報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「AIは人類蹂躙の夢を見るか?」 2

2019-04-24 19:16:23 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月21日11:30.天候:晴 静岡県富士宮市上条 日蓮正宗大石寺]

 対象者にこの世で会えぬと分かった以上、急いで帰京する必要があった。
 取りあえず敷島とエミリーは大石寺境内にあるタクシー乗り場へ向かい、そこからタクシーに乗ることにした。
 改修工事中の三門の南には国道が通っており、その更に南側にタクシー乗り場はある。
 幸いそこに空車のタクシーが止まっていて、敷島達はそれに乗り込んだ。

 エミリー:「新富士駅までお願いします」
 運転手:「あ、はい。新富士駅ですね」

 タクシーがバス停と一緒になっているロータリーのような所から公道へ出ようとした時だった。
 『特急 大石寺』と書かれた路線バスが入線して来たのである。

 運転手:「だいぶ遅れたな……」

 運転手はそのバスを横目で見てポツリと呟いた。
 だがその時、敷島は電話中だった。

 敷島:「……そうなんですよ。行ってみたら、とんでもないことになってましてね。取りあえず、現場から離れることにしましたよ」
 平賀:「そうですか。それは残念です」
 敷島:「あのKR団最後の女性科学者の親族ならガチだったんですけどねぇ……」
 平賀:「ガチだったからこそ狙われたんでしょうね。1人だけピンポイントで狙ったのでは、例え死んだにしても、我々にはそれが誰なのかすぐに分かりますから。無関係の人間も複数集まってて、対象者が特定できないうちに全員殺せば、少なくともエミリーの生体反応は使えない。非常に残酷な話ですが、それがテロというものでしょう」
 敷島:「KR団も潰れて久しいのに、今度は一体何なんですかね?」
 平賀:「犯行声明も出ていないのでは、何とも言えませんね。警察には?」
 敷島:「地元の警察が出動していましたし、後、私の方で鷲田警視に連絡しておきました」
 平賀:「気を付けてくださいね。敷島さんも、本来は狙われる側の人間なんですから」
 敷島:「私にはエミリーがいますからね。ややもすれば、シンディも使えますし。平賀先生こそ、新たにマルチタイプを造ってみたらどうでしょう?」
 平賀:「簡単に言わないでくださいよ。製造費用だけで50億円はするんですから」
 敷島:「DCJさんの希望小売価格でしょ、それは?」
 平賀:「自分には七海がいるから大丈夫ですよ」
 敷島:「メイドロイドを強化した方が安上がりってわけですか。昔、何かそんな話をしたような気がしますね」
 平賀:「ありましたねぇ。確か、南里先生が御存命だった頃の話ですよ」
 敷島:「ああ、それくらい昔でしたか。いやいや……」
 平賀:「敷島さんは、東京に戻られるんですか?」
 敷島:「今日の所はそうした方がいいでしょうね。火事が鎮火した後は消防や警察の現場検証が入るでしょうから。鷲田警視からも、『現場を荒らすな』と言われてますしね」
 平賀:「なるほど。とにかく、自分も気をつけますから、敷島さんも気をつけて」
 敷島:「分かりました」

 敷島は電話を切った。

[同日12:00.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]

 タクシーが新富士駅前に到着する。

 エミリー:「タクシーチケットで払います」
 運転手:「はい」

 エミリーがボールペンで金額を書き込んだ。
 手の動きが人間と比べて機械的な所は、やはりロイドと言える。

 運転手:「ありがとうございました」
 敷島:「どうも」

 敷島とエミリーはタクシーを降りて駅構内に入る。

 エミリー:「今度の列車ですが、凡そ10分で発車します」
 敷島:「マジか!まだ昼飯食ってないんだよなぁ……」
 エミリー:「駅弁にしては如何でしょう?」
 敷島:「朝も駅弁だったんだがな。まあいい。俺は駅弁買ってるから、エミリーはキップ買っといてくれ。自由席でいいから」
 エミリー:「かしこまりました」

 敷島は駅弁とお茶を買い、エミリーは自動券売機で東京までのキップを2人分購入した。
 この場合、エミリーは機械の体なので、本来は乗車できないことになる。
 Pepperが新幹線に乗車できるかどうかで揉めたことがあるそうだ(ソース不明)。
 そこは人間のフリして乗るということだし、エミリー達ならそれが可能だということだ。
 但し、検査が厳しい航空便では完全にアウトである。
 その為、アメリカに行く時は完全に『荷物』扱いで乗せることになる。

 敷島:「よし、行くぞ」
 エミリー:「はい」

〔新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。まもなく1番線に、12時9分発、“こだま”644号、東京行きが到着致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に止まります。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から7号車と13号車から15号車です。……〕

 遠くの方からN700系車両がやって来て、副線ホームに入って来る。
 空いている後ろの車両に歩いて行くうち、進入した列車が巻き起こした風に、エミリーの赤いショートボブの髪とスリットが深く入った黒いスカートが靡いた。
 艶めかしい足がスリットの隙間から覗くが、この足でいとも簡単に非常口の鉄扉を蹴破ることができるのである。

〔新富士、新富士です。新富士、新富士です。ご乗車、ありがとうございます。……〕

 名古屋始発の“こだま”号ということもあり、編成の端の車両は空いていた。
 そこに乗り込んで、2人席に悠々と座る。

 敷島:「何の収穫も無く戻ることになるとは……。またアリスに嫌味言われることになるな」
 エミリー:「お疲れさまです」

 エミリーはそう言うしか無かった。
 そうしているうちに、後続列車が轟音を立てて通過していく。
 どうやらダイヤの方は何とか回復できたようだ。

 発車の時間になると、ホームから発車ベルが微かに聞こえて来る。
 東京駅では発車メロディだったが、新富士駅ではただのベル。

〔1番線、“こだま”644号、東京行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、安全柵の内側までお下がりください〕

 敷島が弁当を食べている間に、列車はスーッと走り出した。

 敷島:「俺と同じオーラを放つ人間を見つけたってお前達が騒いだ時にはびっくりした。もしかしたら、俺と同じアンドロイドマスターになれる人間だったかもしれないのに残念だ」

 マルチタイプに命令できる人間として、オーナーとユーザーを登録している。
 しかし異様にAIが発達したマルチタイプには、それらの『言う事』には従っても『心服追従』はしない。
 ましてや登録外の人間の『お願い』は聞いても、『命令』は聞かないことも多々ある。
 エミリーはあくまで人間に対しては礼節や敬意を重んじているというだけであって、けして『心服』しているわけではない。
 それが『心服』した相手が敷島唯1人というだけである。
 そして、それはシンディも同じであるという。
 これではいつ反旗を翻されるか分からないので、他にマスターたる人間が必要という声は出ている。
 そしてその候補者は人間ではなく、彼女らが選ぶという形になってしまっているのだが、エミリーが反応した人間がいた。
 それを追って静岡まで来た2人であったが、結果は御覧の通りの有り様というわけである。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“アンドロイドマスターⅡ” 「新たなテロ」

2019-04-24 13:34:14 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月21日10:40.天候:曇 静岡県富士宮市上条]

 国道139号線を走っていたタクシーは、『←大石寺』と書かれた灯篭風の道標に従って左折した。
 タクシーのナビにもエミリーのナビにも、国道から外れたと出ている。

 敷島:「前にも来たけど、随分と大きなお寺だ」
 運転手:「これが大石寺ですよ」
 敷島:「へえ……」

 

 敷島:「富士山もきれいに見えるし、こりゃいい絵葉書ができそうだ」

 敷島はタクシーの窓から富士山を眺めながらそう呟いた。
 再び国道を左折する為、交差点で信号待ちを行う。
 今度は国道469号線である。

 敷島:「あのでっかいプレハブは何だ?」
 運転手:「三門ですね。今、改修工事中なんですよ」
 敷島:「ほお……。完了したら、またいい絵葉書ができそうだ」

 タクシーが三門を通過した時だった。

 運転手:「うん?」

 背後からパトカーのサイレンが近づいて来る。

〔「緊急車両通過します!緊急車両通過します!道を開けてください!」〕

 運転手はハザードランプを点けて、タクシーを路肩へ寄せた。
 パトカーが通過すると同時に、今度は消防車が何台も通過して行く。

 敷島:「何かあったのかな?」
 運転手:「火事……ですかね。大石寺境内には文化財もあるので、少し心配です」

 だが、パトカーだの消防車だのが向かったのは国道の先だった。
 即ち、これから敷島達が向かう方向でもある。
 大石寺前はあくまでも通過点だ。

 敷島:「えーと……吉塚博士の家は、この先の住宅街だったな。エミリー、覚えてるか?」
 エミリー:「お任せください。こちらの道を入って……」
 敷島:「いや、ちょっと待て!」

 まず、国道がパトカーや消防車などで1車線塞がれていた。
 元々片側1車線で、オレンジ色のセンターラインが引かれている国道である。
 工事現場と違ってガードマンが交通誘導できるものではないから、警察官が交通整理に当たっていた。

 敷島:「おいおい、道が塞がれてるぞ!」

 吉塚家へ入る為の路地がそもそも緊急車両で塞がれていた。
 ということは、火事はその先……。

 エミリー:「吉塚家が現場となっている確率、98.89%です」
 敷島:「それもうガチじゃねーかよ!すいません、ここで降ります!」
 運転手:「あ、はい。すいませんが、交通規制の先で……」

 運転手は片側交互通行の先で車を止めた。

 運転手:「えー、長距離割引入りまして……」

 料金が5000円を超えると、確か1割引きになる。

 エミリー:「タクシーチケットで払います」
 運転手:「それでは……」

 エミリーが料金の精算をしている間、敷島は運転席後ろのドアを手動で開けて現場に向かった。

 敷島:「すいません!今、どこの御宅が火事なんですか!?」
 警察官A:「この先の住宅ですが……」

 敷島は交通整理をしている警察官に聞いたが、この警察官では分からないらしい。

 敷島:「失礼!」

 敷島は歩道を路地の入口まで向かった。

 警察官B:「危ないから下がって!」

 路地の入口では警察官が規制線を張っていた。
 しかしそこからもう煙や消防の消火活動が丸見えになっていた。

 敷島:「何か……場所的にガチっぽい……」

 敷島は野次馬で来ている近所のオバちゃんらしき人物に話し掛けた。

 敷島:「すいません。あれって、吉塚さんちで間違いないですか?」
 オバちゃん:「そうですよ。ずっと前から空き家だったんですけどねぇ……」

 それは敷島も知っていた。
 だが、吉塚が製作したと思われるロボット警備犬が襲い掛かって来たのである。
 もちろんそれは鋼鉄姉妹が何とかしたが。

 敷島:「火事になったということは、最近は誰かいたということですか?」
 オバちゃん:「今日は吉塚さんの命日ということで、親戚の人達が集まってましたよ」
 敷島:「やっぱりそうか。で、その親戚の人達は?どこかに避難しましたか?」
 オバちゃん:「どうなんでしょうね。いきなりガス爆発みたいな音がしたので、びっくりして見に来たらもう火事になっていたんですよ」
 敷島:「何ですって!?」
 救急隊員:「はい、すいません!担架通ります!開けてください!通してください!」
 敷島:「何たるちゃあ……」

 現場から救急隊員が毛布にくるまれた吉塚の親戚と思われる者達を搬出していた。
 確か、もう顔も含めて全身を覆っている場合は【お察しください】。

 エミリー:「私も手伝います!」
 敷島:「いや、余計な手出しはしなくていい!」
 エミリー:「でも……!」
 敷島:「要請があった時にでも手伝えばいいさ。ちょっと、連絡してみよう」

 敷島は一旦、現場から離れた。
 そして、スマホを手に取る。

 敷島:「もしもし。鷲田警視ですか?敷島ですけど……」

 敷島は今の経緯を鷲田警視に伝えた。

 鷲田:「何だって!?」
 敷島:「吉塚博士の親族は単なる親族だから、100%被害者でしょうがね。KR団最後の女性科学者の命日で、しかも法事で集まった親族が一気に被害に遭うなんて、どう見てもただの事故には見えんのですが……」
 鷲田:「新たなテロか!」
 敷島:「……かもしれません」
 鷲田:「よし、分かった。通報、感謝する」
 敷島:「エミリーが消火活動と救助活動を手伝いたくて、暴走し掛かってるんですが、協力しちゃっていいですか?」
 鷲田:「現場を荒らすことは控えさせろ!」
 敷島:「ですよね。了解しました」

 敷島は電話を切った。

 敷島:「なあ、エミリー。もしかして、あの搬出されている親族達の中に対象者がいるんじゃないのか?」
 エミリー:「公算は大きいです。ただ……」
 敷島:「ただ?」
 エミリー:「生体反応が無いと認識できません。今までの方々は認識できませんでした。それは即ち……」
 敷島:「死んでいるということか」

 現時点では『心肺停止』とされる。
 実際の死亡診断は医師でないとできないことになっているからだ。

 敷島:「くっそ!ここまで来てこれかよ!」

 敷島は地団太踏んだ。

 エミリー:「帰京して善後策を練るしか無いようです」
 敷島:「そうさせてもらうわ!」

 敷島は憤慨して、取りあえず大石寺の方向に向かって歩くことにした。
 別に大石寺に参詣するのが目的というわけではなく、境内のタクシー乗り場からタクシーに乗る為である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“アンドロイドマスターⅡ” 「JR新富士駅」

2019-04-24 10:12:45 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月21日09:07.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、新富士です。新富士を出ますと、次は静岡に止まります〕

 TOKIOの“AMBITIOUS JAPAN!”の車内チャイムが流れる。
 始発駅と終着駅ではイントロ部分が流れるが、途中駅ではサビの部分が流れるという。
 スマホを見ていた1号車の男性乗客はそれから目を離すと、そこでやっと富士山を車窓越しに見た。

 男性:(さすが新幹線だと早いな。いつもは高速バスばかりだったから、尚更だ)

 男性は脱いでいた黒い上着を羽織ると、空いていると隣の席に置いていた鞄を手に席を立った。

〔「まもなく新富士、新富士です。お出口は、左側です。ホーム進入の際、列車が大きく揺れることがあります。お立ちのお客様、お気をつけください。新富士駅で“のぞみ”号と“ひかり”号の通過待ちを行います。5分ほど停車致します。発車は9時12分です」〕

 本線からホームのある副線に入る時点で、まだ速度は時速70キロほどある。
 16両編成という長い有効長のホームにスムーズに入線する為には、ポイント通過もスムーズに行わなければならないということだ。

〔新富士、新富士です。新富士、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 男性は他の旅客と一緒に列車を降りた。
 “こだま”しか停車しない小規模な駅ではあるが、下車客は意外と多い。
 “こだま”は空いている列車ではあるが、あくまで“のぞみ”や“ひかり”よりも空いているというだけであって、けして東北新幹線のように10両編成で良いようなガラ空きぶりではない。
 東京から離れれば離れるほど空いて来る東北・上越・北陸新幹線と違い、東海道新幹線は新大阪に近づく度に混んでくるのだ。

 男性:「! 何かおかしいぞ」

 男性がそう思ったのは、ホーム上にあるキヨスクの前を通り過ぎた時だった。
 “こだま”を追い越すはずの“のぞみ”が通過して来ないのである。
 男性はこの列車には以前も乗車したことがあって、新富士駅に到着して1分と経たずに“のぞみ”が轟音を立てて通過していく様子に感心した記憶があるからだ。

 男性:(ダイヤでも変わったかな……)

 ところが、そうでもなかった。

〔「お客様にお知らせ致します。先ほど新横浜〜小田原間におきまして、線路内立入りがあったもようです。その為、安全確認を行っております。東海道新幹線全線におきまして、運転を見合わせております。……」〕

 男性:(新幹線の線路入れんのかよw まあ、確か、あそこ、地上区間だったな……)

 男性は自分がギリギリ、ダイヤ通りに到着できた喜びを噛み締め、他の乗客には御愁傷様だと思いながら改札口の外へと向かった。

 男性:(そうだ。今日は日曜だから、大石寺へ行くバスが出てるんだった。あれに乗せてもらおう)

 一瞬、タクシー乗り場に向かい掛けた男性は方向を変えてバスプールの方に向かった。
 そして、バスプール内にあるキップ売り場の窓口に立った。

 男性:「すいませーん、大石寺まで大人1枚」
 係員:「往復ですか?」
 男性:「いえ、片道で。(同じバスに乗るとは限らないからな……)」
 係員:「それでは930円です」
 男性:「はい」

 男性はまるで電車のキップのような片道乗車券を手にした。

 

 男性:(このまま電車に乗れそうだw)

 男性は笑みをこぼしながら、バス停に並んだ。

[同日09:55.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、新富士です。新富士を出ますと、次は静岡に止まります〕

 今度は“いい日旅立ち・西へ”のサビ部分が流れる。
 これは敷島達の乗った車両がJR西日本のものであるからだ。

 敷島:「くっそォ!遅れやがって!」
 エミリー:「25分以上のタイムロスでしたね」
 敷島:「どっかのロボットが入ったんじゃないだろうな?」
 エミリー:「確率はゼロではありません。もしそうでしたら、私が鉄塊にしておきます」
 敷島:「よろしく頼むぞ。もし人間だったら、人間のことは人間に任せてくれ」
 エミリー:「かしこまりました」

 “こだま”639号が副線ホームに進入する。

〔「ご乗車ありがとうございました。新富士、新富士です。列車遅れまして、大変申し訳ございませんでした。これは新横浜〜小田原間で起きました線路内侵入により、安全確認を行ったものです。……」〕

 敷島:「線路内『人』立入りとは言ってないから、ロボットかもな」

 或いは何か物が投げ込まれたか……。

 エミリー:「後で全検索しておきますので」
 敷島:「分かった。それより対象者だ。対象者もこのダイヤ乱れの影響を受けてるといいんだがな……」
 エミリー:「そうですね」

 列車を降りた敷島とエミリーは、急いで改札の外に出た。

 敷島:「出口が2つあるか。どっちだ?」
 エミリー:「富士宮方面は北口です」

 
(現在、北口は『富士山口』という名称に変更されている)

 エミリー:「前回も私達は北口からタクシーに乗りました」
 敷島:「そうか。それじゃ、北口だな」

 敷島達は北口(現在は富士山口)から駅の外に出た。

 敷島:「さて、ここからどう行った?」
 エミリー:「可能性は5つです。1つはここからJR富士駅まで歩き、そこからJR身延線に乗ったルート。1つはJR富士駅までバスに乗り、そこからJR身延線に乗ったルート。1つは富士宮方面に行く路線バスに乗ったルート。1つはタクシー、1つは……大石寺直通のバスに乗ったルートです」
 敷島:「どれも可能性がありそうだが……。吉塚博士の家は、確かお寺の近くだったな」
 エミリー:「はい。正しく大石寺の近くです」
 敷島:「もし対象者が吉塚博士の親族なんだとしたら、あのバスで簡単に行けると知ってるかもしれない」
 エミリー:「それでは……」
 敷島:「タクシーで追い掛けるぞ。もし対象者がバスで向かったのなら、タクシー飛ばせば追い付けるかもしれない」
 エミリー:「(その確率は限りなくゼロに近いですが……)かしこまりました」

 エミリーは否定的な言葉を言うのをやめた。
 昔なら平気で言ってただろうし、その確率とやらを細かく計算して言っていたのだが、多くの人間がそれを望まないことを『学習』したエミリーは空気を読むことも覚えた。
 そして、タクシー乗り場に向かった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする