報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“アンドロイドマスターⅡ” 「ゴールデンウィーク前日」

2019-04-29 20:07:21 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月26日18:00.天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島のマンションの前に1台のハイヤーが到着する。

 運転手:「お疲れ様でした」
 敷島:「ありがとう」
 運転手:「明日から仙台へ御出張ですね」
 敷島:「うん。多分、しばらく戻って来ないと思うから、ゆっくり休んでてくださいよ」
 運転手:「恐れ入ります」
 敷島:「あ、でも一度会社に行ってから東京駅だから、明日までお願いするのか」
 運転手:「さようでございますね。お時間はいつもの時間でよろしいですか?」
 敷島:「うん、それで大丈夫」
 運転手:「かしこまりました」

 ハイヤーを降りると、シンディが傘を用意していた。
 エミリーはDCJにて整備中。
 こういう時はシンディが代役を果たす。
 かつてはシンディの方がメインだった。
 オーナーの登録が平賀から敷島に移ったことで、メインとサブが逆転した。
 それまでは南里の遺言で平賀が頑なにオーナー登録を続けていたのだが、当のエミリーは敷島を選んだこと、南里の遺言状は数通あり、内容に矛盾が発生していること(例えば『エミリーを墓場に持って行きたい』としながらも、別の遺言状には『エミリーは平賀君に譲る』とか書いてあったり)。

 シンディ:「月末も雨らしいですよ、社長」
 敷島:「困ったねー。イベント会場によっては、集客が天候に左右されるからなぁ……」

 ロイド達は傘を差さない。
 濡れても平気だからなのだが、さすがに建物に入る時にずぶ濡れでは困るので、ここでは傘を差しても良いことにしている。

 シンディ:「今日は二海がキッチン(メイド)をやっています」
 敷島:「まあ、お前はエミリーの代役だし、当のエミリーは整備中だから、そうなるか。オムライスでも作ってくれてるのかな?」
 シンディ:「よくお分かりで」
 敷島:「表向きはトニーの希望ということになっているが、メイドとして作らないと気が済まんということに最近気づいたよ」
 シンディ:「その割には『おいしくなるおまじない』を知りませんでしたね」
 敷島:「別にそこまでは求めていないからな?」

 エレベーターに乗って、部屋に向かう。

 シンディ:「富士宮の件はどうなりましたか?」
 敷島:「どうもこうもないさ。ロボットが爆弾を抱えて自爆した。ただ、それだけ。当のロボットがバラバラになっている状態じゃ、どうしようもないってさ」
 シンディ:「メモリーを回収して解析とかは?」
 敷島:「だから、それも復元できないほど黒焦げのバラバラだってことさ。せめて、犯人から犯行声明でも出してくれりゃいいんだがな」

 部屋の中に入る。

 敷島:「ただいまァ」
 二海:「お帰りなさいませ、社長」

 『御主人様』とは言わない。

 敷島:「大抵こういう場合、同時多発的に似たようなテロが他でも行われたりするのが、KR団のセオリーなんだが……」

 敷島はテレビを点けてニュース番組にチャンネルを合わせた。

 敷島:「今回はあれ以来、似たようなニュースが無い」
 シンディ:「そうですね」

 一応、ニュースでは包み隠さず、『国際ロボットテロ組織、KR団日本支部に所属していた吉塚広美博士宅で大規模な爆発』『ロボットが爆発したか?』などと報道していたが……。

 敷島:「吉塚博士はとっくに死んでいて、テロとは全く関係の無い親族だけが巻き込まれて、俺が無事と。本当に俺を狙ったテロだったのか?ぶっちゃけ、新幹線ごと爆破した方が組織的犯行なんだとしたら、名前が売れるだろうに……。新幹線は狙わず、直接家を狙った理由は……知らんと」
 シンディ:「社長。姉さんの整備は明日終了ですか?」
 敷島:「そうだ。俺達は東京駅から乗るが、アリスとエミリーは大宮から乗る」
 シンディ:「かしこまりました」
 敷島:「他に同行するのは?」
 シンディ:「鏡音リンとレンです」
 敷島:「マジかよ。騒がしくならないかねぇ?」
 シンディ:「あの2人には携帯ゲームをやらせておきますから」
 敷島:「それならいいが、今度はトニーが騒がないといいが……」
 シンディ:「お坊ちゃまは大人しい方ですから、恐らく大丈夫だと思いますが……」
 敷島:「そうかな」

 敷島が着替え終わると、二海が入って来た。

 二海:「失礼します。御夕食の用意が整いました」
 敷島:「ああ、今行く」

 私服に着替えた敷島は、ダイニングへ向かった。

 アリス:「ただいまァ」

 と、そこへアリスが帰って来る。

 アリス:「Oh,今日はやっぱりオムライスね」
 敷島:「お前も予想当たりかい」
 アリス:「誰よ?二海のプログラミング、アキバのメイド喫茶みたいにしたの?」
 敷島:「製作者は平賀先生……」
 アリス:「日本人相手に量産したタイプならそれでいいけど、二海はトニーの誕生祝でしょ?そんな機能いらないって」

 で、アリスが色々といじくったのだが、まだ名残はあると。

 敷島:「それより早く食べよう。シンディ、トニーを呼んで来てくれ」
 シンディ:「もう既にお連れしております」
 トニー:「何だよ、シンディ!人がゲームしてんのに!」

 シンディに襟首掴まれて、無理やり部屋から引きずり出されてくるトニーがいた。

 トニー:「あともうちょっとでラスボスなんだよ!」
 シンディ:「ダメと言ったら、ダメでございます!」

 シンディ、両目をギラリと光らせてトニーを叱り付ける。

 敷島:「トニー、シンディの言う通りだ。いい加減にしないと今度はビームが飛んで来るぞ」

 因みにエミリーの場合は無言の圧力で躾に行く。

 アリス:「さすがシンディは我が家のハウスキーパーね」
 シンディ:「光栄です」
 敷島:「ハウスキーパーは本来、メイドじゃないんだけどね」

 メイドを含めた女性使用人の統括責任者のことである。
 男性使用人がいない場合、執事を務めることもある。

 敷島:「というか、ハウスキーパーはエミリーの方じゃないのか?」
 シンディ:「それは私もそう思います」
 アリス:「ま、どっちでもいいわ。早く食べましょう。トニー、ママの所へおいで」
 敷島:「ママっ子になりそうだ。……俺が子供の頃はどうだったかな?……まあいいや」

 以上、夕食を囲む敷島家から中継でお送りしました。
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“アンドロイドマスターⅡ” 「AIは人類蹂躙の夢を見るか?」 3

2019-04-29 16:58:23 | アンドロイドマスターシリーズ
[4月21日14:20.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島は応接室で鷲田警視と対面している。

 敷島:「今日は村中課長は来られないんですね」
 鷲田:「村中は休みだ。なので今日は、私1人だ」
 敷島:「そうでしたか。それで、御用件というのは?」
 鷲田:「キミが行って遭った富士宮の事件だが、向こうの県警の話として、やはり爆発・炎上したもので間違いないということだ」
 敷島:「現場から搬送されている人達もいましたけど?」
 鷲田:「親戚一同が集まっている中、あの爆発だ。既に死亡した者もいる」
 敷島:「こりゃ、とんだ無駄足だったかなぁ……?」
 鷲田:「社長にとってはそうだったかもしれんが、犯人は悔しがってるかもしれないぞ?」
 敷島:「どういうことですか?」
 鷲田:「お気楽な社長だ。もしかしたら、あなたを狙った事件だったかもしれないんだぞ?」
 敷島:「えっ!?」
 鷲田:「そりゃそうだろ。あなたはテロリストの世界では恐れられている男だ。当然ながら、夜道には気を付けなければならん」
 敷島:「エミリーやシンディが、今は常にガードしてくれてますけどね」
 エミリー:「お任せください」

 エミリー達は銃弾などもろともしない。
 もしも彼女達を倒したかったら、ロケランくらい用意しないとダメだ。
 日本でそれが導入できるかね?
 そのロケランでも、エミリーは弾き返したという噂だ。

 鷲田:「だが、突然の爆発となると話は別だろう」
 敷島:「過去に巻き込まれたことがありましたが、私は生き残りましたがね」
 鷲田:「ああ、そうだなっ!ロボットの研究より、キミを研究した方が人類の為になりそうだ」
 敷島:「そんなことないですよ」
 鷲田:「さっきの話に戻るが、キミが富士宮に向かった時、新幹線が遅れたんだろ?」
 敷島:「そうなんですよ」
 鷲田:「吉塚邸の爆発事件が起きた時間帯を照らし合わせてみると、もしキミ達を乗せた新幹線が定刻通りに走っていたら、ほぼ間違い無く巻き込まれていたと思うがね?」
 敷島:「あっ、そっか!」

 敷島は今更ながら気づいたようにポンと手を叩いた。

 鷲田:「それで聞きたいのだが、キミは吉塚邸に行くことを誰かに話したかね?」
 敷島:「いや、無いですね。東海道新幹線に乗ることは、うちのアリスやシンディに話しました」
 鷲田:「奥さんともう1機のロボットは、キミの動きを追えるそうだな?」
 敷島:「ええ。私には『歩くGPS』がいますから」

 敷島は傍らに立つエミリーを見た。
 エミリーがペコリとお辞儀をする。

 鷲田:「キミの動きを追えるというだけであって、先回りは不可能か」
 敷島:「ですね。もしうちの嫁がキレたら、こいつらが『代理闘争』しますから」
 鷲田:「埼玉県南部と東京の城北地区が焦土と化しそうだから、それは一切やめて頂こう」
 敷島:「なるほど。あれは私を狙ったテロだったのか……」
 鷲田:「その推理をしただけだ。キミに何か心当たりはあるかね?」
 敷島:「色々あり過ぎて、誰が犯人やら分かりませんよ」
 鷲田:「まあ、そうだな」
 敷島:「何が爆発したのか、それにもよりますね」
 鷲田:「ちょっと待ってくれ。今、聞いてみる」

 鷲田は自分のスマホを取り出すと、それでどこかに連絡した。

 鷲田:「……なるほど。分かった」

 電話を切ると……。

 鷲田:「先ほど分かった情報だが、どうやら爆弾を持っていたロボットが自爆したらしいな」
 敷島:「ええっ!?」

 敷島が驚くと同時にエミリーの眉がピクピクと動いた。

 鷲田:「ついにロボットが人間に反旗を翻した!これは由々しき事態だ!」
 敷島:「いや、前からですけどね!爆発したのはバージョンかな?黒いロボットかな?」
 鷲田:「そこまでは分かっておらん」
 敷島:「エミリー、何かロボットの反応とかあったか?」
 エミリー:「いいえ、ありませんでした」
 鷲田:「そりゃそうだろ。だってキミ達が来た時には、既に爆発後の延焼中だったんだろ?反応があるわけないだろう」
 敷島:「いや、そりゃそうですけど」
 鷲田:「とにかく、常日頃からそうしていると思うが、これからも十分注意するように」
 敷島:「分かってますよ」
 鷲田:「この業界、恐らくゴールデンウィークは忙しいんだろ?」
 敷島:「そうですね」
 鷲田:「一応、キミのスケジュールを聞いておきたいんだが、いいかね?」
 敷島:「ゴールデンウィークは仙台に行きます。向こうの科学館への特別展示イベントは毎年恒例ですが、他にも展示場でのイベント参加とかありますからね」
 鷲田:「キミはよく仙台に行くな」
 敷島:「そりゃもう。エミリーやミクと初めて会ったのは仙台でしたし。平賀先生も向こうの大学の教授ですからね」
 鷲田:「大学へも展示するわけか」
 敷島:「ま、そういうことになりますかね。うちのボカロはそれぞれ仕事がありますから、いつも展示されるわけではありません」
 鷲田:「分かった。じゃ、何か分かったことがあったら、私に連絡してくれ」
 敷島:「分かりました。エミリー、鷲田警視がお帰りだ」
 エミリー:「かしこまりました。それではエレベーターまでお送りさせて頂きます」
 鷲田:「うむ……。途中で私を襲うなよ?」
 敷島:「エミリーはそんなヤツじゃありませんよ」

 敷島は苦笑した。

[同日18:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 敷島家]

 敷島:「……というわけで大変だったんだ」
 アリス:「テロ組織も無くなったはずなのにねぇ……」

 敷島は帰宅して夕食を取っていた。
 エミリーが秘書なら、ここではシンディがメイドをやっている。

 アリス:「トニーも幼稚園に入るし、いい加減無茶はやめてよね?」
 敷島:「分かってるよ。俺は俺でいいんだけど、アリスも危険だぞ」
 アリス:「私にはシンディがいるからね」
 シンディ:「お任せください」
 アリス:「いざとなったら、マリオとルイージもいるし」

 アリスが製作した最新型のバージョンシリーズ。
 但し、それらを以ってバージョンシリーズの製造は中止されている。
 元々がテロ用途で設計されているのだから当たり前だ。

 アリス:「それで、ゴールデンウィークは仙台に行くの?」
 敷島:「いつも通りだろ。またロイド達の整備、頼むぞ?」
 アリス:「それじゃ契約書の方を……」
 敷島:「おい、アメリカ人w」
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