[12月12日22:00.天候:晴 東京都江東区東雲 某マンスリーマンション]
敷島は風呂上がりに、エミリーにマッサージを受けていた。
いつもならシンディが行うポジションである。
もちろん、同型機であるエミリーもそれはできた。
敷島:「俺もトシかな?ここ最近、体のあちこちが痛くなってきた」
エミリー:「オーバーホールを・受けますか?」
敷島:「ふふっ、シンディと似たようなこと言いやがる」
敷島はベッドにうつ伏せになり、エミリーから背中をほぐしてもらっていた。
エミリー:「この・肩甲骨を・ほぐすと・楽になると・思います」
敷島:「よろしく」
同型機とはいえ、この鋼鉄姉妹にマッサージを頼むと、姉妹で少しやり方が違うのである。
設定された性格の違いが出ているのだろうか。
シンディだと、どちらかと言えばリフレクソロジー(足ツボマッサージ)に近く、エミリーだと整体に近い。
また、このマルチタイプ、耳かきを頼むこともできる。
元々はメイドロボット(メイドロイドは商標名)を平賀が開発している時に、取り付けたい機能だったらしい。
それを上位機種たるエミリーに実験的に取り付けられ、南里には大好評だった為、このまま七海にも取り付けられ、今ではメイドロイド全機種に標準装備されている。
もちろん、シンディにも取り付けられた。
ここにもエミリーとシンディの性格の違いが出ていて、エミリーはとにかく耳垢を完全に除去しようとする(無理の無い範囲内で)。
ところが、シンディはあえて耳垢を少し残す。
『耳垢は全て取り去る方が却って耳に悪いのです』とのことで、むしろこちらが正解のようだ。
敷島:「こういうこともできるんだから、本当に何でもできるマルチタイプだな」
エミリー:「プロフェッサー南里や・プロフェッサー平賀の・望まれた・結果です」
敷島:「こういう所は所長達に感謝だな」
エミリーはよく年寄りである南里の肩をもんだり、叩いたりしていた。
マッサージの技能については、エミリーの方が先に南里に仕込まれていたのかもしれない。
シンディはシンディで、足ツボマッサージをウィリーが好んだということで、そちらを仕込まれたと思われる。
シンディが敷島の頭の前に回り、前屈みになる。
その際、自慢の巨乳が敷島の頭に乗せられる形になった。
敷島:「エミリーは俺のユーザー登録を外れたのに、今でも言う事を聞いてくれるな。ユーザー登録から外れたってことは、俺の言うことを無理して聞かなくていいってことでもあるんだぞ」
エミリー:「人間なら……」
敷島:「ん?」
エミリー:「人間なら、『古くからの付き合いだから』という理由が成り立つでしょう?私も敷島さんとは長い付き合いですし、これからも長くお付き合いをしたいのです。だから、私は敷島さんの言う事を聞きます」
エミリーが急に滑らかな口調で語り出した!
敷島:「エミリー、おまっ……?!」
敷島が慌てて顔を上げる。
その時、顔が豊かな胸の間に挟まってしまった。
だがエミリーは嫌がるどころか、敷島を抱きしめて胸の中に埋めさせた。
エミリー:「このことは平賀博士にも、シンディにも、誰にも内緒ですよ?あなたを『アンドロイドマスター』と認め、私の秘密をお教えします。南里博士しか知らない秘密を……」
[同日22:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島とアリスのマンション]
アリス:「ただいまァ……」
二海:「お帰りなさいませ、マスター」
アリスが帰宅すると、メイドロイドの二海が出迎えた。
アリス:「すぐにお風呂にするわ」
二海:「はい、すぐ御用意致します。少々お待ちください」
だがその時、奥の部屋から幼子の泣き声がした。
アリス:「トニーの夜泣きだね。いい、アタシが行く。二海はお風呂の用意して」
二海:「かしこまりました」
アリス:「よしよし、トニー。ごめんね。ママ、仕事が忙しくて……。二海、タカオの方はどう?エミリーがちゃんと監視してくれてるかしら?」
二海:「そのようです」
アリス:「『ようです』ってなに?ちゃんと確認してるの?」
二海:「エミリー様は状況を口頭のみで通信されるだけで、画像は送ってくださいません」
アリス:「ちょっと、エミリーと通信リンクが……って、アタシじゃアクセス拒否ってか」
エミリーとって、アリスは南里の仇敵であるドクター・ウィリーの孫娘である。
まだ、完全に信頼しているわけではない。
南里からエミリーを相続した平賀自身もそうなので、持ち主の意向を汲んでいるのだろう。
二海:「平賀博士はエミリー様に対して、シンディ様と同じように監視されるよう、命じられたと伺っております」
アリス:「それは知ってる。だけど何かねぇ……」
二海:「エミリー様を信用されないのですか?」
アリス:「いや、エミリーはそつなく仕事するタイプだよ。そうじゃなくて、何かあの2人、別の意味で繋がっているような気がしてねぇ……」
二海:「別の意味?」
アリス:「ユーザー登録が切れたくせに、エミリーのヤツ、随分と素直にタカオの命令を聞くからね。普通は『アクセス権限(※)が無いから拒否』ってなるのに……」
※ここでは命令する権利という意味。但し、他人であっても無理の無い頼まれ事は聞く。
[同日23:00.天候:晴 東京のマンスリーマンション]
エミリー:「深夜電力の・時間に・なりましたので・充電させて・頂きます。お休み・なさいませ」
敷島:「俺も寝るよ。何だか疲れた……」
もちろん、エミリーにしっかりマッサージをしてもらったおかげで、寝付きが良くなりそうというのもある。
敷島はフローリングの上に設置されたベッドで寝るが、シンディはロフトの上で休眠に入る。
シンディのポジションを、今夜はエミリーが使用した。
当初よりはだいぶ軽量化されたこともあって、ロフトの上にいることも危険ではなくなったというのもある。
エミリーはシャワーを使わせてもらい、体を洗った。
いつもの衣服(紺色のノースリーブに、深いスリットの入ったロングスカートのワンピース)は脱いで、裾の短いワンピースタイプの夜着を着ていた。
ロフトに上がる梯子を登るわけだから、黒いビキニショーツが見えてしまう。
彼女らにとって、ビキニブラとショーツは装甲板のようなもので、体を洗う時以外は絶対に取ろうしない。
消灯して敷島がベッドに潜り込むと、あとはエアコンの暖房の音すら聞こえなくなる。
敷島:(エミリーが言ってたことは本当なのか……)
エミリーが滑らかな口調になり、表情も不敵なものに変わった時、まるで人格が入れ替わったかのように見えた。
ある秘密を敷島に語った後は、また元の口調に戻り、表情も元に戻った。
敷島:(俺はとんでもない肩書きを手にしちゃったのかもしれない……)
敷島は風呂上がりに、エミリーにマッサージを受けていた。
いつもならシンディが行うポジションである。
もちろん、同型機であるエミリーもそれはできた。
敷島:「俺もトシかな?ここ最近、体のあちこちが痛くなってきた」
エミリー:「オーバーホールを・受けますか?」
敷島:「ふふっ、シンディと似たようなこと言いやがる」
敷島はベッドにうつ伏せになり、エミリーから背中をほぐしてもらっていた。
エミリー:「この・肩甲骨を・ほぐすと・楽になると・思います」
敷島:「よろしく」
同型機とはいえ、この鋼鉄姉妹にマッサージを頼むと、姉妹で少しやり方が違うのである。
設定された性格の違いが出ているのだろうか。
シンディだと、どちらかと言えばリフレクソロジー(足ツボマッサージ)に近く、エミリーだと整体に近い。
また、このマルチタイプ、耳かきを頼むこともできる。
元々はメイドロボット(メイドロイドは商標名)を平賀が開発している時に、取り付けたい機能だったらしい。
それを上位機種たるエミリーに実験的に取り付けられ、南里には大好評だった為、このまま七海にも取り付けられ、今ではメイドロイド全機種に標準装備されている。
もちろん、シンディにも取り付けられた。
ここにもエミリーとシンディの性格の違いが出ていて、エミリーはとにかく耳垢を完全に除去しようとする(無理の無い範囲内で)。
ところが、シンディはあえて耳垢を少し残す。
『耳垢は全て取り去る方が却って耳に悪いのです』とのことで、むしろこちらが正解のようだ。
敷島:「こういうこともできるんだから、本当に何でもできるマルチタイプだな」
エミリー:「プロフェッサー南里や・プロフェッサー平賀の・望まれた・結果です」
敷島:「こういう所は所長達に感謝だな」
エミリーはよく年寄りである南里の肩をもんだり、叩いたりしていた。
マッサージの技能については、エミリーの方が先に南里に仕込まれていたのかもしれない。
シンディはシンディで、足ツボマッサージをウィリーが好んだということで、そちらを仕込まれたと思われる。
シンディが敷島の頭の前に回り、前屈みになる。
その際、自慢の巨乳が敷島の頭に乗せられる形になった。
敷島:「エミリーは俺のユーザー登録を外れたのに、今でも言う事を聞いてくれるな。ユーザー登録から外れたってことは、俺の言うことを無理して聞かなくていいってことでもあるんだぞ」
エミリー:「人間なら……」
敷島:「ん?」
エミリー:「人間なら、『古くからの付き合いだから』という理由が成り立つでしょう?私も敷島さんとは長い付き合いですし、これからも長くお付き合いをしたいのです。だから、私は敷島さんの言う事を聞きます」
エミリーが急に滑らかな口調で語り出した!
敷島:「エミリー、おまっ……?!」
敷島が慌てて顔を上げる。
その時、顔が豊かな胸の間に挟まってしまった。
だがエミリーは嫌がるどころか、敷島を抱きしめて胸の中に埋めさせた。
エミリー:「このことは平賀博士にも、シンディにも、誰にも内緒ですよ?あなたを『アンドロイドマスター』と認め、私の秘密をお教えします。南里博士しか知らない秘密を……」
[同日22:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島とアリスのマンション]
アリス:「ただいまァ……」
二海:「お帰りなさいませ、マスター」
アリスが帰宅すると、メイドロイドの二海が出迎えた。
アリス:「すぐにお風呂にするわ」
二海:「はい、すぐ御用意致します。少々お待ちください」
だがその時、奥の部屋から幼子の泣き声がした。
アリス:「トニーの夜泣きだね。いい、アタシが行く。二海はお風呂の用意して」
二海:「かしこまりました」
アリス:「よしよし、トニー。ごめんね。ママ、仕事が忙しくて……。二海、タカオの方はどう?エミリーがちゃんと監視してくれてるかしら?」
二海:「そのようです」
アリス:「『ようです』ってなに?ちゃんと確認してるの?」
二海:「エミリー様は状況を口頭のみで通信されるだけで、画像は送ってくださいません」
アリス:「ちょっと、エミリーと通信リンクが……って、アタシじゃアクセス拒否ってか」
エミリーとって、アリスは南里の仇敵であるドクター・ウィリーの孫娘である。
まだ、完全に信頼しているわけではない。
南里からエミリーを相続した平賀自身もそうなので、持ち主の意向を汲んでいるのだろう。
二海:「平賀博士はエミリー様に対して、シンディ様と同じように監視されるよう、命じられたと伺っております」
アリス:「それは知ってる。だけど何かねぇ……」
二海:「エミリー様を信用されないのですか?」
アリス:「いや、エミリーはそつなく仕事するタイプだよ。そうじゃなくて、何かあの2人、別の意味で繋がっているような気がしてねぇ……」
二海:「別の意味?」
アリス:「ユーザー登録が切れたくせに、エミリーのヤツ、随分と素直にタカオの命令を聞くからね。普通は『アクセス権限(※)が無いから拒否』ってなるのに……」
※ここでは命令する権利という意味。但し、他人であっても無理の無い頼まれ事は聞く。
[同日23:00.天候:晴 東京のマンスリーマンション]
エミリー:「深夜電力の・時間に・なりましたので・充電させて・頂きます。お休み・なさいませ」
敷島:「俺も寝るよ。何だか疲れた……」
もちろん、エミリーにしっかりマッサージをしてもらったおかげで、寝付きが良くなりそうというのもある。
敷島はフローリングの上に設置されたベッドで寝るが、シンディはロフトの上で休眠に入る。
シンディのポジションを、今夜はエミリーが使用した。
当初よりはだいぶ軽量化されたこともあって、ロフトの上にいることも危険ではなくなったというのもある。
エミリーはシャワーを使わせてもらい、体を洗った。
いつもの衣服(紺色のノースリーブに、深いスリットの入ったロングスカートのワンピース)は脱いで、裾の短いワンピースタイプの夜着を着ていた。
ロフトに上がる梯子を登るわけだから、黒いビキニショーツが見えてしまう。
彼女らにとって、ビキニブラとショーツは装甲板のようなもので、体を洗う時以外は絶対に取ろうしない。
消灯して敷島がベッドに潜り込むと、あとはエアコンの暖房の音すら聞こえなくなる。
敷島:(エミリーが言ってたことは本当なのか……)
エミリーが滑らかな口調になり、表情も不敵なものに変わった時、まるで人格が入れ替わったかのように見えた。
ある秘密を敷島に語った後は、また元の口調に戻り、表情も元に戻った。
敷島:(俺はとんでもない肩書きを手にしちゃったのかもしれない……)