George Wallington Quintet with Phil Woods, Donald Byrd / Jazz For The Carriage Trade ( 米 Prestige Records PRLP 7032 )
当時の新進気鋭だった若い管楽器奏者を迎えて自己名義のグループとして録音したこの演奏は、メンバーが白人優勢だったこともあり、
とてもすっきりとした清潔感のあるハードバップに仕上がっている。非常に素直で気持ちのいい演奏で、若者の純粋さを強く感じる。
この時のバンドのレギュラードラマーは白人のジュニア・ブラッドレイだったが、レコーディング時は不在だったため代わりにアート・
テイラーが参加したが、この代打起用は功を奏していて、ドラムの演奏が非常にしっかりとしているおかげで演奏全体が堅牢だ。
ウォーリントンのピアノが真水のようにクセがないおかげで、ウッズのアルトとバードのトランペットが前面に大きく出ていて、
管楽器ジャズの愉楽をたっぷりと味わうことができる。ドナルド・バードは既に自分のスタイルを確立しており、如何にも彼らしい
なめらかなフレーズで全体を覆うし、フィル・ウッズは "Woodlore" を思わせる快演を聴かせる。"What's New" での深い情感には
身震いさせられる。
ウォーリントンは良くも悪くもバップ・ピアニストの域を超えることはできなかったが、逆に言うとバップという音楽のメインストリームを
貫いていて、この演奏を聴くとハード・バップはビ・バップの発展形だったことが素直にうなずけるだろう。おそらく彼はパーカー&ガレスピーの
バンドのウォーリントン版を作りたかったのだろうと思う。フィル・ウッズのアルトがパーカーの面影を濃厚に映し出しているせいもあって、
このバンドの演奏にはパーカーのバンドの有り様が透けて見える。このアルバムはそこがいい。