Chet Baker / Memories - In Tokyo ( 独 Paddle Wheel K28P 6491 )
亡くなる1年前に来日して昭和女子大学人見記念講堂で行われたライヴを収録したもので、一般的に最晩年の名演としてよく知られた作品だが、
レコードを見るのは珍しかったし、パドル・ホイール・レーベルは録音がいいものが多いし、ということで手に取ってみた。
かつてCDで散々聴いていた作品とはいえ、この数年はすっかり遠ざかっていて、随分久し振りに聴くことになったのだけど、改めてこのライヴは
素晴らしいと思った。この時のチェットは体調がよかったようで、トランペットの演奏が圧倒的に素晴らしい。 長いフレーズをかすれることなく
ヨレることなくしっかりと吹いていて、音も大きく張りがあって驚かされる。そして、歌声も高音部でかすれることなく、息も長く続き、
非常にデリケートに歌っている。どちらも満点の出来だ。
バックのハロルド・ダンコのトリオも見事な出来で、チェットを立てて邪魔しない細心の繊細さでついていっている。ゲッツのバックを務めた
ケニー・バロンのように、ヘレン・メリルのバックを務めたトミー・フラナガンのように。
そして、選曲もいい。特に、"Almost Blue" と "Portrait In Black And White" が最高の出来だ。憂いに満ちたこれらの名曲を、前者は静かな
バラードとして、後者は大きくうねるようなドラマチックさで有無を言わせぬ力で聴かせる。それ以外の曲も含めて、全体的に非常に丁寧で
繊細な演奏になっていて、その統一感は圧巻だ。 日本の観客のために、かなり入念に準備してきたのが伺える。
最後に、録音の素晴らしさ。 とにかく全てが輝くようなきれいな音で録られていて、人見記念講堂のゆったりと大きい空間が見事に表現されて
いる。自然な残響感の中でゆったりと流れていく繊細な音楽を聴くのは最高の贅沢じゃないだろうか。さすが、キング・レコードである。
ただ、このアルバムはCDも同じように高品質で、特にレコードだけが素晴らしいということではない。このパドル・ホイールはCDの音も
見事なのだ。
晩年のチェットの音楽は素晴らしい。その素晴らしい音楽が日本の最高品質の録音技術でこうして録られたのは、何とも誇らしいことである。
そのことを素直に喜びたい。
live from the moonlight 再発売されます。HMV限定で。これも是非聴いてみてください。
レコードの方はたまに見かけるので、今度見かけたらゲットしてみます。
starraneyさんもブログをやられていたんですね。今朝、このタイトルを調べていて知りました。
今後も拝読させて頂きます。
ブログを読んで その昔 チェットの来日公演を仙台で見たのを思い出しました。
会場のキャパは広く無いのですが半分以上空席でガラガラだったのを記憶しています(60人ほど)
70分強程でチェットが引っ込んでしまってアンコールも無く終わってしまいましたが、来日してステージに登ってくれただけでも僕にとってお腹一杯でした。
当時チェットがやりそうもないSeven Steps To Heavenを演奏し始め時には驚きましたが後々同時期に録音されていたライブ盤を見てみると割と演奏していることが分かりました この頃好んでいた一曲なのでしょうね。
チェットの公演に行かれたんですか、それはすごいですね。生きた伝説を目の当たりにされたんですね。
でも、当時はそういう感覚はみんななかったんでしょうね、まあ、そういうものかもしれません。
Four や For Minor's Only もやったりして、彼の中の時間は60年代で止まってしまっていたのかもしれません。