[3月14日19:00.天候:雨 東京都台東区上野 JR上野駅付近のマクドナルド]
他門の魔道師にシマ荒らしを受けた挙げ句、その魔道師を捕まえることができなかったことを稲生達はそれぞれの師匠に報告した。
エレーナ:「はっきり言ってアタシはとばっちりじゃん!」
マリア:「自分から首を突っ込んどいて何言ってんだよ」
本来エレーナは『協力者』たるワンスターホテルのオーナーの下で働いているだけなのだから、別に『飴玉婆さん』が出た所で放っておいても良かったのだ。
だから、そこはマリアの言う事が正しい。
明らかにエレーナが勝手に首を突っ込んだ責任はある。
稲生:「まあまあ。皆して反省文だけで良かったじゃん。本来ならこれ、反省文だけで済むような問題じゃないんでしょ?」
マリア:「始末書モノだな」
エレーナ:「最悪、降格処分」
稲生:「ありゃ、意外と厳しい!?」
エレーナ:「当たり前だよ。この世界もシェア争いが厳しいんだ」
稲生:「それは分かったけど……。どうして夕食がマックなんだよ?」
エレーナ:「反省会やるにはいい場所だろ?ここなら少なくとも、『失敗した癖に酒飲んだ』ということにはならない」
マクドナルドではアルコールの販売は行っていないため。
どうやら全世界共通らしい。
車内飲酒禁止のグレイハウンドバスも、途中休憩箇所にマクドナルドを指定しているくらいだ。
路線によってはバス停まで設置しているほど。
稲生:「ま、とにかく僕達は帰って反省文書くよ」
エレーナ:「ああ、そうしな」
稲生:「鈴木君は来なかったんだな」
エレーナ:「普通の人間をこれ以上巻き添えにはできないぜ。シマ荒らしの手口なんて、卑怯な時はもっと卑怯だからな」
マリア:「つまり、鈴木もヘタに首を突っ込んでいる以上、人質にされる確率があるってこと」
稲生:「そうなのか。だったら確かに手を引いてもらった方がいいね」
エレーナ:「できればホテルも出禁にしたいんだけど、そうなるとオーナーに申し訳無いし、私の給料にも響く」
マリア:「最後の一言が余計だぞ」
[同日19:15.天候:雨 JR上野駅]
マリア:「だいぶ降って来たなぁ……」
稲生:「春の雨ですね。何だか肌寒い」
帰宅ラッシュでごった返す上野駅を進む稲生達。
マリア:「帰りは何に乗るの?」
稲生:「高崎線ですね」
自動改札機に稲生はSuicaを当てた。
マリアにはキップを渡して、それで乗ってもらう。
マリア:「予め買っていた?」
稲生:「そうです。因みに帰りはこれに乗ります」
稲生はマリアに特急券を渡した。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の15番線の列車は、19時30分発、特急“スワローあかぎ”7号、本庄行きです。この列車は、7両です。……〕
マリア:「どうしてこの時間に帰ると分かった?」
稲生:「分かりませんが、そんな気がしたんです」
マリア:「予知能力?」
稲生:「分かりません。ただ、僕は飴玉婆さんに殺されないという自信はありました。さすがにあの鏡が目の前にあった時は、パニックになりましたけどね」
そのおかげで助かったようなものだ。
代償はそれなりにあったが。
稲生:「まだ少し時間がありますから、ベンチに座ってましょう」
マリア:「うん……」
2人はベンチに座った。
ベンチの前後では、帰宅客が足早に通過している。
稲生:「あ、そうだ。渡す物があったんだ……」
稲生はローブの中からある物を取り出した。
それはギフト用の包みに入ったものだった。
稲生:「ホワイトデー、今日でしたね。僕からです」
マリア:「ホワイトデー???」
稲生:「2月14日にチョコレートをもらったら、3月14日にお返しをするんですよ」
マリア:「日本にはそういう習慣があるのか。……私は爆発させたんだけどな」
稲生:「その気持ちだけでも嬉しかったですよ」
マリア:「本当にいいの?開けていい?」
稲生:「どうぞどうぞ」
マリアが包みを開けると、そこから現れたのは新しいカチューシャだった。
エレーナがとんがり帽子(または中折れ帽子)なら、ショートボブのマリアのシンボルはカチューシャである。
マリア:「ありがとう。また私のコレクションが増えた」
稲生:「いやいや。やっぱりマリアにはそれが似合うよ」
最近では魔法具の材料となる石(魔法石)を散りばめてみるという改造をしたりしているらしい。
〔まもなく15番線に、当駅始発、特急“スワローあかぎ”7号、本庄行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。この列車は、7両です。……〕
尾久の車両基地からだろうか、眩いヘッドライトを点灯させた特急列車がゆっくりと入線してきた。
かつては17番線と、今は無き18番線を発着ホームとしていた電車である。
〔「業務連絡。15番(とおごばん)、4007M車掌、準備できしましたらドア扱い願います」〕
電車が停車してからしばらくして、そのような放送が流れた後、エアーの抜ける音がして乗降扉が開いた。
〔「お待たせしました。どうぞご乗車ください」〕
恐らく今の放送を英訳すると、『All aboard.』になるのだろう。
但し、アメリカでは日本の『発車オーライ』の意味で使われる。
稲生:「ここだね」
先頭車の7号車に乗り込んで、進行方向左側の席に座る。
元々は“ホームライナー鴻巣”の後釜みたいな電車なので、やはり帰宅途中のサラリーマンが多い。
〔「ご案内致します。この電車は19時30分発、高崎線特急“スワローあかぎ”7号、本庄行きです。停車駅は赤羽、浦和、大宮、上尾、桶川、北本、鴻巣、熊谷、深谷、終点本庄の順に止まります。電車は7両編成での運転です。グリーン車は4号車です。……」〕
マリア:「帰ったら早速着けてみる」
稲生:「僕も楽しみだよ」
マリアは反省文を書かされるというのに、稲生からのプレゼントでそのような憂鬱な気分は吹き飛んでしまっていた。
電車は定刻通りに発車し、低いホームから高い線路へと上がるのだが、恐らくマリアのテンションの上昇ぶりはそれ以上であっただろう。
尚、鈴木はエレーナにどういうプレゼントをしたかは【お察しください】。
他門の魔道師にシマ荒らしを受けた挙げ句、その魔道師を捕まえることができなかったことを稲生達はそれぞれの師匠に報告した。
エレーナ:「はっきり言ってアタシはとばっちりじゃん!」
マリア:「自分から首を突っ込んどいて何言ってんだよ」
本来エレーナは『協力者』たるワンスターホテルのオーナーの下で働いているだけなのだから、別に『飴玉婆さん』が出た所で放っておいても良かったのだ。
だから、そこはマリアの言う事が正しい。
明らかにエレーナが勝手に首を突っ込んだ責任はある。
稲生:「まあまあ。皆して反省文だけで良かったじゃん。本来ならこれ、反省文だけで済むような問題じゃないんでしょ?」
マリア:「始末書モノだな」
エレーナ:「最悪、降格処分」
稲生:「ありゃ、意外と厳しい!?」
エレーナ:「当たり前だよ。この世界もシェア争いが厳しいんだ」
稲生:「それは分かったけど……。どうして夕食がマックなんだよ?」
エレーナ:「反省会やるにはいい場所だろ?ここなら少なくとも、『失敗した癖に酒飲んだ』ということにはならない」
マクドナルドではアルコールの販売は行っていないため。
どうやら全世界共通らしい。
車内飲酒禁止のグレイハウンドバスも、途中休憩箇所にマクドナルドを指定しているくらいだ。
路線によってはバス停まで設置しているほど。
稲生:「ま、とにかく僕達は帰って反省文書くよ」
エレーナ:「ああ、そうしな」
稲生:「鈴木君は来なかったんだな」
エレーナ:「普通の人間をこれ以上巻き添えにはできないぜ。シマ荒らしの手口なんて、卑怯な時はもっと卑怯だからな」
マリア:「つまり、鈴木もヘタに首を突っ込んでいる以上、人質にされる確率があるってこと」
稲生:「そうなのか。だったら確かに手を引いてもらった方がいいね」
エレーナ:「できればホテルも出禁にしたいんだけど、そうなるとオーナーに申し訳無いし、私の給料にも響く」
マリア:「最後の一言が余計だぞ」
[同日19:15.天候:雨 JR上野駅]
マリア:「だいぶ降って来たなぁ……」
稲生:「春の雨ですね。何だか肌寒い」
帰宅ラッシュでごった返す上野駅を進む稲生達。
マリア:「帰りは何に乗るの?」
稲生:「高崎線ですね」
自動改札機に稲生はSuicaを当てた。
マリアにはキップを渡して、それで乗ってもらう。
マリア:「予め買っていた?」
稲生:「そうです。因みに帰りはこれに乗ります」
稲生はマリアに特急券を渡した。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の15番線の列車は、19時30分発、特急“スワローあかぎ”7号、本庄行きです。この列車は、7両です。……〕
マリア:「どうしてこの時間に帰ると分かった?」
稲生:「分かりませんが、そんな気がしたんです」
マリア:「予知能力?」
稲生:「分かりません。ただ、僕は飴玉婆さんに殺されないという自信はありました。さすがにあの鏡が目の前にあった時は、パニックになりましたけどね」
そのおかげで助かったようなものだ。
代償はそれなりにあったが。
稲生:「まだ少し時間がありますから、ベンチに座ってましょう」
マリア:「うん……」
2人はベンチに座った。
ベンチの前後では、帰宅客が足早に通過している。
稲生:「あ、そうだ。渡す物があったんだ……」
稲生はローブの中からある物を取り出した。
それはギフト用の包みに入ったものだった。
稲生:「ホワイトデー、今日でしたね。僕からです」
マリア:「ホワイトデー???」
稲生:「2月14日にチョコレートをもらったら、3月14日にお返しをするんですよ」
マリア:「日本にはそういう習慣があるのか。……私は爆発させたんだけどな」
稲生:「その気持ちだけでも嬉しかったですよ」
マリア:「本当にいいの?開けていい?」
稲生:「どうぞどうぞ」
マリアが包みを開けると、そこから現れたのは新しいカチューシャだった。
エレーナがとんがり帽子(または中折れ帽子)なら、ショートボブのマリアのシンボルはカチューシャである。
マリア:「ありがとう。また私のコレクションが増えた」
稲生:「いやいや。やっぱりマリアにはそれが似合うよ」
最近では魔法具の材料となる石(魔法石)を散りばめてみるという改造をしたりしているらしい。
〔まもなく15番線に、当駅始発、特急“スワローあかぎ”7号、本庄行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください。この列車は、7両です。……〕
尾久の車両基地からだろうか、眩いヘッドライトを点灯させた特急列車がゆっくりと入線してきた。
かつては17番線と、今は無き18番線を発着ホームとしていた電車である。
〔「業務連絡。15番(とおごばん)、4007M車掌、準備できしましたらドア扱い願います」〕
電車が停車してからしばらくして、そのような放送が流れた後、エアーの抜ける音がして乗降扉が開いた。
〔「お待たせしました。どうぞご乗車ください」〕
恐らく今の放送を英訳すると、『All aboard.』になるのだろう。
但し、アメリカでは日本の『発車オーライ』の意味で使われる。
稲生:「ここだね」
先頭車の7号車に乗り込んで、進行方向左側の席に座る。
元々は“ホームライナー鴻巣”の後釜みたいな電車なので、やはり帰宅途中のサラリーマンが多い。
〔「ご案内致します。この電車は19時30分発、高崎線特急“スワローあかぎ”7号、本庄行きです。停車駅は赤羽、浦和、大宮、上尾、桶川、北本、鴻巣、熊谷、深谷、終点本庄の順に止まります。電車は7両編成での運転です。グリーン車は4号車です。……」〕
マリア:「帰ったら早速着けてみる」
稲生:「僕も楽しみだよ」
マリアは反省文を書かされるというのに、稲生からのプレゼントでそのような憂鬱な気分は吹き飛んでしまっていた。
電車は定刻通りに発車し、低いホームから高い線路へと上がるのだが、恐らくマリアのテンションの上昇ぶりはそれ以上であっただろう。
尚、鈴木はエレーナにどういうプレゼントをしたかは【お察しください】。