[12月7日12:00.天候:晴 東京都内臨海副都心(お台場)ロボット大サーカス会場]
〔「それではここで、15分の休憩を取りたいと思います。皆様、後半もスリル満点のショーを沢山ご用意しております。どうぞ、お楽しみに〜!」〕
敷島は約束通り、今日はあまりスケジュールの入っていない鏡音リンとレンを連れて観賞に来ていた。
このサーカスにルディが紛れ込んでいる恐れがあり、ボーカロイドの中で唯一接点のあった鏡音姉弟に確認してもらおうと思ったのだった。
だが午前の部においては、ルディが化けていると思われるピエロは登場せず、空振りに終わった。
で、ロボットサーカスの感想についてだが、鏡音姉弟は大喝采……というわけではなかった。
リン:「何か、ロボット達、かわいそうだYo……」
レン:「特に最初にあった『ロボット大決戦』は、まるでローマのコロシアムです。奴隷を死ぬまで戦わせる、あれと同じです」
リンとレンはミュージカルなどの演劇にもよく出るようになり、直近では中世ヨーロッパが舞台のオペラに出ていた。
特にレンは剣闘士奴隷の役で出ていたから、重なってしまったのかもしれない。
敷島:「意外な反応だな。……もしかして、アイドル活動にも疑問を持ったりしてないか?『何でこんなことやらされるんだろう?』って……」
レン:「いえ、そんなことは無いです!ボク達、ボーカロイドは歌って踊って、ファンの皆さんを楽しませるのが使命ですから」
リン:「そうだYo!リン達の性能を1番引き出してくれたのは社長なんだから!リン達は社長に付いて行くよ!」
敷島:「そうか。そう言ってくれると安心だが……」
レン:「社長はこのサーカスについて、どう思いますか?」
敷島:「サンダーボルトなどの花形スターは、確かにこのサーカスのおかげで持ち味を最大限に生かしていると言える。いや、最初からその用途で製造したんだと言われてしまえばそれまでだが……。だけど、それ以外のロボット達は単なるオマケって感じだな。別にサーカスでなくてもいい。こういう所より、まだディズニーリゾートに行った方がいいんじゃないかと思うくらい」
リン:「あ、それ、リンも思った。昔、ボーカロイド達でパレードやったもんね」
敷島:「あそこまでしないと、売れなかった時代だったからなぁ……」
レン:「申し訳無いですが社長、今のところ、ボク達が学べるものは無いようです」
敷島:「しょうがないか。逆を言えば、サーカスの興行とボーカロイドの営業が対立することは無いってことだ」
リン:「どうする?もう帰る?」
敷島:「いや、まだ時間はある。実は、お前達に是非見てもらいたいものが後半部分にあるんだ」
レン:「僕達に観てもらいたいもの?」
敷島:「ああ。そのプログラムになったら教える。それまで我慢して観ててくれ」
リン:「うん、分かったYo」
レン:「分かりました」
[同日12:45.天候:晴 同場所]
さすがのボーカロイドもサンダーボルトのバイクアクションと、マーガレットの空中ブランコには喝采した。
尚、鏡音姉弟は、スキャンするまでマーガレットを人間の団員だと思っていたらしい。
敷島:「あれだ!あれを見てくれ!」
そしてついに、ピエロの寸劇が行われる。
どうやら寸劇の内容自体は日替わりのようで、今日は綱渡りに挑戦していた。
綱渡りが意外とできそうな感じなのに、それを他の動物ロボットがイタズラっぽく邪魔してくるというもの。
レン:「? ……あのピエロが何か?」
リン:「ピエロのロボット……だよね?」
敷島:「ここからスキャンできるか?一応、こうして最前列の席を確保したんだが……」
レン:「ええっ?」
リン:「んん?」
鏡音姉弟はピエロをスキャンした。
その際、両目がオレンジ色に光る。
赤外線アイになると目が赤くボウッと光るのだが、傍から見て不気味なので、改善提案が行われている。
敷島:「どうだ?」
レン:「……ダメです。ピエロの着ぐるみのせいで、スキャンできません」
リン:「リンもだYo〜。ねぇ、あのピエロ、何かあるの?」
敷島:「くそっ、やっぱりダメか……」
だが、ここでハプニングが起きた。
それは敷島達にとっては好都合であるが、しかし却って疑問を深めるものであった。
アレックス:「あっ!」
ピエロに扮するアレックスは、アシカロボットにイジられていたのだが、転んで着ぐるみの頭が取れてしまった。
素顔が一瞬見えてしまう。
敷島:「!?」
そこにいたのは、敷島達の知っているルディではなかった。
レン:「社長?」
敷島:「あのピエロじゃなかったのか……?」
リン:「あのコもロイドだね。うえー、リン達と見た目年齢似てるのに、あんなことさせられて可哀想……」
敷島:(こうなったら明日の休演日に乗り込むしか無いな……!)
[同日19:00.天候:曇 同場所・バックヤード]
団長:「このバッカヤロ!午前の部はピエロの素顔を晒しちまうわ!午後の部はサンダーのバイクに軽油入れちまうわ!お前は何回ドジしたら気が済むんだ、このポンコツが!」
団長、アレックスに電気鞭を振るう。
マーガレット:「団長、もうこの辺にしてあげて!」
団長:「うるさい!昨日はトランポリンに穴開けやがって!お前は何回物をブッ壊したら気が済むんだ!ええっ!?」
マーガレット:「このコは一生懸命にやってるわ!一生懸命になり過ぎて、却って失敗してしまうのよ!」
団長:「このまま行ったら、俺は破産しちまう!だいたい、フィリピンでこんなヤツ拾って来たのが間違いだったんだ!」
団長はアレックスの髪を掴んだ。
団長:「来いっ!お前なんかオランウータンに改造してやる!動物ロボットの方がウケるからな!」
マーガレット:「お願い、団長!このコにとっては、この興行がデビューでしょう?千秋楽までには、メインのプログラムができるようになるまで私が仕込むから!」
団長:「千秋楽だぁ!?おい、分かってんのか!?千秋楽にはビッグイベントが待ってるんだぞ!?」
サンダーボルト:「オレのバイクの後ろに乗ってもらうってのはどうだ?」
団長:「いや、それじゃダメだ!マーガレットの空中ブランコにプラスして、電磁輪潜りをやってもらう」
サンダーボルト:「おおっ!?いきなりハードモード来たねぇ!」
団長:「どうだ、マーガレット!?それでもやるか!?」
マーガレット:「……やるわ!」
団長:「よーし!これでできなかったら、この興行終了直後にはオランウータンだ!」
アレックス:「マーガレットさん……?」
マーガレット:「さ、行きましょう」
アレックス:「でも、これからサンダーさんのバイクを磨かなきゃ」
サンダーボルト:「いいから、アレックス。どうせ明日は休演日だ。お前の性能じゃ、むしろ今から特訓してギリギリってところだな。マーガレットに上手く仕込んでもらえ」
アレックス:「は、はい!」
アレックスはマーガレットについて、奥の訓練場に向かった。
〔「それではここで、15分の休憩を取りたいと思います。皆様、後半もスリル満点のショーを沢山ご用意しております。どうぞ、お楽しみに〜!」〕
敷島は約束通り、今日はあまりスケジュールの入っていない鏡音リンとレンを連れて観賞に来ていた。
このサーカスにルディが紛れ込んでいる恐れがあり、ボーカロイドの中で唯一接点のあった鏡音姉弟に確認してもらおうと思ったのだった。
だが午前の部においては、ルディが化けていると思われるピエロは登場せず、空振りに終わった。
で、ロボットサーカスの感想についてだが、鏡音姉弟は大喝采……というわけではなかった。
リン:「何か、ロボット達、かわいそうだYo……」
レン:「特に最初にあった『ロボット大決戦』は、まるでローマのコロシアムです。奴隷を死ぬまで戦わせる、あれと同じです」
リンとレンはミュージカルなどの演劇にもよく出るようになり、直近では中世ヨーロッパが舞台のオペラに出ていた。
特にレンは剣闘士奴隷の役で出ていたから、重なってしまったのかもしれない。
敷島:「意外な反応だな。……もしかして、アイドル活動にも疑問を持ったりしてないか?『何でこんなことやらされるんだろう?』って……」
レン:「いえ、そんなことは無いです!ボク達、ボーカロイドは歌って踊って、ファンの皆さんを楽しませるのが使命ですから」
リン:「そうだYo!リン達の性能を1番引き出してくれたのは社長なんだから!リン達は社長に付いて行くよ!」
敷島:「そうか。そう言ってくれると安心だが……」
レン:「社長はこのサーカスについて、どう思いますか?」
敷島:「サンダーボルトなどの花形スターは、確かにこのサーカスのおかげで持ち味を最大限に生かしていると言える。いや、最初からその用途で製造したんだと言われてしまえばそれまでだが……。だけど、それ以外のロボット達は単なるオマケって感じだな。別にサーカスでなくてもいい。こういう所より、まだディズニーリゾートに行った方がいいんじゃないかと思うくらい」
リン:「あ、それ、リンも思った。昔、ボーカロイド達でパレードやったもんね」
敷島:「あそこまでしないと、売れなかった時代だったからなぁ……」
レン:「申し訳無いですが社長、今のところ、ボク達が学べるものは無いようです」
敷島:「しょうがないか。逆を言えば、サーカスの興行とボーカロイドの営業が対立することは無いってことだ」
リン:「どうする?もう帰る?」
敷島:「いや、まだ時間はある。実は、お前達に是非見てもらいたいものが後半部分にあるんだ」
レン:「僕達に観てもらいたいもの?」
敷島:「ああ。そのプログラムになったら教える。それまで我慢して観ててくれ」
リン:「うん、分かったYo」
レン:「分かりました」
[同日12:45.天候:晴 同場所]
さすがのボーカロイドもサンダーボルトのバイクアクションと、マーガレットの空中ブランコには喝采した。
尚、鏡音姉弟は、スキャンするまでマーガレットを人間の団員だと思っていたらしい。
敷島:「あれだ!あれを見てくれ!」
そしてついに、ピエロの寸劇が行われる。
どうやら寸劇の内容自体は日替わりのようで、今日は綱渡りに挑戦していた。
綱渡りが意外とできそうな感じなのに、それを他の動物ロボットがイタズラっぽく邪魔してくるというもの。
レン:「? ……あのピエロが何か?」
リン:「ピエロのロボット……だよね?」
敷島:「ここからスキャンできるか?一応、こうして最前列の席を確保したんだが……」
レン:「ええっ?」
リン:「んん?」
鏡音姉弟はピエロをスキャンした。
その際、両目がオレンジ色に光る。
赤外線アイになると目が赤くボウッと光るのだが、傍から見て不気味なので、改善提案が行われている。
敷島:「どうだ?」
レン:「……ダメです。ピエロの着ぐるみのせいで、スキャンできません」
リン:「リンもだYo〜。ねぇ、あのピエロ、何かあるの?」
敷島:「くそっ、やっぱりダメか……」
だが、ここでハプニングが起きた。
それは敷島達にとっては好都合であるが、しかし却って疑問を深めるものであった。
アレックス:「あっ!」
ピエロに扮するアレックスは、アシカロボットにイジられていたのだが、転んで着ぐるみの頭が取れてしまった。
素顔が一瞬見えてしまう。
敷島:「!?」
そこにいたのは、敷島達の知っているルディではなかった。
レン:「社長?」
敷島:「あのピエロじゃなかったのか……?」
リン:「あのコもロイドだね。うえー、リン達と見た目年齢似てるのに、あんなことさせられて可哀想……」
敷島:(こうなったら明日の休演日に乗り込むしか無いな……!)
[同日19:00.天候:曇 同場所・バックヤード]
団長:「このバッカヤロ!午前の部はピエロの素顔を晒しちまうわ!午後の部はサンダーのバイクに軽油入れちまうわ!お前は何回ドジしたら気が済むんだ、このポンコツが!」
団長、アレックスに電気鞭を振るう。
マーガレット:「団長、もうこの辺にしてあげて!」
団長:「うるさい!昨日はトランポリンに穴開けやがって!お前は何回物をブッ壊したら気が済むんだ!ええっ!?」
マーガレット:「このコは一生懸命にやってるわ!一生懸命になり過ぎて、却って失敗してしまうのよ!」
団長:「このまま行ったら、俺は破産しちまう!だいたい、フィリピンでこんなヤツ拾って来たのが間違いだったんだ!」
団長はアレックスの髪を掴んだ。
団長:「来いっ!お前なんかオランウータンに改造してやる!動物ロボットの方がウケるからな!」
マーガレット:「お願い、団長!このコにとっては、この興行がデビューでしょう?千秋楽までには、メインのプログラムができるようになるまで私が仕込むから!」
団長:「千秋楽だぁ!?おい、分かってんのか!?千秋楽にはビッグイベントが待ってるんだぞ!?」
サンダーボルト:「オレのバイクの後ろに乗ってもらうってのはどうだ?」
団長:「いや、それじゃダメだ!マーガレットの空中ブランコにプラスして、電磁輪潜りをやってもらう」
サンダーボルト:「おおっ!?いきなりハードモード来たねぇ!」
団長:「どうだ、マーガレット!?それでもやるか!?」
マーガレット:「……やるわ!」
団長:「よーし!これでできなかったら、この興行終了直後にはオランウータンだ!」
アレックス:「マーガレットさん……?」
マーガレット:「さ、行きましょう」
アレックス:「でも、これからサンダーさんのバイクを磨かなきゃ」
サンダーボルト:「いいから、アレックス。どうせ明日は休演日だ。お前の性能じゃ、むしろ今から特訓してギリギリってところだな。マーガレットに上手く仕込んでもらえ」
アレックス:「は、はい!」
アレックスはマーガレットについて、奥の訓練場に向かった。