ソウルという名前で発展していくあの独特の雰囲気の種のようなものが明らかに見られる。
取り上げられている曲目がジャズの佳作ばかりだし、アレンジもバックの演奏も純粋なジャズなので、どこから聴いても正統派のジャズ・ハーモニーだけど、
それまでのジャズ・コーラスには無かったような感傷的なヴォーカルが幾重にもクロスするところにブレイクスルーを感じる瞬間がある。 ブレンド感を隠さず
そのまま生かしたところに新しい感覚があるなあと思った。 それがこの4人に依るものなのか、メルバのアレンジに依るものなのかは、この1枚だけでは
何とも言えないけれど。
珍しいのは "I Remenber Clifford" や "Monk's Mood" をやっていることで、前者はマーク・マーフィーが最初かと長年思ってが、こんなところでやっていた
とは知らなかった。 後者もヴォーカリーズとしては初めて聴く。 えっ、こんなことやってるの?、と目から鱗の内容が続く。
こういう作品がリヴァーサイド系から出ているのが面白いなあと思ったけど、よくよく考えればこのレーベルはマーク・マーフィーやエディ・ジェファーソンの
傑作を録ったレーベルだった。 そういうヴォーカルへの見識があるレーベルが作った傑作群に名を連ねてオッケーな内容だと思う。