廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

ひっそりと存在する隠れ名盤

2014年06月21日 | Jazz LP (Warwick)

Pepper Adams - Donald Byrd / Out Of This World  ( Warwick W 2041 )


中古CD漁りが不調な時に限って探していたレコードに出くわすみたいで、これを購入。 4,500円です。
昔このステレオ盤を持っていて、盤面は疵だらけだったにも関わらず、7~8,000円くらいしたように記憶しています。 安くなったんですね、これは。
だからDUの廃盤セールには顔をみせないのか・・・ 当時からこの演奏が好きで、ここ1年程買う機会がやってくるのを待っていました。

ステレオ盤はまるで教会か洞窟の中で演奏しているみたいなエコーがかかっていてなんかすごいレコードだなあと思っていましたが、
モノラル盤を聴いてみると、こちらも残響豊かな再生音で元々こういう録音だったんですね。 でも、嫌いじゃないです、こういうサウンド。

これは素晴らしい演奏で、音楽的にも大変豊かな隠れた名盤。 ドナルド・バードもペッパー・アダムスも超一流の演奏をひっそりとしています。
"It's A Beautiful Evening" でバードはノンビブラート奏法で素晴らしいバラードを演奏して真骨頂を見せます。 Savoy盤の "I Married An Angel"と
一緒です。 録音の多い彼ですが、こういう演奏を聴けるのは数が少なく、本当に貴重です。 アダムスもいつも通り、バリバリバリッ、っと
空を引き裂くように立ち上がる轟音で演奏に加わってきます。 それでいて全体的に非常にすっきりしているのは、ハービー・ハンコックの
清流のような澄んだピアノのおかげでしょう。 これはハービーの初録音作品で、既に独特の感性で弾いています。

バードとアダムスは一時期スモールコンボを組んで活動していました。 全米を渡ってクラブで演奏し、時々レコードを録音していた。
レコード会社がグループとして売りに出さなかったのであまり知られていませんが、かなり本気で活動していたのだろうと思います。
このレコードを聴けば、その場で集まって始めた演奏ではあり得ない緻密で自然な一体感があります。

彼らはブルーノートの4000番台にも何枚か録音を残していますが、あちらの演奏はなぜか途中で聴き疲れを覚えるのに対して、
この盤は本当にナチュラルで、最初から最後までその素晴らしさに感心しながら聴き終えてしまいます。 このメンバーの演奏では
私はこれが一番好きです。 こういうレコードは常に手元に持っていたい。

ドナルド・バードはハードバップのど真ん中にいた人ですが、この人がコアメンバーとして残した演奏はなぜかコテコテ感がなく、
不思議とさっぱりしています。 何か独特の洗練されたセンスがあったのかもしれません。 トランペットの音も一聴してすぐにわかる、
何と言うか、唇の厚い音、というか何というか・・・・ これも独特の音です。 そういう感性があったからペッパー・アダムスと
一緒に活動できたのかもしれませんね。 

Warwick というレーベルは昔は稀少レーベルとしてそれなりの扱いをされていたように思いますが、ジャズではこれとアンドリュー・ヒルの
"So In Love" くらいしかなかったはずで、そのせいかもう忘れらたのかもしれません。 アンドリュー・ヒルのほうも確かそんなに悪くは
なかったはずですが、ブルーノートの印象からなのか、最近は敬遠されているのかなあ・・・



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