Kenny Burrell / 'Round Midnight ( 米 Fantasy 9417 )
ケニー・バレルはアルバムを作ることに熱心で、自分でプロデュースしたりもしている。 だから作品がたくさんあって、我々には恵み多きアーティストだ。
どのレコードも弾数は多く、幻の稀少盤なんてものもない。 ボチボチと拾っていけばかなりの数を聴くことができる。
便宜的に時代を3分割した場合、中期の大傑作がこれになる。 1972年にファンタジー社のスタジオで録音されていて、RVGがカッティングしている。
特にRVGの優位性は感じられないけれど、それでもレコードをかけると部屋が彼らしい深夜のスタジオの雰囲気に満ちた深みのある残響感に染まっていく。
リチャード・ワイアンズやジョー・サンプルがエレピを弾いていて、これがとてもいいムードを演出している。 アルバム全編がスロー・バラードで統一されていて、
この静謐な浮遊感は筆舌に尽くしがたい。 ジャズ・ギタリストは大勢いるけど、こういういわゆるジャージーな雰囲気のアルバムを作れた人はあまりいない。
"ミッドナイト・ブルー" という言葉は、まさにケニー・バレルのためにある言葉だ。 "欲望という名の電車" で始まるというのも渋過ぎる。
エレピがいるので、バレルは自由にシングルノートで飛翔する。 ワイアンズのエレピもほどほどの音数でツボを押さえたプレイに終始する。 それらが絡み合って
1日の終わりの深い時間の静かな空気をじわじわと拡げていく。 理想的なジャズ・ギターのブルーな世界。 ジャズ・ギターはいつもこうであって欲しい。
かつて、ピアノのリチャードワイアンズ参加作品を熱心に集めたことが有りまして、その線でこのレコードも入手して聴きました。ジジ・グライス、ロイ・ヘインズ等々。お書きのように、ここで聴かれるような品の良いサポートこそがこのピアニストの売りなのであって、ガツガツと蒐集する性質のアーティストにはないことを知った、私にとっては教訓レコードでもありました。
あ、バレルも良いです。
結構しっかりとピアノを鳴らす人で、硬質で大きな音におどろかされますが、ここでの演奏はデリケートな感じで
とてもいいと思いました。
でも、複雑な心境です。こういう作品は、独りこっそりと。
あまり、表に出ると・・・・・・・・(笑)
それに、こんなブログの内容なんて誰も気に留めたりしてないでしょうから、心配無用かと。
仰る通り、一人静かに聴く音楽ですね。