報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「地下室」

2019-04-17 19:25:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月10日10:00.天候:晴 夜ノ森家1F仏間]

 仏壇の厨子の奥には仏像ではなく、『南無妙法蓮華経』と書かれた掛け軸が掛かっている。
 その後ろには、明らかに何かが作動しそうな赤いボタンが付いていた。
 私がそれを押すと、カチッという音が下から聞こえた。
 これは明らかに電子ロックが解除される音である。
 仏壇の下の観音開きの扉。
 これには鍵が掛かっていた。
 しかも鍵穴の類は無い。
 どうやら電気錠であったようだ。
 早速開けると、中は収納なんかではなかった。
 収納に見せかけて、実は床が開くようになっている。
 手持ちの懐中電灯で中を照らすと、床には取っ手が付いていて、それを奥にスライドして開けることができた。
 そこから現れたのは、地下に下りる階段。
 これは……ガチだな。
 私は玄関から靴を取って来ることにした。

 愛原:「待てよ。確か……」

 高野君に頼んでエージェントの善場(としば)さんと、BSAAに連絡してもらったんだっけ。
 もちろん民間人がいきなり国連組織に連絡はできないから、日本政府エージェントを通じて連絡することになるのだろう。

 愛原:「地下室の入口だけ見つけて、あとは向こうの仕事かな?いや、でも……」

 取りあえず、何かあった時の脱出ルートだけは確保しておこう。
 玄関から外に出ると、正門の門扉は閉まっていた。
 しかも閂には鍵が掛かっており、開けられそうにない。
 それなら裏門でもあるのだろうと思い、裏庭に回ってみることにした。

 愛原:「何だこれ?」

 裏庭に行く為の通路が陥没していた。
 恐らく、昨夜の大雨の影響だろう。
 それでどうしてそこが陥没したのかは分からないが、おかげで裏門へ行くことができなかった。

 愛原:「こりゃここでエージェント達の到着を待つか、地下室へ行けってことだな」

 私はやはり地下室へ行くことにした。
 こうでないと面白くないだろう?

[同日10:30.天候:晴 夜ノ森家地下1F]

 恐らく、この地下室は後から造られたものだろう。
 仏壇の下の空間は頭をぶつけかねないほど狭いものだったが、階段を下りたらそうでもなかった。
 一本道が続く。
 通路は道路一車線部分くらいの幅で、高さは2mくらいある。
 但し、照明の類は一切無く、ライトが無ければとても進めない。
 途中、いくつもの部屋に分かれているのか、鉄扉があった。
 但し、どれも鍵が掛かっている。
 何の部屋なのかは書かれていないので、中に何があるのかは分からない。
 ここは何も関係無いのだろうか。

 愛原:「ん?」

 すると、向こうからもライトが近づいてきた。
 誰かいるのだろうか?
 ついでに機械の音も聞こえて来る。

 ロボット:「IDガ認証デキナイ場合、不審者ト見ナシマス」

 それはキャタピラー歩行のロボットだった。

 ロボット:「IDガ認証デキナイ場合、不審者ト見ナシマス」
 愛原:「あいにくと私は持っていない。大体、この先には何があるのかね?」

 私はロボットにそう答えた。

 ロボット:「不審者ト認識シマシタ。直チニ武力行使ニ出マス」

 ロボットの両手から火花が飛び散る。

 愛原:「うわっ!」

 そしてロボットが突進して来た。
 私は急いで避けたが、多分あれ強力なスタンガンだな。

 愛原:「おい、ロボット!お前、登場する作品間違えてるだろ!?」
 ロボット:「武力行使ニ出タ場合、生命ノ保証ハデキマセン」

 私は慌てて逃げ出した。

 ロボット:「追尾シマス」
 愛原:「しなくていい!」

 タイラントに追われるより、どっちがマシだろう?
 私がそんなことを考えていると、途中に消火ホースを見つけた。

 愛原:「マッチ一本、火事の元!」

 私はすぐに水を出して、ロボットに向かって吹きかけた。

 ロボット:「ポーの一族、萩尾望都~ッ!」

 ロボットは自ら感電して爆発した。

 愛原:「俺もやべ、これ!!」

 私は急いで水を止めた。
 いやいや、両手がスタンガンになっているヤツに水掛けたらだよ?
 掛けられた方はもちろん、水を伝って掛けてる方にも電気が流れて来るってことだからね。
 幸いゴムホースだったから良かったものの、それでも水しぶきや水たまり越しに電流が流れて来る場合だってあるということだ。

 愛原:「一体、何だってんだよ!」

 私が突然現れた中ボス?のようなロボットに悪態をつくと、さっさと先に進むことにした。
 途中に破られたシャッターがあり、どうやらさっきのロボットはそこから暴走して現れたらしい。
 そのシャッターの中を見ると、まあ、ただのロボットの格納庫だったのだろうが、問題はどうしてそれが一個人の邸宅の地下にあるのかだ。
 夜ノ森氏は悪の製薬企業アンブレラと所縁のある人物だったようだが、あくまで製薬企業である。
 ロボット製造業ではないはず。
 一応、中には鍵なんかもあった。

 愛原:「一応、持って行こう」

 ようやく通路の終点らしき場所に着くと、白い鉄扉があった。
 それは鍵が掛かっていたが、先ほどの鍵で開けることができた。

 夜ノ森:「おやおや?これはこれは愛原さん」

 殺風景な部屋にいたのは夜ノ森氏であった。

 愛原:「夜ノ森さん!」
 夜ノ森:「如何ですか?座敷童様にお会いできましたかな?」
 愛原:「会いましたよ!」
 夜ノ森:「おおっ!さすがは愛原さんですな。ということは、既に『御印』を頂きましたかな?」
 愛原:「『御印』とは?」
 夜ノ森:「これですよ」

 夜ノ森氏は左腕を見せた。
 そこには私が先ほどそうされたように、誰かに強く握られた手の痕があった。
 まさか、これが感染の印なのか!?

 愛原:「腕なら掴まれた……」
 夜ノ森:「おおっ!それなら我々の仲間入りです!さあ、そんなライト消してしまいなさい。眩しくてしょうがない」
 愛原:「それが、これが無いと見えないんですな。ここに来る前に電池交換しておいて良かったですよ」
 夜ノ森:「そんなはずはない。腕の御印を見せてごらんなさい」

 私は少女に掴まれた左腕を見せた。
 今はもう痕も無くなっていた。

 愛原:「ここを掴まれたはずなんだけど?」
 夜ノ森:「本当に掴まれたんですか?」
 愛原:「本当ですよ」
 夜ノ森:「うーむ……。これはきっと、童様の御機嫌を損ねたからかもしれない……」
 愛原:「そうですかね?不機嫌な割には去り際、随分と笑ってましたよ?」
 夜ノ森:「いいや!きっと童様の御機嫌をあなたが損ねたのです!ああ、何て恐ろしいことだ!」

 夜ノ森氏はサングラスを外した。
 その下の目は予想通り、吸血鬼のように赤くボウッと光ったものだった。

 夜ノ森:「私の目を見なさい!童様の裁きを受けるのです!」
 愛原:「やーなこった!」

 私はむしろ手持ちのライトを夜ノ森氏に向けた。

 夜ノ森:「鬱陶しい明かりめ!」
 愛原:「高橋はどこだ!?」
 夜ノ森:「高橋!?誰だ、そいつ!?」
 愛原:「俺の連れだよ!」
 夜ノ森:「知るか!」

 私は部屋の外に飛び出しながら首を傾げた。
 私はつい同じ感染者として、夜ノ森氏の所に高橋が行ったのだと思っていた。
 しかし、知らないという。
 トボけている可能性もあるが、もし本当だとしたら、高橋は一体どこに行ったのだろう?
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“私立探偵 愛原学” 「嗤う座敷童」

2019-04-17 14:38:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[4月10日09:00.天候:晴 夜ノ森家1階玄関前→屋内]

 外部との電話連絡を終えた私は、感染した高橋を追う為、家の中に入ろうとした。
 しかしどういうわけだか、誰もいないはずの玄関の引き戸が乱暴に閉められ、私は一瞬の締め出しを食らってしまった。
 急いでまた扉を開けようと手を伸ばした時!

 ガシッ!

 愛原:「!?」

 私の左手を強い力で握る者がいた。
 それは私の目線より下にいた。

 座敷童:「よろしく。おじさん」

 それはリサよりも年下の少女だった。
 リサが13歳程度だとしたら、こちらは10歳程度。
 黒い半袖の服とグレーのスカートを履いている。
 黒い髪はリサよりも若干長く(リサが肩の上までなら、こちらは肩より少し下)、ウェーブが掛かっている。
 顔立ちはリサのように目鼻立ちがはっきりしており、日本人離れしたものである。
 瞳の色はリサが黒なら、こちらはグレー。
 そして、腕の力。
 まるで高橋のような、大の男に掴まれてるくらいの力があった。
 見た目よりも、私はこの登場の仕方と腕の力ですぐに分かった。

 こいつは人間ではないと!

 愛原:「座敷童……!」

 私がそれだけ言うと、少女はニィーッと笑った。
 リサと違って、牙が覗くことはなかった(もっとも、リサも牙を隠すことはできる)。

 座敷童:「ふひひひははははははっ!」

 無邪気に、しかしやはりどこか不気味な笑いを残して座敷童は家の中に消えていった。

 愛原:「ま、待てっ!」

 座敷童に掴まれた手を見ると、赤く痕が残っていた。
 小学生くらいの女の子が、こんな力は出せないはず。
 しかも、まるでテレポートするみたいに家の中に消えていった。
 私はまた家の中に入った。
 この家の中で私のミッションは3つ。
 1つは高橋を捜すとこと、1つは座敷童を追う事、もう1つはこの家の人々を捜すことだ。
 家の中に入った私は躊躇うことなく、床の間に入った。

 愛原:「失礼します!夜ノ森さん!大変です!」

 だがしかし、そこはもぬけの殻だった。

 愛原:「!?」

 そんなバカな!
 入れる部屋、全て入ったが誰もいなかったぞ!?
 すると、この家の人達は一体どこに!?
 しかも、高橋までいないじゃないか!

 愛原:「ん?」

 床の間というからには、立派な床柱がある。
 それはいい。
 その横の壁には、大きな掛け軸が掛かっていた。
 この家の財力からして、むしろこっちの方が値打物なのだろう。
 仏壇の所にあったものと比べれば……。
 私が首を傾げたのは、その絵が人物画だったことだ。
 しかもその人物というのは、明らかにあの座敷童を描いているものだった。
 座敷童が不気味な笑みを浮かべ、こちらを見据えているもの。
 全く、こんな子供がいたら怖いよ。
 リサでも、こんな顔はしない。
 ただ、それは私達に対しては、なのかもしれない。

 愛原:「……?」

 私がこの掛け軸に違和感があったのは、その中の座敷童があまりにもこちらを見ていることだった。
 私は掛け軸の前に立ち、そのまま座敷童の目線を追うようにその背後を見た。
 その背後も壁になっていて、そこには写真が飾られていた。

 愛原:「あっ……!」

 それは何かの記念写真のようだったが、そこに書かれていたのは……。

 愛原:「『平成17年9月5日 日本アンブレラ社 霧生開発センターの皆さんと』……って、ええっ!?」

 今から15年くらい前の写真だな。
 撮影場所は……あの霧生市の研究所だ!
 日本アンブレラ社では、研究施設のことを全て『開発センター』と呼んでいる。
 アンブレラ・コーポレーション・インターナショナルは表の顔と裏の顔を使い分けていたことで有名であり、日本法人には表向きの顔を演出するという役目が課せられていた。
 とはいうものの、裏の顔も少なからず持っており、アメリカ本社で開発されたウィルスやBOWを保管するという業務も担っていた。
 夜ノ森氏はアンブレラとの関わりがあったのか!?
 確かに写真には、今よりもまだ白髪の少なかった頃の夜ノ森氏の姿がある。

 愛原:「これは証拠になるかもな」

 私は写真を額縁ごと外した。

 愛原:「うん?」

 するとそこにはメモが挟まっていた。
 そこにあったのは……。

 愛原:「『掛け軸の裏』だって?」

 掛け軸の裏に何か隠されているのだろうか?
 私は座敷童の掛け軸の裏を見た。
 するとそこに小さな扉があった。
 分電盤の扉みたいなドアと言えばいいかな?
 開けると、どうやら金庫のようだった。
 入っていたのは、これまた掛け軸。
 桐箱の中に丁寧に入っていたくらいだから、今度こそ本当に値打物なのだろうか。
 しかし、巻物のように巻かれた掛け軸は小さく、それは仏壇にあるものと一緒だった。
 達筆で、何とか中央に『南無妙法蓮華経』と書かれているのが分かるくらい。
 何で同じものが2つもあるんだ?
 ……と、霧箱の底からまたメモ用紙が見えた。

 『あの子がどうしてもお寺から御下附された御本尊様は嫌だということから、仕方なく甥っ子が身延山の土産で買って来た偽本尊を掛けざるを得なかった。御本尊様、申し訳ありません。あの子には逆らえない』

 ……信心深い人達ではあったのかな?
 一応、これを持って行こう。
 もしかしたら、あそこにも何か秘密が隠されているかもしれないな。
 私は今度は仏間に行くことにした。

 愛原:「ここだな……」

 仏間に行くと、先ほどと状態は同じだった。
 よく見ると、何も手入れされていない。
 私は掛け軸に手を伸ばした。

 座敷童:「おじさーん……」
 愛原:「!?」

 振り向くと、あの座敷童が無邪気な笑顔をして立っていた。

 座敷童:「帰るなら今のうちだよぉ……?」
 愛原:「帰るのはいいが、その前に高橋……あの金髪にピアスの兄ちゃんを返してくれ」
 座敷童:「ひひひひははははははっ!」

 座敷童はまた私の手を掴んで不気味に笑うとまた消えた。
 一体、何だって言うんだ?
 掛け軸を外すと、その後ろには赤いボタンが付いていた。
 さて、どうしようか?

 1:早速ボタンを押す。
 2:今は押さない。
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